ピーター・レイシー、ヤコブ・ルトクヴィストのサーキュラー・エコノミー デジタル時代の成長戦略の書評


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新装版 サーキュラー・エコノミー デジタル時代の成長戦略
著者:ピーター・レイシー、ヤコブ・ルトクヴィスト
出版社:日本経済新聞出版社

本書の要約

今まで廃棄されてきたものを資源に変えるサーキュラー・エコノミーへの転換が経営者に求められています。企業は市場、顧客、および天然資源の3者の関係性を全く新しい視点で見つめなおすことで、「サーキュラー・アドバンテージ」を獲得し、競合に優位性を発揮できます。

企業に優位性をもたらすサーキュラー・アドバンテージとは何か?

サーキュラー・エコノミーへの転換は、世界経済の中で過去250年間続いてきた生産と消費の在り方における、史上最大の革命となる可能性を秘めています。サーキュラー・エコノミーの本質は、市場、顧客、および天然資源の3者の関係性を全く新しい視点で見つめなおすことにあります。企業は無駄から富を生み出す莫大な機会を活かすことで、サーキュラー・エコノミーの競争優位性「サーキュラー・アドバンテージ」を新たに獲得できます。(ピーター・レイシー、ヤコブ・ルトクヴィスト)

アクセンチュアのピーター・レイシーヤコブ・ルトクヴィストは、サーキュラーエコノミー(循環型経済)のビジネスモデルをいちはやく確立した企業が、競合への優位性を発揮することを明らかにしました。

製品・部品・資源を最大限に活用し、それらの価値を目減りさせずに、永続的に再生・再利用し続けることがこれからの経営者には求められます。資源の無駄、遊休資産、捨てられる素材、まだ使用できるにもかかわらず破棄されている製品などを活用することで、企業は利益を生み出せるようになります。

大量生産・大量消費型のビジネス形態が続いた場合、経済損失額は2030年時点で4.5兆ドル、2050年時点では25兆ドルに達すると言います。これらの廃棄をなくし、資源を循環させることで、私たちはより豊かさを共有できるようになります。サーキュラー・ビジネスを取り入れた企業に消費者はロイヤルティを抱き、彼らを勝ち組にしていきます。

アクセンチュアは、革新的な方法で資源効率性を向上させている120社以上の企業を分析し、以下の5つのビジネスモデルに分類しました。
■再生型サプライ:繰り返し再生し続ける100%再生/リサイクルが可能な、あるいは生物分解が可能な原材料を用いる。
■回収とリサイクル:これまで廃棄物と見なされてきたあらゆるものを、他の用途に活用することを前提とした生産/消費システムを構築する。
■製品寿命の延長:製品を回収し保守と改良することで、寿命を延長し新たな価値を付与する。
■シェアリング・プラットフォーム:Airbnb(エアビーアンドビー)やLyft(リフト)のようなビジネス・モデル。使用していない製品の貸し借り、共有、交換によって、より効率的な製品/サービスの利用を可能にする。 ■サービスとしての製品(Product as a Service): 製品/サービスを利用した分だけ支払うモデル。 どれだけの量を販売するかよりも、顧客への製品/サービスの提供がもたらす成果を重視する。

サーキュラー・ビジネスの勝ち組の戦略とは?

回収とリサイクルのビジネスモデルがファッション業界を変えています。最近ではユニクロなどが店舗に回収ボックスをおき、そこから新たな商品を生み出す「RE・UNIQLO」という取り組みを行っています。

アイコレクト(I:CO)社は無駄をなくす独自スタイルで、回収とリサイクル型のビジネスモデルの発展に寄与しています。同社の「I:CO」という社名表記は「I collect(私が集める)」の略で、ファッション業界向けの市場アグリゲーターであり、効率的な回収チェーンを大規模に展開しています。

I:COは、中古の洋服を資源として再定義し、再販したり、焼却してエネルギーに転換したり、原材料としてリサイクルします。同社は消費者に対して、廃棄する衣類や靴、アクセサリー類をそれらの製品を購入した店舗に返却するようにと働きかけ、顧客は製品の返却と引き換えに、新品の購入時に利用できる割引券を受け取っています。リサイクルされた繊維製品は、建設業界向けの断熱材、クッション素材やぬいぐるみの詰め物、インソール素材やバッグとして使用されます。靴はフローリング用の床材、キーホルダー、保護包装材、ペレット、硬質ケース材に転換されます。

繊維製品の回収、仕分け、ランク付け、リサイクルにおけるエンド・トゥ・エンドのソリューションを提供することで、I:COは多くのクライアントを獲得しています。現在、50カ国以上で事業を展開し、有名ブランドのリサイクルやリユースのサポートを行っています。使用済みの繊維製品とフットウェアの回収サービスを提供し、継続的な資源循環を実現しているのです。

同社の提携企業
エスプリ(Esprit)
シー・アンド・エー(C&A)
アドラー(Adler)
フットロッカー(Footlocker)
ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)
フォーエバー21(Forever21)
レノ(Reno)

アパレル小売業者にとって、店舗を通じたリサイクルは顧客との関係を深め、店への客足を伸ばし、新商品の販売機会の提供につながります。中長期的には、小売業者は自社の生産過程でリサイクル素材を使用することもできます。  

スポーツ・ライフスタイルのプーマ社も、I:COと提携し、自社製品の資源フローを改善しました。自社店舗内に「Bring Me Back」箱を設置し、ブランドを問わず、消費者に使用済みの商品を持ち込んでもらえるようにしました。プーマ社では現在、この持ち込まれた材料を自社の製品シリーズの製造に使用しています。こうした活動により、プーマ社は欧米発の環境認証C2C(クレイドル・トゥ・クレイドルベーシック)の認定を受けました。

プーマ社の会長兼CEOであるヨッヘン・ザイツ氏が考案した環境損益計算書(EL&P)を活用し、自社製品のEL&Pに十分に留意しています。同社では製品の製造が環境に与える影響を測定することができ、従来型の材料とサーキュラー型の材料を使用した場合の比較もできるようになりました。同社の年間報告書によれば、インサイクルコレクションのシリーズでは、従来の製品に比べて環境コストが31%削減されています。また、同報告書では靴の取引価格が従来品より12%高いことも報告されています。プーマ社はビジネスと環境の両方で果実を得ることに成功し、ブランド価値を高めています。

米国を拠点とし550億ドルの売上規模を持つ建設機器の製造業者であるキャタピラー社は、約6000種類の部品を再生産することで、製品寿命を伸ばしています。世界17拠点で実際に回収した中古部品と新品部品を合わせ、組立、再販を実施することで、製造コストを削減しながら、環境保護にも貢献しています。

同社は顧客に対して、使用済みの部品の返送にインセンティブを設けています。顧客は製品の返送時に「コア・クレジット」を受け取り、再製造されたコア製品を購入する際の割引に使用できます。キャタピラー社は、このインセンティブのおかげで材料コストを低下させ、顧客をつなぎとめることに成功します。

リサイクル商品は同社の新品製品より約50%安価ですが、同じ保証が付加されています。同社は、再製造品の製造中に使用されるエネルギー消費量は、新品製品の場合より85%低く抑えられることを訴求することで、環境意識の高い顧客の心をつかむことに成功しています。キャタピラー社は廃棄された商品を埋立地に送らずに、再利用することで、製品寿命を伸ばしているのです。

サーキュラー・ビジネスを取り入れる企業が消費者から支持され、売り上げと利益をあげています。サーキュラーエコノミーのビジネスモデルをいちはやく確立した企業が、21世紀の勝ち組になっていきそうです。

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