
書籍:だからベンチャーキャピタルはやめられない 投資家だけが知っている 起業とお金のリアル
著者:岩澤脩
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
ASIN : B0GZTZY189

書評『だからベンチャーキャピタルはやめられない』:VCのリアルとAI時代の新産業創出
今回は、岩澤脩氏の『だからベンチャーキャピタルはやめられない 投資家だけが知っている起業とお金のリアル』を取り上げます。 「実は私もベンチャーキャピタルファンドに自腹で5000万円を入れているけれども、家族にはまだ伝えていなくて、通帳を見られないかビクビクしている」 本書の冒頭にある著者のこの生々しい告白に、私は一気に引き込まれました。
実は私自身も個人投資家としてスタートアップやVCファンドへの投資を続けています。投資額や投資先は異なっても、未来への期待と不安が入り混じるあの独特の感覚はよく理解できます。投資とは数字だけの世界ではありません。未来を信じて資金を託す行為であり、その裏側には常にリスクと覚悟が存在します。 だからこそ、この率直な一文には強いリアリティがあります。
多くの投資本は成功事例やリターンの話から始まりますが、本書は違います。まず語られるのは、人間としての不安や葛藤です。その瞬間に、私はこの本が単なる投資解説書ではなく、ベンチャーキャピタルという仕事の本質を描いた一冊なのだと感じました。
VCという仕事は、外から見ると、成長企業に投資し、IPOやM&Aによって大きなリターンを得る華やかな世界に見えるかもしれません。メディアでは大型調達や上場のニュースが取り上げられ、成功した起業家や投資家の姿が注目されます。しかし、それは物語のごく一部に過ぎません。
その裏側には、LP(リミテッド・パートナー)から資金を集める過酷なファンドレイズがあります。投資先の経営者と向き合いながら、限られた情報の中で将来を予測する難しい意思決定があります。投資後も企業価値向上のために伴走し続け、時には厳しい現実を伝えなければならない場面もあります。
そして何より、結果が出るまでに10年近い時間を要することも珍しくありません。 VCとは、完成された企業を評価する仕事ではなく、まだ存在していない未来に投資する仕事です。今は小さく見える市場が本当に大きくなるのか。創業間もないチームが社会を変える企業へ成長できるのか。顧客がまだ気づいていない課題を解決するプロダクトが生まれるのか。その答えは誰にもわかりません。
不確実性の中で仮説を立て、信じ、資金を投じることがVCの本質です。 だからこそ、本書に描かれるVCの姿は非常に人間的です。そこには万能な投資家は登場しません。成功もあれば失敗もあります。確信を持って投資した案件が伸び悩むこともあれば、想定外の成長を遂げる企業もあります。著者はそうした現実を隠さず、投資家としての迷いや葛藤まで率直に語っています。
私は日頃、社外取締役やアドバイザーとしてベンチャー企業の経営に関わっていますが、優れた起業家ほど未来を語るだけでなく、不確実性と向き合う覚悟を持っています。そして優れたVCもまた、単に資金を提供するのではなく、その覚悟を共有する伴走者です。
本書からは、その関係性の本質が伝わってきます。 新しい産業の誕生に立ち会い、起業家とともに挑戦し、事業が成長していく過程を間近で見届ける。その熱量は、短期的な投資収益だけでは説明できません。社会を変えるかもしれない挑戦に関わることそのものが、大きな魅力なのです。
タイトルにある「だからベンチャーキャピタルはやめられない」という言葉は、決して儲かるからという意味ではありません。不確実性に満ちた世界の中で、新しい未来を信じ、人と可能性に賭ける。その知的興奮と感動こそが、多くのVCを突き動かしているのだと思います。
本書は、スタートアップ投資の仕組みを学ぶための本であると同時に、未来に賭ける人々の思考と覚悟を知るための一冊です。起業家はもちろん、新規事業に携わる人、経営者、投資家、そして変化の激しいAI時代を生きるすべてのビジネスパーソンに、多くの示唆を与えてくれるでしょう。
