ブラッド・ストーンのUPSTARTS UberとAirbnbはケタ違いの成功をこう手に入れたの書評

タクシー業界は関係者全員がお粗末です。タクシー会社もお粗末。運転手もお粗末。乗客の要望ははっきりしています。聞く耳を持つ者もいますが持たない者もいます。私もそのひとりだったわけで、その点については言い訳ができないと思っています。(トム・デパスカル)


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今話題のアップスタートとは何か?

トム・デパスカルはタクシー業界の酷さをビジネスチャンスに、タクシーマジックを起業します。彼が問題視していたようにアメリカのタクシーサービスは本当にひどいもので、多くの顧客が長年苦労してきました。私も先週ラスヴェガスで開催された「CES」でそれを実感したのですが、空港からホテルまでの移動タクシーの運転手のマナーや運転は最悪で、いやな気分になりました。その後は、ウーバーとリフトを使い、滞在中のラスヴェガスやシアトルでは二度とタクシーを使いませんでした。一度これらのサービスを使うともう二度とはタクシーに戻れないのです。

アメリカでの都市の移動手段はタクシーに依存しますが、タクシー業界の利権を守ることが長年行われ、顧客視点でのサービスが生まれてきませんでした。しかし、インターネットやソーシャアルメディア、iPhoneの普及で、タクシーマジックやウーバー、リフトなどのサービスが次々に誕生しました。

タクシーに限らず、住居でもマッチングが進み、エアビーアンドビーなども注目を集めています。ブラッド・ストーンUPSTARTS UberとAirbnbはケタ違いの成功をこう手に入れたの中で、ウーバーやエアビーアンドビーの経営者や関係者にインタビューを重ね、サンフランシスコのベイエリアで起きた2つの奇跡の理由を解明していきます。

第44代アメリカ合衆国大統領、バラク・オバマの就任式に偶然、エアビーアンドビーの三人の創業者(ブライアン・チェスキー、ネイサン・ブレチャージック、ジョー・ゲビア)とウーバーのギャレット・キャンプ
トラビス・カラニックが参加したのです。ここからアップスタートを代表する2社の物語がスタートしました。

ここ100年にわたるテクノロジー社会の勃興が迎えた転換点を記したものと考えるべきだろう。古い制度が倒れ、新たなリーダーが台頭し、見知らぬ人同士が新たな社会契約を結び、都市の様相が一変し、アップスタートが闊歩するようになる転換点である。(ブラッド・ストーン)

ブラッド・ストーンはアップスタートとは何かを定義しています。
1、最近成功した人物や事業など
2、なにがしかの活動を始めたり成功を収めたりした人物で、経験豊富な年長者や確立された手法をあまり尊重しない者

ウーバー、エアビーアンドビーには、創業当初、壮大な目標があったわけではなく、自分たちが不便だと思っていることを解決するためにサービスを開始したのです。車や家を人に貸すという古くからあるアイディアに最新のテクノロジーを掛け合わせ、顧客に支持されるサービスを生み出したのです。法律や規制を無視し、自分たちのやりたいことを諦めずに続け、投資家や顧客をファンにすることで短期間のうちに、成功を手にいれてしまったのです。

投資家で有名なポール・グレアムとグレッグ・マクドーの2人は、偉大なアントレプレナーに一番必要な資質は「精神力」だと述べています。新しいことに付きものの障害や問題を乗り越える力が、ベンチャー起業家には欠かせません。ポール・グレアムはエアビーアンドビーの三人をゴキブリ呼ばわりし、何をしても死なないという最大級の評価をしました。この投資が、瀕死の状態にあった同社を救い、彼のアドバイスがあったおかげで、エアビーアンドビーは成長軌道に乗ります。

部屋やアパート、家、ちょっと変わったスペースなど、暮らしのなかに存在する膨大な非流動資産を個人間の取引市場と言えるものに乗せてしまおうというのはすごい考えです。思わず、『わかった。乗ろう』と言ってしまいました。(リード・ホフマン)

家や部屋、移動手段の車などの他者の膨大な非流動資産に目をつけ、そこからプラットフォームビジネスをスタートせたことが、ウーバーやエアビーアンドビーの新しさだったのです。

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成功者の振りをして、困難を乗り越えろ!

