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LIFE SPAN(ライフスパン)―老いなき世界
著者:デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラント
出版社:東洋経済新報社
本書の要約
デビッド・A・シンクレアは老化は病気で、やがて人類は老化を克服できるようになると言います。定期的な運動やときおりの絶食を習慣化することで老化を防げることがわかっています。また、NMN(ニコチンモノアミドヌクレオチド)によって、健康寿命を伸ばせる可能性が高まっています。
老化は病気?
老化は1個の病気である。私はそう確信している。その病気は治療可能であり、私たちが生きているあいだに治せるようになると信じている。そうなれば、人間の健康に対する私たちの見方は根底からくつがえるだろう。(デビッド・A・シンクレア)
人生は100年時代となりましたが、120歳以上生きる人はほとんどいません。また、健康寿命という視点で考えると私たちの人生の後半戦はあまり楽しいものになりそうもありません。 多くの老人は不自由な体を抱え、さまざまな病気に苦しめられながら、晩年を過ごし、死を迎えます。しかし、この常識をくつがえす研究が進んでいます。
ハーバード大学医学大学院で遺伝学の教授を務め、長寿研究の第一人者であるデビッド・A・シンクレアは、「老化とは一種の病気であり、難病ではあるが治療は可能だ」と言います。2014年には米タイム誌の「世界で最も影響力を持つ100人」に選ばれる著者は、いくつかの手法によって、老化を治せるようになると指摘します。
私たちは定期的な運動やときおりの絶食を習慣化したり、現在研究中の老化を防ぐ薬1錠を服用することで、健康寿命を伸ばせるようになるのです。
遺伝子の仕組みをすべてコントロールできるようになれば、医療は一変し、日常生活のありようも根本から変わる。それどころか、ヒトという生物が何をどこまでできるものなのかも定義し直す必要に迫られるはずだ。老化は1個の病気である。私はそう確信している。その病気は治療可能であり、私たちが生きているあいだに治せるようになると信じている。そうなれば、人間の健康に対する私たちの見方は根底からくつがえるだろう。
著者は長生きしたければ、「食事の量や回数を減らせ」と言います。長く健康を保ち、寿命を最大限に延ばしたいなら、それが今すぐ実行できて、しかも確実な方法なのです。食事を制限し、一般的な許容限度以上にたびたび体を欠乏状態に追い込むことで、私たちは健康的に長生きできるようになります。食事を減らすことで、私たちがDNAレベルで持つ「サバイバル回路」を始動させるのです。
老化とはDNAの劣化(DNA読み取りシステムの劣化)ですが、それを防ぐために人為的に修復モードを発動させ、自分の体内にある劣化したDNAを修復させればよいというのが著者の主張です。そのために最も簡単なのが食事を制限することです。朝食を抜いて遅い昼食をとったり、週に2日はカロリーを75%に減らすように食事をコントロールすることで、老化を遅らせることが可能になります。
栄養失調にならない程度の間欠的断食法であれば、たいていは長寿遺伝子を働かせることにつながります。こうした食生活を送れば、金がかからないどころか節約になります。また、何を口に入れるかによっても、結果は異なります。肉や加工食品を食べることを極力減らし、低タンパク質で野菜中心の食事を心掛けるべきです。
老化を防ぐNMN
細胞を損傷させることなく長寿遺伝子を働かせるストレス因子はいくつもある。たとえば、ある種の運動をする、ときおり絶食する、低タンパク質の食事をする、高温や低温に体をさらす、などだ。これを「ホルミシス」と呼ぶ。ホルミシスとは、毒が毒にならない程度の量で刺激効果を現わすことを指す。一般に、ホルミシスは生物にプラスの作用を及ぼす。永続的なダメージを引き起こさずに誘発できた場合はなおさらだ。ホルミシスが起きるとき、すべては良好な状態になる。いや、良好などという言葉では足りない。少しのストレスが加わることでこれらの遺伝子がプラスの方向に働けば、体は活動を控え、エネルギーを蓄えて、少し長く生きることができるのだから。これが長寿への第一歩だ。
食事をコントロールすると同時に体に物理的なストレスも加えること、すなわち運動によって、サバイバル回路を活性化できます。様々な運動習慣をもつ数千人の成人を対象に血液細胞のテロメアを調べた結果、1つの際立った相関関係が認められました。頻繁に運動をする人ほど、テロメアが長かったのです。(テロメアの関連記事)
2017年に発表されたある研究によれば、よく運動をする(1日最低30分のジョギングを週に5日行なうのに相当)人は、座りがちな生活をする人よりもテロメアが長く、その長さは、10歳近く若い人と同等だったそうです。運動をするとNADの濃度が上昇し、それが今度はサバイバルネットワークを作動させます。そのおかげでエネルギーの産生量が上がり、筋肉は酸素を運ぶ毛細血管をさらに増やすようになります。
AMPK、mTOR、サーチュインといった長寿関連の物質は、カロリー摂取量にかかわらず運動によって正しい方向に調節されるのです。そして新しい血管をつくらせ、心臓や肺を健康にし、体を丈夫にし、テロメアを長くします。
サーチュイン遺伝子は老化の主要な要因となる多くの病気から、人間の体を保護している遺伝子といわれています。ポリフェノールの一種の「レスベラトロール」、「NAD+」と「NR」(ニコチンアミドリボシド)、「NMN」(ニコチンモノアミドヌクレオチド)などが、抗老化や寿命の制御にかかわるサーチュインを活性化させることがわかってきました。
人間でいえば60歳に当たる生後22カ月のマウスに「NMN」を投与すると、1週間後には、生後6カ月のマウスに相当する筋肉を持つまで体を変化させていました。たった1週間でそのマウスは人間でいうところの20歳になり、40歳もの若返りを果たしたのです。NMNには眼の疾患や難聴、肝臓や心臓を守る作用があることもわかってきました。NMNは老化という病を治す新薬になる可能性が高いのです。
老化は病気で、やがて人類は老化を克服できると著者は言います。定期的な運動やときおりの絶食を習慣化することで、私たちは老化を防げます。また、現在研究中のNMNなどを服用することで、健康寿命を伸ばせるようになれば、人生の後半生をより明るいものにできそうです。
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