DDを通じて「未来の計画」を作るという考え方は、起業家だけでなく、事業会社の新規事業、社外取締役、アドバイザー、組織変革を担うリーダーにも応用できます。 先行きが見えない時代に必要なのは、勘や勢いだけの意思決定ではありません。
市場は本当にあるのか。顧客はお金を払うのか。プロダクトは「便利」なだけではなく、「なくては困る」存在になれるのか。経営チームはその計画をやり切れるのか。こうした問いを、数字と事実に基づいて検証する姿勢が不可欠です。
本書は、VCのリアルを知るための本であると同時に、AI時代の経営判断を磨くための一冊でもあります。未来は、待っていれば自然にやってくるものではありません。誰かがリスクを取り、仮説を立て、資本を投じ、仲間を集め、計画を現実に変えていくことで初めて形になります。
その意味で本書は、起業家や投資家だけでなく、変化の時代に新しい価値を生み出したいすべてのビジネスパーソンに薦めたい一冊です。VCという仕事の熱狂と現実、その両方を通じて、未来に賭けるとはどういうことかを教えてくれます。
この記事でわかること
・VCの基礎からファンド組成、投資判断、EXITまでの全体像とリアルな裏側
・人口減少社会においてVCが果たす「新産業創出」の役割とマクロ経済へのインパクト
・投資判断(DD)における真の目的
・「未来の計画づくり」と「3つの証明」
・顧客が熱狂する「Must Have」なプロダクトの条件と「5つのリプレイス」
・AI時代を生き抜き、組織を牽引する起業家に不可欠な「6つの要素」
30秒でわかる本書のポイント
【結論】:VCの本質的な役割は資金提供ではなく、新産業を育てることです。その成否は、市場性・プロダクト・実行力を客観的な数字と実績で証明できるかどうかにかかっています。
【原因】:多くのスタートアップは、顧客にとって「あれば便利(Nice to Have)」なサービスに留まり、なくては困る「Must Have」の価値を提供できていません。また、起業家と投資家の間で、将来の成長シナリオや事業計画について十分な共通認識が築けていないことも、投資判断や事業成長を妨げる要因となっています。
【対策】:顧客の本質的な課題を解決する独自のインサイトを持ち、代替されにくい「Must Have」のプロダクトを構築することが重要です。そのうえで、デューデリジェンス(DD)を単なる審査ではなく、事業を構造的に見直す機会として活用し、市場・競争優位・収益性を磨き込みます。さらに、困難な局面でもやり切る覚悟を持った経営チームをつくり、数字と実績によって成長ストーリーを証明し続けることが、VCから信頼を得る最も確実な方法です。
本書の要約
「だからベンチャーキャピタルはやめられない」は、ベンチャーキャピタリストである岩澤脩氏が、VCの基本構造から、投資判断、企業価値向上、EXIT、そして人口減少社会におけるVCの存在意義までを一貫して描いた実務書であり、同時に熱量のあるビジネス書です。
本書の魅力は、VCをきれいごとの成長支援者として描いていない点にあります。資金を集める側にも、投資する側にも、厳しい現実があります。LPから資金を預かるファンドレイズは簡単ではなく、VC自身もまた、リターンを出す責任を背負っています。その緊張感を前提にしているからこそ、本書の言葉には説得力があります。
特に重要なのは、DDの捉え方です。DDとは、単なるリスクチェックではありません。過去の数字や契約関係を確認するだけの作業でもありません。むしろ、起業家と投資家が共に「この会社は、どの市場で、どの顧客に、どの価値を届け、どのように成長するのか」を徹底的に考え抜くプロセスです。
そこで問われるのは、市場・プロダクト・実行力の3つです。市場は本当に大きいのか。プロダクトは顧客にとって「あれば便利」ではなく、「なくては困る」存在になっているのか。経営チームには、その計画を現実に変える力があるのか。この3つを、熱意ではなく数字と実績で示せるかどうかが、投資判断の核心になります。
投資後についても、本書は現実的です。VCは出資して終わりではありません。企業価値を高め、組織を強くし、適切なEXITへ導くために、起業家と伴走し続けます。ときには厳しい問いを投げ、数字への強度を求め、経営チームの意思決定を磨いていく。その意味でVCは、単なる外部支援者ではなく、企業の成長角度を変える存在なのです。
