人生は攻略できる (橘玲)の書評

man jumping on cliff

人生は攻略できる
橘玲
ポプラ社

本書の要約

人生には攻略法が存在します。それは、人的資本、金融資本、そして社会資本の3つの資本を均衡よく育てていくことです。これらの資本を効果的に活用し、時代の変動や新しい挑戦にも柔軟に対応できる能力を身につけることで、私たちはより意味深い、そして幸せに満ちた人生を築き上げることができるのです。

リスパが重要な理由

「あるものを選んだら、別のものをあきらめなくてはならない」というトレードオフの法則だ。1日は24時間で、なにかに10時間を費やせば残りは14時間だ。睡眠時間やそれ以外の雑用を加えれば、これで1日は終わってしまう。(橘玲)

私たちの生活には、様々な限られた資源が存在します。お金や時間、そして大切な人間関係。これらの限りある資源を如何にして最適化し、最大の効果を生み出すかが、真の成功への鍵です。ただし、その過程でリスクも伴います。成功への道には、避けられないリスクがつきものですが、そのリスクをどこまで受け入れることができるのか、それを見極めるのもまた重要なスキルと言えるでしょう。

「強く願うだけでは夢は叶わない。なにひとつ攻略法を知らなければ、いつまでもレベル1のままだ」と橘玲氏は指摘します。夢を叶えるためには、単に夢を見るだけではなく、攻略法を持って、行動し続けることが重要です。夢を実現するための戦略や知識を持ち、段階的にレベルアップしていくことで成功への道をめます。また、テクノロジーの急激な変化で昔の人生の攻略法は使えなくなっています。

限られたお金を有効に使うのが「コスパ(コストパフォーマンス)」で、限られた時間を有効に使うのが「タイパ(タイムパフォーマンス)」になります。人生にはもうひとつ大事な指標である「リスパ(リスクパフォーマンス)」があります。

このゲームを攻略する戦略は(たぶん)ひとつしかない。それが、「失敗してもいいリスクを取って、試行錯誤しながら経験値を上げていく」ことだ。  

著者は人生というゲームの攻略法は、「失敗を恐れずに、試行錯誤しながら経験を積んでいく」ことに尽きると言います。「同じ利益を目指すならば、リスクの少ない選択をする」または「同じリスクであれば、より大きな利益を得られる選択をする」という考え方を取り入れるべきです。

リスクを取ったから必ず成功するわけではありません。しかし、リスクを冒すことによって得られる成功や成長は大きいものがあります。「再チャレンジ」の機会を保持しながらリスパを適切に管理することが大切なのです。なぜなら、やり直すチャンスがあれば、失敗は貴重な学びとなるからです。失敗から得られる体験やネットワークが次の成功確率を高めてくれます。

人生における様々なタイミングで、リスクを取るか?取らないか?を的確に判断すべきです。リスクの取り方は、人それぞれの価値観や、どう人生というゲームを楽しむかによって異なります。

時間やお金の有効な使い方は確かに大切ですが、それだけでは十分ではありません。成功への道は、コスパやタイパだけでなく、リスパも考慮して進むべきです。リスクを的確に評価し、チャンスを正しく見極めることで、最も効果的なアクションをとることができるのです。

幸福の土台となる3つの資本を(人的資本、金融資本、社会資本)育てよう!

幸せな人生を送るためには、好きなことに夢中になり、後から振り返って幸福だったと感じること、お金や仕事、愛情や友情といった土台を作ること、自分が目指す人生をイメージし、戦略的に行動することが重要です。

幸福とは、個々人によって異なるかもしれませんが、自分自身が心から好きなことに没頭し、その瞬間を楽しむことは幸福の一つの形です。例えば、趣味や特技を追求すること、興味のある分野での学びや成長を重視することなどがあります。自分が本当にやりたいことを見つけ、それに没頭することで、毎日が充実し、幸福感を感じることができるでしょう。

また、後から振り返って幸福だったと思える状況を作ることも大切です。これは、自分の人生を振り返り、満足感を感じるための要素です。例えば、大切な人との時間を大切にし、思い出を作り出すことや、自分の成果や成長を振り返り、達成感を味わうことなどがあります。幸福感を持つためには、現在を楽しむだけでなく、将来を振り返って幸福だったと感じることも意識して行動する必要があります。

著者は新時代を生き抜くには、「幸福の土台」となる、3つの資本を育てる必要があるとしています。
・人的資本
・金融資本
・社会資本

人的資本は「好きなこと・得意なこと」に一極集中することが重要です。人々が自分の興味や才能に集中することで、最大の成果を生み出すことができます。

一方、金融資本はグローバルマーケットに分散投資されます。投資を多様化することで、リスクを分散し、安定した収益を得ることができます。

また、社会資本は小さな愛情空間や友情空間と、広大な貨幣空間のネットワークに分割されます。私たちは家族や友人との関係を築くことで幸福を感じる一方で、経済的な安定も重要です。

