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ストイック・チャレンジ 逆境を「最高の喜び」に変える心の技法
著者: ウィリアム・B・アーヴァイン
出版社:NHK出版
本書の要約
逆境に直面したときは、レジリエンスと創意工夫の才を試されているとフレーミングすることによって、マイナスの感情が芽生えるのを防ぐだけでなく、逆境を挑戦として楽しめるようになります。逆境をストイックテストと捉えると、多くの人が不快な出来事だと感じることを、ある種の楽しみに変えられるようになるのです
ストイック・テスト戦略を実践しよう!
もし、人生に哲学がなければ、毎日を行き当たりばったりに過ごすことになりかねない。その結果、日々の努力は方向性を失い、人生をむだにすることになるだろう。それはあまりにもったいない。(ウィリアム・B・アーヴァイン)
マルクス・アウレリウス、セネカ、エピクテトスの説いたストア哲学を実践する著者は、よりよい人生を送るためにはこのメソッドを活用すべきだと言います。ストア哲学は、人生においてなにを獲得するのが大切かを教えてくれるうえに、それを実現するための策を授けてくれると言うのです。逆境に直面したら、「ストイック・テスト戦略」を行い、自分の感情をコントロールしましょう。
逆境を人間性に対するテスト(ストイック・テスト)だと考えれば、状況に対して抱く気持ちが大きく変わります。とりわけ大きな不幸に直面したときにも平静でいられるようになるので、人生の質を劇的に改善できるようになります。
パコニウス・アグリピヌス、トラセア・パエトゥス、ルベリウス・プラトゥス、バレア・ソラヌスや、彼らにストァ哲学を説いたムソニウス・ルフスなど1世紀の古代のストア哲学者の多くは、逆境に直面しながらも勇気を奮い立たせ、自分の感情をコントロールすることで、よりよい結果を得ていたのです。
ストア哲学者は自分の感情を抑えつけるのではなく、プラスの感情や畏怖の念を大事にしていました。一方で、いらだち、怒り、悲しみ、失望などのマイナスの感情を減らそうと努めていたのです。
ストイック・テストに合格するには、逆境にうまく対処するだけでなく、マイナスの感情が湧きあがるのを防がなければなりません。彼らはより満ち足りた人生を送るためにアンカリングを使いました。
たとえば、定期的に、人生が今よりもつらいものになる場合を想像するようにしたのです。ストア哲学者たちは、最悪の事態を想像し、現実をより悪い状況と比較することで、満足する道を選んだのです。「ネガティブ・ビジュアリゼーション」という心理学的手法を使うことで、嫌な感情を捨て去りました。人生や境遇が今よりも悪いものになりうることを、一瞬のあいだ考え、現状をよりよく捉えるようにしたのです。
日々の逆境に対して腹を立てないようにすることを学べば、対処しなければならない怒りはずっと少なくなり、平穏な気持ちで時間を過ごせるようになります。
フレーミングを変えて、逆境に強くなろう!
レジリエンス(回復力)を持つ人は、犠牲者の役を演じようとはしない。犠牲者の役を演じれば憐れみを誘うが、レジリエンスを持つ人は自分を哀れだと思っていない。強く、有能なのだ。不公正の標的にされることは自分ではコントロールできないかもしれないが、標的とされたことにどう対処するかはコントロールできる。自分の人生を台無しにすることもできるし、果敢に立ち向かい、不当に押しつけられた障害を切り抜ける方法をさぐりながら、楽観的でいることもできる。
逆境に強くなることで、人生を楽しめるようになります。ストア哲学者は、怒りが諸刃の剣であることを知っていたため、怒りをコントロールすることを選びました。怒りはモチベーションになる場合もありますが、多くの場合、わたしたちを消耗させてしまいます。感情が惑わされ、エネルギーが奪われてしまうと、結果を出すことはできません。
2台の車が渋滞に巻き込まれて動けなくなった時の対応を見れば、怒りをコントロールした方がよいとわかります。
●1台のドライバーは渋滞に怒りで反応します。ほかの車のドライバーに悪態をつき、妻に電話をして怒りをぶちまけます。やっと職場に着くと、同僚にぶっきらぼうな態度をとり、同僚もおそらく不機嫌になります。つまらぬことで感情的になることで、自分だけでなく周りの人の気持ちも害してしまいます。
●別の車のドライバーは、渋滞を解消するために自分がやれることはない、とすぐに気付きます。そこで気持ちを切り替え、この時間になにができるかを考えます。メールをチェックしたり、お気に入りのポッドキャストに新しく配信されたエピソードを聞くことで、イライラせずに自分の時間を楽しめます。
古代のストア哲学者は、フレーミング効果を用いることで、ポジティブな気持ちを維持していました。不快に見えた絵でも、額縁を変えることで、素晴らしいものに変えられます。楽天主義者は人生という絵を美しく見える額縁に入れ、悲観主義者は醜く見える額縁に入れる習慣を持っています。
逆境を自分を成長させるチャンスだと捉えることで、自分の思考と行動を変えられます。起こったことを絵画と見立て、額縁を変えることで、新たな答えが見つかります。逆境をある心理的フレームに入れればいらだたしいものに、べつのフレームに替えると、意外にも楽しめるようになると著者は言います。
逆境をストイック・テストだととらえることが習慣になっていたために、自分が逆境を日々起こる不運だと考えるのではなく、学習の機会ととらえ、感謝するようになっていることに気づいた。言いかえれば、逆境の達人となったのだ。
逆境に直面したときは、レジリエンスと創意工夫の才を試されているとフレーミングすることによって、マイナスの感情が芽生えるのを防ぐだけでなく、逆境を挑戦として楽しめるようになります。逆境をストイックテストと捉えると、多くの人が不快な出来事だと感じることを、ある種の楽しみに変えられるようになるのです
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