人に頼む技術コロンビア大学の嫌な顔されずに人を動かす科学
ハイディ・グラント
徳間書店
人に頼む技術 コロンビア大学の嫌な顔されずに人を動かす科学の要約
イノベーションを進める際に他の社員の助けを求めるのは普通のことで、そのときには過剰に謝る必要はありません。重要なのは、助けてくれた人への感謝を示すことです。このような感謝の表現が、両方の満足感を高め、良好な関係を築き、イノベーションの進行を促すことにつながります。
助けを求めるときの3つの方法
何かを頼むとき、その頼みを引き受けることのメリットを相手に強調してはいけません。(ハイディ・グラント)
人はなぜ他者に頼み事をすることに抵抗を感じるのか、その背景にはさまざまな心理的要因が関わっています。この本では、社会心理学者のハイディ・グラントが見つけた相手の力を上手に利用するテクニックやコミュニケーションのポイントなどが紹介されており、人間関係を築く上で非常に役立つ情報が詰まっています。
コミュニケーション能力は、人間関係を構築し、円滑に進めるために必要不可欠なスキルです。他者に助けを求めることも、その一環として重要な要素です。しかし、頼み事をする際には、相手の立場や気持ちを考えることが大切です。相手にとってもメリットがあるような提案やお願いをすることで、相手も前向きに協力してくれる可能性が高まります。また、言葉遣いや表情、態度なども、相手に対するリスペクトを示す重要な要素となります。
助け合いは人間関係の根底にある美徳であり、他人を助けることから得られる幸せは、確かに心温まるものです。しかし、支援を求める際にこの幸せを過度にアピールすると、相手はコントロールされていると感じ、関係が冷え込む原因になり得ます。これは、助けることの自主性や喜びが脅かされ、相手を不快にさせる可能性があるからです。
助ける行為のメリットを伝える場合も、注意が必要です。利己的な利益と利他的な利益を混同することなく、相手が感じる可能性のあるプレッシャーや義務感を避け、むしろ社会的な意義や一般的なメリットに焦点を当てるべきです。これにより、助けることの本来の価値を尊重しながら、相手に対する敬意と理解を示すことができます。
人間関係では、思いやりと相互のサポートが大切です。私たちは互いを支え合うことで、より良い社会を構築できます。お互いの立場を尊重し、心からの支援を行うことが、本当の意味での助け合いです。そうすることで、双方が真の幸せと満足感を得られ、より強い絆が築かれます。
他者にお願い際には、相手の立場や考え方を尊重し、適切なメッセージを伝えることが大切です。利己的メリットと利他的メリットをバランスよく伝えることが効果的なお願いの仕方であることがわかります。
その上で、著者は他者とのWin-Winになるお願い方法を教えてくれています。
①内集団の感覚を活用する(仲間意識)
人々は自分たちが属するグループ内での問題や困っている人に特に注意を払い、支援する傾向があります。これは、集団の幸福が自分自身の幸福に直接関わってくると感じるからです。そのため、頼み事をする際には、共通の集団や目的を強調することが有効です。
②自尊心を刺激する(自尊心)
人々は他者を助けることで自尊心を高め、ポジティブな自己認識を得ることができます。自分が他者に貢献できる人間だと認識することで、助ける行動が促されます。そのため、お願いをする際には、相手が貢献できることの価値を強調することが効果的です。
③有効性の認識を提供する(有効性)
有効性の認識は人々が行動する強い動機です。自分の行動が実際にポジティブな結果を生み出していると感じると、人はさらに支援したいと考えます。反対に、自分の行動が無意味だと感じた場合、モチベーションは低下し、長期的には無力感やうつ病につながることもあります。
だからこそ、他人を助ける時は、その行動がどんな良い結果をもたらしたかを伝えることが大切です。また、誰かからの助けを受けた時は、そのお礼として、その行為がどのように価値あるものであったかを具体的に伝えましょう。
これらの方法を採用することで、お願いを聞いてくれる人々は自発的に助けてくれるようになり、結果として双方に利益をもたらす関係が築けるようになります。当然、これらの法則は相手とのコミュニケーションにも良い影響を及ぼします・
イノベーションを起こすための頼み方とは?