さらに本書が優れているのは、VCファーム自体の組織づくりやブランド戦略にも踏み込んでいる点です。よいスタートアップに選ばれるためには、VC側にも明確な思想、専門性、信頼、実績が求められます。資金があるだけでは、優れた起業家から選ばれません。
VCもまた、自らの存在価値を問い続けなければならないのです。 そして本書の視野は、個別企業の成長支援にとどまりません。日本が直面する人口減少、供給制約、生産性低下というマクロ課題に対して、VCがどのような役割を果たせるのかを問い直しています。フィジカルAIをはじめとする新しい技術を社会実装し、限られた人材と資源の中で生産性を高めていく。そのためには、新しい産業を生み出す資本の循環が不可欠です。
つまりVCは、単なる金融プレイヤーではありません。人口減少社会において、次の産業を育て、社会の供給力を補い、未来の成長余地をつくるエンジンなのです。
本書は、起業家だけのための本ではありません。新規事業に関わる事業会社のリーダー、スタートアップを支援する社外取締役やアドバイザー、組織変革を担う経営者にも読む価値があります。AI時代には、思い込みや経験則だけでは勝てません。
市場、顧客、プロダクト、組織、資本を構造で捉え、数字で検証し、未来の計画を更新し続ける力が求められます。 その意味で本書は、VCという仕事を理解する本であると同時に、これからの日本で新しい価値を生み出すための経営の羅針盤になります。
こんな人におすすめ
・スタートアップ起業家や、社内で新規事業を立ち上げるリーダー
・自社プロダクトの競争優位性に悩むマーケターやプロダクトマネージャー
・ベンチャー投資の裏側やVCのシビアな意思決定プロセスを知りたい方
・人口減少社会やAI時代における日本のマクロ経済と新産業の行方に関心がある方
・「ビジネスの構造化スキル」と「覚悟ある意思決定力」を高めたいビジネスパーソン
本書から得られるメリット
・VCファンドの仕組みからEXITまでのリアルな実務と裏側を網羅的に理解できる
・VCの厳しい目線(DDの基準)を知り、自社の事業計画を客観的にブラッシュアップできる
・プロダクトを「Nice to have」から「Must Have」へ昇華させる具体策と「5つのリプレイス」がわかる
・起業家に必要な6つの資質を理解し、強い組織文化とチームビルディングを実践できる
・マクロ環境の変化を捉え、AIツールを駆使した自社の長期的な生存戦略を描けるようになる

人口減少社会に挑む日本の「VC」の役割とは
VCの仕事には新しい産業の幕開けに立ち会える喜びがあるから。何より、投資先の成長を間近で見られる喜びがあるからです。(岩澤脩)
本書が描くベンチャーキャピタルの本質は、単なる投資業ではありません。起業家の可能性に資本を投じ、まだ存在しない市場を形にし、社会の生産性を高めるための「未来を設計する仕事」です。
日本とアメリカのスタートアップの差は、起業家個人の能力差だけでは説明できません。より大きな違いは、リスクマネーの厚みと、失敗を次の挑戦につなげるエコシステムの成熟度にあります。 アメリカでは、VCが社会課題や産業構造の変化に挑む起業家へ大胆に資本を供給してきました。その結果、GAFAM、SaaS、フィンテック、生成AI、ロボティクスなど、次々と新しい市場が生まれました。
VCは単なる資金の出し手ではなく、産業創造の推進役として機能してきたのです。 一方、日本では長く大企業中心の産業構造が続き、失敗への許容度も高くありませんでした。
しかし今、人口減少、人手不足、供給制約という構造問題が重なり、従来型の成長モデルは限界を迎えています。人を増やして売上を伸ばす時代は終わりつつあります。 だからこそ日本に必要なのは、アメリカ型のスタートアップモデルをそのまま輸入することではありません。
日本固有の社会課題を起点に、新しい産業を生み出す資本循環を強化することです。その中心にVCの役割があります。 人口減少社会では、一人当たりの生産性を高める仕組みが欠かせません。その解決策の一つがスタートアップです。
