無敵艦隊も財政問題には勝てなかった?

スペインが衰退した最大の要因は、財政問題だったといえる。大航海時代のスペインは、植民地から莫大な富を収奪していたにもかかわらず、財政危機が慢性化していた。デフォルトさえ何度も起こしている。


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スペインが国力を弱めた理由は?

最近、世界史の本を意識的に読むようにしています。歴史から私たちは多くのことを学べます。歴史は繰り返すという特性がありますから、私たちは歴史を学ぶことで、失敗を防げます。アランは「人類史は記号の歴史、つまり宗教の歴史である」と述べていますが、大村大次郎氏のお金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」 を読んでいると、実は歴史は「財政問題の歴史」であると言い換えたくなります。16世紀にポルトガルと共に世界を二分したスペインも財政問題により、イギリスに覇権を譲りました。

1556年にスペインの王位を継いだフェリペ2世は、アメリカ大陸などの広大なスペインの版図を相続しましたが、引き継いだ負債はそれよりも大きかったと大村氏は指摘します。その後のフェリペ3世はさらに悲惨で王位を継承した時点で、歳入の8倍にも及ぶ負債を抱えていました。

アメリカ大陸から、ヨーロッパ経済を変革させるほどの金銀を持ちこみ強国になったスペインでしたが、彼らは度重なる戦争によって、負債を大きくしていたのです。イギリス、フランスなどのヨーロッパ諸国やオスマン・トルコとの戦争による支出や、無敵艦隊を維持するための支出がスペインを弱体化させたのです。強力な軍隊があっても財政が破綻すると国家の力は弱体化するのです。ちなみに、無敵艦隊の維持費は1572年から1575年の間に1000万ダカットかかってましたが、スペインの歳入は年間500万~600万ダカットに過ぎなかったことがわかっています。

スペインは宗教政策によって、経済を悪化させてしまいました。スペインは、カトリックを国教とし、プロテスタントや他の宗教を許しませんでしたが、それが、プロテスタント系のイギリス、フランスとの戦争の原因になりました。16世紀終わりにスペインの一部だったオランダが独立したのも、宗教政策がきっかけになりました。当時のオランダは、世界でももっとも裕福な地域であり、オランダからの税収はスペインの財政の柱になっていたのです。しかしプロテスタントが多かったオランダは、スペイン政府との戦いを重ね、やがて独立を果たします。

スペインは、1492年には「ユダヤ教徒追放令」という最悪の選択をすることで、経済にダメージを与えます。財政に長じていたユダヤ人を追い出し、スペイン財政を大きく悪化させてしまったのです。貿易、金融を取り仕切り、世界中にネットワークを持つユダヤ人がいなくなったことで、スペインは金融でも問題を抱えてしまったのです。

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消費税がスペインの景気を後退させた?

スペインは財政を好転させるために、最悪の納税システムを選択する。アルカバラと言われる「消費税」の一種である。スペインの消費税アルカバラは、中世のころイスラム圏から持ち込まれたものだ。大航海時代のスペインは、このアルカバラを税収の柱に置いていた。当初は、不動産や一部の商品の取引にだけ課されていたが、次第に課税対象が拡大し、食料品など生活必需品にも課せられるようになった。

消費税は、現在でも国の景気を後退させる作用があると著者の大村氏は指摘します。確かに日本も消費税導入後、経済成長がとまり、国民の生活が苦しくなっています。

当時のスペインの消費税アルカバラのシステムはひどいもので、国民を苦しめました。当時のスペインの消費税アルカバラは、一品ごとではなく、なんと取引ごとに課税されていました。製造業者が卸売業者に販売するときにも、卸売業者が小売業者に販売するときにも、小売業者が消費者に販売するときにも消費税がかかりました。一つの商品に、取引業者の手を経るごとに消費税が累積される最悪のシステムだったのです。

累積された消費税は、商品の価格に上乗せされる。国王側としては、このシステムによって税収が増えることになる。だが、一つの商品にこれだけ高い消費税が課せられるということは、当然、物価は上がるし、景気は低迷する。実際、大航海時代のスペインでは、物価が大幅に上昇している。

物価が上昇すると、商品が他国に比べて割高になり、スペイン産品が輸出しにくくなります。その一方で、安い輸入品が国内で出回り、その結果、スペインの国際収支が悪化したのです。南米のポトシ銀山から運ばれてくる大量の銀も国際収支の決済と、国王の借金の返済のために使われ、スペインを素通りしました。スペインの国際収支悪化、財政悪化は、スペインの海運業にも深刻な影響をもたらしました。

16世紀後半までスペインは、イギリスやフランスの2倍の商船隊を持っていた。それが、かの「無敵艦隊」の礎となっていたのだ。しかし、17世紀になると、船舶数で75%以上の激減となり、スペインの港は外国船に占められるようになった。スペインの造船業も、ほぼ壊滅してしまった。当時の海軍というのは、日頃は商船として使用している船舶を、戦時には軍艦として利用することも多く、海運業の衰退はすなわち、海軍力の衰退を意味した。

スペインの無敵艦隊が急速にその力を失っていったのは、スペインの海運業が衰えたためだったのです。経済と財政の悪化が、スペインの国力を弱め、無敵艦隊にも影響を及ぼしました。そして、急速に力をつけていたイギリスとの戦い(アルマダ戦争)に敗れたスペインは、歴史の表舞台から姿を消してしまうのです。

スペインの歴史が現代の日本に酷似しているように感じるのは私だけでしょうか?日本の未来がこのスペインのようにならないことを祈ります。

まとめ

財政政策を間違えると国力はあっという間に衰えてしまいます。強い国は財政システム・徴税システムなどがしっかりと整っています。逆に、戦争などで支出を増加させると財政が破綻し、国力を弱めてしまうのです。南米の銀山を押さえ、無敵艦隊で世界を牛耳ったスペインも国際収支の赤字によって、歴史の表舞台から姿を消してしまったのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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