めちゃくちゃな状況で「圧倒的な結果」を出している人と組織の思考法
パウロ・サバジェ
ニューズピックス

30秒でわかる本書の要点
結論: 困難な課題を解決する鍵は、正面突破ではなく、賢く「回避」する(正攻法を避ける)ことにある。
原因: 現代の課題(リソース不足、硬直したルール、根深い習慣)は複雑すぎて、従来の直線的なアプローチでは太刀打ちできないから。
対策: 既存のインフラに相乗りする「便乗」、ルールの隙間を突く「抜け穴」、人の信念を利用して遠回りする「誘導路」、次善の策で凌ぐ「次善策」という4つの回避術を駆使すること。
本書の3行要約
複雑で不確実な時代、正攻法だけでは成果は出せません。パウロ・サバジェは、現場で生まれる4つの回避術──便乗・抜け穴・誘導路・次善策──を通じて、資源や情報が限られた中でも成果を上げる思考法を提案します。ルールに従うだけでなく、柔軟に“ずらして進む”力が、今後のビジネス成功の鍵となります。
こんな人におすすめ
1. リソース不足や制約が多い環境で成果を出さなければならない人 「予算がない」「人がいない」「時間がない」といった状況で、正攻法では突破できない課題を抱えているリーダーや現場担当者に最適です。既存のリソースに「便乗」し、ルールの「抜け穴」を見つけることで、制約を逆手にとって解決するヒントが得られます。
2. 社会課題の解決に取り組むNPO・社会的企業の従事者 貧困、医療格差、人権問題など、巨大なシステムや権力構造と対峙している人におすすめです。コーラライフやレベッカ・ゴンパーツの事例のように、真正面から戦うのではなく、賢く回避しながらインパクトを出す「異端児」たちの戦略が学べます。
3. イノベーションを起こしたい起業家・新規事業担当者 「Mペサ」や「TransferWise」のように、既存のインフラや法制度の隙間を突くことで新しい市場を作り出したい人に向いています。ゼロイチで全てを作るのではなく、すでにあるものを組み合わせたり、読み替えたりするハッカー的な思考法が身につきます。
4. 組織の硬直したルールや理不尽な制約に悩むビジネスパーソン 社内の煩雑な手続きや、時代遅れの慣習に阻まれて仕事が進まないと感じている人に推奨されます。「次善策」や「誘導路」といった考え方を知ることで、組織の壁にぶつかることなく、したたかに目的を達成するマインドセットが得られます。
本書を読むメリット
・制約を突破する「賢い回避術」が身につく: リソース不足、不合理なルール、根強い習慣といった正面突破が困難な壁に対し、「便乗」「抜け穴」「誘導路」などの創造的な迂回ルートで解決する思考法(ハッカー的アプローチ)を獲得できます。
・イノベーションの具体的な「型」が学べる: コカ・コーラの配送網を使った医薬品輸送や、法律の隙間を突いた社会変革など、世界中の「異端児」たちが実践してきた成功事例を知ることで、ビジネスや社会課題解決に応用できる具体的なアイデアの型を手に入れられます。
・現状打破の勇気と柔軟性が得られる: 「最短距離だけが正解ではない」という視点を持つことで、組織の硬直したシステムや理不尽な状況に諦めることなく、したたかに成果を出すためのマインドセットと実践知を養うことができます。
問題を乗り越えるための4種類の回避術
いずれのストーリーの主人公も、4種類の回避術のうち少なくとも1つを使っていた。私はその4種類の回避術を、「便乗」、「抜け穴」、「誘導路」、「次善策」と名付けた。ひとたびこの4つの方法に気づくと、いたるところで「回避術」が見つかりはじめた。(パウロ・サバジェ)
世の中がますます複雑化する中で、困難――いわゆる「ハードシングス」――に直面する機会は増え続けています。こうした課題に立ち向かう上で、果たして共通する解決パターンは存在するのでしょうか。
パウロ・サバジェは、その問いに対するユニークかつ実践的な答えを提示しています。彼が提唱する「4つの回避術(The Four Workarounds)」は、従来の正攻法とは一線を画した、創造的で柔軟な問題解決のアプローチです。