特にAI、ロボティクス、フィジカルAIのように、ソフトウェアの世界を超えて現実社会の課題に介入する技術は、日本の未来にとって極めて重要になります。 大企業が挑戦しにくい領域にスタートアップが切り込み、新しい市場をつくる。VCはその挑戦にリスクマネーを供給し、成長を後押しする。ここに、人口減少時代におけるVCの本質的な価値があります。
本書の著者であるベンチャーキャピタリスト ファーストライト・キャピタル株式会社代表取締役の岩澤脩氏が描くVCの現場は華やかなものではありません。むしろ、きわめて泥臭い仕事です。VCは投資する前に、自らLPから資金を集めなければなりません。特に実績のない初号ファンドでは、資金調達そのものが大きな挑戦になります。
出資を約束していた投資家が直前で離脱することもあります。調達が長期化し、先行きが見えなくなることもあります。VCは起業家を評価する側である前に、自らが市場から信頼を勝ち取らなければならない存在なのです。
さらに、ファンドの成否は有望な起業家を発掘できるかどうかにかかっています。そのためキャピタリストは、ピッチイベント、勉強会、紹介、会食、現場訪問など、あらゆる機会を通じて起業家との接点をつくります。
机上のデータだけでは、経営者の覚悟、チームの空気感、顧客の熱量、市場の違和感は見えてきません。一次情報に触れ、自分の目で確かめる姿勢こそが、VCの基本動作です。 これはVCに限った話ではありません。
AIによって情報収集や分析が容易になる時代だからこそ、差がつくのは現場で得た事実をどう解釈するかです。変化の激しい時代には、会議室の資料よりも、顧客の声、現場の違和感、起業家の表情にこそ価値があります。
VCのDDの実態とは?
DDでは、「伸びる市場があるか」「顧客に選ばれるプロダクトか」「成果を出せるチームか」が見られます。この3つを、思い込みではなく数字と実績で説明できる企業ほど、高く評価されます。
本書で繰り返し語られるのは、「未来は分析するものではなく、設計するものだ」という考え方です。その象徴がデューデリジェンス、つまりDDです。
一般的にDDは、財務や法務のリスクを調査する監査のように理解されがちです。しかし、VCにとってのDDはそれだけではありません。市場、プロダクト、組織、顧客、資本政策を見極めながら、起業家と共に未来の成長ストーリーを磨き込むプロセスです。
市場は本当に広がるのか。プロダクトは顧客に選ばれ続けるのか。経営チームは計画を実行できるのか。競争優位は持続するのか。資本政策に無理はないのか。 こうした問いを重ねることで、事業の可能性とリスクが立体的に見えてきます。
特に重要なのは、「市場」「プロダクト」「実行力」の3つです。市場が十分に大きく、成長の追い風があるか。プロダクトに明確な差別化があるか。そして経営チームが数字に向き合い、改善を続ける力を持っているか。 この3つが揃わなければ、どれほど魅力的なビジョンがあっても事業は成長しません。
逆に、多少粗削りでも、大きな市場、強い顧客課題、実行力のあるチームが揃えば、事業は大きく化ける可能性があります。
AI時代には、変化のスピードがさらに加速します。だからこそ、感覚や思い込みではなく、数字と事実に基づいて仮説を検証し続ける姿勢が重要になります。本書のフレームワークは、投資家だけでなく、経営者、新規事業担当者、社外取締役にも有効です。
また、本書で実践的だと感じたのが、「Must Have」を生み出す考え方です。顧客にとって本当に価値のあるプロダクトは、「あれば便利」ではなく「なくては困る」ものです。 多くのプロダクトは、便利な機能を持っています。
しかし、便利なだけでは顧客の行動は変わりません。強いプロダクトは、顧客の時間、業務、習慣、意思決定を置き換えます。日常や業務フローに深く入り込み、使わない状態に戻れなくなるからこそ、事業の継続性が生まれます。
著者が重視するのは、ユーザーが思わず誰かに語りたくなるほどの熱量です。単に「悪くない」では足りません。「これはすごい」「もう手放せない」と感じてもらえるかどうかが、プロダクトの強さを決めます。 生成AIによって、多くの作業は効率化されます。しかし、効率化だけでは競争優位になりません。誰もが同じツールを使えるからです。
