想定外を楽しむ 火山学者が教える一〇〇〇年に一度の時代の生き方
鎌田浩毅
幻冬舎

30秒でわかる本書のポイント
結論: 人生はコントロールできない「想定外」の連続であることを受け入れ、内なるエネルギー(心のマグマ)を制御するのではなく、良い習慣と偶然を活かす技術によって、変化を味方につける。
原因: 現代の日本列島は地球科学的な活動期にあり、自然災害や社会情勢が予測不能な「超・想定外」の時代に突入しているため、従来の「計画と管理」による生き方が通用しなくなっている。
対策: 「計画的偶発性理論」に基づき、好奇心や柔軟性を持って偶然をチャンスに変える行動をとること。また、意志の力に頼らず、仕組みとしての「良い習慣」を設計し、内なる情熱を社会貢献につなげる。
本書の3行要約
現代は「人生をコントロールできる」という幻想を捨て、不確実性を前提とした新しい人生の設計図を描くべき時代です。 内なる煩悩や情熱を「心のマグマ」と捉え、抑え込むのではなく適切な距離感で付き合い、爆発さえも人生の彩りとして活用していきます。 意志の力ではなく「習慣の設計」によって行動をアップデートし、日々出会う偶然や他者との縁を大切にすることで、想定外の事態を好機へと変換していくのです。
おすすめしたい人
・将来への不安や、予期せぬトラブルにストレスを感じやすい人
・キャリアや人生の転機において、どのように選択すべきか悩んでいる人
・真面目すぎて自分を抑え込み、内面のエネルギーの扱いに困っている人
・「努力や根性」による自己改革に限界を感じ、仕組みで人生を変えたい人
読者が得られるメリット
・精神的なレジリエンス: 「想定外は当たり前」という火山学的な視点を持つことで、動じない心が養われる。 ・チャンスを掴む力の向上: クランボルツの「計画的偶発性理論」の5つのスキルを学ぶことで、偶然の出来事をキャリアの武器に変えられるようになる。
・自己理解の深化: 自分の負の感情や強いこだわりを「心のマグマ」として肯定的に捉え直すことができる。
。生活の質(QOL)の改善: 意志力に頼らない「習慣化の技術」により、無理なく生産的な毎日を送るヒントが得られる。
想定外の出来事に対処する方法
自然災害や予想しない事件や事故が頻繁に起こり、「超・想定外」の状況が続いています。この混迷の時代、不安に駆られず、自分の軸を保つには、今までの生き方を根本から変える必要があります。 (鎌田浩毅)
私たちの人生には、想定外なことが起こることは避けられんません。では、その想定外の事象に私たちはどう対処すれば良いのでしょうか?
火山学のスペシャリストで理学博士の鎌田浩毅氏の想定外を楽しむ 火山学者が教える一〇〇〇年に一度の時代の生き方はその問いに対して、「計画的偶発性理論」と「心のマグマ」というアプローチで私たちに新たな生きかたを提示します。
東日本大震災以後の日本列島は、地球科学的に見れば「大地震や大噴火が起きてもおかしくない活動期」に入っています。
著者の鎌田氏はその認識を出発点に、人生の設計図そのものを描き替えるよう促します。ここで重要なのは、恐怖を煽ることではなく、世界の不確実性を過小評価しない態度を生活の中に実装するという、現実的な提案になっている点です。
本書がまず手放させるのは、「人生はコントロールできる」という発想です。むしろ人生は、想定外と偶然の連続でできていると捉え直すことが出発点になります。 コントロールの精度を上げるのではなく、コントロールできない前提に立ち、そのつど一番よい手を打つ。その態度を、火山学者らしい比喩で支えるのが「心のマグマ」という考え方です。
火山のマグマが厄介なのは、ただ危ないからではありません。巨大なエネルギーであるがゆえに、抑え込もうとすればするほど歪みがたまります。ならば問いは「心のマグマをどう抑えるか」ではなく、「どう活かすか」に変わっていきます。
また、著者は想定外のことが起こっても、それをチャンスに変えられると指摘します。この文脈で参照されるのが、「計画された偶然(プランド・ハップンスタンス)」という考え方です。これはスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツが提唱した「計画的偶発性理論」として知られています。(クランボルツの関連記事)
キャリアや人生の転機の多くが偶然によって生まれる以上、偶然を排除しようとするより、偶然が起きやすい状況を意図的に増やし、起きた偶然を意味のある機会に変換する態度が合理的だ、という考え方です。
言い換えるなら、「計画」は未来を固定するためではなく、偶然に対応するための余白と行動量を確保するために使う、ということになります。
クランボルツが明らかにした「幸運」を生み出すための5つのスキルは、次の通りです。
・好奇心(Curiosity):新しい学びの機会を探し、覗きに行くこと
・持続性(Persistence):失敗しても試行回数を減らさないこと
・柔軟性(Flexibility):状況が変われば、自分の前提も変えること
・楽観性(Optimism):機会を「自分にも取りにいけるもの」と捉えること
・冒険心(Risk Taking):結果が不確実でも、小さく踏み出すこと。
著者の鎌田氏が「出会い」を強調するのも、この枠組みで読むと腑に落ちます。日々出会うひとりひとりが、思いもかけぬ可能性の種を秘めています。だからこそ、出会いはどのようなものであっても、決しておろそかにはできないのです。
初対面の人へのさりげない挨拶が人生を変える人脈へとつながるかもしれません。関係性を過剰に神聖視するのではなく、偶然が生まれるプロセスとして丁寧に扱うようにすることで、思わぬチャンスを引き寄せられるよになるのです。私も想定外の出来事、偶然の力を活用することで、人生をより良くできたので、著者のこのメッセージには共感を覚えました。
心のマグマと付き合う技術
内部にある御しがたい〝マグマ〟を内なる力として蓄え、冷却することなく時機をうかがい、社会貢献として開花させた強い人間。
著者は薩長の偉人や夏目漱石、野口英世、宮沢賢治と火山のマグマを結びつけ、彼らのパッションを紐解いていきます。 ここで行われているのは、偉人の実績を称賛することというよりも、巨大なエネルギーが人を動かし、同時に人を悩ませもするという両義性を、火山という著者の専門領域のメタファーによって可視化する試みです。
著者自身も、激しいマグマを抱えた個人や組織の葛藤を、大自然の火山に重ねながら語ってきたと述べています。マグマの力は、人の中にもあります。マグマのような熱い思いが、人間活動の原動力になります。
しかし同時に、そのマグマはたいへん煩わしい存在でもあります。持てあましてしまうこともありますし、こんな面倒なものはどこかに捨ててしまいたいと思うことも珍しくありません。 それでも、私たちの中のマグマは生きることをつかさどっています。
生きるとは、自覚するにせよしないにせよ、自分の内側にマグマを供給し続けることでもあります。 人間のマグマは「煩悩」と言い換えることもできます。煩悩は確かに乗り越えるべき障碍かもしれませんが、同時に、あなたや私が生きていく証でもあります。煩わされようとも、生きるためには上手に付き合っていくしかないものです。 「付き合いたくない、見たくない」とマグマを無視し、完全な安定を求めたとしたらどうなるでしょうか?
