習慣がマーケティングを変える?カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-の書評


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カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-
著者:博報堂 ヒット習慣メーカーズ 中川悠編集
出版社: 秀和システム

本書の要約

本書では商品・サービスを開発するための思考プロセスをPAC(Prediction/Addiction/Conversation)と言うフレームワークで整理しています。顧客との関係を維持し、商品を習慣化させるためには、きっかけ、ルーチン、報酬、触媒の4つの要素を活用し、習慣のループを作り出すべきです。

PACフレームワークで、顧客に商品を習慣化させよう!

「習慣化」こそ、これからの時代における最強のマーケティングツールである。(中川悠)

習慣をビジネスに取り入れる動きが加速しています。ついつい買ってしまう仕掛け(習慣)を作ることで、顧客との関係を長くでき、売り上げの持続性を高められます。商品を習慣化させることで、顧客との関係が長くなり、売り上げの持続性を高められます。既存顧客をファンにすることで、口コミが起こり、新規顧客も獲得できるようになるのです。その結果、企業のマーケティングコストは低減できます。

実際、日常行動の40%は習慣によって占められています。このルールを活用することは、企業ばかりでなく、顧客も求めています。良い商品が見つかれば、商品選択時に無駄な時間を使わなくて済みます。

博報堂の中川悠氏のグループは、これからの商品・サービスを開発するための思考プロセスをPACと言うフレームワークで整理しています。企業はこのフレームワークを使えば、新しい習慣を顧客に定着できます。習慣化=予測+設計+拡散と言う公式で説明できます。以下、PACの3つのステップを見ていきましょう。
■Prediction(兆しを予測する)
■Addiction(魅力の設計)
■Conversation(話題の拡散)

(1)Prediction 習慣を予測する
世の中で起こっている大小さまざまな習慣を捉え、次に来る習慣を予測するというものです。習慣にはトレンドがあって、これから広がるであろう「兆し習慣」と、縮小傾向になってきた「衰退習側があります。まずは「兆し習慣」を探し、その裏にある「衰退習慣」をあぶり出します。そして、「兆し習慣」の中心にいる人たちを探り、その習慣を続ける理由=「習慣インサイト」を深掘りしていくのです。

(2)Addiction 習慣を設計する
Predicdonであぶり出した「兆し習慣」と自社の商品やサービスを組み合わせた際に、新しくどんな習慣がつくれそうなのか?という観点で「習慣化コンセプト」を考えます。継続してもらうための習慣化ループ、「習慣化4P(Product,Price,Place,Promotion)アクション」をつくることで、商品や売り方まで変えてしまいます。コンセプト、ループ、アクションの3つのステップで習慣化を設計します。

(3)Conversation 習慣を広げる
生活者同士の会話をつくるということで、習慣が周りに広がります。まずは、発信者を増やすために「局所を攻める」ことを狙います。そのあとに、受信者に広げる「マス(大人数という意味)を攻める」という2つのアプローチで考えます。

習慣化でもっとも重要な「触媒」という考え方

習慣化ループは以下の4つの要素に分解されます。
1、きっかけ
2、ルーチン
3、報酬
4、触媒

歯磨き粉の歴史を振り返りながら、この習慣のループについて考えてみましょう。

1、きっかけ
20世紀初頭の米国には歯を磨く習慣がなく、虫歯が蔓延したため、口腔衛生に対する意識の低さが国家的な問題だと政府が公式見解を出したほどでした。この政府の注意喚起によって、米国中で口腔衛生に関する問題意識が高まったことは歯磨き習慣が広がる1つのきっかけになりました。

歯磨き粉の場合は、「朝起きてすぐ」「夜シャワーを浴びた後」など人によってさまざまなきっかけがありますが、ペプソデントは「歯に膜を感じる(歯がヌルヌルする)とき」に歯磨きをすることを推奨する広告を行っていました。「歯に膜があるかを確かめる」という直前の行動を促すことで毎回の歯磨きのきっかけをつくり出したのです。

2、ルーチン
ルーチン化のためには、行動の単位を小さくすることです。アクセスシビリティを高め、移動距離や時間を短縮することも大事です。当然、低コストも習慣化の鍵になります。歯磨き粉のルーチンは、「歯磨き粉をつけて歯を磨く」と言うシンプルかつ低コストでできることだったので、多くのアメリカ人が歯磨きを習慣として取り入れたのです。

3、報酬
報酬=何かしらのメリットがないと人の行動は続きません。歯磨きには、歯が美しくなり、健康になれると言う報酬があります。この報酬がわかりやすく、魅力的でなければ、人は商品を習慣化してくれません。

4、触媒
歯磨き粉では香りが失われても商品の機能的価値に変化しません。ミントの刺激を入れ込むことで体験の習慣化が著しく促進されるものがありますが、本書では触媒と読んでいます。ついついやってしまう中毒性を商品に埋め込む(触媒を作る)ことを私たちは忘れてはいけません。歯磨き粉のミントの刺激が、実は歯磨き粉の習慣化に大きな影響を及ぼしています。人間の脳の動物脳(五感)を刺激することで、商品への中毒性が高まっていくのです。

最初は「報酬」を得るべく、「きっかけ」から「ルーチン」を人間脳が意識的に行っています。まだこの段階は、嫌になってやめてしまったり、うっかり忘れてしまったりするので、続ける辛抱が必要です。でも、繰り返すうちに、動物脳を刺激する「触媒」(ラットの場合はチョコレートの甘い匂い)の中毒性が高まってきて、次第にそれを無意識的に欲してくる。そうすることで行動が自動化して、習慣として定着していくのです。

この触媒こそが、習慣化の生命線なのです。歯磨き粉のミント、炭酸水の強炭酸など意味がないにも関わらず、消費者に強いインパクトを残し、習慣化させる触媒を商品化する時に付け加えることを忘れないようにしましょう。触媒は低コストながら、習慣化においてもっとも効果のある手法なのです。

本書には、このブログでもおなじみのチャールズ・デュヒッグの習慣の力スティーヴン・ガイズの小さな習慣が紹介されています。この一冊を読むことで、習慣化とマーケティグを一気に学べる仕掛けも嬉しいです。また、著者たちのヒット習慣予報と言うブログから最新の学びを得られるので、定期的にチェックしましょう!

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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