吉森保氏のLIFE SCIENCE(ライフサイエンス) 長生きせざるをえない時代の生命科学講義の書評


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LIFE SCIENCE(ライフサイエンス) 長生きせざるをえない時代の生命科学講義
著者:吉森保
出版社:日経BP

本書の要約

ノーベル賞受賞者の共同研究者の著者は、オートファジーが免疫や病気、美容、老化に大きく関係していることを研究で明らかにしました。健康寿命を高めるためにはオートファジーを活性化焦る必要があります。運動、プチ断食、スペルミジンやレスベラトロールを積極的に摂取しましょう。

生命にとって、細胞が重要な理由

生命の基本は、細胞です。つまり、細胞を知っておくと、人間の体や遺伝子、病気、その未来のことまで理解できます。(吉森保)

生命の基本は細胞にあるとノーベル賞受賞者の共同研究者の吉森保氏は指摘します。 細胞という単位に注目して人の体を見ることで、健康になるためのメカニズムがわかります。

生命の特徴は階層性と、動的平衡にあります。 動的平衡とは、中身が変わっているのに、見た目は変わらないことを言います。 神経細胞などの例外を除き、多くの細胞は絶えず入れ替わっています。古くなった細胞は死に、新しく生まれた細胞に置き換わることで、人は生命を維持しています。

「細胞がおかしくなる」代表的な例
● 細胞内にタンパク質の塊が溜まってその結果死んでしまう
● ウイルスなどの病原体に殺される
● 細胞内の「原発事故」が原因で細胞が死ぬケース

● 細胞内にタンパク質の塊が溜まってその結果死んでしまう
ある組織・臓器の細胞がごっそり死んで病気になることを「変性疾患」といいます。その中でも最も有名なのが神経変性疾患です。代表的なのが、アルツハイマー病やパーキンソン病です。 これらは脳の神経細胞が死んで、なくなってしまう病気です。

脳には神経細胞がぎっしり詰まっていますが、たとえば、アルツハイマー病の人の脳をCT画像で見ると、細胞が死んで隙間ができています。脳以外でも人間のほとんどの臓器で変性疾患は起きます。 神経変性疾患のときは、タンパク質の塊が溜まって細胞が死んでしまうことが大半の理由です。タンパク質は細胞の働き手ですが、くっついてかたまってしまうと、働かなくなるばかりか細胞のさまざまな機能を邪魔して、死に追いやります。

● ウイルスなどの病原体に殺される
さて、今話題のウイルスはどうやって生きているのでしょうか? なんと、他の生き物の細胞に侵入して、相手の細胞の中で、その細胞の翻訳係などを利用して自分のタンパク質をつくっています。 ウイルスは、空気中や水の中では、しばらくの間ならば構造を保てますが、それでは増えることができません。ウイルスはほかの生命体の細胞の中に入らないと生きていけないため、必死に体の中に侵入しようとします。

体内に侵入したウイルスは、自分のゲノム(遺伝子は3~300個くらいと非常に少ない)のコピーをたくさんつくります。ウイルスは次々に細胞に宿り、体内で増殖していきます。ウイルスが多くの細胞を殺すことで、人の命を奪ってしまうこともあります。

●細胞内の「原発事故」が原因で細胞が死ぬケース
細胞のオルガネラのひとつにミトコンドリアがあり、これがエネルギーを生み出します。ミトコンドリアのエネルギーをつくる力は強力で、まるで原子力発電所くらいの威力があります。もしこのミトコンドリアが壊れると、活性酸素という「毒」が出ます。この活性酸素が老化を進めたり、生活習慣病の原因になることがわかっています。

活性酸素は酸化という化学反応を起こす力が非常に強いため、ミトコンドリアに穴が開いて漏れたりしてしまうと酸化が起こり、細胞の機能を損なったり細胞そのものを破壊する可能性があります。例えば、漏れ出た活性酸素が、心臓の細胞を傷つけることで、心不全を引き起こしてしまいます。活性酸素は遺伝子に変異を起こすことがあります。がんも遺伝子変異によって引き起こされる病気で、活性酸素が引き起こしているのです。

オートファジーを活性化する方法

オートファジーは、簡単にいうと細胞の中の恒常性を保つ役割をするものです。

私たちは、オートファジーのおかげで、昨日も今日も変わらない体で過ごせます。オートファジーの特性がわかるようになると病気にかかるのを防いだり、老化を緩やかにして健康な期間を長くできることがわかってきました。

オートファジーには3つの役割があります。
1、飢餓状態になったときに、細胞の中身をオートファジーで分解して栄養源にする
2、細胞の新陳代謝を行う
3、細胞内の有害物を除去する

オートファジーで最近注目されているのがタンパク質の塊の除去です。アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患は、脳細胞の中にタンパク質の塊ができて、その塊のせいで細胞が死ぬことで起こります。そのタンパク質の塊をオートファジーは狙い撃ちしてくれます。オートファジーは脳の病気を治療する切り札になりそうです。

著者がさまざまな研究結果や実験を通じて明らかにしたのは、 歳をとってオートファジーの働きが悪くなるのは、ルビコンの増加が原因だということです。著者達の研究グループは、ルビコンと呼ばれるオートファジーを抑制する因子が加齢に伴い、線虫、ショウジョウバエ、マウスの組織で増加することを見出しました。(著者の吉森保教授のグループの研究結果はこちら)ルビコンをなくし、オートファジーを活性化するとで、線虫やハエの寿命は平均20%も伸びました。

オートファジーが働くことで、以下の病気を制御することがわかっています。
①生活習慣病
2型糖尿病や動脈硬化、高尿酸血症もオートファ ジーと関係があります。
②神経変性疾患
アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病など。
③肝臓がん
肝臓でオートファジーができないマウスはがんになるという報告があります。
④腎臓の病気
健康なマウスでも、腎臓でオートファジーができないと、歳をとったときに腎臓の機能障害を起こします。
⑤心不全心臓
オートファジーができないマウスは、歳をとったり心臓に負担をかけたりすると、心不全になることがわかっています。

このようにオートファジーによって、癌や認知症、アンチエイジング、生活習慣病等の予防ができます。では、オートファジーを活性化させるためにはどうすればよいのでしょうか?
■運動
朝7時から午前中の早いタイミングに運動することで、オートファジーが加速します。また、腹八分で運動するとよいことがわかっています。
■和食中心の食事
納豆や味噌、キノコに含まれるスペルミジンがオートファジーを活性化します。
■レスベラトロールを摂取する
赤ワインに含まれるレスベラトロールが効果的です。
■食べ過ぎない(プチ断食が効果あり)
1日3食食べていると絶えず内臓が活動し、炎症を起こしてしまいます。あえて空腹の時間を空けることで、古くなった細胞を新しく生まれ変わらせるというシステムが働きます。オートファジーを活性化するためには、13時間程度の空腹の時間が必要だと言われています。

健康寿命を伸ばしたければ、オートファジーを活性化させましょう。そのためには、適度な運動、腹八分目、睡眠を十分にとるなど当たり前のことを習慣化すればよいのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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