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世界観をつくる 「感性×知性」の仕事術
著者:山口周、水野学
出版社:朝日新聞出版
本書の要約
問題が希少化しつつある現代の世界においては、まず「世界観を構想する」ことが非常に重要になります。そして、その世界観を他者に伝えるためには、アートやデザインなどの視覚表現が極めて強力なツールになるのです。自分なりの世界観を持ち、それを表現することを自分のスキルにしましょう!
世界観を作れる企業が生き残る!
ビジョンがなぜ大事なのかといえば、それは「問題をつくる」ためだということになります。(山口周)
こういう世界を実現したら素晴らしいという世界を構想し。実現できるビジョンを提示できる会社が強い会社です。アップルは1987年に未来のビジョンを映像で提示しました。彼らは新しいものを生み出すためには、過去を反映するテキストではなく、映像という表現を用いることで、過去の概念を断ち切ったのです。
ビジョンを提示すること、新たな問題を発見するためには、アートやデザインを意識する必要があります。山口氏は問題を「ありたい姿と現在の姿のギャップ」と定義します。 私たちが 「ありたい姿」が明確に描けていれば、 そこに必然的に「問題」が生まれてきます。 しかし、現在の社会において、 多くの領域で「問題」が希少化しているというのは、 『私たちの社会や組織が 「新しい世界を構想する力」を失ってきている』 と考えた方が良さそうです。
問題が希少化しつつある現代の世界においては、まず「世界観を構想する」ことが非常に重要になります。そして、その世界観を他者に伝えるためには、アートやデザインなどの視覚表現が極めて強力なツールになるのです。今後、私たちが求められるのは、「世界観」になります。自らの世界観を持って、仕事をしなければなりません。ヨーゼフ・ボイスがいうように「世界という作品の制作に関わるアーティスト」になることで、新たな課題を発見できるのです。自分なりの世界観を持ち、それを表現することが、これからのビジネススキルになるのです。
山口氏は水野氏との対談の中で、過剰というキーワードをあげています。
現在の世界において「何が過剰で何が希少なのか」という論点です。これって当たり前のことで、「過剰になったモノ」の価値は下がるし、「希少になったモノ」の価値は上がるということです。
私たちは「問題=困っていること」を解決するために、お金を払ってモノやサービスを購入しています。その結果として発生しているのが「正解の過剰化」という問題が起き、モノやサービスが売れなくなっています。世の中に問題が少なくなっている中では、課題を自ら見つけ出し、どのような価値を提供できるかを考えるべきです。
現在は「便利さ」の価値が下がってきているにも関わらず、日本の企業の「価値の認識」は昭和のままで、すでに価値のなくなっている分野で勝負しています。価値のなくなっているモノやコトではなく、新たな価値を見出し、顧客に選ばれる存在にならなればならないのです。過去の成功体験の「オッサン」思考を捨てない限り、日本の企業は変化できないのです。
モチベーションが全てをひっくり返す時代!
GAFAは新しい会社で最初は小さかった。彼らが出てきたとき、大手も同じことに手をつけていて、カネも、人も、ブランドもある有利な立場にいたわけです。それなのに、結果としてベンチャーに負けています。これは大手にはモチベーションがないからで、モチベーションがすべてをひっくり返す時代になっていると思いますよ。
世の中が激変し、ベンチャー企業が一気に巨大企業を打ち負かせるようになってきました。デジタル・ディスラプターが新しいルールのもと、一気にマーケットを生み出します。人とモノとカネがなくとも、 モチベーションがああれば、ディスラプターとして君臨できるようになったのです。
現在は金利も下がっていますし、 ありとあらゆるテクノロジーにアクセスできるので、 大企業とベンチャーの差がなくなっています。ありとあらゆるモノが溢れている状態で 「ハングリーになれない人」だらけの世の中では、 モチベーションが強みになるのです。
大企業でも、役に立つ世界で勝負していると、顧客から不要だと見做されてしまいます。意味のある世界にシフトし、価値を提供できるようにすべきです。
この先は「意味の世界に行かなくちゃヤバいぞ」とスイッチを切り替えてブランド化する会社と、今までの「役に立つ世界」の延長線上でずるずるやって消えていく会社に分かれるでしょう。イギリスの自動車メーカーと同じようなことが起こったのがサンヨーでありシャープだと思います。
私たちがいる世界(=社会)はどんなものかを認識し、今後ある世界はこうだという提示できるように、 知性と感性を融合させた“ビジネススキル”を持たなければ、モチベーションのあるディスラプターとの戦いに破れてしまいます。 また、役に立つという価値観では、GoogleやAmazonには勝てませんから、自分らしい意味を作り、価値を転換させる必要があります。
本書では、巨人パナソニックとバルミューダを比較しています。マスをターゲットにする勝負では、当たり前ですがパナソニックが圧勝します。しかし、バルミュダーは、他社製品に比べ10倍の値段がついたトースターを売り出すことで、10年間で1000%成長しています。機能ではなく「意味がある」というニッチな家電で追求し、シンプルなデザインを世に問うことで、ァンを増やしていきました。SNSを使って、世界中のニッチに商品を売ることで、マーケットを創造し、勝ち組になったのです。
本書で著者たちは3つのスキルの重要性を語っています。
1、意味をつくり、価値を転換させる
2、物語をつくり、シーンを演出する
3、文脈をつくり、情報表現を適正化する
未来を描ける力を養い、「意味」をつくり、世界観を描けるようになれば、素晴らしいプロダクトやサービスを生み出せます。こうだったらいいなという未来を具体的にイメージし、それを実現するために、自らの世界観を圧倒的な精度でつくりあげましょう。自社の世界観をプレゼンテーションすることで、顧客が意味があると感じるようなストーリーを語れれば、顧客が自ら探しにきてくれます。
広告はいま、過渡期を迎えていますね。情報が溢れているから、みんな自分にとって価値がない情報は脳内でシャットアウトする癖がついている。出稿量の多いCMですら、「見た記憶はあるけど、肝心の『何のCMだったか』は覚えていない」という現象が増えています。でも反対に、自分にとって「意味がある」と思ってくれれば、自ら検索してわざわざ情報を取りに来てくれます。(水野学)
水野氏がクリエイティブディレクターをつとめる相鉄ではTVCMをやめ、「100YEARS TRAIN」という動画を作ることにしました。役に立つ情報を極力排除し、世界観を伝えることで、顧客は感動し、SNSでシェアされることで、相鉄のブランドイメージは一気に上がりました。
共感の時代に生きる私たちは、自分の世界観を語ることがますます大事になってきました。山口氏と水野氏の対談を読むことで、ストーリーの力を再認識できました。
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