新版 新しい戦略の教科書(酒井穣)の教科書の書評

black mountain bike parked beside concrete wall
新版 新しい戦略の教科書
酒井穣
ディスカヴァー・トゥエンティワン

本書の要約

戦略とは現在地(現状)と目的地(あるべき姿)を結ぶルートです。現在地に関する情報を集めて分析することは、未来の不確実性を下げることであり、後に続く目的地の設定と戦略の立案をスムーズなものにします。ファイブフォース、ブルーオーシャン、バリューチェーンのフレームワークで戦略の精度を高めましょう。

戦略とは何か?

戦略とは、「現在地から目的地に行くときのルート」にたとえられる。戦略立案は①現在地の確認、②目的地の決定、③最適ルートの探索の3つのステップで行われる。(酒井穣)

戦略というと難しく考えがちですが、著者は戦略とは旅計画をつくることだと指摘します。自分が置かれている「現在地」から目指す目的地へのルートを設計することが戦略の基本になります。「目的地」は、現在地に依存し、かつ幅のある「未来」だと捉え、顧客情報や競合情報、市場環境などの情報を組み合わせ、戦略(最適ルート)を立案します。

時に目的地は環境変化や自社の成長によって変化します。当然、目的地が変わると「戦略」も変化します。そのため、戦略においては、常に「現在地の確認」を怠ってはならないのです。

目的地に近づくことで手に入る「新しい現在地の情報」が戦略を成長させます。変化を前提にし、戦略を立案するメンバーを選ばないと、結果を出すことはできません。

現在地を確認することは、問題意識を持つことです。過去の選択、失敗体験を振り返ることで、本当にやるべきことが見えてきます。

それは、「すべての問題の原因は、必ず過去にある」ということです。確かに、目の前で起こっている問題を解決することも大事なことです。しかし、近い将来、あなたの周りで発生する問題の多くは、今のあなたの判断にこそ原因があるという視点を持たないと、将来もまた、今と似たような問題に悩まされることになるのではないでしょうか。将来を予測し、戦略を立てて、それを実行するということは、自分の現在の判断で、よりよい将来を作り出していくということです。それは、自分の将来を、自分の責任においてデザインしようとする態度でもあります。

楽観論だけで戦略を組み立てるのではなく、考えられるリスクを明らかにし、いくつかのオプションプランを考えるようにします。特定された「重大なリスク」に対して「取り得る事前の対策」と「事後の対策」を考えることで、失敗する確率を下げられます。過去の失敗を振り返ることで、未来のリスクを検討することの重要性に気づけるはずです。

また、戦略の立案と戦略の実行はセットに考えるようにします。他人に動いてもらうためには、ロジカルな説明だけでは難しく、相手の立場や感情を考慮する必要があります。

対立が生まれたとしても変化の重要性を相手に伝え、しっかりと理解してもらうことです。戦略の実行を指揮するためには、反対派を遠ざけるのではなく、懐に飛び込み、キーマンとの対話をしつこく続けることが肝心です。相手が反対する理由を傾聴によって明確にできれば、解決策が見えてきます。

3つのフレームワークを活用しよう!

「自社にできること」と「顧客が求めること」の重なる部分が、自社がビジネスを展開できる「スポット」です。その中でも特に「競合にできること」と重ならないスポットこそが、「スイート・スポット」になります。

(1)現在のスイート・スポットをいかにして有効活用するか(攻める戦略)
(2)現在のスイート・スポットをいかにして維持するのか(守る戦略)
(3)将来的にスイート・スポットをいかにして広げていくか(成長させる戦略)の3つの戦略を組み立てるようにしましょう。

スイート・スポットには、「顧客に対して、自社にしか提供できない価値」が含まれていますが、この強みを明確にし、それを伸ばすことを考えましょう。

「自分の会社がなくなった場合、困るのは誰で、それはなぜか」という質問に答えることで、優位性が明らかになり、目指すべき姿が見えてきます。

また、自社のあるべき姿から、バックキャスティングすることも大切です。自社のパーパス、理想の姿と現在のギャップを明らかにし、本当に取り組むべき課題を明らかにしましょう。

戦略を立案する際には、以下の3つのフレームワークを活用します。
(1)「ファイブフォース分析」で外部環境を分析する
・業界内での競争
・業界への新規参入者
・代替品の存在
・買い手(顧客)の交渉力
・売り手(サプライヤー)の交渉力

ファイブフォース分析はによって、業界の競争環境や収益構造を明らかにできます。新商品の開発や新事業への参入だけでなく、現状の自社のポジションを把握し、改善を図ることもできます。現在地から目的地のルートをデザインするために、5つの視点で自社の状況を確認しましょう。

(2)「ブルーオーシャン戦略」をポジショニングの決定の際に参照する
今まで存在しなかったまったく新しい領域に事業を展開して、新たなマーケットを創造します。レッドオーシャンをずらしたところや同じ商品を違う顧客に販売することで、ブルーオーシャンを実現できます。ワークマンはアウトドアユーザーや女子を顧客に設定することで、勝ち組になったのです。

(3)「バリューチェーン分析」で、戦略を実行するための内部環境を整える
特にバリューチェーン分析を行うことは重要です。自社のビジネスプロセスを洗い出し、どこを強化すれば差別化につながるかを明らかにします。 全体へのコストインパクトが大きく、改善すれば大きな利益改善につながる活動を優先し、小さな一歩を踏み出すのです。

付加価値の連鎖を強化すること、メンバー全員でそれを目指すことで、組織は強くなります。ワークマンは顧客の声を生かし、次々に新たな商品を生み出しています。また、同社は「価値を生まない無駄なことはしない」というルールを徹底することで、社員の力を引き出し、成長軌道を確実なものにしました。

「未来を決めるのは、今の選択だ」と著者は指摘しますが、その選択を、少しでも優れたものにするために、「戦略とは何か」を正しく理解し、活用していくようにしましょう。本書はその指南書として最適です。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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