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無料より安いものもある:お金の行動経済学
ダン・アリエリー, ジェフ・クライスラー
早川書房
本書の要約
お金のことを考えると、私たち人は心が乱され、ストレスを抱えてしまいます。 お金は私たちの暮らしや経済、社会になくてはならないものなのに、お金について合理的に考えることができなくなります。お金に関する私たち自身の欠陥や欠点を理解し、認識を変え、正しいお金の使い方を身につけましょう。
人はなぜお金で不合理な行動をするのか?
お金についてあれこれ考えるのはよいことだ。そうすることがよりよい決定につながるのなら。でもそうはならない。じつのところ、お金に関して愚かな決定を下してしまうのは、人間性の証といっていい。私たちはお金のあれこれでしくじるという、すばらしい才能をもっているのだ。人間バンザイ、人間サイコー。(ダン・アリエリー, ジェフ・クライスラー)
行動経済学を普及させたダン・アリエリーは、人は合理的に行動できない生き物であることを明らかにしてきました。今回の彼のテーマはお金ですが、私たちはこの分野でも不合理な行動をしがちです。
たくさんのお金に関する本が出版され、多くの人がお金について学びますが、お金に関する意思決定はなかなか改善しません。人はお金のことを考えるだけで、ストレスを抱えてしまうのです。
■お金はアメリ力人の離婚原因の第1位、ストレスの原因の第1位です。
■お金の悩みがあると、あらゆる問題解決能力が目に見えて落ちます。
■裕福な人は、とくに自分が裕福だと思い出させられると、平均的な人よりモラルに欠ける行動をとりがちなです。
■お金の画像を見ただけで、職場からものを盗ったり、うさんくさい人を雇ったり、金もうけのためにうそをついたりしやすくなる人もいます。
お金のことを考えると、文字通り心が乱されるのだ。 お金は私たちの暮らしや経済、社会になくてはならないものなのに、お金について合理的に考えることはとても難しい。なら、お金についてしっかり考えるにはどうすればいいだろう?ふつう考えられる方法が、「お金に関する教育」を受けること、しゃれたいい方では「金融リテラシー」を高めることだ。だが困ったことに、車の買い方や住宅口ーンの組み方といった、金融リテラシー教育の内容はすぐに頭から消え、私たちの行動に長期的なインパクトをおよぼすことはまずない。
金融リテラシーを高めても、私たちは不合理な行動をやめられません。それよりもお金に関わる本書のケーススタディから学んだ方がよさそうです。
人は同時に望むものすべてを手に入れることはできません。あるものを購入した場合、選ばれなかった他の選択肢を購入することはできないのです(機会費用)。同時に全ての選択を行うことは困難であり、商品であれば、価格や性能など自分の基準で判断し選択しますが、これが落とし穴になります。利益を得ようとする多くの企業はこの機会費用にねらいを定め、様々なマーケティングを仕掛けてきます。
高いものは質がよいと思い込んだり、ブランドやレストランのイメージ戦略に屈して、高額な買い物をしてしまいます。しかし、そこには企業のしたたかの戦略があるのですが、私たちはその罠に気づかず、他の選択肢の存在を忘れてしまいます。
人はセールやセット販売されると、本来の商品の価値を考えずに、その品物を購入してしまいます。家を買う時に、普段なら買わない家電商品やオプション商品を買ってしまうのも、相対性の罠に陥っているからです。
相対性が絡むと、
何かの価値を判断するためには、機会費用を考える必要があります。私たちは目先の買い物を優先することで、多くの人は老後のための貯蓄を犠牲にしてしまうのです。
マーケターの罠に屈しないために
クレジットカードの主な心理的効果は、消費と出費のタイミングを分離することにある。またクレジットカードを使えば出費をあと回しにできるから(支払い期日はいつだっけ?)、お金の時間感覚があいまいになり、機会費用をはっきり意識しなくなり、現在の出費の痛みが薄れるのだ。
レストランの食事代をクレジットカードで支払うとき、未来の痛みを考えずにいます。今はただサインしただけで、支払いをするのは未来のいつかだと考えます。同様に、その後クレジットカードの請求書がきた時には、もうレストランで支払いをすませた気でいます。
クレジットカード会社は出費の痛みを和らげるために、タイムシフトの幻想をただ利用するのではなく、二度も利用しているのです。一度めはあとで支払うような気にさせ、二度めはすでに支払ったような気にさせることで、支払いの痛みを和らげています。おかげで私たちは思い切り楽しみ、より気兼ねなくお金を使うことができるのです。
クレジットカードは出費の痛みを避けたいという私たちの願望に巧みにつけ入り、価値に対する認識を変える力があります。支払いを簡単に、目立たなくすることと、支払いと消費のタイミングをずらすことにより、なにかを買う瞬間に感じる痛みを最小限に抑えています。支払いと消費を分離することにより、出費を促しています。私はこのクレジットカードのマジックに完全にハマっています。
これを避けるために、自分の購買行動を見直した方がよさそうです。衝動買いを減らすためには、クレジットカードを目立たない場所にしまったり、企業の思惑をイメージすること、少しだけ立ち止まることが欠かせません。
まずは私たち自身の欠陥や欠点を理解し、認識することだ。自分の考えを盲信しない。意固地にならない。賢い自分がそんな罠に引っかかるはずがないとか、そんなことに騙されるのは自分以外のだれかだなどと思い込まない。賢者は自分の愚かさをわきまえているが、愚者は財布を開けて愚かさを露呈する。無関係な価値の手がかりに反応しがちなクセを自覚すれば、個人として学習、成長、向上し、より豊かな財力をもって自分の成長を(できれば少し先延ばしして)祝うことができる。
ポップコーンやクラッカーの大袋を抱えてソファにすわれば、食欲のブレーキを踏めずに、見境なく全部食べてしまいます。しかし、同じ量が四つの袋に小分けされていれば、新しい袋に移るときにちょっと手を止めます。このちょっとした動作が、もっと食べたいかどうかを自問し、決定する機会になります。人は食べることを中断すること、立ち止まることで、正しい判断ができるようになります。
浪費を避けるためには、同じようにすればよいのです。ある期間中の報酬を大きな封筒に入れて渡されたら、複数の封筒に分けましょう。封筒を使い終わるたび出費を中断すること、封筒にわが子の名前を書いておけば、浪費する可能性を低くできます。
私たちは新しい入れ物を開けるという行為によって、やっていたことを中断させられるます。そこで決定時点ができ、その機会に自分の行動をほんの少しふりかえり、次のステップを考え直すことができるのです。
しかし、いつもケチケチしていたら疲れてしまいます。「人生は楽しむものだ」と捉え、重要なポイントに絞って、お金の使い方を考えましょう。長期的に害をおよぼしそうなことはよく考えるようにするのです。これを買ったらどれだけの喜びや価値が得られるのかと自問したり、同じお金があったらほかになにができるか、なぜ自分はこの選択をしようとしているのかを考えることで、お金の失敗を防げます。
自分がなにをしているのか、なぜそうしているのかを意識すれば、よりよい意思決定を行う能力を、ゆっくりと着実に身につけられるようになります。お金に関する決定で問題にすべきことは、機会費用と、購入物から得られる真の利益と、他のお金の使い道と比べて得られる真の喜びを味わうことです。企業のマーケターの誘導に屈しないために、本書のアドバイスを参考にしましょう。
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