ショッピングモールが生き残る方法。小売の未来の書評


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小売の未来――新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」
著者:ダグ・スティーブンス
出版社:プレジデント社

本書の要約

過去のショッピングモールは、未来のコミュニティの拠点となり、見た目も中身も充実した空間として、私たちが暮らす都市や郊外に溶け込んで機能します。新型コロナがもたらし危機をチャンスと捉え、正面から受け止める先見性、気概、強みを持った企業こそが、小売りの新時代の主役になるはずです。

ショッピングモールは、顧客体験を変えるべき!

ショッピングモールは、物販にせよ、エンターテインメントにせよ、飲食にせよ、体験にせよ、もっと多彩で常に新しさを追求していくような設計にしなければならない。(ダグ・スティーブンス)

ダグ・スティーブンス小売の未来――新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」書評を続けます。

小売りコンサルタントの著者は、アフターコロナ時代には、マゾンやアリババなどのメガ小売が勝ち組となり、ショッピングセンターは何も行動を起こさなければ、衰退していくと述べています。

ソーシャルメディアにおいて私たちは一瞬で判断することが当たり前になり、投稿がつまらなければ、秒速でスルーします。インスタグラムでは、アカウントからアカウントへと際限なく漂いながら、気に入った写真があれば、「いいね」を残し、フェイスブックでは、膨大なフィードから何か目新しいことがないか探しています。ネットフリックスには、新しい動画が際限なく並んでいるため、買い物はこういたコンテンツと時間を奪い合っています。

ソーシャルメディアでいつも新しい体験をしている私たちにとって、ショッピングモールはいつの間にか代わり映えしない存在になってしまったのです。モールの多くの店は、似たようなものを売っていて、売り方にも大差がないため、消費者から飽きられてしまったのです。そこに今回のコロナ禍が、追い討ちをかけたのです。

ショッピングモールは、物販にせよ、エンターテインメントにせよ、飲食にせよ、体験にせよ、もっと多彩で常に新しさを追求していくような設計にしなければならない。 同じく、テナントスペースも、短期賃貸やポップアップストァ出店の推進、イベント、マーケットプレイス型のコンセプトなどを取り入れて、自由自在に変更できるように設計する必要がある。

ショッピングモールは体験型に変えるべきで、変化しづけなければ、顧客は来店しなくなります。著者は4~6週間の周期で見た目や雰囲気、BGMやサウンド効果、匂いや香り、活動をがらりと変え、地元の人々が常に訪れたくなる理由を作り出すべきと述べています。

ECでものが購入できる時代には、有力ブランドの力だけで客足は維持できないことをモールの経営者は認識すべきです。ショッピングモールの成否を最終的に決めるのは、運営会社は創造力や独創性を鍛え、顧客との関係を再構築する必要があるのです。

ショッピングモールがプラットフォームに変わるべき理由

ショッピングモールを「大きな賃貸スペースのある有形資産」と捉えるのをやめてみよう。「デジタル世界と実世界の両方に切れ目なく広がる無限のプラットフォーム」がそこにあると考えてみてはどうか。そのプラットフォームは、テナントも買い物客も設備保守点検業者も地域住民も自由にアクセスできる場である。

①買い物客にとってのプラットフォームの特徴
・何かニーズがあれば、顧客とモールの間で相談できる双方向のコミュニケーション窓口
・多様なチャネルの垣根を越えた購入方式(オンラインで商品をカートに入れて、実店舗での購入)
・上質なサービスや体験、特別イベント入場などを含む会員制プログラム
・ジャンルを問わないパーソナルショッパー(買い物同行・支援)サービス
・ライブイベントやストリーミング配信の拠点
・携帯端末ですみずみまで検索可能なスペース(ショップ、ブランド、商品など)
・暮らしのなかで、思い出に残るひとときになるような体験

②地元コミュニティにとってのプラットフォームの特徴
・地元の行事や活動・運動の支援と会場提供
・施設のサステナビリティや社会的責任に関わる取り組みについて、リアルタイムに情報発信

③テナントにとってのプラットフォームの特徴は、
・テナントに役立つリアルタイムの市場関連情報やデータの提供
・物販、エンターテインメント、飲食はもちろん、斬新なテナント形式も含めた実験の場
・オンラインでもオフラインでも、手早く簡単に販売の場を設置できるプラグアンドプレイ型のプラットフォーム ・スタートアップの販売店向けの資金調達
・インキュベーション機能を備えたプラットフオーム
・宅配、クリック&コレクト、海外発送などを支援するロジスティクスのプラットフォーム
・ライブ配信型、録画配信型など、魅力的なメディアづくりのための制作スペース

ショッピングモールが単なるコンクリートの巨大な箱ではなく、の高いプラットフォームと捉えれば、これら全てが可能になります。

カルチャー、エンターテインメント、ノウハウ、商品の各領域で訴求力があるテナントを集め、個性あふれる集合体をつくることで、ショッピングモールは体験型のプラットフォームに生まれ変わります。アフターコロナの時代には、ここが新たな地域コミュニティになり、多様な人々が集まるようになります。

今や、手のひらの上に膨大な商品の海が広がっていて、ほしいものがあればタップ2つで手に入るような時代である。「ショッピングモール」とか「ショッピングセンター」という工業化時代の遺物にできることといえば、「ポストデジタル時代、ポストパンデミック時代のコミュニティの中心」としての新たな役割を確立する他に道はない。

顧客が求めているのは、独自性があって見掛け倒しではない集いの場であり、人間のエネルギーが感じられるスペースなのです。

100年に一度のこのパンデミックをチャンスに変えることで、新しい世界を築き上げるようにすべきです。かつての「平常」に戻るのではなく、もっと明るく充実した状態をめざして歩み出しましょう。

機が熟して振り返ったとき、「パンデミックがきっかけで、新世代の素晴らしい独創的な小売業者が誕生した」と実感する日が来るはずだ。それは、オンライン、オフラインの双方で舞台に上がり、明確な目的意識と価値観を消費者に示すことができる小売業者である。

卓越した企業は、オンラインとオフラインで圧倒的なコンテンツを武器に、消費者中心のエコシステムを構築し、カルチャーの醸成、エンターテインメントの演出、ノウハウの提供、優れた商品の設計に取り組み、独自の魅力を強化することで、顧客を引き寄せます。

過去のショッピングモールは、未来のコミュニティの拠点となり、見た目も中身も充実した空間として、私たちが暮らす都市や郊外に溶け込んで機能します。新型コロナがもたらし危機をチャンスと捉え、正面から受け止める先見性、気概、強みを持った企業こそが、小売りの新時代の主役になるはずです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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