ピザ屋を呼んだら、そのまま帰すな!:ラクして成果を出す、万能「仕事力」の高め方
近藤直樹,岩堀禎廣
トランスワールドジャパン
本書の要約
過去に基づく限られた成功に引きずられるよりも、過去を利用した創作的な発想に基づく予測不可能な成功を目指すことで、組織の力を引き出せます。未来は予測できないのですから、チャレンジし、失敗を積み重ねた方が、自社の可能性を広げてくれます。
学習する組織とは何か?
世界は相互のつながりをより深め、ビジネスはより複雑で動的になっていくので、仕事はさらに「学習に満ちた」ものにならなければならない。(ピーター・センゲ)
ピーター・センゲ博士が提唱した『学習する組織論』をわかりやすく解説したのが、本書ピザ屋を呼んだら、そのまま帰すな!:ラクして成果を出す、万能「仕事力」の高め方です。『学習する組織論』は分厚く、読了するのに時間がかかりますが、本書を読むことで、センゲのエッセンスを短時間で吸収できます。
ピーター・センゲは以下の5つの組織能力を育てるべきだと言います。
①システム思考
表面に見える出来事ではなく、その出来事を起こすパターンの相互関係と変化を明らかにし、それを効果的に変える方法を見つけるためのシステム思考を身につけるべき。
②自己マスタリー
自分にとって本当に大切なビジョンを明確にします。自分が「どのようにありたいのか」「何を創り出したいのか」について明確なビジョンを持ちながら、ビジョンと現実との間のギャップを明らかにし、それを創造的な力に変え、内発的な動機を築いていきます。
③メンタル・モデル
経験を通じて観察した事実をもとに、私たちが持つ評価。メンタルモデルが、私たちが物事を捉える際の判断の尺度となります。うまくいかないときには外にその原因を求めるのではなく、内省する時間を持つべきです。
④共有ビジョン
心から成し遂げたいと思う重要なビジョンを作ります。このビジョンが長期的な物事へのコミットメントを育みます。
⑤チーム学習
チームのメンバーが、制約や前例にとらわれずに、本当の意味で「共に考える」能力を養う。
複雑な状況では、人はたいてい自分に都合のよい視点から、物事を見てしまいます。複雑な問題についての他者との共通理解を構築するためには、人々がより大きなシステムに目を向けられるように支援することが欠かせません。
人々を勇気づけるビジョンをつくり、それを共有するだけでなく、目の前の厳しい現実に向き合うことも重要です。ビジョンと現実の緊張を利用してまったく新しいアブローチを生み出す方法をリーダーは学ぶべきです。不確実性の高い・変化の予測が難しい社会では、変化に俊敏に適応できる力を磨くしかないのです。
不確実な時代にリーダーがやるべきこと
「応急処置」は、すばらしければすばらしいほど、根本の原因は完全に覆い隠され、一見、問題が解決したように見えてしまう。(近藤直樹)
頭痛の原因は、寝不足や、肩こりや、目の疲れだったりしますが、人はその直接の原因には対処せず、頭痛薬に頼ります。がて頭痛は治まる。私たちは、なぜ頭痛が起きたのかを深く追求しないまま、頭痛が起こる前の行動をそのまま継続してしまいます。
また頭が痛くなった時も、前回と同様に頭痛薬を飲むという習慣が、やがて頭痛薬が効かなくなります。根本の原因には手をつけずに、同じ行動を継続することで、頭痛を治す方法がなくなってしまうのです。根本原因を見つけ、それを解決するためには、今までの習慣に頼っているだけでは、難しい場合があります。
「よい人材が欲しい」という会社には、システムの中に問題がある場合があります。「人が辞めたら補充する」 という会社が多いと思いますが、「辞めた分を新規採用で補充する」のは、組織の問題を頭痛薬でごまかす「応急処置」に過ぎません。
根本の原因は「人が辞める環境」に手をつけなければ、会社は強くなりません。なぜなら、人が辞める環境を放っておけば、よい人材ほど早く辞めてしまうからです。人材の離脱が続く場合には、人が辞めなくなるまで採用は控え、まずは人が辞めない環境づくりからスタートすべきです。「応急処置」を2回したら、根本の原因の治療に着手しなければ、課題を解決できなくなる確率を高めます。
仕事がうまくいくと、あえてメンバーを部署異動させる会社があります。会社では、「うまくいっている」「成果が出ている」場合、できるだけその状態を継続、維持しようとするものですが、その逆張りを考えるのです。
通常うまくいっている場合、メンバー「動かさない」のが鉄則ですが、それでは世の中の変化に適応できなくなります。組織を安定させないよう、常に新しいことをやり続けるために、成功した組織に変化を与えた方がよいのですです。
だれでも多かれ少なかれ、同質な価値観を持っていると、話が通じるから、順調な時はうまくいく。しかし、失敗したり、下降気味な時には、似たような考え方をしている集団は、新しいアイデアが出にくくなる。強い企業には、異なった価値観を受け入れる多様性の器がある。
失敗すると、人の本当の意味での底力が発揮されます。失敗経験を積むことで、自分の限界が見えたり、リアルな体験を得られたり、ネットワークを強化できます。その人の能力が向上する。私たちは、チャレンジし、失敗することで多くのことをを学べます。 組織の中の成功体験に甘んじるのではなく、あえてチャレンジする仕掛けを作ることで、組織を強くできるのです。過去の成功体験にとらわれないことをリーダーは意識すべきです。
過去の成功事例をいったん完全に忘れること、「アンラーニング」(Unlearning)を行うことで、新たなビジョンや目標を設定できるようになります。過去を「前提にする」のではなくて、新たなビジョンを「活用する」することで、明るい未来を築けます。
過去に基づく限られた成功に引きずられるよりも、過去を利用した創作的な発想に基づく予測不可能な成功を目指すことで、組織の力を引き出せます。未来は予測できないのですから、チャレンジし、失敗を積み重ねた方が、自社の可能性を広げてくれます。不確実性の時代に変化に適応するためには、過去にとらわれるのをやめ、新たな行動にチャレンジをすべきです。
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