「お金があっても不安が消えない」経営者が知らない10の資本の真実。あっという間にお金はなくなるから (佐藤舞 サトマイ)の書評

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書籍 あっという間にお金はなくなるから 「足りない病」の原因と治し方
著者 佐藤舞 サトマイ
出版社  KADOKAWA
ASIN ‏ : ‎ B0G68XC58F

30秒でわかる本書のポイント

【現状】慢性的な「足りない病」 多くの人が、客観的には十分な資産や収入があっても「まだ足りない」という漠然とした不安(=足りない病)に苛まれている。これは金額の問題ではなく、人間の認知と脳の仕組みによるバグである。
【原因】資本の偏りと「失敗の科学」の欠如 お金(金融資本)だけに依存した人生設計は脆い。SNS等で他者の煌びやかな成功(アート)と比較し、再現性の高い「失敗のパターン(科学)」を学ばないことが、不安と転落のリスクを高めている。
【対策】10の資本(MCM)によるポートフォリオ経営 金融資本だけでなく、人的資本、社会関係資本、時間資本など「10の資本」をバランスよく育て、循環させること。自分という「会社」のB/S(貸借対照表)を豊かにすることで、外部環境に左右されない真の自律を手に入れる。

本書の3行要約

本書は、お金への執着や不安の正体をデータサイエンスの視点で解明し、ネガティブ感情の裏にある「無力感」と向き合うことの重要性を説く。成功は運(アート)だが失敗は科学であるという前提に立ち、人生を破綻させないための再現性あるリスク管理術を提示している。金融資本一辺倒ではなく、人的・社会・時間などを含む「10の資本」を総合的に運用する経営者視点こそが、持続可能な幸福への鍵であると主張する。

おすすめの人

・事業は順調だが、漠然とした将来不安が消えない経営者
・「もっと稼がなければ」という強迫観念に疲弊しているリーダー層
・精神論やスピリチュアルではなく、論理的・科学的にお金と幸せの関係を理解したい方
・SNSの他人の成功を見て、つい焦りや嫉妬を感じてしまう方
・自身の資産形成や人生設計において、リスクヘッジの視点を持ちたい方

読者が得られるメリット

・「お金の不安」のメカニズムを脳科学・統計学的に理解し、感情をコントロールできるようになる。
・「成功はアート、失敗は科学」という視点を持ち、致命的な失敗を避けるための行動指針が得られる。
・金融資本以外の「見えない資産(人的資本、社会関係資本など)」の価値を再認識し、投資の優先順位を変えられる。
・他責思考から自責思考(自律)へのマインドセット転換により、人生の主導権を取り戻せる
・自分独自の「幸せの尺度」を持つことで、他者との比較競争から降りることができる。

不安になった時の対処法を知る。

他人や環境に対して持つ恨みや怒りは、実は、自分や自分の大切なものを守れなかった無力感の裏返しなのではないかということです。 (佐藤舞) 

私たちはお金だけでなく、将来のさまざまな不安を抱えながら、日々を生きています。今回のイラン攻撃で明日は今日と同じではないと実感しました。 地政学リスク、パンデミック、気候変動、AI革命——私たちを取り巻く不確実性は増すばかりです。そして、その不安の多くは「お金」という一点に収束していくように感じられます。

しかし、本当にそうでしょうか? 本日ご紹介する佐藤舞(サトマイ)氏の書籍 あっという間にお金はなくなるから 「足りない病」の原因と治し方は、この根源的な問いに対して、統計学とデータ分析の視点から明快な答えを示してくれます。

タイトルだけ見ると個人向けの家計管理本のようにも見えますが、実は経営者にも役立つ内容になっています。本書は、経営者が自らの「人生経営」を多角的に設計し直すための、極めてロジカルなリスク管理の書です。

経営者が抱える、あの「拭いきれない満たされない感覚」。 その裏側には、実は人生をより深化させるための大切なヒントが隠されています。 外側の成功を追い求めるだけでなく、内側の充実をいかに両立させていくかが重要です。

本書は、不透明な未来への不安を減らし、「人生をより豊かにする処方箋」を著者は提案します。単なる現状維持のための備えではなく、不安をエネルギーに変換し、より自由で、より手応えのある生き方へとシフトするための知恵を得られます。

そもそも「不安」とは何でしょうか。著者は明快に定義します。不安とは、「将来起こるかもしれない、はっきりしない脅威」に対する恐れだということです。 「将来、収入がどうなるかわからない」「大きな出費がいつ発生するかわからない」――つまり、生存に直結するリソースが失われるリスクが予測できない。だから、不安が断続的に生まれる。ということです。

お金という可視化されやすい指標だけを見ていると、この「予測不可能性」という本質が見えなくなります。本書は、不安の根源を突き止め、それを多面的にマネジメントするための処方箋を提示してくれるのです。

