西村友作氏のキャッシュレス国家 「中国新経済」の光と影の書評

「オフライン企業はオンラインへ、オンライン企業はオフラインへと歩み寄り、それを近代的物流でつなぎ合わせることで、初めて真の新しい小売りが実現できる。(ジャック・マー)

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アリババとテンセントが変える中国社会

今年の1月、ラスベガスで行われた世界最大の家電ショーCESでのアリババや京東(ジンドン)の展示に、私は大きな衝撃を受けました。日本ではアマゾンのイノベーションが話題になっていますが、実はそれ以上にアリババや京東のテクノロジーは進化していたのです。

それ以来、私は中国ITカンパニーの動向を積極的にチェックしています。対外経済貿易大学教授の西村友作氏のキャッシュレス国家 「中国新経済」の光と影もタイトルに惹かれ、迷うことなく購入しました。今日はアリババやテンセントの最新の動きを本書で学びながら、日本がやるべきことを考えてみたいと思います。

中国では、リアルの伝統的小売り店舗とデジタル空間のECを、最先端の物流技術を使って融合させる動きが加速しています。 アリババのスーパーマーケット「盒馬鮮生」(フーマー)は、2019年3月現在北京で20店舗が運営されています。

フーマーでは、配送先が店舗から3キロ以内であれば、スマホで注文すると最短30分で商品がデリバリーされます。この速さのカギは効率的に設計された店舗にありました。フーマーの店舗の天井にはレールが張り巡らされ、バッグを片手に店員が店舗内を走り回っています。オラインから注文が入ると店員が専用端末に表示された商品を素早く探し出し、バーコードをスキャンしてバッグに詰め込みます。商品のピックアップが完了したら、所定の位置にバッグをセットし、ボタンを押すとレールを伝ってバックヤードへと吸い込まれていきます。バックヤードで袋から発泡スチロールの箱に詰め替え、ベルトコンベアを使って配達員が待つエリアへ運ばれます。配達員は指定された荷物を運び出し、電動バイクの荷台にセットして配達へに出かけます。

店舗がオンライン・ショッピング用の「物流センター」の役割を担うことで、配達のスピードアップを実現しているのです。 店内には一般的なレジは無く、セルフレジか「決済係」と書かれたタスキを掛けた従業員が支払いまで対応してくれます。イートイン・スペースでビールが飲みたくなったら売り場から取ってきて、その場で支払えばよいのです。

商品棚に貼られたQRコードをスマホでスキャンすると、商品情報などをチェックできます。鮮魚コーナーでは活魚水槽が設置されており、魚、エビ、カニといった生きた魚介類をその場で調理してもらい店内で食べることができます。フーマーの店舗は「売り場」「物流センター」「レストラン」の3つの機能を兼ね備え、顧客満足を高めているのです。

テンセントが筆頭株主となっている京東も似たようなスーパー「7 FRESH」を運営しています。仕組みはフーマーとそっくりですが、決済手段は異なります。アリババが運営するフーマーではウィーチャットペイでの支払いはできず、テンセント系の 7 F R E S Hではアリペイは使えません。 このようにテンセントとアリババという二大プラットフォーマーは様々な分野で激しい競争をしています。

そして、この2社はライドシェアの分野でウーバー・テクノロジーズを中国から追い出してしまいました。中国市場において圧倒的なシェアを誇るのは「滴滴出行」というサービスです。ソフトバンクビジョンファンドが出資するこの企業は激しい競争によって生まれました。

中国での配車サービス市場は2013年頃から急拡大し、多くの企業が参入して激しい競争が繰り広げられました。テンセトが出資する「滴滴打車」とアリババの「快的打車」は市場シェアを獲得するために、ドライバーには助成金を配り、乗客には割引料金を適用しました。実質的な値引き競争が繰り広げられることで、多くの新興企業は次々と淘汰されていきました。結局、2015年2月に両社は合併し、ウーバーを駆逐したのです。 ウーバーは「滴滴出行」の株主となり、中国から撤退せざるをえなかったのです。

滴滴出行は、顧客のニーズに応じて異なるタイプのサービスを提供し、顧客満足を高めています 。北京では 、グレ ードの高い順番に「豪華車」 (最高級車)、 「礼橙専車」(中高級車)、 「快車」(中低級車) の3種類のサービスがあり、それぞれ料金が異なります。

料金の安い、「快車」ではタクシーとほぼ変わりませんが。「礼榿専車」などはサービス向上につとめています。タクシーよりも数段グレードの高い車の後部座席には無料のミネラルウォーターが用意されています。シャツにネクタイ姿の運転手の対応も極めて丁寧で、日本人駐在員にも人気になっているそうです。