著者のサバジェは、保険医療や教育、階級差別、政治腐敗といった社会の核心にある問題に取り組む異端児たちから学びを得てきました。時にはハッカーとの対話を通じて、著者は課題解決のためのフレームワークを練り上げてきました。
非営利団体の現場からスタートし、企業コンサルタントを経て、現在はオックスフォード大学サイード・ビジネススクールで教鞭を執る彼のキャリアは、一見すると統一感のない道のりに見えるかもしれません。しかしその歩みの中で一貫していたのは、「限られたリソースで、いかに圧倒的な成果を出すか」という問いに対する執念でした。
その答えとして見出されたのが、「便乗」「抜け穴」「誘導路」「次善策」という4つのアプローチです。 これらの共通点は、いずれも課題を正面から突破しようとせず、むしろ“回避”という選択を戦略的に用いている点にあります。
ゼロからの構築や理想的な条件の整備ではなく、すでに存在しているものや曖昧な隙間、不完全な状態を最大限に活かしながら、現実的かつ効果的な解決に導く手法なのです。
便乗による回避術は「すでにある関係性」を活用する。権力から外れたところで活動する異端の組織は、型破りな組み合わせを見つけ出す上で有利な立場にあることが多い。
「便乗」は、既存の資源やインフラを活用し、別の目的を達成する戦略です。たとえば、遠隔地へのコカ・コーラの配送網を利用し、飲料ボトルの箱に医薬品を同梱するという取り組みは、必要なリソースをゼロから構築するのではなく、既存の仕組みに“便乗”して命を救う仕組みを創り上げた好例です。
コーラライフの事例は、単に物流網を活用しただけではなく、「チャンスは必ずある」という便乗的マインドセットそのものを体現しています。どれほど奥地であっても、何らかの流通システムや関係性は必ず存在します。それを見逃さず、別の目的に応用する発想こそが鍵になります。
便乗による回避術は、「すでにある関係性」を活かすアプローチであり、特に権力の中心から外れた位置にある異端的な組織ほど、こうした型破りな組み合わせを見出しやすい傾向があります。
たとえば、コカ・コーラの瓶に下痢止め薬を同梱するという方法は、直感的には結びつかないアイデアですが、現実には機能する仕組みとして成立しています。こうした例は決して頻繁に見られるわけではないものの、類似のチャンスはあらゆる場所に存在しており、多くが見過ごされているのが現状です。
同様に、ケニアで始まったモバイルマネーサービス「Mペサ」も、銀行インフラが未発達な中で、携帯通信ネットワークという既存インフラに便乗することで、金融サービスへのアクセスを一気に広げた事例です。
サービス開始からわずか2年足らずでMペサの顧客数は860万人に達し、月間取引総額は3億2800万ドルを超えました。ボーダフォンやサファリコムといった企業が収益を上げただけでなく、導入から約10年で19万4000軒の家庭が貧困から脱したと推定されるなど、社会的インパクトも大きなものでした。
さらに、国際送金の分野におけるTransferWiseの登場も、便乗型の発想が生んだイノベーションです。同社は、商業銀行の煩雑かつ高コストな国際送金プロセスを回避し、世界中の既存銀行ネットワークに“便乗”することで、効率的かつスケーラブルな送金サービスを実現しました。法的な障壁を避けるためにイギリス金融行動監視機構の認可を受けながらも、銀行とは異なる枠組みでサービスを展開し続けています。
このように、便乗による回避術は、見慣れたものの中に潜む「応用可能な構造」を見抜く力と、それを活用する柔軟性を求めます。ゼロからすべてを築くのではなく、既存のつながりやシステムを見直し、新しい価値を生み出す発想が、限られた資源の中でも成果をもたらす大きな鍵となるのです。
法律の盲点、ルールの曖昧さを利用する「抜け穴」による回避術
