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「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本
著者:垣渕洋一
出版社:青春出版社
本書の要約
飲酒によって、ドーパミンが出てたくさんの報酬が得られるので、「もっと、もっと」と勢いづいて飲んでいると、やがて危険なゾーンに入り、体や心を蝕んでいきます。アルコールは依存症を引き起こす「薬物」だと捉え、飲む際には注意を払いましょう。
アルコールは薬物か?
現在、国内のアルコール依存症の患者数は約100万人、その手前の予備軍まで入れた数は全国で1000万人以上だと言われています。家族のアルコール問題に悩む人もいることを考えると、誰にとっても決して他人事ではありません。(垣渕洋一)
東京アルコール医療総合センター・センター長の垣渕洋一氏の「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本が話題になっています。私は14年前まで、アルコールに依存する生活を送っていました。しかし、度重なる飲酒によって体調が悪くなり、ドクターのアドバイスに従い、断酒することを決めました。
自分の悪い習慣を見直すことで、断酒に成功し、そこから人生を立て直すことができたので、著者のメッセージにとても共感を覚えました。お酒を断ったあの頃、本書に出会っていたら、もっとスムーズに断酒を行えていたはずです。
「毎日飲む人」は立派なアルコール依存症予備軍で、今回のコロナ禍が予備軍を増やしています。在宅勤務が飲酒を習慣化させ、朝からお酒を飲む人も増えています。帰宅の必要のないZoom飲みによって深酒となり、アルコールの量が増加している人も多いのではないでしょうか?一度、アルコールが習慣化すると抜け出すことが難しくなります。ぜひ、依存症になる前に、踏みとどまって欲しいと思います。
飲酒に精神的な効用はあっても、身体的な健康効果はまったくないことがわかっています。飲む量が増えるほど深刻な病や事故、家庭内や職場のトラブルなど、より多くのリスクを背負うことになります。
アルコールは「脳と体への影響を考えるとれっきとした『薬物』です」。
飲酒は脳と体への影響が大きいことを考えると「薬物」と捉えた方がよさそうです。 アルコールは、少量でも効率よく報酬系でドーパミンの分泌を促すため、やがて依存を引き起こします。セロトニンとオピオイドという神経伝達物質の分泌も増やすので、不安や心配などの”負の感情”を吹き飛ばし、苦痛を忘れさせることもできます。
この相乗効果で、情緒的には実に魅力的な薬理効果があります。幸福感とマイナスの感情を吹き飛ばすことができる「薬物」がこの日本では、安価ですぐに入手できます。いつでも、どこでも、手軽に飲めるという状況が、アルコール依存症の人を増やしています。
アルコール依存症は90日で改善できる?
アルコールはいつでもどこでも簡単に、確実に気持ちよくしてくれます。人は易きに流されやすく、仕事や勉強をコツコツやって得られるドーパミンの量をたった数分で得られるとなれば、ついそちらに引っ張られてしまうものです。飲酒を続け、やがてドーパミンによる快感に慣れてくると、シラフで「さあ、今夜は居酒屋で一杯やるぞ」と思った瞬間、反射的にドーパミンがどっと出てきます。まだ就業中でもすぐ仕事を切り上げたくなるほど、アルコールの報酬は魅力的なのです。
飲酒によって、ドーパミンが出てたくさんの報酬が得られるので、「もっと、もっと」と勢いづいて飲んでいると、やがて危険なゾーンに入り、体や心を蝕んでいきます。アルコールは依存症を引き起こす「薬物」だと捉え、飲む際には注意を払いましょう。
また、アルコールとうつ病には深い関係があることがわかっています。アルコール依存症の病歴があるとうつ病にかかるリスクが4倍高くなり、うつ病の病歴がある人の4割はアルコール依存症を合併するという研究報告があります。
飲酒をするとドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質の活性が上がって気分が晴れ、意欲的になれますが、「ハイになる」のは飲んでいるときだけ。酔いがさめれば気持ちはガクッと落ち込み、さらに重いうつの状態になります。
うつ病の人が禁酒すると内面的に絶望感が増し、足りないぶんを補おうとしてまた飲むので、負のスパイラルに陥いりがちです。多量に飲むほど、感情のギャップが大きくなります。
精神科で出される抗うつ剤の処方箋には、アルコールとの服用が禁止されています。反対の作用をするアルコールと抗うつ剤を同時に服用しても、全く意味がありません。薬物の代謝やアルコールの解毒によって、逆に肝臓を痛めてしまいます。アルコール依存で精神科に通う人は、アルコールと抗うつ剤によって、うつと依存症の両方を進行させてしまうのです。
アルコール依存症の患者さんは、治療の際に必ず「断酒」をしますが、目安として90日ほど続けると、脳がそれを学習して習慣が変わってきます。つまり、飲酒が欠かせなかった状態から飲まなくてもいい状態に切り替わっていくのです。
私は断酒をする際に、自宅にあったアルコールを全て廃棄し、飲み友達と会うことをやめました。ビールの代わりに炭酸水を飲み、喉の渇きを補いました。夜型の生活を朝型にシフトし、飲まない環境を自ら作りました。90日、100日と飲まない生活を続けるうちに、アルコールなしの生活に慣れてきました。習慣の力が、私の脳をアルコール依存から、脱却させてくれました。結果、私は14年間、一滴のお酒も飲まない生活を続け、空いた時間で様々なことにチャレンジできるようになりました。
内科で飲みすぎを注意されて定期的に検査を受けるとしても、本格的な減酒や断酒には至らないと著者は指摘します。多くの患者は、自分はまだ大丈夫と考え、ドクターのアドバイスを無視し、病気を悪化させてしまいます。自分や家族がアルコール依存だと思ったなら、内科ではなく精神科を受診すべきです。私は内科でよいドクターに出会え、断酒できましたが、本書を読むことで、これがただのラッキーだったことに気づけました。
アルコール性肝硬変になった人の4年後の生存率は、そのまま飲酒を続けた人が35%なのに対して、断酒した人は88%という研究結果があるそうです。 治療が遅れれば遅れるほど、様々な病気に罹り、気づいたときは手遅れになています。早死に、事故死、孤独死、自殺など、「不適切な飲酒」による「アルコール関連の死者」は、年間3万5000人と報告されています。アルコールにより不幸になる前に、依存症を疑い、精神科化で治療を受けることで、大切な命を救えます。
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