著者は、脅威(脅威)に対する「視認性」と「対処」の2軸から、人間のストレス反応を4つのパターンに分類しています。これは、お金の不安に対する私たちの無意識の反応パターンを理解するために極めて有用です。
①Fight or Flight(闘争・逃走)
脅威が見えており、対処できると感じる状態。「解決するために行動する」積極的な反応です。経営者がピンチに立ち向かう、あるいは不採算事業から撤退するといった行動がこれに当たります。

②Freeze(凍りつき)
脅威が見えているが、対処できないと感じる状態。「生存のための最終手段」として、動けなくなります。お金の不安を感じながらも、何も行動できずに硬直してしまう状態です。

③Explore(探索)
脅威が見えていないが、対処できると感じる状態。「好奇心で一歩踏み出す」冒険的な行動です。新規事業への投資や、学びへの投資がこれに該当します。

④Drift(漂流)
脅威も見えず、対処もできない状態。「行動の舵を手放す」無気力な状態です。将来への不安を漠然と抱えながら、何をすればいいかわからず、日々を惰性で過ごしてしまう状態です。

多くの人が陥りやすいのは、②のFreeze(凍りつき)と④のDrift(漂流)です。

一方、同じようにお金やキャリアの不安はありつつも、うまく行動に昇華できている人たちは、別の反応パターンをとっています。

彼らは、見えている脅威には現実的に対処し(Fight/Flight)、見えていない不安にも探索的に向き合う(Explore)という二つのモードを、状況に応じて切り替えながら動いているのです。本書は、この状態へと意識的に移行するための具体的な方法を提示しています。 

私が本書を読んで最も膝を打ったのは、次の言葉です。 「成功はアートだが、失敗は科学である」 ビジネスの世界において、大成功には「運」や「タイミング」、「個人のセンス」といった不確定要素(アート)が大きく関わります。GAFAのような企業を意図して再現することは極めて困難です。

一方で、失敗には明確な「原因」と「プロセス」が存在します。 SNSを覗くと、うまくいっている風の人しか目に入らないかもしれません。

しかし、実際には、うまくいっているように装うのに必死だったり、一時はうまくいっても、足場を失って静かに転落して消えていく人がたくさんいるのです。しかも、それにはある程度共通するパターンがあります。

成功はセンスや偶然に左右されるけれど、失敗は科学的に原因を分析でき、あらかじめ防ぐことができるのです。私たち経営者が学ぶべきは、再現性のない他人のサクセスストーリーよりも、再現性の高い「失敗の回避法」です。

本書は、そのための視座を与えてくれます。 「怒り」の正体は、無力感の裏返し なぜ私たちは、お金がないこと、あるいは思うようにいかないことにこれほど感情を揺さぶられるのでしょうか。

著者の佐藤氏は、私たちが抱くネガティブな感情の正体について、鋭い指摘をしています。 他人や環境に対して持つ恨みや怒りは、実は、自分や自分の大切なものを守れなかった無力感の裏返しなのではないかということです。

景気が悪い、政治が悪い、ライバルが強力だ……。経営をしていると、外部環境への怒りや不満が溜まることがあります。しかし、その感情の根底にあるのは「自分には状況を変える力がない」という無力さの承認です。 これは乱暴な自己責任論ではなく、そういう視点に立って初めて、自分の人生の舵を自分で握るスタート地点に立てると思っています。

他責思考でいる限り、私たちは環境の奴隷となってしまいます。しかし、「自分の人生の経営責任者は自分である」と腹を括った瞬間、あらゆる問題は「解決すべき課題」へと変わります。このマインドセットの転換こそが、不確実な時代を生き抜くための最強の武器となります。

金融資本だけではない、活用すべき「10の資本」

お金の交換力は、それ単体で万能なのではなく、他の資本に変換して初めて機能するのです。このことは、「お金さえあればなんとかなる」という考え方の限界を示しています。むしろ、お金ばかりに依存しすぎることは、危ういバランスの上に立っているとも言えるでしょう。

「あっと言う間にお金はなくなる」というタイトルへの対策として、本書が提示するのが「資本の多様化」です。いざという時のために備えておくべきものは、お金(金融資本)だけではありません。

著者は「マルチキャピタルマネージメント(MCM」という概念を用いて、私たちが持つべき資本を10に分類しています。その中には以下のようなものが含まれます。

①金融資本(Financial Capital): 預貯金・株式・不動産など。経済的な安定と選択肢を生む力。
②物的資本(Physical Capital): 衣食住、道具、テクノロジー。暮らしを支える物理的な基盤。
③健康資本(Health Capital): 体力・睡眠・栄養。すべての活動を支える生命の土台。
④心理的資本(Psychological Capital): 希望・自己効力感・楽観性・レジリエンス。心がくじけても立ち上がる、内なる推進力。
⑤社会関係資本(Social Capital): 信頼・つながり・評判・ネットワーク。支え合いと機会を生み出す関係の力。 ⑥人的資本(Human Capital): スキル・知識・経験。学び続けることで磨かれる実践の力。
⑦自然資本(Natural Capital): 水・空気・光・緑などの自然環境。創造性と健康を育む大地の恵み。
⑧文化・教養資本(Cultural Capital): 芸術・思想・礼節・美意識。人の深みと感性を育てる内面的な資本。
+1A 時間資本(Time Capital): 一日24時間(万人共通)。失うと再生不可能な資本。
+1B 顕示資本(Conspicuous Capital): 地位・肩書き・ブランドなど。社会の中で自分の存在を”見せる”資本。

