「超」すぐやる脳のつくり方 もっと! 結果を出せる人になる (茂木健一郎)の書評

A computer circuit board with a brain on it

「超」すぐやる脳のつくり方 もっと! 結果を出せる人になる
茂木健一郎
三笠書房

30秒でわかる本書のポイント

結論:AI時代は「作業の速さ」ではなく「判断の設計」で勝敗が決まる。 AIをエンジン(動力)とし、人間がハンドル(意思決定)を握る「ヒューマン・イン・ザ・ループ」を実践することが、現代の生き残り戦略である。 課題:AIの正解らしさに脳がサボり、責任の所在が曖昧になる。AIは「もっともらしい答え」を出すのが速すぎるため、人間が思考停止に陥りやすい。また、選択肢が増えることで逆に迷いが生じ、先延ばしが発生する。
対策:「直感」と「論理」を分業し、学習の回転数を上げる。網羅的な論理(AI)と、経験に裏打ちされた2秒の直感を使い分ける。さらに「利他性」を報酬系として活用し、信頼というAIが代替できない資本を蓄積する。

本書の3行要約

AI時代の「すぐやる脳」とは、事務処理の速さではなく、AIをエンジンに人間が「目的設定」と「最終判断」を下す編集者に徹することです。頭で悩む時間を「試す時間」に転換し、高速で行動と修正を繰り返すことで、AIが及ばない野生の直感を研ぎ澄ます必要があります。また、信頼を育む「利他性」が自身の行動を加速させる最強の報酬となり、結果を出せる人へと自分を押し上げる原動力になるのです。

おすすめの人

・ChatGPTなどのAIツールを使いつつも、自分の介在価値に不安を感じている人
・情報量に圧倒され、決断や行動を先延ばしにしてしまいがちなビジネスパーソン
・「タイパ」を追求した先にある、真の生産性を知りたい人

読者が得られるメリット

・決断疲れからの解放: AIとの役割分担が明確になり、迷わず「次に進む」スピードが劇的に上がる。
・直感の武器化: 根拠のない自信ではなく、経験に基づいた「2秒の判断」をビジネスの武器にできる。
・信頼資産の拡大: 利他的な行動が脳に与える好影響を理解し、周囲から支援が得られる「結果を出せる人」のサイクルに入れる。

AI時代の働き方とは?

AIが人類を駆逐するのではなく、「AIを使いこなしている人たち」が、「使いこなしていない人たち」を駆逐する。(茂木健一郎)

AI時代に私たちは、自分の脳をどう活用すればよいのでしょうか。少し前まで、この問いはどこか抽象的でした。ところが生成AIが仕事場に入り込み、ChatGPTやClaude、Geminiのような対話型AIが当たり前のツールになった瞬間から、問いは一気に現場の温度を帯び始めました。

資料の要約、競合の比較検討、企画書のドラフト、メール文面の整形、議事録の整理。これまで人間が時間を費やしていた業務が、AIによって短時間に圧縮されます。この時短が進むほど、空いた時間で何ができるかよりも、「そもそも何をすべきか」を決める力が、露骨に成果を分けるようになります。

最近の私は日々、GensparkやClaude、Geminiと対話しながら仕事を進めています。加えて、「ヒューマン・イン・ザ・ループ」という考え方を、業務設計の柱に置くようになりました。AIに任せるところは任せ、最後は人間が整理して意思決定を行います。

ところがこの役割分担を行うと、ここで不思議な逆転が起きます。AIを使えば使うほど、仕事が楽になるどころか、むしろ人間のやることが明確になり、気が抜けなくなるのです。

なぜかと言えば、AIは答えを出す速度が異常に速いからです。速い上に、いかにも正しそうで、もっともらしいのです。しかも彼らは疲れません。すると人間は、判断の前段階である「作業」から解放されます。これは朗報のはずですが、同時に「ではあなたは何を基準に、その答えを決めるのか」という問いが、突きつけられます。

AIの出力を整えるだけなら、誰でも一定水準に達します。差が出るのは、どんな問いを投げるのか、どの視点を採用するのか、どのタイミングで決断するのかといった、脳の編集機能のほうです。AI時代の生産性は、作業の速さではなく、脳の使い方で決まると痛感します。

この感覚を、脳科学者として言語化したのが、脳科学者の茂木健一郎氏の「超」すぐやる脳のつくり方 もっと! 結果を出せる人になるです。茂木氏はAIを使い倒さない人は、今後駆逐されると残酷な未来を予測します。

ヒューマン・イン・ザ・ループとは、AIは大量のデータから学習し、予測や判断を行うことができるため、状況に応じた判断が必要な場面では限界があるため、 AIが判断に迷ったり、誤った判断をしたりした場合に人間が介入して修正を行うことで、精度の高い結果を得ることができる、というものです。

著者が指摘するように、AIは情報処理と言語化を大幅に代替します。しかし、目的の設定、優先順位づけ、違和感の検知、最終責任を引き受ける決断は代替しません。むしろAIが優秀になるほど、この人間側の領域が目立ってきます。

