1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教えの書評

独裁者になっても仕方がない。ああしろこうしろと指図するんじゃない。同じ部屋で一緒に過ごして、自分は大事にされていると、部下に実感させろ。耳を傾け、注意を払え。それが最高のマネジャーのすることだ。(ビル・キャンベル)


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1兆ドルコーチのビル・キャンベルとは誰か?

ビル・キャンベルをご存知でしょうか?ビルは1兆ドルコーチと呼ばれた伝説のコーチで、彼の教えを受け、成功した経営者たちの名前を知れば、その偉大さがわかります。彼の教えを一冊にまとめた書籍1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教えが、日本でもついに発売されました。実は本書の英語版であるTrillion Dollar Coachをコーチの新堀進さんから薦められていましたが、日本版が出るのを待っていました。本当に良い本で、経営者やリーダーは、ビルのメソッドを実践することで、組織を強くできます。早速本書を紹介していきます。

ビルは名門コロンビア大学に進学し、弱小だったアメフトチームのキャプテンをつとめ、短期間のうちに強豪チームに変えてしまいます。その後、同大学のアメフト部のコーチになりますが、結果を残せず、西海岸に移り、ビジネスコーチに転身します。

彼は仲間をハグし愛情表現していましたが、時には相手を口汚くののしることもあったそうです。この人間らしさが彼の魅力となり、経営者はみな、ビルを受け入れ、彼の教えを経営に取り入れたのです。 スティーブ・ジョブズはビルとの散歩を楽しみ、彼のコーチングによって、アップルを強い会社に変えていきました。

ジョブズが1985年にアップルを追放されたとき、ビル・キャンベルはそれに抵抗した数少ない幹部の一人でした。ビルはスティーブを擁護し、次のように述べたと言います。

スティーブを会社にとどめなくては、あんなに才能のあるやつを手放すわけにはいかない。(ビル・キャンベル)

1997年にアップルに復帰してCEOに就任すると、スティーブは新しい取締役の一人にビルを指名しました。スティーブは彼の人間性に惚れ込み、彼のアドバイスを受け入れたのです。

ビルは、スティーブ・ジョブズ、エリック・シュミット、ラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリン、ベン・ホロウィッツ、マリッサ・メイヤー、チャド・ハーリーなどの錚々たる経営者をコーチし、彼らのチームを成長させました。

ビル・キャンベルは1兆ドルにも値するコーチだった。いや、1兆ドルは彼が生み出した価値に遠くおよばない。彼はスティーブ・ジョブズがつぶれかけのアップルを立て直し、時価総額数千億ドルの会社にするのを助けた。ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、エリックがスタートアップだったグーグル(現アルファベット)を時価総額数千億ドルの企業にするのを助けた。これだけでも1兆ドルを大きく超えているが、ビルがアドバイスした企業はほかにも数知れない。その意味で、ビルは史上最高のエグゼクティブコーチだった。(エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル)

グーグルの元のCEOのエリック・シュミットは自分のプライドが邪魔し、コーチを置くことに抵抗を感じていました。しかし、彼はビルの人間味溢れるコーチングによって、すぐに考え方を変えます。エリックは毎週彼のコーチングを受け、ラリー・ぺイジやグーグル幹部にビルを紹介します。ビルはエリックが毎週開催するスタッフミーティングに参加し、経営者だけでなく、チームを変えるためのコーチングを行いました。

 

週末の話しを聞くことからコーチングを始める理由

企業が速いスピードとイノベーションを実現するためには、「スマート・クリエイティブ」と呼ばれる新しいタイプの人材が欠かせません。スマート・クリエイティブとは、専門性とビジネススキル、創造力を兼ね備えた人材で、現在のような変化の激しい時代には、彼らの力を借りながら、すばらしいプロダクトを生み出し続ける必要があります。経営者はスマート・クリエイティブを引きつけ、彼らが成功するための環境をつくりださなければなりません。ただし、このスマート・クリエイティブだけでは、企業を成長させられないことがわかっています。

著者たちは、スマートクリエイティブを活かすためのコミュニティの重要性を指摘します。

企業の成功にとって、スマート・クリエイティブを生かす環境と同じくらい重要な要素がもう一つある。それは、さまざまな利害をまとめ、意見のちがいは脇に置いて、会社のためになることに個人としても集団としても全力で取り組む、「コミュニティ」として機能するチームだ。人は職場の協力的なコミュニティの一員だと感じると、仕事に対する意欲が高 まり、生産性が上がることが、研究により示されている。逆に、職場にそうしたコミュニティが欠落していることは、仕事での燃え尽きの主な要因になる。

