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ひらめかない人のためのイノベーションの技法
著者:篠原信
出版社:実務教育出版
本書の要約
「知る」と「知らない」の境界線を明確にし、知識のギャップを埋めることで、自分の可能性を広げられます。「知らない」を「知る」に変え、「できない」を「できる」に変えることで、イノベーションを起こせるようになるのです。
「知らない」を「知る」ようにしよう!
創造的な仕事をする上で、不可欠で重要な作業。それは、「知る」と「知らない」の境界線を明確に自覚することだ。この境界線があいまいなままだと、何を知ろうとしているのかさえ分からなくなってしまう。(篠原信)
京都大学の農学博士の篠原信氏のひらめかない人のためのイノベーションの技法の書評を続けます。先日、明治大学の久米信行先生のベンチャー起業論でゲスト講師をしてきました。起業したい人のために、私が知っているイノベーションの知識について話してきました。彼らのレポートを見ると自分の「知らない」ことと知識のギャップを埋めるための次のアクションが書かれていました。若い世代の学びへの貪欲な姿勢に、自分の背中を押してもらえました。学生たちからのフィードバックから、多くの気づきをもらえたことに感謝しています。
著者の篠原氏が指摘するように、イノベーションを起こすためには、「知」の境界線を明らかにすることが重要です。私たちの周りには、巨大な「知らない」世界が存在します。その境を明らかにし、「知らない」を「知る」ようにすることで、見える世界が変わってきます。
知識を吸収し、体験を繰り返すことで、自分の世界が広がります。知識や体験のストックが増えることで、組み合わせが多様になり、斬新なアイデアが生まれるようになるのです。
イノベーションとは、「知らない」を「知る」に変え、「できない」を「できる」に変える作業だと言える。しかし、「創造的な仕事をしろ」と命じられたところで、いったいどこからどう始めたらよいのか、途方に暮れる人が多いだろう。そんなときは、知っているつもりのことを仔細に観察し、「知る」と「知らない」の境界線がどこにあるのか、突き詰めてみるとよい。たったそれだけのことで、イノベーションを起こすべき課題が見えてくる。
孔子は「之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らずと為す。是れ知るなり」という名言を残していますが、「知る」と「知らない」の境界線を明確に自覚すると、自然と知識を吸収しようとします。知らないことが明らかになることで、人はそのギャップを埋めようとします。
実験科学と観察科学をビジネスに取り入れよう!
科学には3つの異なる手法があると著者は言います
1、実験科学
実験で検証を重ね、新現象を把握し、新技術開発につなげる。
2、観察科学
観察しては仮説を立て、別の観察結果で検証することで、信頼性の高い「仮説」をあぶり出す。
3、理論科学
数学や理論物理のように、正しいとされる理論から論理を伸ばして新たな理論を構築する。
観察することで、未知の世界を既知の世界に変えることができます。この観察科学はビジネスの世界でも活かせます。たとえば、「人気のカフェを開店したい」と考えたなら、まずは、人気店をたくさん訪問して「観察」しましょう。観察することで、人気店にはこうした秘訣があるのではないか、と「推論」が働き、「こうした店づくりをすれば人気店になるかも」という「仮説」が思い浮かびます。その仮説が確かめるために、次に不人気店を訪れます。素晴らしい内装が成功の秘訣だと考えたにもかかわらず、お客が少ないことが「検証」できます。住民構成をチェックすると高齢者が多く、内装とのミスマッチが起こり、失敗していることがわかります(「考察」)。観察→推論→仮説→検証→考察を繰り返し、立地やターゲットの視点を加えるうちに、成功店のルールがわかるようになります。
観察→推論→仮説→検証→考察の科学の5段解法を繰り返すうちに、未知を減らすことができ、アイデアの幅が広がります。自分が間違えた時には間違いを素直に認め、仮説を紡ぎ直しましょう。実験と観察を繰り返し、「知らない」を「知る」に変え、「できない」を「できる」に変えることで、課題を解決できるようになります。
理論科学は絶対に正しいと信じると落とし穴に陥ります。今までの理論が全て正しいわけではありません。理論に頼るのではなく、実験科学と観察科学の手法を上手に取り入れ、科学の5段解法で物事を見るようにすべきです。「知らない」ことを減らし、「知る」を増やして、自分の可能性を広げましょう。
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