ライドシェアでは需給状況に応じて価格を変動させる「ダイナミック・プライシング」が採用され、利用者が多く空車が少ない時は料金が上がります。これによりピーク時のタクシー争奪戦は減り、中国人は移動の苦痛から解放されたのです。

中国では短期間でイノベーションを起こし、あっという間に世の中を変えることが当たり前になっています。この変化のスピードを学ばないと日本は周回遅れとなり、中国の2大プラットフォームに飲み込まれてしまうかもしれません。

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中国で短期間でイノベーションが起こる理由

経済成長が著しい中国では健康ビジネスが盛んになっています。その一つがフィットネスジムで、ここでもイノベーションが起こっています。モバイル決済による無人化が進んでいる中で、無人のジムボックス「觅跑(ミーパオ)」というサービスが始まっているのです。約2畳程度の大きさのボックスの中に、ランニングマシーンが1台設置してあり、24時間いつでも利用可能です。99元(約1600円)のデボジットを払うと、1分0.2元(約3.2円)で使えます。 このジムボックスを使用するにはスマホにアプリをダウンロードし、名前や性別、電話番号などの個人情報を登録することが求められます。

アプリを立ち上げると、地図が見れ、現在地付近のジムボックスの使用状況や故障状況を確認できます。10分前から予約が可能で、現在地から最寄りのボックスまでの距離、歩いた場合の予測到着時刻を教えてくれます。ボックスに到着したらドアにプリントされているQRコードをスキャンして解錠すると、室内の電源が入り、タイムカウントが始まります。運動を終えたらスマホで決済するだけです。電源が自動でダウンし、ドアにロックがかかり、一切人手がかかっていません。中国では小売りやサービス業での無人化が進んでおり、無人消費市場は今後、さらなる拡大が期待されています。

カラオケボックス(KTV)でも無人化・ミニ化が進んでいます。最近では「迷你KTV」(ミニカラオケ)と呼ばれる1~2人用の無人力ラオケボックスサービスがスタートしています。ウィーチャットで登録し、スマホ側で料金プランを選択します。料金はウィーチャツトペイを使って、その場で支払えます。登録したウィーチャットに自分が歌った楽曲の履歴と録音された自分の歌声が送られてくるのがこのサービスの特徴です。歌った楽曲をまとめてアルバムを作ったり、ネット上にアップして、他者と共有できるのです。ちょっとした隙間時間を楽しむ無人サービスが中国で次々生まれています。中国の「新経済」のエコシステムは、日々その姿を変えながら発展しているのです。

中国では政府主導でイノベーション型国家の建設を推し進めています。過去に事例がない「新経済」分野においては、細かく国家が指導するのではなく、環境を整備して、自由に経済活動をさせています。この環境を優秀なリーダーが活用することで、中国のイノベーションが加速しています。

「中国新経済」でイノベーションが生まれる要因の一つに、チャンスがあればリスクを恐れず果敢にチャレンジする成功に飢えたリーダーたちの存在がある。(西村友作)

アリババの創業者・ジャック・マーや、テンセントのマー・ホワトンがその代表格です。

世界一の人口を有する中国は、多くの優秀な人材を国外から呼び戻し、一気にイノベーションを進めています。人材の層が厚くなり、起業する人数も増加することで、良い循環が生まれています。テンセントやアリババが投資することで、ブレークスルーも起こりやすくなっています。

イノベーション企業の特徴はとにかく「早い」ことだ。リーダーによる迅速な意思決定のもとで事業が進んでいくので、スタートが早く変化にも素早く対応できる。新たに発見した、競争相手の少ないブルーオーシャン市場にいち早く参入し、「先行者利益」を得るためには、製品の完成度が高まるのを待ってからスタートしていては間に合わない。過去に類を見ない事業は何が正解か誰も判断できないため、とにかくやってみるしかない。また実際に始めたとしても、目まぐるしく変化する環境やユーザーの嗜好にスピード感をもって対応できなければ淘汰されるリスクは高くなる。だから、そうしたイノベーション企業は、ユーザーのコメントやフィードバック、ロコミから問題点を見つけ出し迅速に改善を繰り返している。

中国の起業家はスピーディーに行動し、顧客からのフィードバックを受けることで、短期間でイノベーションを起こしました。彼らは誰もやったことのない分野で先行者利益を得るために、新たなアクションを起こし、ユーザーからフィードバックを得ています。その結果、短期間でマーケットを創造できるのです。

まとめ

中国では政府と民間が連携しながら、イノベーションを起こしています。アリババのジャック・マーとテンセントのマー・ホワトンらのリーダーが中国の課題を解決するために、絶えずしのぎを削っています。中国の起業家はスピーディーに行動し、顧客からのフィードバックを受けることで、短期間でイノベーションを起こしました。この姿勢を日本のベンチャー経営者も見習うべきです。

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