世間一般には、〝人助けは、相手のためにすることであり、助ける側には何もメリットはない〟という考えがあります。しかし、それは大きな間違いです。誰かを助けるかどうかを判断するとき、毎回ではないにせよ、私たちは少なくとも部分的には自分自身の利益や、助けることで自分がどんな気分になるかを計算しているのです。そして、それは良いことです。なぜなら、助ける側がメリットを見出せば、それは誰かを助けることへの強力な動機付けになるからです。
社会には「人助けは相手のためだけに行う行為であり、助ける側には利益がない」という誤解がありますが、実際には他人を助けることから得られる利益も大きな動機の一つです。これには、自己満足や喜びの感覚が含まれ、これが協力的な文化を生み出しています。
特に、チームやコミュニティでは、「必要な時は助け合う」という理解のもとに、持ちつ持たれつの関係が築かれます。この精神はイノベーションの過程でも非常に重要になると私は思います。
イノベーションを推進するには、他者からの支援を得ることが不可欠です。そのためには、組織やパートナーに対して適切にお願いをする能力が求められます。しかし、助けを求める際に先に謝罪すると、集団の団結感や協力の精神が損なわれる可能性があります。
謝罪は、必要性がない限り避け、代わりにお願い事を明確にし、相手が貢献した後には感謝を表すべきです。このような姿勢が、相互支援の文化を育み、イノベーションを促進します。
これは、特に新しいアイデアやイノベーションを提案し、実現を求める場合に重要です。お互いが同じ目標に向かって協力しているという認識があれば、助けを求めやすくなり、提案されたアイデアに対するサポートも得やすくなります。
共通の目標を持つことは、他にどのような集団に属していても、相手とのあいだに仲間意識をつくり出せる強力な方法です。なぜなら、脳はその人が自分と同じ目標を持っているかどうか、その成功がその人にかかっているかどうかに、とても敏感だからです。このため共通の目標に意識を向けさせることで、相手から助けを得やすくなります。
イノベーションを促進するためには、共通のビジョンや目的を共有することが重要です。チームメンバー間での仲間意識を深めることで、組織内の協力の精神を育てることができます。
まず、共通の感情や経験を探し出し、同じ目標に向かって進むチームの一員であるという感覚を醸成しましょう。 チーム内での相互の信頼と尊重を基盤として、明確で具体的なサポートを求めることが、効果的なコラボレーションに繋がります。
このアプローチを通じて、新しいアイデアやプロジェクトに対する共感と支援を得ることができ、共同で成果を出す基盤を築くことが可能になります。
イノベーションを推進する際、同僚・上司・パートナーからの助けを求めることは一般的です。この時、不必要に謝るよりも、むしろ協力してくれた人々に感謝を示すことが重要です。感謝を表すことによって、支援をした側と受けた側の双方がより大きな満足感を得ることができます。積極的に感謝の意を伝えることは、良好な関係の構築とイノベーションの促進において中心的な役割を果たします。
実際に、感謝を表すことの重要性は脳科学の研究にも支えられています。感謝を受けた人は、その人との関係を長期にわたって保ちたいと考え、相互の結びつきを強化しようとします。これは、協力してくれた人が自分の投じた時間や労力が有意義であったと感じるからです。
一方で、感謝を示さないことは、人間関係を損ねる最も確実な方法の一つです。したがって、助けを受けた際には、心からの感謝を伝えることを忘れないでください。
あのスティーブ・ジョブズも、成功を収めるためには他者への依頼が重要であると述べています。彼は自身の経験から、助けを求めた際に人々は応えてくれることが多いと感じており、このことを理解している人は少ないと指摘しています。
ジョブズによると、人に助けを求める行動は、感謝を感じた相手が同じように支援を返す傾向があるため、相互の利益となります。しかし、多くの人が助けを求めることに躊躇する傾向があるため、この行為を実践する人とそうでない人との間に大きな差が生まれることがあります。
イノベーションを起こすためには、他人に協力を求めることを恐れず、彼らを自分のチームの一員と見なすことが重要です。この本で提案されているアドバイスを実行し、他者との協力を促しましょう。
コメント