抜け穴による回避術がとりわけ有効なのは、公式または非公式なルールが不当だったり、目標達成の障害になっていたりする場合だ。抜け穴は、ルールのあいまいさにつけ込んだり、適用できるかどうか怪しいルールを利用したりする。
「抜け穴」は、制度やルールの隙間を見つけ出し、それを巧みに活用することで、通常では達成が難しい目標を合法的かつ創造的に実現する戦略です。これは、正面からルールを打ち破るのではなく、むしろその構造の“ほころび”に目を向け、従来とは異なる道筋で問題を乗り越える柔軟なアプローチといえます。
世界では、こうした抜け穴を活用した驚くべき実例がいくつも報告されています。たとえば、ある夫婦は自国の離婚制度の制限を避けるため、外国で離婚手続きを行い、別の国で再婚するという法的ルートを選択しました。これは一見複雑な手続きに思えますが、それぞれの国の法律の隙間を見抜いたからこそ成立した合法的な回避策です。
さらに、テクノロジー企業による抜け穴の活用も見逃せません。政府による監視活動に対して、アメリカの言論の自由に関する法律を盾に取り、ユーザーにその存在を通知する方法を模索した企業が現れました。これは、法律の本来の目的とは異なる角度から権利を守ろうとする、極めて巧妙なアプローチです。 中でも注目されるのが、「令状のカナリア」と呼ばれる戦術です。
これは、通信サービス事業者が政府からユーザーデータの提供を命じられた際に、「何も語らずに語る」という方法として使われます。企業は定期的に「当社は政府からいかなる監視要請も受けていません」といった報告を公表し、その報告が突然停止した場合、ユーザーは「監視要請があった」と察知できるという仕組みです。
この手法は、政府の命令により直接的に通知することが禁止されている状況下でも、法的制約を回避しながら情報を伝える手段として機能します。つまり、「沈黙そのもの」がメッセージとなるのです。こうした抜け穴的戦略は、表向きにはルールを守りつつも、ユーザーの権利を守るための創意工夫として、高度な知性と倫理的判断に基づいて実行されています。
異端の組織から学べば、抜け穴を見つけてくぐり抜けるための行動パターンが見つかる。
こうした例に共通するのは、足かせとなっているルールそのものにとらわれず、「まだ誰も注目していない別のルール」に目を向けた点です。見落とされがちな法制度の隙間や、規制の曖昧さに気づくことで、型破りでありながらも合法的な解決策を導き出すことが可能になります。
抜け穴を見つけるもう一つの方法は、制度の「細則」に注目することです。表面的には厳格に見えるルールも、細部において例外や条件付きの規定が存在している場合があります。そうした規定を読み解き、逆手に取ることで、ルールの実効性を失わせたり、実質的に無効化することができるのです。
レベッカ・ゴンパーツの中絶の事例は、まさにこの抜け穴戦略の好例です。彼女は、中絶が法的に制限されている国においても、ミソプロストールという薬を用いたセルフ中絶の方法を広める活動を展開しました。この薬は本来、胃潰瘍や産後出血の治療薬として合法的に流通しており、その“副作用”として中絶効果があることを利用したのです。
さらに、彼女は中絶の方法そのものを教える情報提供は違法でないという法の盲点を活用し、情報発信を通じて多くの女性に選択肢を提供しました。 ゴンパーツは、一つの大きな打開策を狙うのではなく、制度のあいまいな部分に対して継続的に介入を重ねるという姿勢を貫いてきました。
これは「世界を変える一撃」を求めるよりも、「現実に機能する小さな抜け穴を地道に見つけていく方が、結果としてより大きな成果を生む」ことを教えてくれる実践です。
抜け穴による回避術とは、制度や構造の“敵”になるのではなく、その隙を理解し、合法性を保ちながら自らの目的を達成する方法論です。それは決して裏道を探すだけの姑息な手段ではなく、制度を理解し尽くした上での知的な戦略であり、変革を促す実践的なツールとして活用されるべきものです。
誘導路で行動したくなる環境をつくる!
