強運脳(茂木健一郎)の書評

human anatomy model
強運脳
茂木健一郎
かんき出版

本書の要約

私たちの周りには、常に運が良いと言われる人や、何かとチャンスに恵まれる人がいます。著者は強運になる人の共通点を探し、それを10の行動習慣として明らかにしました。これらの習慣を取り入れることで、運を引き寄せられる体質に変われます。強運脳を身につけることで、人生の可能性を広げられるのです。

計画的偶発性理論に基づき行動することで、運が高まる!

世の中には間違いなく、運を引き寄せられる人とそうでない人がいます。 (茂木健一郎) 

私たちの周りには、常に運が良いと言われる人や、何かとチャンスに恵まれる人がいます。その違いは一体何なのでしょうか?運は一方的に与えられるものではなく、私たちの行動や態度によって引き寄せられるものとして捉えるべきです。

このブログでもお馴染みのスタンフォード大学のクランボルツ教授の「計画的偶発性理論は、この考えを科学的に裏付けています。 クランボルツ教授の研究によれば、成功したビジネスパーソンの約8割が計画通りのキャリアアップではなく、予期せぬ偶然の運によって成功を収めています。しかし、その「偶然」はただの運ではありません。成功者たちは特定の行動や心がけを持っていたのです。

そこでクランボルツ教授は、「運は自分の心がけ次第で引き寄せることができるのではないか」という仮説をもとに分析したところ、キャリアアップで成功する人は運をつかむ前にある行動をとっていて、それによって自ら強い運を引き寄せていたことを突き止めたのです。その行動特性は以下の5つになります。  
1 好奇心(Curiosity)  
2 持続性(Persistence) 
3 柔軟性(Flexibility)  
4 楽観性(Optimism)  
5 冒険心(Risk-Taking)  

脳科学者の茂木健一郎氏はこうした行動特性は、脳科学の視点から考えても理にかなっていると指摘します。 なぜなら、運とはあたかも偶然に起こったように感じますが、実はこうした小さな行動の積み重ねがあったからこそ起こるものだからと言うのです。

また、運が高い人にはメタ認知能力の高さという共通点があります、私たちが毎日持つ思考や判断には、意外と気づかないバイアスが潜んでいます。その中で特に注目したいのが「メタ認知能力」という能力と、それに関連する「ダニング=クルーガー効果」です。

メタ認知能力とは、自分の認知を理解し、それをうまく制御する能力のことを指します。この能力が高い人は以下の特徴を持っています。 自分の能力や行動を客観的に分析できる 足りている能力と不足している能力の違いを理解して適切な判断ができる 失敗に対する肯定的な反省と改善を実践できる 一方、メタ認知能力が低い人は、自分の能力を正しく評価できないという特徴があります。

具体的には、自己の実力を過大評価する傾向にあります。 この自己評価の誤りについて、コーネル大学のダニング博士とクルーガー博士による有名な実験があります。彼らは試験の後で参加者に自己評価を求めたところ、下位の成績者が自身の成績を過大評価し、逆に上位の成績者が過小評価する結果が出ました。この現象は「ダニング=クルーガー効果」と名付けられました。

この効果の背景には、脳の特定の思考癖が関与しています。それは、自身の能力や知識を過大評価する傾向と、それを矯正する能力の欠如です。この思考癖が、誤った判断や無謀な挑戦を引き起こす可能性があります。 実際に成功している人々を観察すると、彼らは自身の能力を過大評価することなく、常に謙虚な姿勢を保っています。

強運になるための10の行動習慣

著者は強運になるための10の行動習慣を明らかにしています。これらの習慣を取り入れることで、運を引き寄せられる体質に変われます。強運脳を身につけることで、人生の可能性を広げられるのです。

