小林忠嗣氏の知的生産性向上システムDIPS(ディップス)の書評


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知的生産性向上システムDIPS(ディップス)
著者:小林忠嗣
出版社:ダイヤモンド社

本書の要約

「DIPS」は知的労働に従事する人たち(Intellectual People)の生産性を向上させる(Increasing Productivity)システムです。本書の5つのPの定理や防衛の30行動、創造の30行動などを実践することで、ビジネスパーソンのパフォーマンスは一気にアップします。

5つのPで仕事の生産性を高めよう!

依頼された仕事は、できるだけ早い時期に、合目的的に、ブレイクダウンし、自己のタイムスケジュールの中に組み込まねばならない。この時の優先順位(プライオリティ)を決定するには、『5つのP(プライオリティ)の定理』を活用すれば良い。(小林忠嗣)

ウイズ・コロナの時代、多くのビジネスパーソンは生産性を高めなければ、自宅で長時間仕事をすることになりかねません。テレワークが当たり前になる中で、短時間で結果を出すために、集中力を高める必要があります。また、業務を受ける際にもクライアントや上司、同僚とも十分な意思疎通を行わないと、信頼関係も崩れてしまいます。そんな時、今日ご紹介する「DIPS」というフレームワークが役立ちます。

「DIPS」は知的労働に従事する人たち(Intellectual People)の生産性を向上させる(Increasing Productivity)システム=「ダブルIPシステム」からDIPSと名付けられました。知的生産を高めるノウハウがこのDIPSには詰まっています。1990年代に活用されたフレームワークは、ウィズ・コロナの時代でも十分使えます。DIPSのフレームワークを活用することで、ビジネスパーソンのパフォーマンスは一気にアップします。今日は本書のノウハウを抽出して行こうと思います。

①5つのP(プライオリティ)の定理
5つのPの定理を活用し、仕事の受け方を工夫すると、知的作業の生産性が向上します。仕事の内容の吟味、スケジュール、納期の3つを明らかにし、業務の優先順位を決定することで、
■了解のP:仕事の依頼人やユーザーの了解が全てに優先する
(質、オーダー先の了解があれば、納期や業務の質も変更できる)
■節約のP:時間を節約する
■時刻のP:すでに決定している時刻・納期を守る
■埋め込みのP:空き時間に行う仕事をあらかじめ考えておく
■価値のP:迷うときは成果の確かなほうを優先する

②防衛の30(サンマル)行動

「優先的に雑用を処理する時間」をスケジュール化してしまおう!

雑用から自分の仕事を優先するために、毎日30分の雑用処理時間を設けるようにします。「人間が集中力を持続する限界は概ね2時間である」という「マックスⅡの原則」と「防衛の30行動」を組み合わせることで、生産性を高められます。2時間集中し、達成感を得られたら、生き抜きに雑用を行います。かかってきそうな電話には、雑用の30分間をあて、先に処理してしまうのです。これで電話に妨害されずに、タスクに集中して取り組めます。

各種の雑用で重要な仕事を中断されたくなければ、「BBC」と「NHK」で雑用を「SPA」と解決すべきです。「BBC」(雑用の発生源)
B:Boss(上司)
B:Buka(部下)
C:Customer(顧客)

「NHK」(雑用の発生源)
N:Neighbor(同僚)
H:Honbu本社・本部
K:kousai(交際範囲・同僚・部下・他)

「SPA」
S:Semeru(攻める)
P: Prepare(準備する)
A:Avoid(回避する)

毎週、今後1週間の雑用発生の可能性を『BBC』と『NHK』という六つの雑用発生源の一つ一つについて予測するという活動は、自分の当面の仕事を、あらゆる角度から見直すことです。これで抜けがなくなり、ミスを減らせ、仕事のクオリティを高められます。ただ抜けをなくすだけでなく、先手先手と仕事を追いかけ、決して仕事に追いかけられるような事態にはならないという状態を作り出せるのです。