信念体系に付け入れば、人々の行動を変えさせることができる。
「誘導路」は、最終的な目標に対して、あえて間接的なルートをとることで現実的な進展を図る回避術です。課題を正面から突破するのではなく、「千夜一夜物語」のシェヘラザードのように行動したくなくなる状況をつくることで、解決策を生み出していくのです。
インドで長年問題視されてきた公共の場での立ちションに対する取り組みは、誘導策の典型例として知られています。罰金制度や警告文の掲示、公共トイレの設置など、政府による従来型の対策はほとんど効果を上げませんでした。文化的な習慣やインフラの限界が大きな壁となっていたのです。
そんな中で登場したのが、壁に「神の絵」を描くというユニークな回避策でした。ヒンドゥー教における神々の像や絵を塀に掲げることで、「神の前で用を足すのは不敬である」という宗教的な信念に訴え、人々の行動に抑制をかけるという手法です。ある塀の所有者によると、この戦略を用いたことで立ちションの件数が90%以上も減少したといいます。
このアプローチの核心は、「行動を禁止する」のではなく、「行動したくなくなる環境をつくる」ことにあります。つまり、強制力に頼るのではなく、人間の内面にある価値観や感情に働きかけることで行動変容を促すという点で、誘導路的な発想の秀逸な実践といえるでしょう。
この手法は他にも応用されています。たとえばある飲食店では、従業員が調理前に手を洗う習慣を促すため、洗面所に神の絵を飾りました。「ルールだから手を洗う」のではなく、「神に見られているから自然と手を洗う」という内発的な動機を引き出す試みです。
インドのカースト制度という極めて根強い構造的問題に対しても、正面突破ではなく、誘導的なアプローチが成功を収めた事例があります。ある建築家は、人々の生活動線が交差するように住宅を設計することで、異なるカーストの住民が自然と接触する状況を作り出しました。この空間的な工夫によって、カーストの壁を超えた交流が生まれ、間接的にカースト制度への挑戦となったのです。
こうした誘導路的な発想は、文化や宗教といった深く根づいた価値観にうまく寄り添いながら、現実的な問題解決を目指す方法として、注目に値します。人の信念体系に正面から挑むのではなく、信念を活用して環境をデザインすることで、結果的に行動を変えていくのです。
産業や組織の現場でも、同様の考え方が重要な意味を持ちます。特に注目されるのが「ブートレギング(bootlegging)」と呼ばれる、非公式のプロジェクトによる技術革新です。これは企業の正式な承認を得ずに社員が自主的に進める禁酒法時代の地下活動のようなもので、しばしば組織にとって極めて重要なブレークスルーをもたらしてきました。
たとえば1960年代、ヒューレット・パッカードの技術者チャック・ハウスは、大画面ディスプレイモニターの開発を進めていましたが、CEOのデイヴィッド・パッカードから「市場性がない」としてプロジェクトの中止を命じられました。しかしハウスはこれに屈せず、こっそりと開発を継続。その結果、完成したモニターは高く評価され、最終的にはHP製品の半数以上に組み込まれる基幹技術となりました。
ブートレギングによるイノベーションは、他にも枚挙にいとまがありません。メルクの液晶ディスプレイ技術、日亜化学工業による青色LED、東芝の世界初のノートパソコン、ゼロックスのレーザープリンターなど、いずれも組織の公式ルートを通らず、現場発の創造的な“回避”から誕生したものです。これらはすべて、誘導路的なアプローチがいかにイノベーションを促進するかを物語っています。
企業がこのような「現場発の誘導路戦略」を支援する文化を育めば、社員はもはや上司の目を盗んで活動する必要がなくなります。自立性と柔軟性を手にした社員は、堂々とチャンスを追求し、共創によってアイデアを磨き上げることができます。これは組織全体にとっても大きな利益となるでしょう。 また、誘導路的発想は社会制度に深く根づく課題に対しても力を発揮します。
誘導路の回避術は、体系的な難題に挑むというよりも、自己強化的なふるまいを乱すことで、結集したり交渉したり、別の方法を編み出したりするための時間を稼ぎ、差し迫った問題をやわらげながら、方向転換させるというものだ。
このように、誘導路はあくまでも「現実に即した前進」のための戦略です。すぐに正解が出ない問題、強制しても変わらない行動、制度が壁になる状況に対して、間接的な道を探ることで変化を促します。
問題解決において、最短距離だけが最善の道ではありません。人間の信念、感情、文化的背景を読み解きながら、最も実現可能なルートを模索することこそ、現代に求められる知性です。誘導路による回避術は、その知性と創造力を最大限に活かすための、柔軟で力強い戦略なのです。
時には「次善策」を選択しよう!
