FUTURES LITERACY(フューチャーズ・リテラシー):未来という難問を解く(松島倫明)の書評

書籍:FUTURES LITERACY(フューチャーズ・リテラシー):未来という難問を解く
著者:松島倫明
出版社:ニューズピックス
FUTURES LITERACY(フューチャーズ・リテラシー):未来という難問を解くの書影

現代は、テクノロジーの指数関数的な進化により、数年先の予測すら困難な不確実性の時代です。マクロな統計を見れば、人類はかつてないほど平和で豊かな社会を築いているにもかかわらず、私たちはAIの急激な進歩や気候変動を前に、極端な悲観主義に陥っています。

しかし、私たちが漠然と恐れ、あるいは期待しているその「未来」は、本当に私たちが自ら望んだものでしょうか。『WIRED』日本版編集長である松島倫明氏の著書『未来という難問を解く フューチャーズ・リテラシー』は、私たちが無意識に縛られている未来像の正体を鋭く解き明かしてくれます。

私たちは往々にして、現代の社会が歴史の頂点であり「これ以上の発展はない」と思い込む、「歴史の終わりという錯覚」に陥りがちです。

私たちが現在から未来を眺めるとき、どうしても過去の経験や現在の要素を詰め込みすぎてしまい、結果として順当でありきたりな未来しか描けないという「バックミラー」の罠に直面しています。

いま起きているAIやデジタルテクノロジーの進化は、人類史において「火の発見」に比肩する巨大な社会変革です。

一方で、現代のシリコンバレーを牽引する起業家たちが抱く「シンギュラリティ(唯一の未来)」の思想の根底には、西欧的な進歩史観やキリスト教的な「千年王国」の思想が色濃く影を落としています。

台湾のオードリー・タン氏が「The Singularity is near, plurality is here」と語るように、いま必要なのは、未来を単一のものとして決定論的に語ることではなく、複数性・多元性(Plurality)に目を向け、複雑な世界を複雑なまま生きることです。

本書の終盤では、AIが持つ「生成力(ジェネラティブ)」と、生命が自然環境を回復させる「再生力(リジェネラティブ)」の交差点に光が当てられます。

テクノロジーを単に人間を制御し最適化するツール(サイバネティクス)としてではなく、人間の創造性や多様性を解き放つ「ポイエティック(創造的)」なアプローチとして捉え直す視座です。

クアドラティック投票による多元的な民主主義の実装など、テクノロジーは単一の未来への収斂ではなく、多様な社会を育むためにこそ存在すべきなのです。

本記事では、この書評ブログを長年運営し、スタートアップのアドバイザーとして日々最先端のビジネスに触れている私自身の視点も交えながら、本書の核心である「脱未来化/再未来化」のフレームワークを紐解きます。

著者が「テキストジョッキー」として潜在空間から集め、編み上げた究極のブックガイドを通じ、シリコンバレー的ユートピアの罠を抜け出して多様な未来を実装するための「フューチャーズ・リテラシー」を徹底考察します。

この記事でわかること

・いま起きているAI革命が、人類の「火の発見」に比肩する理由と過去のシンギュラリティ 
・シリコンバレーに潜む「単一の進歩史観」の限界と、プルラリティ(多元性)の重要性 
・アンディ・クラークの「拡張された心」と、ジェームズ・ギブソンの「アフォーダンス」による身体の脱領土化 
・「何度でも生成する未来」という時間感覚と、限界費用ゼロ社会の「潤沢さ」
・グレート・アクセラレーション(大加速)と、自然界における「シンギュラリティ」 
・サイバネティクス(制御)の限界と、「ポイエティック(創造的)」な技術の可能性
・ SFプロトタイピングを活用し、複数の未来を「リハーサル」する実践手法

