その科学があなたを変える
リチャード・ワイズマン
文藝春秋
その科学があなたを変える(リチャード・ワイズマン)の要約
リチャード・ワイズマンの「アズイフ(のように)の法則」は、「○○のように(as if)行動すると、それに合わせた感情が生み出される」という革新的な概念です。幸福、モチベーション、恋愛など、様々な分野でのこの法則が適用可能であることをケーススタディと実験結果を通じて、ワイズマンは実証しています。
「アズイフ(のように)の法則」とはなにか?
「幸せになりたければ、すでに幸せであるかのように行動をすればいい」のだ。私はこの単純ながら効力のある原理を、「アズイフ(のように)の法則」と呼ぶことにする(リチャード・ワイズマン)
このブログでもおなじみのイギリスの心理学者のリチャード・ワイズマン。彼のその科学があなたを変えるは、自己啓発の世界に科学的アプローチをもたらした画期的な一冊です。
本書は、人間の心理と行動に関する最新の研究結果を基に、日常生活で即座に活用できる実践的なアドバイスを提供しています。
著者は有名な「アズイフ(のように)の法則」を本書で紹介しています。この法則は、「○○のように(as if)行動すると、それに合わせた感情が生み出される」という革新的な概念です。ワイズマン教授は、幸福感、モチベーション、恋愛、説得力、若々しさなど、人生のあらゆる側面にこの法則が適用可能であることを、豊富なケーススタディと実験結果から明らかにしています。
従来の自己啓発書が「考え方を変えれば行動が変わる」と主張してきたのに対し、本書は「行動を変えれば考え方が変わる」という逆転の発想を提示します。この違いを明確に理解するために、例を挙げて説明しましょう。
従来の考え方では、嬉しい気持ちになれば笑顔になり、悲しい気持ちになれば泣きたくなるとされていました。しかし、アズイフの法則では、笑顔になれば嬉しい気持ちになり、泣いたふりをすれば悲しい気持ちになるという逆の流れを提案しています。幸せになりたければ、最初に笑顔を作ればよいのです。
大股で歩く人は元気であり、小股の人は気分が沈んでいる。
私たちの日常的な動作が、思いがけない形で心の状態に影響を与えているかもしれません。最近の心理学研究によると、歩き方や握手の仕方が、幸福感や対人関係に大きな影響を及ぼす可能性があるのです。
フロリダ州アトランティック大学の心理学者サラ・スノドグラス氏が行った興味深い実験があります。スノドグラス氏は、歩き方が感情にどのような影響を与えるかを調査しました。実験では、参加者を2つのグループに分け、それぞれ異なる歩き方で3分間歩いてもらいました。
一方のグループには、大股で、腕を振り、背筋を伸ばして歩くよう指示が出されました。もう一方のグループには、小股で、ゆっくりと、うなだれて歩くよう指示されました。歩行後、参加者全員に感じた幸福度を点数で評価してもらいました。 結果は驚くべきものでした。
大股で歩いたグループの参加者は、小股でゆっくり歩いたグループに比べ、はるかに高い幸福感を報告したのです。この結果は、「アズイフの法則」として知られる心理現象を裏付けるものでした。この法則は、身体の動きが心理状態に影響を与えるという考え方です。
さらに、ハイデルベルク大学のザビーネ・コッホ氏による研究は、この現象が人間関係にも影響を及ぼす可能性を示唆しています。コッホ氏は、握手の仕方に注目しました。 実験では、2つのタイプの握手を用意しました。1つは、なめらかに流れるような握手。もう1つは、握った手を大きく上下に動かす硬い感じの握手です。
約50人の被験者に対して、それぞれの握手を体験してもらい、その後の感想を聞きました。 結果は予想以上のものでした。なめらかな握手を経験した被験者は、硬い握手を経験した被験者に比べ、より幸せを感じ、握手をした相手に対してより好意的な印象を持ちました。
これらの研究結果は、私たちの日常的な動作が、思った以上に心の状態や対人関係に影響を与えている可能性を示しています。大股で颯爽と歩くことや、相手としっかりと目を合わせながらなめらかな握手をすることが、自分自身の幸福感を高め、良好な人間関係を築くきっかけになるかもしれません。
元気になりたければ、努力して幸せなことを考えるより、いま幸せであるかのように行動すればいい。そのほうがはるかに効果的で手っとり早い。笑顔を作り、足どりを軽くし、幸せな気分になれる言葉を口にし、踊り、笑い、歌う。そのほかなんでも楽しいことをすればいいのだ。 そう、つまりはこういうことだ──幸せになりたければ、手を叩こう。
日々の生活の中で、自分の動作や姿勢に意識を向けることで、より幸せで充実した日々を送れる可能性があるのです。幸せになりたければ、自分が幸せになれる行動を見つけ、アクションを起こせばよいのです。
ダンスで老化が防げる??