「次善策による回避術」は、つぎあてとして機能する。何かを大きく変えるには、大勢の関係者を調整しなければならず、実現の見通しは低い。その代わりにこの回避術を使えば、利用可能なリソースを使って望みを叶えられるのだ。
「次善策」は、理想的ではないものの、実用的かつ実現可能な代替案を活用するアプローチです。たとえば、世界中で電源プラグの規格が統一されていないという現状において、旅行用アダプターは多くの人にとって不可欠な“次善”の解決策として広く使われています。完璧な統一が実現していないからといって諦めるのではなく、今ある課題に対して現実的な対応を図ることこそが次善策の本質です。
重要なのは、実行可能にもかかわらず見過ごされがちな代替策に着目し、利用可能なリソースをこれまでとは異なる方法で活用・組み合わせる柔軟性です。こうした回避術は、応急処置のように短期的な効果を発揮する場合もあれば、より大きな代替案や恒久的な解決策につながる“橋渡し”として機能することもあります。
パンデミックの際には、LVMHのような高級ブランドが香水製造のノウハウを活かして手指消毒剤の製造に踏み切りました。これは医療機関や市民のニーズに迅速に応える実用的な対応であり、次善策の有効性を世界に示すこととなりました。完璧ではないが、今この瞬間に必要とされているものを届けるという判断が、現場に即した回避術の価値を証明しています。
さらに、トファー・ホワイトの取り組みも象徴的です。彼は、携帯電話の電波が熱帯雨林の奥地にまで届くこと、そして世界中で毎年大量に廃棄される古い携帯電話の存在に注目しました。これらを組み合わせ、太陽光で充電可能な携帯電話をAIと連動させて森の音をモニターする仕組みを考案。違法伐採の音を検知してリアルタイムで関係者に知らせることで、森林破壊の抑止に貢献しました。
ここでも、見過ごされがちなリソースを転用することで、複雑な社会課題に対する現実的な解決策が導き出されたのです。 次善策の力は、最善を求めて行動を止めてしまうのではなく、今ある選択肢の中から最良の手を打とうとする姿勢にあります。資源は必ずしも理想的な形で存在しているわけではありませんが、視点を変えることでその可能性は大きく広がります。
次善策は、決して妥協ではなく、状況に即した最も誠実な行動の選択です。完璧な解決策が手に入らないときこそ、今できることに集中し、小さな一歩を積み重ねていくことが、やがて大きな変化につながっていくのです。
多くの回避術はさほどリソースを必要としないため、途中で軌道修正したり、うまくいかなければ手を引いたりしても痛みは少ない。理想的には、このように事業を進めながら振り返っては手直しをすることで、損失の小さな過ちを受け入れ、何度も挑戦する環境が育まれる。こうした創造的な心意気が何よりも大事なのだ。
著者が教えてくれるのは、型破りな結果を生み出すためには、4つの回避策を組み合わせて使うことがカギになるということです。
同時に著者が強調するのは、次の3つの行動です。
「まず行動して、それから考える」
「そこそこよければ、それでよしとする」
「許可を求めるのではなく、後から許してもらう」
これは、今のような不確実な時代にこそぴったりの考え方です。完璧じゃなくていい。許可を待たなくてもいい。あなたが「今すぐできること」を小さく始めてみる。それこそが、未来を変える一歩になるのです。 そして、実際にさまざまな組織や個人がこの方法で動き出し、困難な状況を切り抜け、新しい世界への扉を開いてきました。シンプルな“回避術”を使えば、状況が複雑であっても、まず一歩前へ進むことができます。
4つの回避策を組みわせよう!