1、動く 
行動力とは、自ら進んで実行に移せる力であり、それと同時に自分が知らないことや経験がないことに対しても、興味を抱けるということです。 行動力は、自分が思い描くことを実際に行動へ移せる能力です。それだけでなく、新しいことに対しても興味を持ち、積極的に学ぼうとする姿勢を持っています。このような行動力を持つことで運気がアップし、個人の成長やキャリアの発展によい影響を及ぼします。

やりたいことがあれば、あれこれ考える前にすぐにアクションを起こしましょう。完璧を求めずに行動を起こすことで、結果が出せるようになります。

2、推す
いち早くトレンドを押さえ自分の「推し」を見つけることは、今の時代において非常に重要な活動です。トレンド情報をいち早く手に入れることで、変化の兆しを見つけることが自分の可能性を広げてくれます。

3、魅せる
自分らしさを追求することは決して無駄ではありません。実際に、集中して取り組むことで脳内物質が分泌され、陶酔した状態になることが科学的に証明されています。この状態は、質の高いパフォーマンスを発揮するだけでなく、幸せを感じる状態でもあります。

自分がフロー状態になれることを積極的に発信するようにしましょう。その際、自分の魅せ方をシミュレーションし、他人から見た自分をイメージすることが重要です。自分を客観視するメタ認知によって、自分脳を鍛えられます。

4、惹かれる
たまたまを受け入れて「運がよかった」が積み重なると、驚くほどの強運になることがあります。運が良い人とは、偶然の幸運を受け入れることができる人のことを指します。彼らは常に前向きな姿勢を持ち、チャンスが訪れた際には素早く行動します。いろいろなことに興味をもち、それに取り組むことで、自分の世界が広がります。

「運は雑談で引き寄せられる」と著者は言います。雑談は相手との心を開かせるきっかけになります。運の良い人と仲良くなるために雑談を楽しみましょう。

5、行く
「正しい時に正しい場所にいること」が運を良くする秘訣です。チャンスがある場所や上機嫌な人が集まる場所に出かけるようにしましょう。また、成長させてくれる人が集まる場所に参加することも重要です。私は独立する10年ほど前に、朝の読書会に参加していましたが、この時築いた経験と人間関係が、今の私の貴重な財産となっています。早朝から熱心に学び続ける仲間たちとの関係は、私の人生の軌道を変える助けとなりました。

6、過ごす
頭で考えるよりもまずはアクションを起こしましょう。そんなふうに過ごすとタイミングカが高まります。

7、考える
過去や思い込みにとらわれずに「ゼロベース」でか考えることで、柔軟な発想ができ、ベストソリューションが頭に浮かびます。また、相手や周りの人がハッピーになる、利他的思考に切り替えることで、脳が活性化し、ビジネスがうまくいくよいうになります。

8、感じる
自分の好き嫌いを大切にすることで、自分の感性を磨けます。嫌いよりも好きを意識し、それを選択するようにします。目の前のチャンスに敏感になり、機敏に直感を働かせて、強運をキャッチしましょう。

9、観る

美意識は「たくさんのものを見聞きした統計的な平均からできている」という明確な定義があります。この定義が意味するところは、たくさんのデータサンプルが脳の中になければ美意識は磨かれないということです。

さまざまなアートを観ることで、美意識が育まれます。文化や体験を通じて、人間力を磨くことで運気がアップします。

10、気遣う
相手の感情を理解するには、私たちがこれまでに学び、体験し、蓄積してきた知識や経験をフルに活用し、深く考える能力が求められます。これには、高度な抽象思考や類推を駆使する訓練が不可欠です。そして、そういった思考の糧となる教養を身につけることは、より迅速に相手の感情を読み取る手助けとなります。

私たちの脳にはミラーニューロンという、他者の行動や感情を自分のことのように感じ取るための神経細胞が存在します。このミラーニューロンの能力を最大限に活かし、教養の力を借りて他者の感情を共感的に理解することが大切です。

相手の幸福を考え、行動をとることで、私たちは自然と人々からの支持や応援を得られるようになります。良好な人間関係は、あなたの運気を向上させ、人生をより豊かにしてくれることでしょう。

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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