③マックスⅡの原則
人間が集中力を持続する限界は概ね2時間であることがわかっています。2時間以内に仕事に対する達成感と解放感が得られるようにするのです。会議や打ち合わせ、ミーティングも2時間以内で終了することで、時間とエネルギーの浪費を防げます。大きなタスクも2時間以下の単位で細分化し、分解するようにしましょう。ウィズ・コロナで在宅勤務が増えていますが、2時間以上集中するのは無理だと考え、休憩時間をしっかりと取るようにしましょう。

④創造の30行動
最低、毎日30分、自分の能力不足を補うための時間をとり、自分を成長させなければ、時代に置いていかれます。変化が激しい今だからこそ、以下の「KISSのWA(キッスの輪)」のフレームワークを取り入れるべきです。
■K:Knowledge(知識の不足)
■I:Information(情報の不足)
■S:Spare Time(余分な時間の不足)
■S:Spare Money(余分な資金の不足)
■W:Workforce(協力してくれる人の不足)
■A:Authorization(社内や上司の理解の不足)

クリエイティブに生きるためには、インプットとアウトプットが欠かせません。テレワーク時代には、自分らしい勉強法やコミュニケーション法を確立しないと、あっという間に時代遅れな存在になってしまいます。  

緊急事態を打開する方法

ビジネスには緊急事態がつきものです。生産性の低い人は、緊急事態に慌てて対処しようとしますが、これではトラブルは解決できず、より炎上します。

まずは、慌てずにに緊急事態を分解し、何が問題なのかを明らかにします。複数の対処法を考えて、1つ1つについて有効性を検討し、最も効果的な1つの対処法に従って、行動できれば、よい結果を得られます。

⑤緊急事態への対処法を考える時の6つ視点
緊急事態への複数の対処法を考える時の視点が以下の6つです。
・質の変更
・量の変更
・納期の変更
・方法の変更
・代替案の検討
・金銭的解決 

⑥COMPAの視点
また、緊急事態を未然に防ぎたければ、以下のCOMPAの視点で業務をチェックしましょう。以下のような仕事のやり方や段取りに多くの問題があります。クライアントからの小さなクレームやケアレスミスには日頃から注意を払うべきです。
C:Claim(クレーム・苦情)
O:Other’s Emergency(他者の緊急事態)
M:Mistake(ミス、不注意、失敗)
P:Private(個人的問題)
A:Accident(アクシデント・事故)

コロナ時代にも根回しは必要ですが、それをオンラインで上手にやる必要があります。その際、DIPSの「ターゲット明示の原則」「TEMの視点」「HARPの手法」を組み合わせて、相手を口説くと成功する確率が高まります。根回しで成功するために、まず誰をターゲットにするかを決めましょう。

⑦ターゲット明示の原則
根回しを上手に行うためには、ターゲットを明確に絞り込むことにあります。また根回し活動は、その進捗に合わせて、常に新しく設計されなければなりません。また、決定者に影響を与える影のキーパーソンにも意識を向けるようにしましょう。そして、「TEMの視点」で根回しの優先順位を決定します。

⑧TEMの視点
DIPS では根回しのパ夕ーン以下の3つに分類します。
T:Trade-Off(トレードオフタイプ) 一方が賛成すれば、他方が反対する可能性が高い根回し。その際、難易度の高い人を優先する。
E:Everyone (全員説得タイプ) 全員を説得しなければならないような根回し
M:Mix (混合タイプ) 上記2つのミックス型 

⑨正しい説得活動を行うステップ「HARP」
根回しのステップは、以下の4つのステップで行います。
H:Hurdle(障害をリストアップする)
A:Action  (障害を除去または解除する行動を起こす)
R:Reaction
(相手の反応を冷静に観察する。再度障害を除去する必要があれば行動し、うまくいったなら次のステップPへ)
P:push (最後の詰め、一気に説得する)
相手とのコミュニケーションの際にこのHARPを意識し、障害を取り除いていくことで、相手との信頼関係を築けます。問題点を発見し、障害を除去しながら、相手の反応を観察することで、突破口が見つかります。

本書に紹介したDIPSのノウハウを習慣化し、日々活用することで、結果を出せるようになります。自宅にいても「KISSのWA(キッスの輪)」を使えば、自分を成長させることは可能です。マックスⅡの原則と防衛の30(サンマル)行動を取り入れれば、集中力を削がずにパフォーマンスを高められます。

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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