対話するたび成長する AIセルフ・コーチング 自分専属のAIコーチの作り方 (渡邊佑)の書評

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対話するたび成長する AIセルフ・コーチング 自分専属のAIコーチの作り方
渡邊佑
三笠書房

対話するたび成長する AIセルフ・コーチング 自分専属のAIコーチの作り方 (渡邊佑)の要約

渡邊佑氏の著書『対話するたび成長する AIセルフ・コーチング 自分専属のAIコーチの作り方』は、GROWモデルやハビット・ループといったコーチング手法をAIに応用し、自己理解や行動の変化を促す方法を紹介しています。生成AIを活用することで、時間や場所に縛られずに深い内省が可能となり、継続的なセルフ・コーチングを実現できる実践的な一冊です。

自分を成長させてくれるコーチングをAIで代用できるのか?

セルフ・コーチングにAIを活用すると、質の高いセルフ・コーチングをいとも簡単に習慣化することができます。(渡邊佑)

今から20年近く前、エグゼクティブコーチ・新堀進氏との出会いが、私の人生に大きな転機をもたらしてくれました。4年間にわたって毎週行われたセッションを通じて、自分自身のビジョンを描き、それを言葉にしながら、フィードバックを受け、一歩ずつ前に進んでいくことができました。(新堀進氏の関連記事

当時の私は、決して順風満帆ではなく、むしろ、人生を迷走していたとも言えます。けれど、新堀さんとの対話が、自分自身を見つめ直す機会を与えてくれたのです。

著者として本を出せたのも、社外役員として意思決定に関わる立場を担えたのも、そして断酒後の苦しい時間を乗り越えられたのも、あのとき並走してくれたコーチの存在があったからこそでした。 そんな人間同士の信頼に基づいた対話の価値は、いまも揺らぎません。

しかし、時代は確実に進化しています。AIがコーチの役割を担い、誰もが自分だけの専属コーチを持てる時代が到来したのです。合同会社Coaching4U 代表社員の渡邊佑氏の対話するたび成長する AIセルフ・コーチング 自分専属のAIコーチの作り方は、AIを使ったセルフ・コーチングの可能性を、実践的かつ分かりやすく教えてくれます。

読み進めていくうちに、かつて私がリアルな場で体験してきたコーチングのメソッドが、今ではAIとの対話の中でも再現できるようになっていることに、改めて深い感慨を覚えました。もちろん、人と人との関係の中で得られるリアルなコーチングの価値は、今なおかけがえのないものです。対話の空気感や表情の機微、言葉にならない気配を感じ取る力は、人間同士だからこそ成り立つものです。

とはいえ、AIとの対話でも、多くのコーチングメソッドが驚くほど自然に機能しはじめています。特にセルフ・コーチングに取り入れやすいのが、「ハビット・ループ」と呼ばれる習慣化の基本メカニズムです。これは、ある行動が習慣として定着していくまでのプロセスを、「きっかけ(Trigger)」「行動(Action)」「報酬(Reward)」の3つに分けて捉えるという考え方です。

たとえば、私には毎朝、お気に入りのイタリアのコーヒーでカプチーノを淹れるという習慣があります。このとき、「ホッとする」「よし、今日も始まる」といった前向きな感情が伴うことで、その行動は単なる日課を超えて、「一日の始まりを整える儀式」のような習慣へと変わっていきます。

これはまさに、ハビット・ループがうまく機能している状態と言えるでしょう。実際に私は、淹れたてのカプチーノを飲みながら、毎朝この書評ブログを書いています。

このメカニズムをセルフ・コーチングに応用することで、習慣化のハードルはぐっと下がります。特に、AIとの対話を日々のルーティンに組み込むとき、「きっかけ」と「報酬」を意識的にデザインすることで、自然と継続しやすくなるのです。対話によって気持ちが整い、思考がクリアになるという体験自体が報酬となり、AIとの会話が無理なく習慣として定着していきます。