著者は、そのときあなたの「生」も一緒に痩せてしまうと指摘します。 恋愛や青春、理不尽への怒り、時代の変動への反応などは、必ずしも幸せな体験ばかりではないかもしれません。それでも人生をドラマチックにし、彩り豊かにしてくれることは確かです。
私自身の人生を振り返っても、それらの体験が今の自分を形作ってきたと感じます。 だから心のマグマは、時には爆発してもよいのです。爆発による破壊と再生も、人生の妙味と言ってよいでしょう。いずれにせよ、私たちを取り巻く世界は想定外に満ちています。
であれば、必ず起きる想定外や偶然の存在をまず意識し、想定外がもたらす心のマグマの変動を「活きた時間」として受け取ってみます。 そう向き合うことが、超・想定外の時代を賢く生きのびることにつながっていきます。
自分の周囲にある美しい世界に目を向け、自らの中にあるマグマの存在を過剰に気にしすぎないことも大切です。個人の自負に振り回されない一方で、他者との関係性ばかりを考えて疲弊してしまわないことも重要です。 その距離感が、結果としてエネルギーを長持ちさせます。手探りでもよいので、自分のマグマとうまく付き合うコツを学んでいくことが大切です。
ほどよいエネルギーの出し方、言い換えれば心のマグマの扱い方を身につけます。その積み重ねが、想定外の時代における実装可能な知恵になっていきます。
ここで重要なのは、気分や決意に依存しないことです。心のマグマを扱う技術は、最終的には習慣の問題に着地していきます。
人には良い習慣と悪い習慣がある。怠惰や無節制が日常的になっている人もいれば、勤勉や節約の習慣をもつ人もいる。いずれも長い間に本人も気づかぬうちに身についたものだ。ここで、思い切って良い習慣に変えることに成功すると、以後は生産的で幸福な生活を送ることができる。
著者はヒルティの「幸福論」を引用しながら、働くことと良い習慣が幸福度を高めると述べています。私自身も、悪い習慣を別の習慣に差し替えることで、生活の手触りが変わった経験があります。
ここで大切なのは、アルコールなどの悪い習慣を気合いや意志の力で断つことではありません。むしろ「やめる」より「置き換える」と考えたほうが、良い結果を得られます。
私の場合は、お酒に費やしていた時間と注意力を、読書や執筆という別の行動に置き換えました。結果として、時間が怠惰なものではなく、自己投資となり、日々の達成感が生まれれるようになったのです。
ここでのポイントは、意志の強さに頼らないことです。意志は状況に左右されますし、疲労やストレスが高い日に限って弱くなります。
夜に手が伸びるものを変える。手が伸びる距離に置くものを変える。時間の使い方を、努力ではなく仕組みでアップデートする。そうすると「頑張ったから続く」のではなく、「習慣によって続く」に変わっていきます。
つまり、ここで使っているのは意志ではなく習慣の力です。良い習慣は、一度回り出すと自分を良い方向に運んでくれます。想定外の時代に必要なのは、自分で考える力とこの自走する仕組みを回すことなのです。
本書のまとめ
現代は「人生をコントロールできる」という幻想を捨て、不確実性を前提とした新しい人生の設計図を描くべき時代です。火山学的な視点から世界の不安定さを受け入れ、予期せぬ変動を拒絶するのではなく、それに対応できる「余白」を日々の生活の中に実装することが、激動の時代を生き抜くための出発点となります。
内なる煩悩や情熱を「心のマグマ」と捉え、抑え込むのではなく適切な距離感で付き合い、爆発さえも人生の彩りとして活用していきます。自分の中にある御しがたいエネルギーを、社会貢献や自己表現の原動力へと昇華させる技術を磨くことで、負の感情に振り回されることなく、豊かでダイナミックな生を実感できるようになります。
意志の力ではなく「習慣の設計」によって行動をアップデートし、日々出会う偶然や他者との縁を大切にすることで、想定外の事態を好機へと変換していくのです。クランボルツの「計画的偶発性」の5つのスキルを意識的に習慣化し、自走する仕組みを構築することが、不確実な未来を「想定外の喜び」に満ちたものへと変える鍵となります。
















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