世界のマーケターは、いま何を考えているのか?(廣田周作)の書評


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世界のマーケターは、いま何を考えているのか?
廣田周作
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)

本書の要約

買い物は投票」だと捉える消費者が増える中、企業の真剣さが問われています。企業の実態が可視化される中で、環境や人権に鈍感な企業は淘汰されてしまいます。「自分たちの未来は、自分たちの力で変えられる」と考えるZ世代が消費の中心になる中で、今までと同じやり方を続けていてては、企業は存続できなくなります。

時代が変化する中で、マーケターの仕事が変わり始めている?

価値観やライフスタイルが多様化した今、問われているのは認知度ではなく、社会や環境に対してどのような取り組みを行っているのかという「ファクト」と、それに基づいた「ブランド・プロミス」です。 要するに会社の規模よりも「まともなブランド」なのかどうかが、よりシリアスに問われるようになったわけです。「知ってる」と「推したい」は全く違うんです。(廣田周作)

ものが売れなくなって久しいですが、一方でZ世代から支持され、売上を伸ばしているブランドもあります。価値のあるブランドは、世の中に貢献したいというパーパスを明確にし、その理念に基づいたプロダクトやサービスを生み出すことで、消費者から支持されるようになります。

多くの企業のブランド戦略立案やイノベーション・プロジェクトに携わるマーケターの廣田周作氏は「企業が消費者に、どこまで未来の安心を約束できるか」が重要になっていると指摘します。世の中が混沌とする中で、人々に元気を与えたり、希望を語ってくれるブランドが勝ち組になっていきます。

「ナラティブ」とか、「ストーリーテリング」が話題になっていますが、創業者がどうしてその企業を立ち上げたのか?今後どういう未来を作りたいかを語ることが重要になっています。テスラのイーロン・マスクやパタゴニアのイヴォン・シュイナードの話を聴くことで、私たちはワクワクでき、そのブランドを応援します。自分の消費行動を振り返っても、世の中をよりよくしようとする企業のプロダクトを購入しています。

特にZ世代は物語に敏感で、経営者やマーケターが物語を紡がなければ、評価されなくなっています。ただ、ものを作るのではなく、物作りの背景をストーリーにして語ることが求められています。

「情報」と「物語」の違いは、納得性や共感性に表れます。 また、物語には時間軸があるため、「私たちは、どこからきて、どこにいるのか。またどこへ向かうのか」を明確にする作用があります。 よくできたストーリーを聞くと、企業として進むべき方向がわかります。  

消費者だけでなく、従業員も企業にパーパスがあることで、自分の役割が明確になります。社員を鼓舞しモチベートする物語を作ることで、企業と消費者、従業員につながりを築けるようになります。

物語がなぜ重要なのか?

「買い物は投票」なのだとすれば、未来への約束は、選挙における公約にほかなりません。 ブランドは、選挙に出馬した候補者のように、マニフェストとして、これまでに積み上げてきた努力や実績から、未来に何を約束できるのかを整合性と説得力を持って有権者(ユーザー)に語ることが求められるわけですね。

消費者の価値観が変わり、マイナスのインパクトを与える企業からプラスの影響を与える企業を応援する人が増えています。世界を変える力を消費者が持つことで、サスティナビリティ経営が当たり前になってきました。投資家や消費者がインパクト企業を応援することで、世の中をよりよくできるのです。

マーケターが考えるべき対象は「市場・経済」だけではなくなってきています。市場そのものの基盤である社会や自然環境が壊れていく中で、サスティナブルな世の中を実現することも、マーケターの仕事になってきたのです。

世界のマーケターは、環境や、社会的包摂、教育、人々のメンタルヘルスに対して、今何ができるかを真剣に考えなければなりません。消費者が抱えている課題に寄り添い、その解決策を示す企業が今後強くなっていくはずです。

マーケティングは、技術、文化、社会、環境と相互に作用をしながら、それぞれのテーマや課題、それに携わる人々と関係をつくることが求められているのです。マーケティングの世界に閉じこもらずに、外部とつながりを持つこと。それが今、マーケターに求められている課題なのだと思います。

企業が生き生きとしたコミュニティを立ち上げ、活気のあるいい雰囲気(vibes)をつくるためには、カルチャーの力を借りるとよいでしょう。著者は現在支持されているブランドは、未来への約束を守ることに加えて、文化活動を活性化させていると言います。カルチャーを媒介にすることで、「人と人」「人とブランド」のつながりを生み出せるようになるのです。

時代は複雑ですが、ブランドに問われていることは非常にシンプルで、「あなたのブランドは、ハートを強く持ってそれをやってるんだっけ?」ということです。

企業は信念と勇気と優しさを持って、ダイバーシティや、ウエルネス、サステナビリティに取り組み、ブランドのストーリーを語るようにすべきです。 

買い物は投票」だと捉える消費者が増える中、企業の真剣さが問われています。企業の実態が可視化される中で、環境や人権に鈍感な企業は淘汰されてしまいます。「自分たちの未来は、自分たちの力で変えられる」と考えるZ世代が消費の中心になる中で、今までと同じやり方を続けていてては、企業は存続できなくなります。経営者とマーケターは今こそブランドプロミスをストーリーにして語るべきです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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