稼ぐ言葉の法則: 貧す人が稼ぐ人に変わる「売れる法則85」(神田 昌典, 衣田 順一)の書評

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稼ぐ言葉の法則: 貧す人が稼ぐ人に変わる「売れる法則85」
神田 昌典, 衣田 順一
ダイヤモンド社

稼ぐ言葉の法則(神田 昌典, 衣田 順一)の要約

顧客に「いいもの」として認知・理解してもらうためには、顧客の視点を深く理解し、多様な商品知識を持つことが不可欠です。単に自社製品やサービスの特徴を列挙するだけでは不十分で、それらが顧客の生活やビジネスにどのようなベネフィットを提供し、具体的にどうのような変化をもたらすかを明確に示す必要があります。

共感から顧客との関係を構築するPESONAの法則とは?

「いいもの」とは売り手にとっていいものであって、買い手にとっては「残念な商品」以外のなにものでもない。 自分だけが「いいもの」と思い込んで、売る努力をしていない人があまりにも多い。(神田 昌典, 衣田 順一)

商品開発と販売戦略において、「いいもの」の定義を再考する必要性が高まっています。多くの企業や個人事業主が陥る典型的な誤りは、自社の製品やサービスに対する過剰な自信です。彼らは自社の製品やサービスを顧客とは異なる視点で評価し、その価値を過大に見積もってしまう傾向があります。

この思考の落とし穴は、「使ってもらえれば良さがわかる」という甘い認識にあります。確かに、製品やサービスの真価は使用経験を通じて理解されることも多いでしょう。しかし、現代の消費者は膨大な選択肢に囲まれており、新しい製品を試す機会そのものが貴重になっています。

ここで直面する最大の課題は、顧客に製品を「使わせる」ことの困難さです。インターネットやSNSの普及により、情報が大爆発氏ている中、顧客の注意を引きつけ、行動を促すことは容易ではありません。さらに、既存の習慣や競合製品への愛着が、新しい選択肢への移行を妨げる障壁となっています。

神田昌典氏と衣田順一氏が指摘するように、売り手の視点に偏重した「いいもの」の認識が、買い手にとっては単なる「残念な商品」に過ぎないという現実を浮き彫りにしています。

この問題の根底には、自己満足に陥り、真摯な販売努力を怠る姿勢があります。市場で真に評価される商品を生み出すためには、自社の製品やサービスを客観的に見つめ直し、継続的な改善を行う必要があります。

優れた販売者は、製品知識と顧客知識の両方を兼ね備えています。彼らは顧客の抱える問題や欲求を深く理解し、その解決策として自社の製品やサービスをどのように位置づけるべきかを熟知しています。この深い洞察力こそが、顧客のニーズに合致した効果的な提案を可能にし、真の意味で「いいもの」を提供する力となるのです。

顧客のペインを理解することは、単に表面的な問題を把握するだけでなく、その背後にある本質的な課題や願望を明らかにすることを意味します。そして、その理解に基づいて、自社製品やサービスのベネフィットを適切に伝える能力が求められます。これは単なる製品説明ではなく、顧客の生活や事業にどのような価値をもたらすかを具体的に示すことです。

このアプローチは、従来の「プロダクトアウト」の考え方から「マーケットイン」へのシフトを促します。つまり、自社の技術や能力を起点とするのではなく、市場のニーズや要望を出発点として、顧客起点から戦略を構築することが重要となります。

【貧す人】は、商品をそっけなく説明する。なぜならきちんと商品知識を学んでいないから。
【稼ぐ人】は、商品を深く愛しているから、顧客に応じて様々な観点から説明できる。商品を愛すれば愛するほど、顧客に伝わる商品価値は高くなる。 商品説明は、顧客へのラブレターなのだ。

顧客に「いいもの」として認知・理解してもらうためには、顧客の視点を深く理解し、多様な商品知識を持つことが不可欠です。単に自社製品やサービスの特徴を列挙するだけでは不十分で、それらが顧客の生活やビジネスにどのようなベネフィットを提供し、具体的にどうのような変化をもたらすかを明確に示す必要があります。

有名な「PASONAの法則」の進化形の「PESONAの法則」は、顧客との関係を共感を軸に築くための効果的な方法です。この法則は、顧客の抱える問題から始まり、最終的な行動に至るまでの過程を順序立てて考えるアプローチです。
・Problem 問題
・Empathy 共感
・Solution 解決策
・Offer 提案
・Narrow 適合
・Action 行動

まず、顧客が直面している問題(Problem)を明確にします。これは表面的な悩みだけでなく、その根底にある本質的な課題を理解することが大切です。次に、その問題を抱える顧客の気持ちに寄り添い、共感(Empathy)を示します。これにより、顧客との信頼関係を築く土台ができます。

そして、自社の商品やサービスがどのようにしてその問題を解決(Solution)できるかを説明します。ここでは、単に製品の特徴を並べるのではなく、顧客の生活やビジネスにもたらす具体的な利益を示すことが重要です。その後、解決策をより具体的な形で提案します。価格や導入方法、サポート体制など、顧客が決断するために必要な情報を提案(Offer)します。

次に、解決策が功を奏して、購入後満足いただける買い手の条件を絞り込み、適合(Narrow)させます。全ての人に完璧な解決策を提供するのは難しいので、自社の強みを最大限に活かせる顧客に焦点を当てます。 最後に、顧客に具体的な行動(Action)を促します。これは商品の購入や問い合わせなど、次に取るべきステップを明確に示すことです。

このPESONAの法則の強みは、全てのプロセスを通して顧客の立場に立って考えられる点です。問題の理解から行動の促進まで、一貫して顧客視点を保つことで、深い信頼関係を築き、効果的な販売につなげることができます。 このアプローチは、単に物を売るのではなく、顧客の課題解決を手伝うパートナーとしての立場を貫きます。結果、長期的な顧客と関係を築け、LTV(Life Time Value)が長くなります。

また、この法則は、マーケティング戦略の立案から実際の販売トークまで、様々な場面で使えます。 ただし、この法則を上手く使うには、顧客のことをよく知り、自社が提供できる価値を明確に理解している必要があります。常に顧客の声に耳を傾け、市場の変化に敏感であることが大切です。このように常に学び、適応していくことで、企業は顧客にとって本当に価値ある存在となり、持続的に成長できるのです。 

声富(せいふ)の法則とはなにか?

