インタレスティング 人生がワォ!とときめきはじめる哲学思考(ロレイン・ベッサー)の書評

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インタレスティング 人生がワォ!とときめきはじめる哲学思考
ロレイン・ベッサー
すばる舎

インタレスティング 人生がワォ!とときめきはじめる哲学思考(ロレイン・ベッサー)の要約

「良い人生」に必要なのは〈快楽〉〈達成〉だけではなく、〈インタレスティング〉という心のときめきです。ロレイン・ベッサーは、感受性を研ぎ澄ます「マインドフルネス2.0」や好奇心、創造性、人とのつながりを通じて、日常に小さな刺激を見つけ、それがやがて人生を豊かに変えていくと説きます。情熱や価値観に正直になり、自分にしかない〈インタレスティング〉を育むことで、自分らしい「良い人生」が見えてきます。

心理的豊かさとは何か?

〈インタレスティング〉が人生に果たす役割をきちんと理解するには、これまで人生について教えられてきた考え方を振り払う必要がある。(ロレイン・ベッサー)

「良い人生とは何か」と問われたとき、私たちはどのように答えるでしょうか。幸福に満ちた人生を思い描く人もいれば、人生に意味や目的があることが重要だと考える人もいるでしょう。どちらの考え方も、長い歴史の中で受け継がれてきた価値観であり、哲学や心理学、あるいは近年の自己啓発やウェルビーイングの分野においても、繰り返し論じられてきたテーマです。

しかし、現代に生きる私たちは、そのいずれにもある種の限界を感じ始めているのではないでしょうか。幸福は確かに大切ですが、それが感情に根ざした一時的なものである以上、常に安定的に維持されるわけではありません。ストレスの少ない生活や快適な環境、楽しい時間が幸福感をもたらすことはありますが、それが続かないことで、空虚さや物足りなさを感じてしまうこともあります。

一方で、人生に意味や目的を見出すことも確かに重要です。家族のために尽くす、仕事を通じて社会に貢献する、自分の存在価値を感じられる活動に従事するなど、意義ある生き方は深い満足感につながります。ただし、それもまた必ずしも明確に自覚され続けるものではなく、時に義務や重圧と結びついてしまい、内面の自由を損なう原因となる場合もあります。

こうした幸福と意味の両軸による人生観に、第3の視点を加えようとするのが、哲学者であり心理学研究者でもあるロレイン・ベッサー博士の提案です。

彼女が提示する「心理的豊かさ」という概念は、これまで人生論の議論において見落とされがちだった面白さや好奇心に根ざした体験を、人生の中心的価値として見直すものです。

心理的に豊かな人生とは基本的に、熱中できる経験に満ちた人生のことだ。もしかすると快楽はなく、達成感もないかもしれない。それでもたくさんの人たちにとって刺激的で、満足感のある、強烈な経験だ。つまり「心をときめかせてくれるもの」なのだ。  

心理的豊かさとは、未知のものとの出会いや、新しい視点との接触、複雑な出来事への直面といった、「心が動かされる経験」の中にあります。それは、幸福感のように快楽を伴う必要はなく、また意味のように重厚な物語や目的を求めるものでもありません。

むしろ、その時々で思考や感情に刺激を与えるような、〈インタレスティング〉な出来事がもたらす「認知のゆさぶり」や「視点の更新」こそが、人生を豊かにすると考えられています。 要するに、私たちは「幸福か、意味か」という昔ながらの二分法的な人生観から、一度自由になる必要があるのかもしれません。

著者が語るように、良い人生とはシーソーのように一方を選ぶものではなく、「幸福」「意味」「インタレスティング」の三つの要素がそれぞれ支え合う、三本脚のスツールのように捉えるべきなのです。

〈インタレスティング〉とは、日常の中にある新鮮で複雑で、少しだけチャレンジングな体験のことを指します。何かを初めて知ったときの驚きや、難解な話を咀嚼して理解できたときの快感、あるいは新しい人との出会いや視点の衝突の中で起こる内面の変化。そうした経験は、私たちの思考を揺さぶり、自己理解や世界理解を深めてくれる機会となります。

〈インタレスティング〉の5つの特徴

〈インタレスティング〉のタネは、私たち一人ひとりの心のなかにある。人間の心は人生の意義だけを、つまり目的とそれを達成する道筋だけを求めるわけではない。心というものは、計画も目的もなく、ただ熱中すること、考えをさまよわせることを求めることもあるのだ。