差を生むのは、独自のインサイトです。顧客自身も言語化できていない課題を発見できるか。他社が見落としている不便や非効率に気づけるか。その洞察とAIによる効率化が掛け合わさったとき、初めて強いプロダクトが生まれます。
さらに、優れたプロダクトはデータを蓄積します。顧客の利用行動、業務プロセス、意思決定の履歴が蓄積されることで、サービスはより賢くなり、競争優位も強化されます。これはAI時代の事業戦略を考えるうえで重要な視点です。
こうした挑戦を牽引する起業家には、共通する資質があります。原体験に裏付けられた課題意識、チームを巻き込む力、数字への強さ、成長スピード、明るさ、そして覚悟です。
中でも印象的なのが「張っている感」という表現です。逃げ道を残さず、自らリスクを引き受けて意思決定しているか。不確実性の高い環境では、この覚悟が組織全体の推進力になります。
起業家に求められるのは、単なる情熱ではありません。情熱を数字に落とし込み、顧客の声を聞き、仮説を修正し、組織を前に進める力です。夢を語るだけでは事業は伸びません。現実を直視しながら、未来に向けて行動を積み重ねる力が必要です。
私自身、社外取締役・アドバイザーとしてベンチャー企業の経営に関わる中で、DDとは単なる投資前の審査ではなく、未来の可能性を共同で磨き込む対話の時間だと感じています。
・市場は本当に存在するのか。
・顧客は継続して使っているのか。
・プロダクトは「便利」なだけなのか、それとも「なくては困る存在」なのか。
・経営チームは数字と向き合えているのか。
・組織は達成する文化を持っているのか。
こうした問いから逃げずに向き合うことで、経営チームは強くなります。
特に重要なのは、ユーザーから本当に「Wow!」を引き出せているかどうかです。顧客が少し便利だと感じる程度では、強い事業にはなりません。思わず人に薦めたくなるほどの驚きや感動があるか。その熱量を見極めることが、プロダクトの本当の価値を判断するうえで欠かせません。
一方で、キャピタリストにも高い資質が求められます。自己変革を恐れずに学び続ける姿勢、逆境を楽しむレジリエンス、自分の人生と仕事のオールを握る主体性、自分を客観視するセルフアウェアネス、そして仲間と協働する力です。 これはVCだけに必要な能力ではありません。
AI時代において、経営者、事業責任者、社外取締役、アドバイザーにも共通して求められるリーダーの条件です。 本書を通じて改めて感じるのは、ビジネスの成功はアイデアや熱意だけでは決まらないということです。
市場構造、顧客行動、競争環境、組織能力、資本政策、タイミング。こうした複数の要素が絡み合う「見えない論理」を理解し、意思決定に反映できるかどうかが成果を左右します。
だからこそ経営者は、自社の立ち位置を客観的に把握しなければなりません。撤退基準を持ち、組織文化を育て、長期的なブランドを構築する必要があります。 VCファームに限らず、あらゆる企業にとって重要なのは、自分たちは何者で、どの市場で、誰のどんな課題を解決し、なぜ選ばれるのかを明確にすることです。
AI時代には、情報そのものの価値は下がっていきます。誰もが同じようなデータや分析にアクセスできるからです。だからこそ差がつくのは、現場で得た事実をもとに、思い込みを排除し、数字でビジネスを構造化する力です。 本書は、VCのリアルを知るための本であると同時に、AI時代の経営判断を磨くための一冊でもあります。
未来は、待っていれば自然にやってくるものではありません。誰かがリスクを取り、仮説を立て、資本を投じ、仲間を集め、計画を現実に変えることで初めて形になります。 「だからベンチャーキャピタルはやめられない」という言葉は、単に投資リターンを得られるからという意味ではないはずです。
不確実性に満ちた世界で、新しい未来を信じ、人と可能性に賭ける。その知的興奮と感動こそが、多くのVCを突き動かしているのです。
本書は、起業家や投資家だけのための本ではありません。新規事業に関わる事業会社のリーダー、スタートアップを支援する社外取締役やアドバイザー、組織変革を担う経営者にも読む価値があります。
