井上一生氏の会社を辞めて起業する前に読む本の書評


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会社を辞めて起業する前に読む本
著者:井上一生
出版社:ファストブック

本書の要約

成功する経営者は起業する際に、徹底的に自分との対話を重ね、起業のアイデアを練り上げます。自分のすべてのエネルギーと時間を経営に投入しなければ、利益をあげられません。彼らはビジョンを熱く語り、顧客をファンにすることで、成功を手に入れたのです。

税理士が見つけた成功する起業家の共通点

起業した会社が、10年後まで生き残っている確率を「企業生存率」と言います。さまざまなデータを見ると、10年後の生存率は10%〜30%程度だとされています。なぜこれほどまで、会社は生存できないのか? その多くの原因は、利益が出ないことです。継続して利益を出し続けなければ、会社は生き残ることはできません。なぜなら事業は、無手勝流の思いつき経営では成功は難しく、起業とは、倒産=失敗へと招く強い3つの向かい風に立ち向かう形で旅立つからです。(井上一生)

税理士だけでなく、Sakura United Solutionの代表として活躍する井上一生氏は、様々な経営者と付き合う中で、成功する経営者と失敗する経営者の違いに気づきます。多くの起業家が10年以内に消える中で、成功する経営者は、創業時から継続して利益を生み出す仕組みを作り、しっかりとキャッシュを稼いでいました。彼らは創業時に襲う3つの向かい風に立ち向かうことで、経営の基盤を整えていたのです。

■起業家を襲う3つの向かい風
・初期投資(借入返済)、固定費(経営者の生活費を含む)の向かい風
・時代変化対応とライバルとの競走、それを乗り越える向かい風
・会社の維持にかかる手間と時間を消費する向かい風
この3つの逆風を乗り越える充分な推進力=利益を出さなければ、経営者は失敗の奈落に突き落とされてしまうのです。

成功する経営者は起業する際に、徹底的に自分との対話を重ね、起業のアイデアを練り上げます。自分のすべてのエネルギーと時間を経営に投入しなければ、結果を出せません。体力、経験、知識、得意、資格、地縁、血縁、人脈、コネクション、学歴、出身企業、看板、アライアンス、インセンティブ、センス、感性、見た目…ありとあらゆる経営資源を総動員して、起業当初の目標を達成しなければなりません。

クールヘッド バット ウォームハートで、世の中の課題を解決する!

私は還暦を過ぎてから、新しいビジネスのモットーを「クールヘッド バット ウォームハート」と決めました。正直にいうと、私はロジカルにものを考えるよりも直感で決めていることが昔から多いのです。だから、クールヘッドであるべきだと自分に言い聞かせようとしているのでしょう。

イギリスの経済学者、アルフレッド・マーシャルは、「経済学者は冷静な頭脳と温かい心を持たねばならない」という名言を残していますが、著者はこの言葉を自分の若い時に実践できればよかったと述べています。ケンブリッジが世界に送り出す人物は、冷静な頭脳と温かい心をもって、自分の周りの社会的苦悩に立ち向かうために、その全力の少なくとも一部を喜んで捧げるべきだとマーシャルは考えたのですが、井上氏は起業家や経営者もこの姿勢で経営にのぞむべきだと言います。

経営者はモノに依存する志の低い夢ではなく、経営を通じて、世の中に貢献しなければなりません。「社会の中で、自分の仕事がどんな価値があるのか」という自己実現によって、他者から感謝され、その結果、お金を稼げるようになるのです。著者は、起業してから25年ほど経ってから、この事実に気付いたそうです。

当たり前ですが、経営者にはビジョン(志)が欠かせません。自分の価値を提供し、世の中をどうよくできるか?を徹底的に考え、言語化し、それを周りに語ることで、良いご縁に恵まれます。

志とは、財務諸表に表すことができない企業の崇高な事業目的そのものです。仕事ですから利益を出すのは当然のことです。利益の出ないビジネスは、継続できません。継続できないビジネスに投資する人はいません。利益を出すこと自体は、事業の目的ではありません。手段そのものです。目的は何か?それが志です。それが経営者としてのあなたの器そのものです。

世の中に貢献することで、人はあなたの人間性=器に感服し、共感してくれます。事業のロマンとビジョンを語ることで、周りの人をに巻き込めるようになります。 成功する起業家は、周りの方々の協力を得て、世の中に役立つ事業を起ち上げているのです。

その上で、著者は若い頃の自分に3つのアドバイスをしています。
アドバイス① 「準備をしっかりしろ!」
起業前にお客様を見つけるための準備を怠らないようにしましょう。営業上手なメンターやロールモデルを探しておき、結果を出せるようにするのです。お客様を惹きつける強い武器を作ることで、スタートダッシュが切れます。

アドバイス②「とにかくお金をかけるな!」
創業時の無駄遣いは厳禁!モノを買うなら、中古も含め、一円でも安いものを探すようにすべきです。

アドバイス③ 「小さく始めろ!」
固定費は悪だと捉え、とにかく身軽でいることです。オフィスを借りるなら、身の丈に合わせてヤドカリのようにオフィスを変え、同業の先輩や親族にパラサイトすることもよしとしましょう。

起業する前に、副業で自分のビジネスの可能性を試すことが大事だと著者は言います。私も数年間副業をしながら、自分のビジネスを磨き、これで大丈夫だと思ったタイミングでようやく独立することを決断しました。もし、起業を考えているなら、独立する前に本書を活用し、本当にやりたいことをメモ欄に書き出すとよいでしょう!ビジョンや計画を自分の頭で整理しながら準備を行うことで、起業の成功確率をアップできるはずです。

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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