心に目的もなくさまよう自由をあたえることで、私たちは〈インタレスティング〉を見つけ、つくりだすことができるようになると著者は指摘します。「幸福感」は外的な報酬に左右され、自分の意志ではコントロールしづらいものです。

また、「意義」を得ようとする人生観は、多くの場合、行動の変容や環境の調整といった大きなエネルギーや犠牲を伴います。

その点で〈インタレスティング〉に必要なのは、ごくシンプルな態度です。興味深いことが起きたとき、それに気づくこと。そして、その体験が自分の人生にもたらす価値を自覚すること。あとは、その感覚を切り捨てずに受け入れていけば、自然と人生の中に面白さは広がっていきます。

〈インタレスティング〉とは、自分の感覚に正直に反応し、それを味わうことから始まるのです。 この概念には、以下のような5つの特徴があります。

まず第1に、〈インタレスティング〉は「心理的な豊かさ」を感じさせる経験に付随する価値だということです。新鮮さ、複雑さ、チャレンジングな要素がある体験は、〈インタレスティング〉を誘発しやすい条件であると考えられています。

第2に、〈インタレスティング〉は、私たちが「どのように感じるか」、すなわち「経験の質」を示す概念です。特定の外的な出来事そのものではなく、それをどう受け取るかにかかっています。この点で、〈インタレスティング〉は快楽に似ているとも言えます。同じ種類の経験が、ある種のときめきや好奇心を何度も引き起こすからです。

本書ではこの感覚をさまざまな言葉で説明していますが、最終的には、自分自身の体験を通してその感覚をつかんでいく必要があります。自分の中に〈インタレスティング〉が立ち上がる瞬間を見逃さず、その体感を言葉と結びつけていくことが大切です。

第3に、〈インタレスティング〉は、ときめきや没入の瞬間から生まれます。それは心の内部から自然に湧き起こるものであり、合理的な判断とは異なる心の使い方に支えられています。人はしばしば、自分の心が合理的であることに価値を置きがちですが、〈インタレスティング〉はその対極にある、計算や効率を超えた感性の働きから生まれます。

もちろん、外部からの刺激がきっかけになることもありますが、最も重要なのは、自分の内面に向き合うことです。たとえ外的な条件が整っていなくても、心のなかにある問いや気づきが、十分に〈インタレスティング〉を引き起こすのです。

この感覚は、達成や他者からの承認には依存しませんし、快楽のように身体的な生理現象にも左右されません。そのため、〈インタレスティング〉には“有効期限”が存在せず、持続的な心理的充足を生み出します。

第4に、〈インタレスティング〉は新たな〈インタレスティング〉を呼び起こします。一度ときめきを感じはじめると、それは次のときめきを誘発し、連鎖反応のように広がっていきます。

たとえば、自分が心から夢中になった体験を思い出すこと──感動的な読書体験、旅先でのハプニング、思いがけない出会い──そうした記憶を再現するだけでも、再びそのときめきがよみがえり、新たな好奇心が芽生えることがあります。ときめきは記憶の中でも再生成され、それがまた次の思考や行動につながるのです。

私自身も、読書や旅行、音楽のライブといった趣味の中で〈インタレスティング〉な体験を積み重ねてきました。それらの時間は、その瞬間にとどまらず、後から何度も記憶の中でよみがえり、新たな感情や気づきをもたらしてくれます。

旅先で出会った風景や、音楽に心を揺さぶられた瞬間、あるいは本の中の一節に思考を深く引き込まれた記憶──そうした記憶がふとした拍子に立ち上がるとき、私は再び豊かな時間を過ごしているのだと実感します。 このように、〈インタレスティング〉な体験は一過性のものではなく、蓄積され、繰り返し味わわれ、人生全体の厚みとなっていきます。

そしてそれらは、次の〈インタレスティング〉な出来事への感受性を高め、日常のなかにより多くの面白さを見出す力となるのです。

第5に、〈インタレスティング〉は感情に深く働きかけます。心理的豊かさの最大の特徴は、感情の多様さと複雑さにあります。幸福感は主に快楽に関連するポジティブな感情に限られ、意味の追求は、感情とは切り離された思考の文脈で語られることが多い傾向にあります。

