アメリカの罠 トランプ2.0の衝撃
ジム・ロジャーズ、ジャック・アタリ
文藝春秋
アメリカの罠 トランプ2.0の衝撃の要約
トランプが2024の大統領選挙で再選された場合、世界はどのように変化するのでしょうか?ジム・ロジャーズは歴史から学べば、答えが見えると言い、保護主義政策の誤りを指摘します。トランプは自分の利益を優先し、「有言実行」で物事を進めていくことが予測される中、日本もアメリカへの真摯な対応が求められています。
トランプの保護主義政策が間違っている理由
保護主義で貿易戦争に勝った国はない。(ジム・ロジャーズ)
本書の編集時点では、民主党の大統領候補がバイデンであったため、トランプが次期大統領になる可能性が高いと考えられていました。その後、カマラ・ハリスが候補に選ばれたことで、どちらが当選してもおかしくない状況になりました。
もし、トランプが大統領になった場合、アメリカ大統領選後の世界がどうなるかについて、イアン・ブレマーやポール・クルーグマンを含む8人の専門家が徹底的に分析しました。今日は、ジム・ロジャーズとジャック・アタリの考えをご紹介します。
1929年に始まった大恐慌は、現代の経済史上最も深刻な経済危機の一つとして広く知られています。この未曾有の危機に直面したアメリカのフーバー政権は、国内産業を保護する目的で、約20,000品目の輸入品に対し平均50%もの関税引き上げを実施するという、極めて保護主義的な政策を採用しました。
しかし、この政策は意図せぬ悲惨な結果をもたらすことになります。多くの国々がアメリカ製品に対して高関税を課すという報復措置を取り、その結果、国際的な商取引は著しく減少し、世界貿易は停滞に陥りました。皮肉にも、国内産業を守るはずだったこの保護主義政策が、逆に経済危機をさらに深刻化させ、世界経済の回復を大幅に遅らせることとなったのです。
さらに深刻なのは、この経済的混乱が政治的緊張を高め、最終的には第二次世界大戦の遠因の一つとなったとも考えられている点です。経済と政治の密接な関係性を如実に示す歴史的事例と言えるでしょう。
現代への教訓 「歴史は繰り返す」という格言がありますが、貿易政策においてもこの言葉が当てはまるとロジャーズは指摘します。近年の保護主義的な動きを見ていると、過去の失敗から十分に学んでいないのではないかという懸念が浮かびます。
歴史が教えてくれる重要な教訓の一つは、貿易戦争ではすべての当事国がマイナスの影響を受けるということです。短期的には国内産業を保護できたように見えても、長期的には経済全体に悪影響を及ぼす可能性が高いのです。さらに、グローバル化が進んだ現代においては、一国の政策が世界経済全体に波及効果をもたらすことを忘れてはなりません。国際協調の重要性は、過去にも増して高まっていると言えるでしょう。
ロジャーズは金融市場においても、歴史的なパターンが繰り返され、過去の経済危機や政策の影響が現代にも反映されている実態を目の当たりにしてきたといいます。
歴史は単なる過去の記録ではありません。それは現代の政策決定者や市民にとって、貴重な教訓の宝庫なのです。特に貿易政策のような複雑な問題に取り組む際には、過去の成功と失敗から学ぶことが不可欠です。 保護主義的な政策は短期的には魅力的に見えるかもしれません。
しかし、長期的には深刻な負の影響をもたらす可能性があることを、歴史は私たちに警告しています。トランプの貿易政策が行われれば、貿易は停滞し、経済にも悪影響を及ぼしそうです。歴史に学べば、トランプの政策が正しいくないことは明らかです。
ロジャーズは、ウォール街の投資家や大企業のCEOなどの富裕層がトランプ氏を支持する傾向にあると指摘しています。その背景には、トランプ氏が提案する一連の経済政策があります。
具体的には、法人税率の大幅な引き下げ、キャピタルゲイン税の軽減、相続税の実質的な廃止などが挙げられます。これらの政策は、富裕層の資産形成に直接的な恩恵をもたらす可能性があります。 さらに、ロジャーズは規制緩和政策にも注目しています。金融規制のロールバックや環境規制の緩和は、短期的には企業の収益性を高める可能性があります。
しかし、長期的な経済の持続可能性や社会的公正の観点からは議論の余地があることは間違いありません。 ポール・クルーグマン教授も、トランプ氏の政策が富裕層に有利に働く可能性を指摘しています。
日本はトランプ対策を真摯に行うべき!
アメリカではTikTok(中国発の動画共有アプリ)について、1以内にアメリカでの事業を売却しなければ国内から追放する法案にバイデンが署名をしました。TikTokは危険なドラッグなので、ヨーロッパからも追放するべきです。(ジャック・アタリ)
バイデン大統領がTikTokの規制法案に署名しました。これは米中間の緊張関係がさらに高まっていることを示しています。フランスの著名な知識人ジャック・アタリはTikTokを「危険なドラッグ」と呼び、ヨーロッパからも排除すべきだと主張しています。
この問題はソーシャルメディアアプリの規制だけにとどまりません。中国のAI技術や自動車産業の台頭も、欧米諸国にとって大きな脅威となっています。特に自動車産業では、中国製の安価な車両がヨーロッパ市場を席巻しつつあります。ドイツさえも中国企業とのパートナーシップを模索せざるを得ない状況です。
このような状況下、バイデン政権は中国製電気自動車への関税を100%に引き上げると発表しました。これは明らかに保護主義的な政策であり、来たる大統領選挙を見据えた戦略とも言えます。特に自動車産業が集中するミシガン州や鉄鋼産業の中心地であるペンシルベニア州など、激戦州への配慮が見受けられます。
一方、トランプ前大統領は再選された場合、すべての中国製品に60%以上の追加関税を課すと宣言しています。このように、民主・共和両党ともに保護主義的な姿勢を強めており、アメリカの孤立主義化が進んでいます。 アタリは、トランプの再選が世界にとって「大惨事」になると警告しています。
トランプ政権下では、アメリカ国内の人権や民主主義が脅かされ、司法制度が弱体化し、女性の権利が制限される可能性があります。さらに、世界中の民主主義国家に対するアメリカの支援が大幅に削減されることも懸念されます。
特に注目すべきは、トランプが「一夜にしてクーデターを起こしたい」と発言していることです。アタリは、トランプの言動を軽視せず、その裏に隠された意味を慎重に読み取る必要があると指摘しています。
トランプの復権は、日本の安全保障にも大きな影響を及ぼす可能性があります。アタリ氏は、トランプ政権下ではアメリカが100%日本を支援する保証がなくなるとして、台湾有事に備えるべきだと警告しています。
この状況下で、日本を含む世界各国は、アメリカの政治動向を注視しつつ、自国の安全保障と経済的利益を守るための戦略を練る必要があります。同時に、国際協調と自由貿易の重要性を再認識し、過度な保護主義に傾かないよう慎重に舵取りをしていくことが求められます。
トランプは自分の利益を優先し、「有言実行」で物事を進めていきます。経済・戦争などのリスクが高まることが予測される中、日本もアメリカへの真摯な対応が求められています。
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