30秒でわかる本書のポイント

【結論】
・未来は過去から続く単線的な延長線上にあるのではなく、いくつもの未来が次々と立ち現れてくるような未来OSをインストールすべきである。
・単一の未来(Singular)を予測するのではなく、複数の未来(futures)を読み書きし、実現していく営みである「フューチャーズ・リテラシー」が不可欠である。
・テクノロジーを完璧な未来を作るための道具ではなく、問題が起きたときに「解けるように」修復・適応・再設計できるツール群(リジェネラティブ・テクノロジー)として運用する。
 【原因】
・シリコンバレーの思想的根底には西欧的な「進歩史観」があり、AIを人間に奉仕する道具としてしか見なしていない。 
・世界をサイバネティクス(フィードバックによる自動制御)だけで最適化しようとすると、人間自身が機械の部品や制御対象に成り下がってしまう危険性がある。
【対策】
・テクノロジーを制御の手段とするのではなく、思いがけなくも自由に解き放たれ、新しい意味や形が立ち現れる「ポイエーシス(創造的)」なアプローチを採用する。
・クアドラティック投票のような「意志の強さ」を適切に反映する仕組みを取り入れ、多様な利害のバランスがとれるマルチスピーシーズな社会の基盤をデザインする。

本書の要約

本書『未来という難問を解く』は、テクノロジーと社会の交差点を見つめ続けてきた松島倫明氏による、30年の思索が凝縮された「究極のブックガイド」です。著者は自らを「DJならぬテキストジョッキー」と称し、先人たちが遺した膨大な知見を潜在空間のホワイトスペースを探るように集め、一冊の本へと編み上げました。

著者は、いま起きているインターネットやAIによる社会変革が、100万年前の人類の「火の発見」に比肩する巨大なインパクトを持っていると指摘します。火が人類の脳を拡張したように、デジタルテクノロジーは私たちの暮らしや「世界の認知」を根底から変えつつあります。

しかし、私たちが抱く閉塞感の原因は、誰かに決められた「単一の計算可能な未来」を受動的に生きている点にあります。レイ・カーツワイルらに代表されるシリコンバレーの「シンギュラリティ(唯一の未来)」思想の根底には、人類が一つの意識へと統合されるという西欧・キリスト教的な進歩史観が色濃く存在しています。

これに対し、著者は「脱未来化/再未来化」というフレームワークを提示します。時間は単線的ではなく、「何度でも生成する未来」という前提に立ち、限界費用を限りなくゼロに近づけるデジタル革命の「潤沢さ」を最大限に活用します。

人間の認知は皮膚の内側に留まらず、「拡張された心」として外部環境と相互作用しており、AIを単なる制御対象(サイバネティクス)とするのではなく、新たな人間らしさを創造する(ポイエティック)パートナーとして捉え直すことが求められます。

本書のエピローグにおいて、議論は「リジェネラティブ・テクノロジー」の真の役割へと結実します。テクノロジーは特定のイデオロギーによる「単一的」な最適化を目指すのではなく、「多元性を促す設計(Designing for Plurality)」でなければなりません。

たとえば「クアドラティック投票(Quadratic Voting)」は、多数決のような白黒の二元論ではなく、投票者の「選好の強度(意志の強さ)」をコスト(クレジットの二乗)をかけて反映させることで、複雑な民意をそのまま社会に実装する仕組みです。

これは、人間だけでなく動植物をも含んだ「マルチスピーシーズ」な社会の基盤となる画期的な技術です。 さらに、テクノロジーとは「完璧な未来」を作るためにあるのではありません。将来新たな問題が起きたときに、それを「解けるように」修復し、適応し、再設計できるツール群(技術・制度・教育・協働の仕組み)を多層的に用意しておくことこそが、リジェネラティブ・テクノロジーの本質です。