AIが出した結論が正しそうに見えるほど、こちらの脳はサボりたくなります。しかし正しそうに見えるものほど危ない場面もあります。前提がズレていれば、精緻な結論ほど遠くへ飛んでいってしまうからです。だからこそ、人間が介入する仕組みが必要になります。

そのために私が強く意識しているのが、「ヒューマン・イン・ザ・ループ」の役割分担を最初に決めてしまうことです。AIが得意な大量処理、パターン抽出、要約、ドラフト作成は、できるだけAIに任せます。ここは高速で回せば回すほど価値が出るプロセスなので、遠慮なくAIに任せます。

一方で、人間が担う領域も明確にします。目的設定、優先順位づけ、判断と最終決定です。何のためにやるのか、何を捨てて何を取りにいくのか、どのリスクを引き受けるのか。ここはAIに委ねません。AIがもっともらしい結論を提示しても、それを採用するか破棄するかを決めるのは人間の責任です。

AIは便利ですが、前提の取り違えや間違った情報を私たちに提示すいます。目的に照らして整合させ、必要なら前提から作り直す。この編集工程がないと、AIを活用したとしても成果を得られません。

さらに、相手の納得感や不安、モチベーションの揺れを扱いながら合意形成を進める場面では、言葉の正しさよりも関係の質が成果を左右します。この領域は、いまのところAIが代替しにくい、人間の仕事です。だから私は、AIとの対話を「答えをもらう場」ではなく、「判断の材料を整える場」として捉えています。

AIに大量の材料を出させ、人間が目的に照らして編集し、最終的な判断を下します。行動した結果をまたAIに戻して振り返り、次の仮説と選択肢を更新します。この往復運動を回すことで、AIは便利な自動化ツールから、意思決定のエンジンへ変わっていきます。

そして同時に、人間の脳は「作業者」から「編集者」へと役割を取り戻していきます。では、その編集の質を支える人間のリソースは何でしょうか。知識量でしょうか。努力量でしょうか。もちろんどちらも大切です。

ただ、AIがそれらを強力に補助できる時代には、別のリソースが前面に出てきます。私はそれが「直感」だと思っています。 ここでいう直感は、スピリチュアルなものではありません。経験が圧縮された判断のスピードです。データを見切る前に、二秒で「こっちだ」と感じる、あの感覚です。

ビジネスの現場なら、プレゼンの最中にふと空気が止まった瞬間、「この企画は通る」「これは危ない」と体が先に反応した経験がある人も多いはずです。 AIは根拠を積み上げて結論に到達します。

一方で人間は、結論を先に思いつくことがありまっす。そして厄介なことに、その経験に裏打ちされた直感が意外と外れていないことがあるのです。AI時代は、この直感を信じ、むしろ鍛えるべきだと感じます。 ただし直感は、単体で使うと誤ることがあります。

ここで必要になるのが、直感と論理のバランスです。AIに論理と網羅性を担わせ、人間は直感で方向を決め、最後判断した後は責任を引き受ける。この分業ができると、決断が速くなり、しかも強くなります。 直感を信じるとは、根拠を捨てることではありません。判断に必要な根拠の探索と整理を、AIに任せるということです。

AIの根拠はデータにあります。人間の根拠は、経験と身体感覚、そして置かれた環境にあります。この二つを併用できるようになると、意思決定は加速し、同時にブレにくくなります。生成AIを使い込むほどに見えてくるのは、結局のところ「自分の脳とAIの使い分け方」なのです。

AI時代に人間がやるべき本質的な仕事とは?

自分の行動に対してしっかりと「ダメ出し」ができるようになることで、脳の成長、つまり自己の成長を促せるからです。

生成AIが答えを量産できる時代に、人間が結果を出すために必要なのは、努力の総量というより、脳の使い方のアップデートが必要だということがわかります。その際、鍵になるのは行動数と選択のクオリティになります。AIが調査やドラフト作成を高速化する以上、私たちは以前より多くの選択肢を前にします。

選択肢が増えるほど、迷いも増えます。迷いが増えるほど、先延ばしも増えます。ここで「すぐやる」の意味が変わってきます。タスクを片づける速さではなく、選択を先に進める速さです。悩む時間を短縮するのではなく、試す時間を前倒しにします。

小さく動き、フィードバックを得て、直感を現実で鍛えます。こうした回転数を上げることで、AIの出力を「使える成果」へ変換できるようになります。

さらに本書は、自己評価の重要性にも光を当てています。行動する自分と、それを評価する自分を分ける発想は、メタ認知の話として、AI時代に一段と効いてきます。

AIを使えば試行回数が増えます。試行回数が増えるほど、振り返りの質が成果を左右します。AIを壁打ち相手にし、反省を行い、次の行動のヒントをもらうのです。

自分の判断を言語化し、別案を出させ、盲点を指摘させます。すると人間の脳は、次の判断を少しだけ速く、少しだけ正しくできるようになります。結局、AI時代の勝ち残りは、特別な才能よりも、学習の回転数で決まっていくのだと思います。 

本書は、生成AI、生産性向上、ヒューマン・イン・ザ・ループといった文脈の中で読むと、単なる行動本ではなく「AIと共存するための脳の運用マニュアル」として位置付けられます。