心を鎮めるには、自分が穏やかな人であるかのように振る舞えばいい。笑えば幸せな気持ちが生まれ、べつの人の目をじっと見つめれば恋の気分が生まれる。それと同じように、穏やかであるかのように振る舞えば、あなたはたちまち穏やかな気分になれるのだ。
アズイフの法則の効果は、日常生活のさまざまな場面で活用することができます。私たちは穏やかに振る舞えば、穏やかな気持になれます。
仕事での困難な状況に直面したとき、冷静で自信に満ちた態度を取ることで、実際に落ち着きを取り戻し、問題解決能力を高めることができます。
また、人間関係において、相手を理解しようとする姿勢を意識的に取ることで、実際に共感力が高まり、より深い関係性を築くことができるようになります。
しかし、アズイフの法則の影響力はそれだけにとどまりません。最近の研究では、私たちの行動や活動が脳の健康にも大きな影響を与えることが明らかになっています。アルバート・アインシュタイン医学校の研究者たちによる長期調査は、この点について興味深い洞察を提供しています。
1980年から2001年にかけて行われたこの調査では、75歳以上の500人以上を対象に、様々な活動が認知症の進行に与える影響を調べました。結果は驚くべきものでした。読書やクロスワードパズルなどの脳を刺激する活動を定期的に行っていた人々は、認知症の進行が著しく遅くなることが判明したのです。
特に、週に4日以上クロスワードパズルを楽しんでいた人々は、認知症の進行度が47パーセントも低下していました。 しかし、最も注目すべき結果はダンスに関するものでした。定期的にダンスを楽しんでいた人々は、なんと認知症の進行が76パーセットも低下していたのです。これは、サイクリングや水泳などの他の身体運動では見られなかった効果でした。
ダンスがこれほど強力な効果を持つ理由は、それが身体的な運動であると同時に、音楽に合わせて動きを考え、パートナーと協調するなど、認知的にも高度な活動だからだと考えられています。つまり、ダンスは「若々しく活動的に振る舞う」ことの究極の形態と言えるでしょう。
これらの研究結果は、アズイフの法則の効果が単に短期的な感情の変化にとどまらず、長期的な脳の健康にまで及ぶことを示唆しています。私たちの日々の行動や活動の選択が、文字通り脳の若さを保つ鍵となるのです。 このように、アズイフの法則や脳の刺激に関する科学的な研究は、私たちの生活に対する新たな視点を提供してくれます。それは、自分の感情や行動、さらには性格までも、意識的に形作ることができるという可能性です。
本書は、これらの知見を日常生活に取り入れるための実践的なガイドとなるでしょう。読者は、自分の行動を通じて感情をコントロールし、脳の健康を維持する方法を学ぶことができます。それは単なる理論の習得にとどまらず、より豊かで充実した人生を送るための具体的な道筋を示すものとなるはずです。
私たちには、自分自身を変える力があります。アズイフの法則を理解し、実践することで、より幸せで健康的な人生を手に入れることができるのです。本書を通じて、読者の皆さんがそんな可能性に気づき、新たな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
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