実際に成功するまで成功しているふりをするんだ。現実と戦うというか。長くやりすぎると、つまり破綻した状態が続くと、つぶれてしまうんだけどね。(カラニック)

タクシー業界や政治家などの得権者からウーバーは大反対され、数多くの訴訟を起こされます。カラニックは彼の言葉通り成功者のように振る舞い、一つ一つ課題を解決し、利用者のニーズを取り込みながら、ファンを増やしていきます。

本書にはアップスタートの代表的人物のカラニックの仕事の哲学が紹介されていますが、これをベンチャー起業家は参考にすると良いと思います。()内は著者のブラッド・ストーンのアドバイスです。
■顧客にこだわる(顧客にとって一番いいことを出発点とする)
■魔法を生みだす(長く使える打開策を探す)大きく大胆にかける(5年から10年先を見すえてリスクを取り、種をまく)
■裏返してみる([般的な認識と現実のギャップをみつける)
■チャンピオンの心構え(全力で逆境にあらがい、ウーバーをゴールに導く)
■楽観的なリーダーシップ(示唆と刺激を与える)
■超気合(CEOをカラニックに交代したとき、ライアン・グレイブスがツイッターに書いた一言。世界は情熱をもって解くパズルである)
■オーナーたれ。借り物はやめろ(心から信じる者が革新をなす)
■実力主義だ。出る杭となれ(最後は一番いいアイデアが選ばれる。人間関係のために真実を犠牲にしないこと。上司にも遠慮せず疑問を呈すること)
■作り手につくらせろ(餅は餅屋に任せろ)
■がんばり続けろ(頭を使って一生懸命、長く働け。効率を上げ、3分の2で満足するな)
■都市をめでろ(都市をよりよい場所にするのが我々の仕事だ)
■自分らしくあれ(各人、心を偽るな)
■信念をもって対決しろ(未来を呼び込むには、世界やその仕組みを変えなければならない場合もある)

トラビス・カラニックもブライアン・チェスキーも、大変なことを顧客と約束しました。渋滞をなくす、都市を住みやすくする、時間の余裕と本物の体験を人々に与えると言うビジョンを掲げ、この約束が守られるならその過程でもめごとやミスが起きたことも許されると考えていました。この強さが抵抗勢力に対する武器となり、これがあったからこそ、顧客の支持を得られたのです。

そして、2社は短期間のうちに投資家の注目を集め、創業から10年未満にも関わらず、2社合わせた会社評価額は10兆円を超えています。世界各国、各都市での規制との戦い、既得権益を握る企業との闘争は、破壊的で普通の人には真似できない行動です。冒頭のトム・デパスカルが成功できなかったのも、彼らのような破壊者的な行動を取れなかったのが理由です。少しでも可能性があれば、それをすぐに試し、粘り強く続けることで、2社は強大な組織になったのです。

しかし、やりすぎは悲劇につながります。実際、カラニックには大きな問題がありました。カラニックは優れたアントレプレナーでしたが、彼は大企業を経営する器ではなかったのです。

技術や事業で問題に直面したとき、根本的なところまで掘り下げて解決することができる。必要であればリスクや対立も辞さない。大都市内の移動という昔からある頭痛の種について自由な発想ができる。だが、彼の欠点は会社の欠点でもある。遺伝であるかのように会社の血流に受け継がれているのだ。カラニックは、大企業の経営で実績をあげたリーダーの採用をずっと避けてきた。そういう人を入れると、官僚的で動きがにぶく、ゆっくりと失敗に引き込まれていく原因だと彼が考えるルール重視の意識がウーバーに浸透しかねないと思ったのかもしれない。

大企業になったウーバーを襲った危機を救うための優秀なチームを作らなかったことが、彼の失敗の原因でした。ウーバーには最高財務責任者もいなければ最高法務責任者もいないために、セクハラなどのトラブルを回避できずに、最終的に辞任に追い込まれました。一方のチェスキーはメンターを作り、他者から学ぶ姿勢をとることによって、自分と組織を変えていくのです。

エアビーアンドビーもウーバーも、まだ発展途上です。既存の枠組みを打ち破るのがアップスタートの真骨頂ですが、細かな配慮が不足することがリスクになることをカラニックが示したのです。ウーバーを配車サービス世界最大手に育てたカラニックですが、最終的な成功を手に入れることはできなかったのです。我々の暮らしや仕事を大きく変えるアップスタートですが、エアビーアンドビーとウーバーの歴史を振り返ることで、多くの学びを得られます。スタートアップを成功させるための指南書としても使えるだけでなく、ノンフイクションの読み物としてもお勧めできます。とにかく登場人物が面白く、あっという間に読める良書です。ポストグーグル、ポストフェイスブック時代がどうなるかを知りたい人にはお勧めの一冊です。

まとめ

技術や事業で問題に直面したとき、根本的なところまで掘り下げ、必要であればリスクや対立も辞さない姿勢が、ウーバーとエアビーアンドビーに成功をもたらしました。都市の移動をスムーズにしたり、旅行中の部屋を確保しやすくすることで、顧客を味方にしました。顧客の声を最大限活用し、抵抗勢力を封じ込めることで、競合との戦いに勝利したのです。

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