事業の新しい飛躍を支えてくれるのは、いつも「顧客」なのだ。

企業の成長を確実に実現する方法の「声富の法則」が本書で紹介されています。この法則は、顧客の声に真摯に耳を傾けることで、売上を飛躍的に伸ばすアイデアを生み出すという考え方に基づいています。新商品の開発や革新的なビジネスモデルの構築、大口顧客の獲得など、ビジネスのあらゆる局面で効果を発揮する、まさに万能の戦略と言えるでしょう。

この「声富の法則」を実践する第一歩は、意外にもシンプルだと著者は指摘します。それは、顧客リストを丁寧に見直すことから始まります。単なるデータの羅列ではなく、一人ひとりの顔が見える人間として顧客を捉えることが重要です。わずか20分ほど顧客リストを眺めるだけで、驚くほど多くの洞察が得られるのです。

顧客の居住地域の特徴、住居タイプ、年齢層の傾向、人気商品と不人気商品の傾向、さらには購買パターンなど、マーケティング戦略を立てる上で非常に有益な情報が浮かび上がってきます。これらの情報は、顧客を単なる数字ではなく、生きた人間として理解する糸口となります。

次のステップは、顧客をより深く理解することです。アンケート調査の実施は、顧客の声を直接集める効果的な方法の一つです。集められた意見の中から特に興味深いものを抽出し、社内で活発に議論することで、新たな視点や改善のヒントが生まれることがあります。

また、長年の顧客に対するアプローチも重要です。アフターサービスの機会を利用して、商品の使用状況や感想を詳しく聞き取ることで、製品やサービスの改善点が明確になることがあります。こうした直接的なフィードバックは、顧客満足度の向上だけでなく、新たな商品開発のアイデアにつながることも少なくありません。

定期的に顧客と直接対話する機会を設けることも、彼らのニーズや不満、期待を深く理解する上で非常に効果的です。こうした対話を通じて、表面的なデータだけでは見えてこない、顧客の本質的な欲求や課題を把握することができます。 さらに、購買履歴や問い合わせ内容を綿密に分析することで、顧客行動の傾向を詳細に把握することができます。こうしたデータ分析は、より的確なマーケティング戦略の立案や、顧客セグメントに応じたアプローチの最適化に役立ちます。

「声富の法則」の真髄は、顧客からのフィードバックを製品開発やサービス改善に積極的に取り入れることにあります。顧客の声を単に聞くだけでなく、それを実際のビジネスの改善に反映させることで、顧客との信頼関係が深まり、市場での競争優位性を確立することができるのです。

この方法は、大企業だけでなく、中小企業や個人事業主にとっても非常に有効です。むしろ、顧客との距離が近い小規模事業者こそ、この方法を活用しやすい立場にあると言えるでしょう。

顧客一人ひとりの声に丁寧に耳を傾け、そこから得られた知見を迅速に事業に反映させることができるからです。 重要なのは、この「声富の法則」を一時的なものではなく、継続的な取り組みとして位置づけることです。市場環境や顧客ニーズは常に変化しているため、定期的に顧客の声に耳を傾け、その変化に柔軟に対応することが、持続的な企業成長の鍵となります。

企業が真に顧客中心のアプローチを取り入れることで、革新的な商品開発、効果的なマーケティング戦略、そして長期的な顧客ロイヤリティの構築が可能となるのです。

痛みがわかるからこそ、喜びがわかる。思いやりこそ、最強のコピーなのだ。

成功するマーケターと、そうでない人の間には明確な違いがあります。成功する人、つまり「稼ぐ人」は、常に顧客起点で物事を考えます。彼らは予算の制約を気にするのではなく、どれだけの価値を顧客に提供できるか、そしてその結果としてどれだけの利益を生み出せるかを考えます。そして、その利益を元手に、さらなる顧客サービスの向上を図るという好循環を生み出すのです。

一方、成功に至らない「貧す人」は、往々にして自社の視点から抜け出せません。彼らは社会問題や一般論を語ることで、実際の顧客の痛みから目を逸らしてしまいがちです。

マーケティングにおいて重要なポイントとは、顧客のペインを理解し、その解決策を提示することにあります。これは単なる技術的なスキルではなく、深い共感力と創造性を必要とします。

顧客のペインを理解し、誠実に解決策を提供し続けることで、ブランドへの信頼と愛着が醸成されていきます。そして、この信頼関係こそが、持続可能なビジネスの成功の礎となるのです。

本書には、「核となるビジネスモデルをつくる」「応援団をつくる」「強力なリーダーシップを現す」というマーケティングの3つステージの85の法則が紹介されています。様々な課題を解決できる法則がわかりやすく紹介されているので、マーケティングで悩んだときに再読することで、解決のヒントを貰えそうです。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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