しかし人間は、喜びや達成感だけではなく、不安、驚き、混乱、好奇心といった幅広い感情を自然に抱く存在です。感情は思考と不可分であり、互いに影響を与え合っています。思考が新たな感情を生み、その感情がまた新たな思考を促す。このような連鎖のなかで、ふと「え?」「なんで?」「ワオ!」と心が揺さぶられる瞬間が生まれるのです。

ときめきの連鎖は、やがて自分の認知を変えてくれます。心理的に豊かな経験は、私たちの物の見方や人とのつながり、世界との関わり方に変化をもたらし、これまで見逃していた日常の中の〈インタレスティング〉に気づく感度を高めてくれます。

ひとつの強烈な体験は、それ以降の人生に深く影響を与えます。日常のささいな出来事にも、新たな意味や面白さを見いだせるようになるのです。〈インタレスティング〉とは、単なる一時的なときめきではありません。それは、人生そのものの見方を変え、私たちの世界を再構築していくための視点なのです。

〈快楽〉〈達成〉〈インタレスティング〉の3つが人生を豊かにする。

すばらしい人生にはいい土台自分自身への理解が必要だ。この土台は、私たちそれぞれが心に抱く「価値」と「情熱」からできている。

もしあなたが、今よりもっと人生を豊かに、もっと深く味わいたいと感じているのなら、まず自分自身の経験を〈快楽〉〈達成〉〈インタレスティング〉という3つの価値の視点から振り返ってみることを、著者のベッサーは勧めています。

これまでの人生でどんな瞬間に心が動かされ、どのような体験に意味を見出してきたのか。その問いに向き合うことで、自分にとっての「良い人生」の輪郭が、少しずつ、でも確実に見えてくるようになります。

著者は、「情熱」というものが、そうした価値の選択に深く関わっていると語ります。情熱は人間の内側にある本能的な衝動であり、それが〈快楽〉に惹かれる気持ちや、何かを成し遂げたときの満足感、心をわしづかみにするような〈インタレスティング〉な体験へと、自然と私たちを導いていくのです。

重要なのは、情熱は外から持ってくるものではなく、自分のなかにすでにある「タネ」のようなものに過ぎないということです。他人の目標や世間の価値観に合わせて無理に情熱を持とうとしても、それはなかなか続きません。

情熱が芽吹くには、そのタネが、何かと出会い、共鳴し、開かれていくプロセスが必要なのです。 だからこそ、良い人生のためには、まず「自分の内側にある情熱と価値を知ること」がとても大切なのだと、著者は繰り返し伝えています。

〈快楽〉〈達成〉〈インタレスティング〉の3つが人生を豊かにする。

〈快楽〉〈達成〉〈インタレスティング〉という三つの価値は、それぞれ異なるかたちで私たちの人生を豊かにします。そして、自分の情熱が自然と向かっていくその先に、あなたらしい〈快楽〉があり、〈達成感〉があり、〈インタレスティング〉な出来事が待っているのです。

最高の人生とは、そのようにして自分の情熱が引き寄せる体験を、自然なかたちで、無理なく楽しめている状態なのだとベッサーは語ります。 もちろん、情熱や価値観というものは、私たちの性格や、これまでの経験、育ってきた文化的な背景などに大きく影響されています。

だからこそ、自分の出発点をしっかりと見つめ直すことが重要です。今の自分にとって必要なのはどの価値なのか。これからもっと育てたい情熱はどれなのか。それを見極めることが、未来の可能性を切りひらいていく第一歩になるはずです。

著者のアドバイスは、とても明快です。他人と同じ答えを探す必要はありません。大事なのは、自分にしか見つけられない、自分だけの「価値と情熱の組み合わせ」を探していくこと。それが、人生におけるもっとも誠実で、もっとも創造的な探求なのです。

そして忘れてはいけないのは、人生にある3つの軸──〈幸福感〉、〈意義〉、そして〈心理的な豊かさ〉──は、いつも同時に手に入るとは限らないという現実です。〈快楽〉はいつもぽつぽつとやってくるものですし、〈達成〉の実感はつかみどころのないこともあります。

けれど、〈インタレスティング〉だけは違います。これは、自分の手で、自分の心のあり方次第でつくり出せる唯一の価値です。 だからこそ、〈インタレスティング〉に開かれた人生は、どんなときでも、どんな状況でも、自分を面白くし続けてくれます。そしてそれは、あなたが自分自身の人生と、本気で向き合っている証でもあるのです。

マインドフルネス2.0と創造性が豊かな人生をもたらす!