基本の8つの資本は、育てることができる「再生可能な資本」になります。時間資本は、失えば戻らない「不可逆の資本」で顕示資本は、増やすほど脆くなる「自己破壊的資本」と言えます。そのため、著者は、「10」ではなく「8+1+l」とMCMを区分しています。

多くの経営者が陥りがちな罠が、金融資本の最大化のみに注力し、健康資本や社会関係資本を毀損してしまうことです。お金持ちになっても孤独で病気がちであれば、それは「経営の失敗」と言えるかもしれません。

SNS上の「成功している風」の人たちに心を乱される必要はありません。彼らの多くは、これらの多重資本のうち、金融資本(あるいはその見せかけ)だけに特化し、他の資本を犠牲にしているケースが少なくないからです。 真の豊かさとは、これら複数の資本がバランスよく満たされ、相互に良い影響を与え合っている状態を指すのではないでしょうか。

重要なのは、これらの資本が相互に連関し、影響し合っているということです。自然資本を無視すればストレス回復力や集中力が失われ、文化・教養資本を無視すれば発想力の幅や人間的な魅力が育たず、結果的に心理的資本や社会関係資本まで侵食されます。これは見落とされがちな盲点です。

知識や人脈、スキルを伸ばしてきた人こそ、このフェーズで文化や自然を取り入れると、資本同士が有機的に結びつき、相互に強化し合う段階に入れるのです。 

お金はハイパーインフレや詐欺で一瞬でなくなる可能性がありますが、積み上げたスキルや信頼、健康な肉体は、そう簡単には奪われません。

人的資本、金融資本、社会関係資本をバランスよく伸ばし、相乗効果を得ることで、豊かな人生を送れるようになります。

まずは、「足りない」と思いながらも、実は自分はすでに、活かせる資本を持っていることに気づくこと。そして、自分が持っているもので戦うと決めること。これが、「足りない病」を癒やす第一歩です。

本書が示すように、自立とは、誰にも頼らないことではなく、依存先を複数持つことです。お金だけにしがみつくのではなく、健康や知識、人とのつながり、文化や自然との関わりを少しずつ耕していく。その積み重ねが、「なんとなく足りない気がする」という慢性的な不安をやわらげ、「何があっても、なんとかできる」という自己効力感を育ててくれるのです。

コンサルタント徳本昌大のView

本書は、佐藤舞(サトマイ)氏のデータサイエンティストとしての冷徹な分析と、人間への温かい眼差しが共存する良書です。特に経営者にとって、本書は「人生のB/S(貸借対照表)を見直す」ための絶好のテキストとなります。

私たちは事業においてポートフォリオを組み、リスクを分散させます。しかし、自分の人生となると、途端に「お金」という単一の指標に依存しがちです。

本書が提唱する「10の資本」というフレームワークは、経営戦略でいうところの「多角化」であり「リスクヘッジ」そのものなのです。 「順調な時ほど、足元を見よ」とはよく言われますが、具体的に何を見ればいいのでしょうか。

それは、お金以外の資本が枯渇していないかの点検です。 忙しさにかまけて、家族や友人との信頼関係(社会関係資本)をおろそかにしていませんか? 短期的な利益のために、学びや健康(人的・健康資本)を切り売りしていませんか?

見栄やプライドのために、無駄なコスト(時間資本)を支払っていませんか? 「成功はアート、失敗は科学」。この言葉を胸に、自らの人生経営における「致命的な失敗」を回避する仕組みを作れると、人生がより豊かになります。

お金への不安が消えないのは、お金が足りないからではなく、自分を支える「他の柱」が見えていないからかもしれません。 多くの経営者は、売上やキャッシュフローという「結果指標」ばかりを気にします。

しかし本書が教えてくれるのは、「10の資本」という「先行指標」の重要性です。健康を損ない、人間関係が壊れ、学ぶ時間を失った先に、持続可能な成功はありません。 本書を読み、自分の資本ポートフォリオを可視化してみると、どこが手薄で、どこに偏っているのかがわかります。

その診断ができるだけで、今後の意思決定の質が劇的に変わります。 慢心が生まれた時、あるいは焦燥感に駆られた時、本書を手に取ることで、冷静な「科学的思考」を取り戻すことができます。ぜひ、ご一読ください。

最強Appleフレームワーク


 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

Ewilジャパン取締役COO
Quants株式会社社外取締役
Mamasan&Company 株式会社社外取締役
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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