日本が人口減少という大きな制約条件に直面する中で、どのように新しい産業を生み出し、社会全体の生産性を高めていくのか。本書は、その問いに向き合うすべてのビジネスパーソンに、VCという仕事の奥行きと、未来を設計するための視座を与えてくれる一冊です。
コンサルタント 徳本昌大のView
本書を読んで改めて実感したのは、スタートアップの成功は優れたアイデアだけで決まるものではなく、市場・顧客・プロダクト・組織・資本・実行力という複数の要素を統合しながら未来を設計できるかどうかにかかっているということです。その設計を支えるのがVCであり、DDというプロセスなのです。
私は社外取締役・アドバイザーとしてIPOを目指すベンチャー企業の経営に携わっています。高い目標を掲げ、不確実性と向き合いながら日々意思決定を重ねる立場だからこそ、本書で語られる「6つの要素」や、DDを通じて成長シナリオを描いていく考え方には強く共感しました。
DDは単なる投資前のリスクチェックではありません。市場の可能性、顧客課題の深さ、プロダクトの競争優位、組織の実行力を見極めながら、起業家と投資家が共に事業の未来を磨き上げるプロセスです。「どの市場で、誰のどんな課題を解決し、なぜ勝てるのか」を具体化していく作業とも言えます。
著者が出資先の起業家に対して早い段階から「数字への強度」を求める姿勢にも、大きな説得力を感じました。耳障りの良い言葉で期待を膨らませるのではなく、最初から現実を直視し、期待値を揃える。その誠実さこそが、長期的な信頼関係の土台になります。
市場規模は本当に十分か、顧客は継続的に利用しているか、プロダクトは「なくては困る存在」になっているか——こうした問いと正面から向き合うことで、経営チームは強くなります。スタートアップ経営とは、楽観ではなく、希望を持ちながら現実を直視する営みなのです。
全国を移動しながら現場の空気に触れることを重視する私のワークスタイルから見ても、本書で描かれるVCの泥臭さには大きな価値があります。起業家と直接対話し、現場に足を運び、顧客の声を聞く。そこには会議室の資料やオンラインのデータだけでは見えてこない一次情報があります。
プロダクトが真に強いかどうかは、顧客が「便利だ」と感じるかどうかではなく、「これなしでは困る」と言うかどうかで決まります。思わず誰かに伝えたくなるような体験——そこにこそ、事業の本質的な価値が宿っています。
AIの進化によって、情報収集や分析はもはや誰にでもできる作業になりました。同じデータ、同じツールが広く開かれた時代に、分析力だけでは差はつきません。問われるのは、現場で得た生の手触りを仮説に変え、数字で磨き、未来の絵を描ける力です。
本書はVCという職業の実態を明らかにすると同時に、不確実な時代をどう生き抜くかを問いかける一冊でもあります。未来とは予測の対象ではなく、意志と実行によって手繰り寄せるものです。
FAQ
Q1: ベンチャーキャピタルのデューデリジェンス(DD)の本当の目的は何ですか?
A1: 一般的な法務・財務の「リスク精査」だけでなく、キャピタリストと起業家が共に仮説を立て、対象企業の将来の成長可能性や投資採算といった「未来の計画をつくること」が最大の目的です。その過程で「市場・プロダクト・実行力」の3つが厳しく問われます。
Q2: プロダクトの「Must Have」とは具体的にどのような状態ですか?
A2: 顧客にとって「なくては困るもの」であり、プレゼン時に「Wow!」という感動を与え、ユーザー自身が熱量を持って他人に紹介したくなる(推し活状態になる)ことを指します。「独自のインサイト(付加価値)」と「作業代替性(時間の削減)」を両立させることで実現します。
Q3: 人口減少社会において、なぜVCの存在が重要なのでしょうか?
A3: 人口減少による深刻な人手不足や供給制約を打破するには、フィジカルAIやロボティクスなどを活用した劇的な生産性向上が不可欠です。既存の大企業だけでは担いきれない領域にスタートアップが挑戦するためのリスクマネーを供給し、伴走支援する「新産業創出の装置」としてVCが機能するからです。
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