異端の組織の数々は、リソースや権力、情報をほとんど持たないながらも、ダイナミズムと可能性の世界に目を向けた。そうした組織のおかげで私たちは理解できた。シンプルな回避術を活用すれば、不確実な状況をどうにか切り抜け、差し迫った事態をやわらげることができる。さらには、これまで知られていなかった、よりよい新たな世界へとつながる道を切り拓くことができるのだと。
注目すべきは、世界中の異端的な組織が私たちに示してくれた問題への向き合い方です。彼らは豊富な資金や強大な権限、十分な情報といった王道の条件を持ち合わせていませんでした。それでも諦めることなく、現実に対して静かに、しかし確実に働きかけてきたのです。 彼らの強さは、正面からの突破を選ばなかったことにあります。
真正面に立ちはだかる壁に対して、力で押し切るのではなく、視点を変え、角度を変え、別のルートを見つけて進んでいきました。この柔らかな戦略こそが、今の時代において非常に示唆に富むのです。
なぜなら、現代は不確実性と複雑性が当たり前のように存在する時代だからです。完璧な情報も、確実な正解も存在しない状況下で、必要なのは「動ける条件が揃うのを待つ」のではなく、「動きながら条件を整えていく」こと。
その柔軟な発想が、現実を切り拓く鍵になります実際に、GoogleやFacebook、ゴールドマン・サックス、テスラといったグローバル企業が導入している「脆弱性報奨金制度」は象徴的な例です。
これは、自社のシステムに外部のハッカーが“侵入”し、脆弱性を報告すれば報酬を支払うというもの。一見すると危険なアプローチですが、彼らはこれによって自社の内部では見落としがちな、抜け道を発見し、あらかじめ修正する機会を得ています。
つまり、彼らは自分たちの前提やルールを疑い、「異なる視点からの介入」を戦略的に取り入れているのです。これはまさに、回避術の本質──強さではなく柔軟さによって環境に適応し、進化していくアプローチです。
これまでの常識や成功パターンに頼りすぎると、変化のスピードについていけなくなる時代です。「正しさ」だけを追い続けるよりも、「いま動ける一歩」に目を向けることのほうが、現実的かつ実践的な価値を生み出すのではないでしょうか。
4つの回避術にはそれぞれ、もっとも重要な要素がある。「便乗による回避術」について考える場合には、あなたの置かれた状況における既存の関係性について検討すればいい。「抜け穴による回避術」の場合には、異なるルール体系に注目する必要がある。「誘導路による回避術」の場合には、現状維持へとつながるふるまいに探りを入れる。そして「次善策による回避術」を探す場合には、手持ちのリソースをあれこれいじってみる。
本書が伝えようとしている最も重要なメッセージは、「不完全でも構わない。まずはあり合わせの手段(Workarounds)でシステムに介入し、動かしてみること」だと言えるでしょう。これは、現代のように不確実性が支配する環境において、有効に働く知恵のかたちです。
完璧な条件が整うのを待つのではなく、目の前にある手札で動き始める。そうして初めて見えてくる選択肢が、現実には多く存在します。
もしあなたが、従来のやり方や正攻法に限界を感じているなら、本書は一つの「思考の再起動ボタン」として機能するはずです。 硬直化した仕組みの中で「これしかない」と思い込んでいた問題に、まったく異なる角度から光を当ててくれるからです。「抜け道」は回避ではなく、可能性を広げるための戦略だと捉える視点を得ることができるでしょう。
とくに印象的なのは、完璧な計画よりも、試行錯誤を重ねながら調整していく柔軟さが、より創造的な成果につながるという点です。これは、成功が予測困難な時代において、極めて実践的かつ現実的なアプローチだといえます。
さらに注目すべきは、豊富な資源や影響力を持たない“異端の組織”が、こうした回避術によって新しい未来への道を切り拓いてきたという事実です。 彼らは、シンプルな手法であっても、環境に対する理解と戦略的判断を掛け合わせることで、不確実な状況を乗り越えてきました。
そして、その柔軟な発想の積み重ねが、従来の枠組みでは見つけられなかった新たな価値や可能性を創出してきたのです。 だからこそ、私たち一人ひとりが問うべきは、「どうやって正面から突き進むか」ではなく、「どんな抜け道が存在するか」「いま動ける方法は何か」なのかもしれません。
この問いを持ち続けることこそが、予測不能な未来に対応する力の源となります。 現実に起きている問題を“ずらして見る”“避けながら向き合う”という視点を持つこと。それが、思いがけない突破口となり、選択肢の幅を拡げるきっかけとなるはずです。
本書はそのための思考のフレームを、豊富な事例とともに示してくれます。 最も堅実な戦略は、ときに最短距離を捨てることから始まります。 それに気づいたとき、私たちはようやく、「完璧でなくてもいい」「今、できることからでいい」という本質的な行動原理に立ち戻ることができるのです。
本記事は書評ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大が執筆しました。
















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