自分を鍛える!―――「知的トレーニング」生活の方法 (ジョン・トッド)の書評

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自分を鍛える!―――「知的トレーニング」生活の方法
ジョン・トッド
三笠書房

自分を鍛える!―――「知的トレーニング」生活の方法 (ジョン・トッド)の要約

19世紀に書かれたジョン・トッドの古典『自分を鍛える!』を、筆者は毎年のように読み返しており、自分自身を見つめ直す「定点観測」のような存在として大切にしています。本書では、習慣の力や時間の使い方、集中力の重要性が繰り返し語られており、特に短時間でも意識的に集中することで、知的な力を高められるという考え方が印象的です。

習慣を変えること=人生を変えること

人間とはすなわち、いろいろな習慣のかたまりである」といってもよさそうだ。習慣というのは、簡単に身についてしまう。特に悪い習慣ほど、そうである。今日たいしたことでもないと思っていたことが、たちまち固定化され、太綱のような力でがんじがらめに しばられてしまう。 (ジョン・トッド)

新年、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。2026年も隠れた名著を紹介できたらと思います。

私には年に一度、必ず読み返す古典があります。自分にとっての定点観測のような一冊であり、その時々の自分の状態を静かに映し出してくれる存在です。ジョン・トッド自分を鍛える!―――「知的トレーニング」生活の方法も、まさにそんな本の一つで、今年も年末年始に手に取りました。(ジョン・トッドの関連記事

ページをめくるたびに、現代を生きる私たちがいつの間にか手放してしまった「精神の規律」というものの重みを、あらためて突きつけられる思いがします。19世紀に書かれた古典でありながら、情報の洪水に押し流されそうな今の時代だからこそ、かえって切実に響いてくる一冊です。

とりわけ印象に残るのは、著者が語る習慣の力です。習慣は驚くほど簡単に身につき、特に悪い習慣ほど、静かに、しかし確実に根を張ります。最初は取るに足らないと思っていた行動が、やがて固定化され、太い綱のような力で自分を縛りつけてしまうのです。一本一本は細い糸にすぎなくても、より合わさった太綱は、大きな船さえ引き寄せてしまいます。

時間の使い方や仕事の進め方、考え方や感情の癖は、若いうちに特定の型をつくり、それが良くも悪くも第二の天性となっていきます。 怠惰ほど有害で、しかも身につきやすい習慣はありません。怠けることは楽で、同じ怠け者同士は不思議と共鳴します。

忙しい人は一人の悪魔に悩まされ、怠け者は千人の悪魔に悩まされる、という諺がありますが、言い得て妙だと思います。堕落した付き合いや誘惑は無数にありますが、日々淡々と努力する習慣があれば、多くは未然に避けられるのです。

私自身、若い頃に飲酒という悪習慣に溺れ、貴重な時間を浪費してきました。しかし四十四歳で断酒を決断し、生活を朝型に切り替えたことで、学ぶための時間を確保できるようになり、人生後半の生産性は明らかに変わりました。

専門分野以外のことを学ぶ必要はない、という考えも本書はきっぱりと否定します。人と接する中で得られる知識が、自分の専門性を損なうことはありません。むしろ、自分が教えられる立場になる場面には、必ず学ぶ価値があります。すべてを無差別に吸収せよと言っているわけではありませんが、一つの大きな問題を考えているときに、それと関連する別の事柄に目を向けられないはずはない、という指摘には強くうなずかされます。

トッドの時間術と読書術を新たな習慣に取り入れよう!

何か新しい有意義なことを成し遂げるのに、ふだんの生活を大きく、あるいは目立って変える必要はない。ただ現在、無駄にしている時間を残らず活用しさえすればよいのである。そうすれば、たやすく成果があがるのである。

忙しいという言葉を言い訳にして、私たちはつい十五分や三十分といった細切れの時間を、取るに足らないものとして扱ってしまいがちです。まとまった時間が取れない以上、今日は何もできないと判断してしまう。その積み重ねが、気づかぬうちに思考や学習の習慣そのものを痩せ細らせていきます。

しかしトッドは、そうした感覚をきっぱりと退け、そのわずかな空白こそが人生の質を左右すると繰り返し説いています。重要なのは、時間の量ではなく、その瞬間にどれだけ意識を集中できるかという一点に尽きる、という感覚です。

だからこそ本書では、長時間机に向かうことよりも、短時間でも完全に集中することが強調されます。時間の長さではなく密度がすべてであり、たとえ一日15分であっても、毎日積み重ねられた集中の時間は、確実に知的な筋力を維持し、さらには強化していきます。

逆に言えば、だらだらと過ごす2時間よりも、研ぎ澄まされた15分のほうが、はるかに価値を持つということです。 私自身も、こうした考え方を意識するようになってから、時間との向き合い方が大きく変わりました。特別な時間を新たに捻出したわけではなく、通勤や待ち時間といった隙間に読書を差し込むようになっただけです。

ただし、読むだけで終わらせないことを自分に課しました。必ず書く。感じたことや引っかかった言葉を、短くてもいいから言語化する。その習慣が、この書評ブログの毎日更新につながり、気がつけば16年目に入っています。 振り返ってみると、その積み重ねを支えてきたのは、特別な才能でも、長時間の努力でもありませんでした。

わずかな時間を軽んじず、その都度きちんと向き合ってきた姿勢そのものが、結果として形をつくってきたのだと思います。小さな集中を毎日重ねること。その地味で静かな営みこそが、後になって振り返ったとき、もっとも大きな差となって現れるのではないでしょうか。

自分が読んだ本の内容を、他の人と話し合うことで確実にものにしたい、という意欲のある人間が何人か集まってサークルができれば、さらにいい。「思想もまた、人に語ることによって、より確実に自分のものになる。すなわち、教えることは学ぶことであり、与えることは与えられることなのだ」友人があなたと同じ本を読んでいたり、他人に本を読んでやっている場合は、対話はさらにいっそう有効なものになるだろう。

学んだことをアウトプットする前提で読むという視点に立てば、本書で紹介されている読書録の作成や記憶の整理法は、現代のブログやSNSでの情報発信にも、そのまま通じるものだと感じます。知を一時的な理解で終わらせず、再利用可能な資産へと変えていくための、きわめて実践的な方法論です。

私自身、この書評ブログを習慣にしたことで、頭の中が整理され、自分の考えを言葉にする際にも、自然と厚みや広がりを持たせられるようになりました。

本書が何より強く訴えてくるのは、知識を集めて満足する「物知り」になることではありません。学んだことを、いかに人格の形成や社会との関わりへと結びつけていくのか、その目的意識こそが問われています。誰もが膨大な情報にアクセスできる時代だからこそ、自分の内側に揺るがない思考の軸を持たなければ、知識は簡単に散逸してしまいます。

日々の良いルーティンを磨き上げていくことこそが、数年後の自分を形づくる唯一の道なのだと、本書は力強く教えてくれます。知的怠惰を脱ぎ捨て、元旦という節目の日から一歩を踏み出したいと願うすべての人に、心からすすめたい一冊です。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

Ewilジャパン取締役COO
Quants株式会社社外取締役
株式会社INFRECT取締役
Mamasan&Company 株式会社社外取締役
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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