幸福になるためには、これら3つの資本のバランスが重要です。人的資本、金融資本、社会資本の3つの要素をバランスよく育てることで、より充実した人生を送ることができます。

自分の興味や才能に向かって努力し、成長することは人的資本の育成に繋がります。同時に、資金を適切に管理し、投資を行うことは金融資本の育成に繋がります。さらに、家族や友人との関係を大切にし、社会的なつながりを築くことは社会資本の育成に繋がります。

そのためには、テイカーになるのではなく、ギバーになることが重要です。ネットワーク社会における「ギバー」とは、魅力的な情報を伝えたり、面白い人々を紹介することを前向きに取り組む人のことを言います。このギバーとしての行動は、自分自身の成長にもつながります。

魅力的な情報を伝えるためには、新しい知識の取得や自己研鑽が欠かせません。一方、良い人脈の紹介には、自らの広いつながりが必要となります。そのためには、人々との関係を深化させる取り組みが大切となります。

このギバーを意識し、行動することで、ネットワーク社会のコミュニティ作りやその進化に貢献できます。私たち一人一人がギバーの精神で、新しい情報や人々の紹介を積極的に行うことで、より充実した関係性や成果を築き上げることができます。そして、それは弱い紐帯(つながり)を広げ、私たちの人的資本の向上にも寄与します。

私は「弱い紐帯の強み」理論を信じ、行動しています。弱い紐帯の強みとは、社会学者マーク・グラノヴェッターが提唱した社会的ネットワークにおける重要な概念です。この理論によれば、新しい情報や機会は、親友や家族、日常の同僚といった密接な関係(強い紐帯)よりも、それほど親密でない知人や友人の友人といった疎遠な関係(弱い紐帯)を通じて得られることが多いとされています。(弱い紐帯の強み理論の関連記事

つまり、表面上のつながりや浅い関係性でも、そのネットワークが意外な価値を持つ可能性があるというのが「弱い紐帯の強み」という考え方です。強い紐帯と弱い紐帯を両立させることが重要です。

私たちの時間やエネルギーは限られているため、強い紐帯という深い関係を築けるのは一握りの人々だけです。多くの場合、5人から10人程度が限界と言われています。 それとは対照的に、弱い紐帯は、疎遠な関係や知り合い程度の関係を示します。このような関係は、地理的な距離や相手の背景を問わず、広範囲にわたって形成されます。

これはまるで無限のネットワークのように、広がり続ける「貨幣空間」とも言えるのです。弱い紐帯は、新しい情報や機会をもたらしてくれることが多く、私たちの視野や可能性を広げてくれます。

クリエイティブクラスはもはや会社に所属せず、一人ひとりが自分の「評判ネットワーク」によってプロジェクト型の仕事をするようになるだろう。そこではどんな仕事をするかだけでなく、誰と働くか、どこで働くかもすべて自分で選択できる。

日本の伝統的な働き方、すなわちサラリーマン文化は、多くの人にとって一般的な生き方として受け入れられてきました。しかし、時代と共に、働き方や価値観は変わりつつあり、クリエイティブクラスの台頭はその典型例です。

クリエイティブクラスは、一つの固定的な組織に縛られず、自らの特技やネットワークを駆使して柔軟な働き方を選択しています。彼らは自分の実績や評判を資本にして、プロジェクトごとに成果を上げることで報酬を得ています。

日本の労働文化では、多くの人が安定を求めてサラリーマンとしての道を選ぶことが一般的ですが、そこでは失敗するようなリスクを取らず、目立たぬことが出世の条件になります。そのような働き方は長期的な視点での成長や変革を妨げる場合があるという意味で、ネガティブゲームをプレイしているとも言えます。

それに対して、クリエイティブクラスは新しい挑戦を恐れず、リスクを取ることで、自らのポテンシャルを最大限に活かすこと(評判を高めること)を追求しています。彼らの取り組むポジティブゲームは、リスクを伴うものので、その報酬は大きな成功や満足感につながることが多いのです。

この新しい時代において、私たちが真に求めるべきは、高い専門性や独自性を持つ「人的資本」、多様な投資先を持つ「金融資本」、そして豊かな人間関係やネットワークを意味する「社会資本」です。

特に、人的資本の形成は、自分の強みや情熱を追求し、それを深めていくことが不可欠です。また、金融面では、一つの資産に固執するのではなく、グローバルな視野で多様な投資を行うことが求められます。そして、社会資本は、深い信頼関係をベースにした少数の親しい人々との関係性と、広大な貨幣空間(弱い紐帯)が人的資本を強化します。

私たち一人ひとりが、この3つの資本をバランスよく築き上げることで、新しい時代の変化に柔軟に適応し、より充実した生き方を手に入れることができるのです。結果、幸せな人生を送れるようになります。


 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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