高いパフォーマンスを上げるスマートクリエイティブは協調性がありません。彼らは頭が切れ、攻撃的で、野心的で、意志が強く、はっきりした意見を持つ、自尊心の高い人たちです。優秀なメンバーたちは内部競争を起こしがちで、「集団内」の対立がチームのパフォーマンスに悪影響を与えてしまいます。

「ライバルたちからなるチーム」をコミュニティに変え、足並みをそろえて共通の目標に向かわせなければ、企業は持続的な成長を実現できません。ほどよい緊張を保ち、良いコミュニティを作るためには、優秀なコーチが欠かせないと著者たちは言います。

最高のコーチは、すぐれたチームにさらに磨きをかける。ビジネスも同じだ。テクノロジーがあらゆる業界、消費者生活の隅々にまで浸透し、スピードとイノベーションがカギとなるこの時代、成功を収めるには、企業文化にチームコーチングを組み込むことが必須となる。力のある人たちを強力なチームとして束ねるには、コーチングに勝る方法はない。

ビルはアメフトで養ったコーチングスキルをビジネスに取り入れ、力を合わせて組織を強くする方法を経営者とメンバーに伝えました。ビルは、チームメイト間の緊張を一瞬で見抜き、チームコーチングによって問題を解決していったのです。

ビルはコーチングを始める際に、相手を緊張させないことを自らに課しました。家族のように相手をハグし、雑談でその場の空気を和ませたと言います。ビルは週末の旅の報告など仕事以外のプライベートな話題から、スタッフミーティングを始めました。

これには2つの目的がありました。1つは、チームメンバーが、家庭や仕事外の興味深い生活を持つ人間同士として、お互いを知り合えるようにするためです。もう1つの目的は、1人の人間としてミーティングに参加することで、力を発揮してもらうためです。全員が特定の職務の専門家や責任者としてだけでなく、1人の人間として、最初から楽しんでミーティングに参加できるようにすることで、チームは変わります。メンバーが組織の歯車ではなく、仲間であると感じることで、チームワークを生み出せるようになります。

その後本題に入り、経営判断について話し合う際には、専門分野に関係なく全員が意見を述べるようにしました。一人ひとりが自分の体験を語り、人間同士として交流するというこの単純なコミュニケーション手法が、じつは意思決定を改善し、仲間意識を高めるための手段になるのです。

ビルは「コミュニケーションが会社の命運を握る」と考え、「リーダーが理解していることを社員全員にしっかり理解させるべきだ」とグーグルの経営者に伝えました。会社の考えを十分理解されるまでには、何度か繰り返す必要があり、しつこくメッセージを伝えることで、組織を変えていったのです。

あらゆるマネジャーの最優先課題は、部下のしあわせと成功だ」という言葉をビルはリーダーに伝え続けました。部下を信頼し、敬意を払い、彼らを支援することがリーダーの重要な役割なのです。

どんな会社の成功を支えるのも、人だ。マネジャーのいちばん大事な仕事は、部下が仕事で実力を発揮し、成長し、発展できるように手を貸すことだ。われわれには成功を望み、大きなことを成し遂げる力を持ち、やる気に満ちて仕事に来る、とびきり優秀な人材がいる。優秀な人材は、持てるエネルギーを解放し、増幅できる環境でこそ成功する。マネジャーは「支援」「敬意」「信頼」を通じて、その環境を生み出すべきだ。「支援」とは、彼らが成功するために必要なツールや情報、トレーニング、コーチングを提供することだ。彼らのスキルを開発するために努力し続けることだ。すぐれたマネジャーは彼らが実力を発揮し、成長できるよう手助けをする「敬意」とは、一人ひとりのキャリア目標を理解し、彼らの選択を尊重することだ。会社のニーズズに沿う方法で、彼らがキャリア目標を達成できるよう手助けをする。「信頼」とは、彼らに自由に仕事に取り組ませ、決定を下させることだ。彼らが成功を望んでいることを理解し、必ず成功できると信じることだ。

チームを強くするためには、他人への共感がポイントになり、仲間への愛が欠かせません。シリコンバレーという競争の激しい世界にビルは「愛」を持ち込み、組織を変えていったのです。

まとめ

伝説のコーチのビル・キャンベルは、経営者は人中心の経営をすべきだと考え、コーチングを行いました。リーダーだけでなく、チームへのアドバイスを積極的に行い、グーグルなど多くの企業のチームワークを改善しました。シリコンバレーという競争の激しい世界に「愛」を持ち込み、ビルは緊張した組織をコミュニティに変えたのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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