今後、私たちはAIを使うほどに、編集者としての責任を引き受けることになります。問いを立て、選び、決め、動きます。その一連の流れの中で、直感と論理を分業し、失敗を学びに変えていきます。

そうした現場の技術が、結果を出す人の脳をつくっていくのだと、本書は促します。 そして重要なのは、AIが進化すればするほど、人間の直感と感性の価値がむしろ高まっていくという逆説です。

AIは大量処理や要約、ドラフト作成のような「速さと網羅性」が求められる仕事で、これからも圧倒的な強さを見せます。だからこそ私たち人間は、AIをエンジンとして活用しながら、感性や直感、そしてときに非論理的な発想まで含めて駆使し、「どれを選び、どこで決め、いつ動くか」を引き受けていく必要があります。

判断・選択・行動のスピードが問われる局面では、最後にハンドルを握る人間の役割は、むしろ大きくなっていきます。 ここまでくると、「AIが人類を駆逐するのではなく、AIを使いこなしている人たちが、使いこなしていない人たちを駆逐する」という言葉の意味も変わって見えます。

これは脅しではなく、設計の話です。AIを導入するかどうかではなく、AIと人間の役割分担をどう設計するか。AIに任せる領域と、人間が責任を持つ領域を切り分けられるか。そこに勝敗が出ます。 人間とAIが互いの長所を活かし合うことは、これからの労働環境でますます求められます。

AIに「速さ」と「網羅性」を任せ、人間は「目的設定」と「最終判断」を担い、関係構築や感情を扱う対話で価値を出す。そうした協働が当たり前になったとき、ビジネスパーソンに必要なのは、AIの操作スキルだけではありません。

AIを使いながらも、自分の脳を主役に戻す力です。 そして本書がもう一段、現代的だと思うのは、ここに「利他」という軸を差し込んでくる点です。茂木氏は「ブレインコイン」という言葉で、利他的に生きることが脳の報酬系を回し、結果的に行動を加速させると示唆します。

AI時代は、成果が数字や効率に回収されやすいぶん、人間関係や信頼、共感といった数値化しにくい資本が軽視されがちです。しかし実務の現場では、最終的にものを言うのは、誰と組めるか、誰に相談できるか、誰が助けてくれるかという信頼関係です。

そこを支えるのは、結局のところ利他性です。 利他性は、きれいごとではありません。自分の時間と知恵を少しだけ他者に渡し、相手の成功確率を上げる。困っている人に一段だけ手を差し伸べる。見返りが確定していない場面で、先に与える。そういう振る舞いが、長期的には信用として積み上がり、情報や機会や支援となって戻ってきます。

本書が言うブレインコインは、まさにペイ・フォワードです。AIが最適化と効率化を推し進めるほど、非効率に見える利他の価値が、むしろ際立つのです。

だからこそ、AIをエンジンとして使いながら、人間が担うべき仕事は二つあります。ひとつは、直感と感性を働かせて、素早く正しい判断・選択・行動をすることです。

もうひとつは、利他性によって関係を育て、信頼のネットワークを厚くすることです。AIはタスクを速くしますが、信頼までは自動生成してくれません。信頼は、日々の小さな利他的行動の積み重ねでしか増えないからです。

本書は、生成AIを毎日使っているビジネスパーソンほど、読む意味がある一冊です。AIができることを増やすためではありません。AIと協働しながら、人間にしかできない判断と選択を研ぎ澄まし、さらに利他性を使うことで、結果を出せるようになります。

AI時代に必要なのは、賢いアウトプットではなく、賢い生き残り方です。本書は、その骨組みを脳の言葉で与えてくれます。

本書のまとめ

・AI時代の「ヒューマン・イン・ザ・ループ」設計
著者の茂木氏が説くのは、AIに駆逐される恐怖ではなく、AIをどう使い倒し、自分の生産性を高めるかという点です。AIは言語化や情報処理を肩代わりしてくれますが、その結論を採用する「基準」と「責任」は人間にしか持てません。AIのアウトプットを鵜呑みにせず、違和感を検知する脳の感度を上げることが、これからの時代の「すぐやる」の本質です。

・直感×論理の分業システム
AIが担うのは論理性と網羅性です。対して人間が磨くべきは、一瞬で方向を決める「直感」です。会議室での一瞬の沈黙、企画への違和感――こうした身体感覚をAIのデータと掛け合わせることで、判断はより速く、より強固になります。

行動の回転数を上げ、失敗をAIと共に振り返ることで、脳は「作業者」から「高度な意思決定者」へとアップデートされます。

・信頼を自動生成できないAI、信頼を築く利他脳
どれほどAIが進化しても、人間同士の「納得感」や「モチベーション」を扱う領域は代替されません。ここで鍵となるのが「利他性」です。自分の知恵を他者に手渡し、信頼というネットワークを厚くする。この「ブレインコイン」の循環こそが、AIが最適化を推し進める世界において、最後に大きなリターンをもたらす生存戦略となります。

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

Ewilジャパン取締役COO
Quants株式会社社外取締役
Mamasan&Company 株式会社社外取締役
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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