絶対悲観主義
楠木建
講談社
本書の要約
組織全体を変革するには、相当時間がかかりますし、エネルギーも半端なく必要になります。まずは、自分が動かしやすいチームから変革を行い、それを組織に広げていくことを考えるべきです。ビジョンやパーパスが共有できているチームから変革をスタートし、徐々にそれを周りに広げていきましょう!
組織を悲観し、チームを楽観する!
「うちの会社は駄目だ」とか「組織の仕組みがなってない」とか、やたらと組織についての愚痴を言う人がいます。会社に期待するのは禁物です。どこの会社もそういうものでして、「うちの会社の組織や仕組みは最高です!」と言う人はあまりいません。会社が悪いのであれば、転職すればイイだけです。仕事の現場では日々の仕事をするチームが動いています。会社全体の組織を云々する前に、自分たちのチームを良くするのが先決です。(楠木建)
組織とチームについて、楠木建氏が絶対悲観主義の中で面白い考え方を紹介していたので、今日はこのアイデアを取り上げます。組織を改革することを多くのリーダーが目指しますが、まず、やるべきことはチームを改革することだと楠木氏は指摘します。
組織全体を変革するには、相当時間がかかりますし、エネルギーも半端なく必要になります。まずは、自分が動かしやすいチームから変革を行い、それを組織に広げていくことを考えるべきです。自分のチームを持たない経営者なら、一緒に動いてくれる取締役を見つけ、そのチームから変革を起こしていくのです。
社外取締役やアドバイザーをしている組織で、私も特定のチームから改革を行います。ビジョンやパーパスに共感しているリーダーにフォーカスし、それをメンバーに伝染させることを考えます。その際、オセロゲームに例え、白いコマを黒いコマで囲むことで、白い陣地を増やしていくことをイメージしてもらいます。自ら動ける白いチームをまずは作り、それを拡げることをアドバイスしています。
仕事の現場で動く自分のチームについては、今すぐに変えられることが多々あるはずです。組織全体が変わるにしても、その発端は往々にして特定のチームにあるものです。あるチームが、すごくいい動き方をして成果を出したとする。目に見える成果が注目され、会社全体に伝わる。
組織の他のリーダーも成果を求めていますから、成功したチームが生まれれば、そのやり方を真似してくれるようになります。
現状に問題を感じ、変革を起こしたければ、問題を組織の構造や制度にすり替えないようにするとよいと著者は指摘します。新しい制度設計を待たず、まず自ら動くようにするのです。
自分の影響の及ぶチームに新しい動きを起こし、明らかな成功例をつくることから始めましょう。他の人々に成果が見えれば、それに共感、共鳴する人が現れ、組織が変化し始めます。結果、多くのメンバーも変化を選択するようになります。制度の変更やシステム化をなど考えるのは、その後の作業で十分なのです。
まず、隗より始めよ!
組織のレベルになると、個人の顔が見えないからです。あまりチームで仕事をしたことがない僕が言うのもなんですが、記憶に残る仕事のリアリティーはどこまで行ってもチームにあるのではないでしょうか。今も昔もチームの物語が多いのは、そこに個々の人間が色濃く出るからです。チームで仕事をするにしても、チームが仕事をするわけではありません。仕事をするのは結局のところ個人です。
本書では、映画「大脱走」や「十二人の怒れる男」のチームワークの素晴らしさが語られていますが、個々のメンバーの力が他者への貢献として現れることで、チームが強くなることが分かります。リーダーがパーパスとビジョンを明らかにし、個々のメンバーの力を引き出すことが重要です。
チームは個人個人の集合体です。異なる能力を持った人々が共通のビジョン達成にに向けて助け合う集団こそが、よいチームなのです。組織とはそのチームの集合体なのですから、まずは経営陣はチームから変革を起こし、それを伝染させるようにします。そのためには、リーダー自らが変化し、周りの模範となるべきです。
チームを強くするためには、身近な優秀な人を活用するのも手です。リーダーは優秀な人を集めるために、燕の時代の昭王の行動を参考にするのもありだと思います。「まず、隗より始めよ」という中国戦国時代の格言は、部下を活用する際のヒントになります。
昭王は天下に逸材を求め、学者の郭隗にその方法を尋ねます。郭隗は「昔、王から名馬を求めてこいと千金を託された馬丁が、はるばる遠方まで出かけたにも関わらず、死んだ馬の骨を五百金を投じて買ってきました。王がその馬丁をなじると、『死馬の骨ですら五百金で買う王なら、生きた馬はきっと高価に買ってくれるだろうと、いまに天下の名馬が王のもとに集結するはず』と答えました。その結果、王は類まれな名馬を3頭も求めることができたのです。
郭隗はこの逸話を引用しながら、「賢者を招こうとするなら、自分のようなあまり優秀でない者を優遇することから始めるべきです。そうすれば、天下の賢人が王のもとに続々と集まってきます」と話しました。昭王は郭隗のアドバイスに従い、彼を優遇したのです。昭王の決断により、元々、人材が少なかった燕の国に逸材が我先に集まり、国を強くしたのです。
郭隗はもちろん優秀でしたが、そのアドバイスを聞いた昭王も素晴らしいリーダーです。リーダーは、ビジョンやパーパスを共有した仲間とともに力を合わせることで、チームを強くできます。徐々に他のチームを巻き込むことで、組織を強くできるのです。
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