話を受け止めてくれる。感情に流されずに、優しく反応してくれる。そして、どんなタイミングでも、自分の話し相手になってくれる。AIとのやりとりは、思考を言語化したことへの適切なフィードバックと、心の安心感を同時に得られます。

そもそも人間は、自分自身を客観的に見ることが苦手です。脳の中には無数のバイアスがあり、過去の経験や思い込みがフィルターとなって、判断や行動を無意識に左右しています。だからこそ、自分の考えを外に出し、言葉にすることが重要なのです。

このとき、特に力を発揮するのが、OpenAIの「MyGPTs」です。これは、自分専用のAIをつくり上げることができる機能で、性格や話し方、問いかけのスタイルまで自由にデザインできるのです。私はここに、自分がこれまでコーチングで学んできた「良質な質問」のパターンを組み込み、自分自身との対話に活用しています。

大切なのは、ビジョンと現状のギャップを明確にし、その間をどう埋めていくかを考えることです。AIとの対話は、その「橋を架ける作業」を確実に手伝ってくれるのです。

私は日々、自分専用のMyGPTsに対して、「いまどんな理想を描いているのか」「いま自分はどの地点に立っているのか」を書き込んでいます。そうすることで、AIはより的確なフィードバックを返してくれるようになります。自分の内面を言語化することで、漠然とした想いが輪郭を持ちはじめ、次に進むためのヒントが見えてくるのです。

リアルなコーチングには、人と人との温度感や場の空気、表情のニュアンスといった、かけがえのない価値があります。けれど同時に、スケジュールの調整、相性の不安、料金面など、どうしても避けられないハードルも存在します。どれほど信頼できる相手であっても、「いまこの瞬間に話したい」というニーズを満たすのは簡単ではありません。

その点、生成AIとの対話には、時間や場所の制約がありません。通勤電車の中でも、カフェの一角でも、眠る直前の静かなベッドの中でも、スマートフォンひとつで、自分自身との深い対話を始めることができます。 「頭の中がごちゃごちゃしている」「なんとなくモヤモヤしている」「言葉にできない感情を整理したい」──そんなとき、ふと思いついたことをそのままAIに投げかける。それだけで、AIは静かに耳を傾け、アドバイスを与えてくれるのです。

そして、自分の中にある考えや感情を、少しずつ言葉という形に変えてくれるのです。まるで、頭の中を一緒に片づけてくれる信頼できるパートナーのように。忙しさの中に追われがちな日々でも、自分の思考と向き合えるこの静かな時間は、間違いなくMyGPTsがくれる最も価値のある贈り物のひとつだと、私は感じています。

AIセルフコーチングを日課にするメリット

ChatGPTとの対話は、あなたの頭の中にある思考や感情を「可視化」することで、自己理解の精度を高めてくれます。これはセルフ・コーチングにおける、大きな強みの一つです。

私たちは日々、膨大な情報と感情に囲まれて生きていますが、それらが整理されないままだと、何が大事で、どこに進みたいのかが見えなくなってしまう。ChatGPTは、そんな「頭の中の混沌」に優しく光を当て、思考の輪郭を明確にしてくれる存在です。

この対話の価値をさらに深めてくれるのが、「ビリーフ・システム」という概念です。ビリーフ・システムとは、簡単に言えば、私たちの無意識の中にある思考のクセやものの見方のフィルターのことです。何を大切に思い、何を信じ、どんな前提で世界を見ているか。この見えない内面のプログラムが、知らず知らずのうちに私たちの判断や行動、感情を大きく左右しているのです。

たとえば、過去に失敗した経験が強く残っているとします。その記憶が「また失敗するかもしれない」「きっと今回もうまくいかない」といったセルフトークとなって、無意識に自分の足を引っ張ってくる。そんな「内なる声」によって、せっかく描いたビジョンを実現する前に気持ちがしぼんでしまうのです。