〈インタレスティング〉は思考と感情のはざまに生まれるさざ波のなかに見つかるものであり、そこで強められていく。最高のさざ波が始まるのは「マインドフルネス2.0」の場所からだ。言いかえれば、あなたが自分らしく存在し、世界を見て、世界の住人になれる場所から〈インタレスティング〉は始まる。

著者は、〈インタレスティング〉な人生を育むための出発点として、「マインドフルネス2.0」という概念を提案しています。これは、単に心を落ち着けるための技法ではなく、もっと積極的に世界と関わり、そこに意味や面白さを見出すための心の姿勢です。

心がこのマインドフルネス2.0の状態から動き出せば、感覚は少しずつ研ぎ澄まされ、日常の中に小さな“さざ波”が立ちはじめます。そしてそのさざ波こそが、あなたと世界とのつながりを感じさせてくれるのです。 マインドフルネス2.0とは、言い換えれば、何気ない日常にフレッシュな目を向けることでもあります。

いつもと同じ景色のなかにある違和感や美しさ、見慣れた人との会話に潜む意外な視点、当たり前だと思っていた感覚の変化──そうした“新しさ”に気づく力を養うことが、この実践の核心です。 たとえ今いる環境がどのようなものであっても、そこに気を配る意識──すなわち“マインドフルである”という態度を持つことで、世界はより生き生きと、ときめきに満ちたものとして立ち現れてきます。

著者は、こうした心のあり方が、〈インタレスティング〉を呼び起こすための土壌になると語ります。 大切なのは、自分らしくあること、周囲の細部に気づくこと、そして自分がいま体験していることに対して注意深くなることです。そのようにして初めて、私たちは“面白さの芽”に気づき、それを受け取る準備が整うのです。

面白さとは、用意されたイベントや出来事の中にあるのではなく、自分の感性が開かれたときにだけ立ち現れる繊細な体験です。

マインドフルネス2.0は、感情を抑えるのではなく、むしろ感受性を深めるためのものです。自分の内面と外の世界、その両方に意識を向けることができれば、私たちはもっと多くの〈インタレスティング〉を見つけ出せるようになります。そしてその積み重ねが、心理的に豊かな人生への扉を開いてくれるのです。

ベッサーは、「挑戦」とは一人ひとり異なるものだと語っています。大切なのは、自分にとっての挑戦を定義することです。自分の感覚に注意を払い、快適な状態と危険な状態の境目を見きわめる力を養うことが、〈インタレスティング・ゾーン〉を見つける第一歩になります。

実際、最も深く心を揺さぶるような〈インタレスティング〉な経験には、ときに不快さや恐れ、不安、ショックといった感情が伴います。けれども、そうした経験こそが、これまでに出会ったことのない思考や感情を呼び起こし、人生そのものを再構築するきっかけにもなってくれます。

そのさざ波は、決してすべてが快適で心地よいわけではありませんが、確実に心を動かし、新たな認知の地平へと私たちを導いてくれます。 こうしたときめきの連鎖は、やがて自分自身の見方や感じ方を変えていきます。

ひとつの強烈な〈インタレスティング〉な経験を通じて、日常の中の些細な出来事にも、新たな意味を見いだせるようになるのです。人生のあらゆる場面が、少しずつときめきを帯びていく──そのような変化を体験することが、心理的に豊かな人生の本質なのだと思います。

そして最後に、忘れてはならないのは「人」の存在です。〈インタレスティング〉をくれる人たちと一緒に時間を過ごすことで、私たち自身の人生も、よりときめくものへと変わっていきます。

好奇心にあふれた友人や、まったく異なる視点をもつ仲間の存在は、自分の中に眠る新たな波を呼び起こしてくれるのです。そして私たち自身が〈インタレスティング〉な存在であるとき、今度は私たちが誰かの人生にときめきを届けることができます。こうした相互作用によって、〈インタレスティング〉は二倍にも三倍にも増幅していきます。

著者のメソッドを活用することで、私たちは、思っている以上に多くの〈インタレスティング〉を日常の中に見つけることができます。世界は、ほんの少し見方を変えるだけで、たちまちときめく場所に変わっていくのです。その変化を引き起こすのは、他の誰でもない、あなた自身の心の動きです。

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