親リッチ(宮本弘之)の書評

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親リッチ 
宮本弘之
日本経済新聞出版

親リッチ(宮本弘之)の要約

「親リッチ」とは、親や祖父母が1億円以上の資産を持つ、20歳から50歳の人々を指します。企業はこのグループに対して、親子間や家族関係を大切にする戦略を取り入れることで、彼らから選ばれる存在になります。ファミリーの顧客体験を高めることで、長期的で良好な関係を構築できるようになります。

消費市場の新たな主役の親リッチとは何か?

今の富裕層および超富裕層である親・祖父母世代は、いずれ消費市場から退出していきます。その後、消費市場の主役になるのは、親や祖父母の資産を承継する235万人の親リッチや、299万人のネクスト親リッチです。(宮本弘之)

日本において、富裕層の世帯数は近年急速に増加しています。景気の低迷が続く中で、所得格差は一層明確になり、野村総合研究所によると、2017年時点で純金融資産保有額が1億円を超える世帯は126.7万世帯に達し、2011年と比較して56.4%増加しました。

この富裕層の増加は、彼らの子供や孫世代である「親リッチ」の顕著な増加につながっています。 『親リッチ』は、野村総合研究所の宮本弘之氏によって提唱されたコンセプトで、1億円以上の資産を持つ親や祖父母を持つ20代から50代の個人を指し、その数は約235万人と推定されています。その予備軍の10代以下の『ネクスト親リッチ』は299万人になるなど、今後大きなマーケットを形成していきます。

親の職業は、主に事業家や医師、弁護士などの職業が多いのが特徴です。中には親の資産や人脈を使って成功を収めた人もいますが、独自の努力で成功を達成した人もいます。多くの場合、親世代の援助を受けているため、普通のサラリーマン家庭とは異なる消費が可能になります。

都市部に住む親リッチは、伝統的な富裕層とは異なり、新しいアイデアや価値観を追求する傾向があります。彼らは金銭的な余裕があるため、新しい製品やサービスを試したり、市場に新たな動きをもたらすイノベーターやアーリーアダプターとしての役割を果たしています。

親リッチの三大消費は、ファッション、レジャー、教育と言われています。お金持ちが最も重視する消費の一つがファッションです。彼らは高品質な服やアクセサリーを求め、ブランド品やデザイナーアイテムを好んで購入します。ファッションは彼らのステータスや個性を表現する手段でもあります。特に、ファッションにおいては、母娘が存在感を示しています。ただ、地主などの伝統的な富裕層は、お金を減らさないために、逆に質素であると言います。

親リッチに共通する特性の一つとして、教育への投資に対する強い意識が挙げられます。海外留学を含めた高度な教育に多額の投資を行い、広範な知識や経験を積んで自己実現を目指す人が多いのです。彼らは、受け継いだ資産を単に消費するのではなく、それをビジネス展開や再投資に活用し、さらなる財産の増加を図ることを重要視しています。

多くの「親リッチ」家庭では、子どもの海外留学費用は裕福な祖父母によって支払われています。いくら親リッチな家庭でも、普通のサラリーマンの親には、海外留学などの大きな出費を賄う余裕はない場合が多いと言います。一方で、祖父母にとっては、孫の教育に投資することは、単なるお小遣いをあげるよりも価値のある支出と考えられています。

そのため、孫の海外留学支援は、多くの親リッチ家庭で、自然なこととされており、孫たちは比較的容易に海外留学のチャンスを得ています。

親リッチが一般の人々と異なる一つの特徴は、金融リテラシーが高い点にあります。彼らは金融機関の情報を鵜呑みにせず、「セカンドオピニオン」を得ることが多いと言います。その理由は企業に有利なものでなく、顧客自身の立場に立った適切なアドバイスをもらいたいからです。自社の利益を優先する姿勢の金融機関は、今後、彼らから選ばれなくなる可能性が高まっています。

親リッチ世代の特徴とマーケティング戦略

裕福な家族が結び付きを強め続けているのには理由があります。裕福な家系には、代々にわたって資産や事業を受け継いできた歴史があり、多くの困難を乗り越えるには家族の結び付きが重要であることが身にしみているからです。家族や親族内での不和や揉め事が、結局、一族の没落をもたらすということを裕福な家族は知っているのです。

親リッチが家族の絆を重んじる理由は、家族の歴史や伝統、成功への信念、子どもへの教育と価値観の伝承など、多様な要因によります。家族との強い結びつきを通して、彼らは家族の問題に対処し、長期的な繁栄を実現しています。

このため、裕福な家族向けの企業の担当者は、家族全員との信頼関係構築を目指すべきです。彼らは、家族間の意見の食い違いなどを解消するサポートを受け入れます。しかし、親だけにコンタクトする姿勢や、親の意向を反映した提案は、親リッチから反感を買う可能性があるので、顧客である親リッチとの距離感を意識すべきです。

親リッチは、従来の富裕層とは異なるユニークな消費パターンとライフスタイルを築いており、彼ら独自の価値観の形成が特徴です。健康意識の高さ、社会への貢献、持続可能性に対する強い関心が、彼らの行動を牽引しています。

親リッチセグメントの市場は、富裕層の拡大で、今後も成長が見込まれると予測されています。富裕層を顧客とする企業は、親世代の消費パターンからの変化に対応し、この若い世代の関心や共感を引き出す戦略が求められます。

著者は親リッチとの関係構築のヒントを明らかにしています。
①ファミリーの結びつき強める支援。(信頼の数珠つなぎを意識する)
②次世代のアドバイスを提供する。(潜在ニーズを明らかにし、親リッチのニーズを先取りし、提案する)
③生涯にわたって顧客に寄り添う。

ファミリーの結びつきを強化する支援は、家族内の信頼関係を築くことで、長期的な顧客関係の構築を目指します。家族が信頼し合い、お互いを支える環境が整うことで、商品やサービスが自然と家族内で推奨されるようになります。このような環境を作ることは、顧客との絆を深め、信頼を築く重要な要素となります。

ファミリーとの関係性を意識したアプローチによって、企業は親リッチという新たな顧客層を理解し、効果的な提案ができるようになります。顧客の特定のニーズに的確に対応することで、より良い顧客体験を提供し、長期的な関係を構築できるようになります。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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