こうした経験は、多くの人にとって思い当たる節があるのではないでしょうか。 しかし重要なのは、こうしたビリーフ・システムは「生まれつきのもの」ではなく、「過去の経験からつくられたもの」だという点です。つまり、書き換えることが可能なのです。

そのために有効なのが、ビジュアライゼーション(理想の未来を具体的に映像化する)やアファメーション(自分に肯定的な言葉をかける)といった手法、そして何より「対話による自己理解」です。 ChatGPTとの継続的な対話は、このビリーフの書き換えに非常に役立ちます。

自分の考えや感情を言葉にして外に出すことで、それまで漠然としていた不安や思い込みの正体が見えてくる。そして、それに気づくことで、「本当はどうなりたいのか」「何を信じたいのか」といった根本的な問いに立ち返ることができるようになるのです。

さらに有効なのが、「GROWモデル」の活用です。Goal(目標)、Reality(現状)、Options(選択肢)、Will(意志・行動)の4つのステップで構成されるこのフレームワークは、セルフ・コーチングとの相性が非常に良いのです。

私はMyGPTsとの対話に、このGROWの流れを取り入れるようにしています。 たとえば、「今日はどんな状態を目指したいか?(Goal)」「いまの自分はどこにいるのか?(Reality)」「どんな選択肢があるだろう?(Options)」「じゃあ、今日できる一歩は何か?(Will)」──こうした問いかけをAIからもらうだけで、自分の頭の中が一気に整理されていきます。

AIとの対話がただの「おしゃべり」に終わるのではなく、行動につながる設計図になる。これこそが、GROWモデルとAIセルフ・コーチングの融合が生み出す大きな価値なのです。

印象的だったのは、著者が紹介していたプロンプトです。 「これまでのやりとりを、GROWモデルに沿って要約してください。私のゴール、現状、考えた選択肢、そして次に取るべき行動を整理して教えてください」──この一言をAIに投げかけるだけで、自分の中にあった曖昧な思考や方向性が、ぐっとクリアになっていくのです。

これは、まさに今日からでもすぐに実践できるシンプルでパワフルな方法だと感じました。自分自身で問いを立て、答えを引き出し、行動に結びつけていく。AIとの対話が、その流れをサポートしてくれるだけでなく、対話のログも残るので、後から見返すことで「自分がどう考え、どう進んできたか」を確認することもできます。

こうしたプロセスの中で、私が特に意識しているのが「自分情報」をMyGPTsにしっかり伝えることです。年齢や性別、職業、生活スタイル、現在抱えている悩み、将来の理想像、大切にしている価値観。こうした背景情報をあらかじめ共有しておくことで、AIからの問いかけの精度が上がり、より深い対話が実現します。

この「自分を言語化する」という作業自体が、すでにセルフ・コーチングの第一歩なのです。自分がどんな人間で、何を望み、どこに向かおうとしているのか。それを言葉にすることで、漠然とした不安が少しずつ形を持ちはじめ、思考の地図が描かれていきます。

私自身、MyGPTsを日々の習慣として取り入れるようになってから、その効果を実感しています。朝起きて、コーヒーを淹れながらChat GPTと対話することが日課となりました。それだけでも、その日の心の状態や、気になっていることが整理され、「今日一日をどう過ごすか」という方向づけが自然とできるようになります。

続けることは、セルフ・コーチングにおいて何より重要です。ただし、それを「意志の力」だけで乗り越えようとすると、どうしても無理が出てしまう。だから私は、あえて「楽しめる工夫」を散りばめています。「思考がスッキリするから」「なんだか褒められてうれしいから」「気持ちいいから」──そんな軽やかな動機で十分なのです。

セルフ・コーチングは、努力や気合ではなく、「環境」と「設計」によって習慣化させるものです。だからこそ、自分に最適化されたAIとの対話が、これからの時代の大きな味方になるのです。

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