自分たちや将来世代が「未来の生成」に参加できるかどうか。このリジェネラティブな態度を後押しする力こそが、未来を開くためのフューチャーズ・リテラシーなのです。

こんな人におすすめ

・中長期の経営戦略を担うリーダー・マネージャー層
・サステナビリティ(ESG経営)において、「現状維持」を超えた修復・適応可能な「リジェネラティブ(再生)」なビジネスモデルを構築したい企画担当者
・「プルラリティ(多元性)」の視点を理解し、クアドラティック投票などの新しい合意形成の仕組みを組織やサービスに設計したい起業家・デザイナー
・シリコンバレーの技術至上主義に違和感を覚え、人間や自然の生成力を解き放つ本質的なイノベーションのあり方を模索している方
・多様な知見が交差する「ブックガイド」を通じて、テクノロジーと社会に関する深い教養を身につけたいビジネスパーソン

本書から得られるメリット

・ 「火の発見」から連なる過去のシンギュラリティ(認知革命・農耕革命など)を踏まえ、AI革命の本質を構造的に理解できる。 
・シリコンバレー特有の「単一の進歩史観」から脱却し、オードリー・タンらが提唱する「複数性・多元性」のシナリオを描く高度な視座を獲得できる。
・テクノロジーを単なる効率化・制御(サイバネティクス)の道具としてではなく、人間の知性や身体性を拡張し、創造性を解き放つ「ポイエーシス」の力として再定義できる。
・「フューチャーズ・コーン」や「SFプロトタイピング」を活用し、単一の予測に縛られず、いくつもの未来が次々と立ち現れる柔軟なマネジメント手法(未来OS)を獲得できる。
・著者が「テキストジョッキー」としてキュレーションした先人たちの名著や概念に触れることで、テクノロジー思想の広範な見取り図を得ることができる。

FUTURES LITERACY(フューチャーズ・リテラシー):未来という難問を解くの書影

未来は予測するものではなく、自分たちでつくるもの――リジェネラティブ・テクノロジーが拓く新しい社会

単数形の未来(future)から複数形の未来(futures)への移行の萌芽が、すでに生まれているのだといえるでしょう。(松島倫明)

テクノロジーの進歩が未来を決めるのではありません。どのような技術を選び、何のために活用するかによって、未来の可能性は変わります。 1993年、『WIRED』の創刊の辞では、当時進行していた社会変革が「火の発見」に匹敵するほど大きな出来事であるという認識が示されました。

火の利用は、人類の食生活や身体、社会的な関係に大きな影響を与えたと考えられています。食物を加熱することで栄養摂取のあり方が変わり、人々が火を囲んで集まることは、共同生活や知識の共有にも関係していた可能性があります。 火は単なる熱源ではなく、人間の暮らし方を変える技術だったのです。

現在のインターネットや生成AIによる変革も、同様の視点から捉える必要があります。 AIは文章作成や情報検索、データ分析、プログラミングなど、さまざまな業務を支援しています。企業経営でも、生産性の向上やコスト削減、人手不足への対応を目的に導入が進められています。

しかし、AIの価値を効率化や自動化だけで考えるのは十分ではありません。 AIは、人間の学び方や考え方、働き方、さらには組織や社会の意思決定を変える可能性を持っています。これまで専門家に依頼していた仕事を個人でも実行しやすくなり、新しい事業に挑戦する際の負担も軽減されつつあります。

その一方で、AIへの過度な依存が、人間の判断力や創造性を弱める可能性も指摘されています。 技術の進歩によって何が可能になるのかという問いに加え、その能力を何のために使い、誰が恩恵を受けるのかを考える必要があります。

『WIRED』日本版編集長の松島倫明氏による『FUTURES LITERACY(フューチャーズ・リテラシー):未来という難問を解く』は、こうした問題を考えるための視点を提供してくれます。

本書が問いかけるのは、未来を正確に予測する方法ではありません。私たちが当然のように受け入れている未来像を見直し、多様な可能性を発見しながら、その実現に主体的に関わるための思考法です。

その中心にあるのが、技術を効率化の手段としてだけでなく、人間と社会、自然の可能性を広げるものとして捉える「リジェネラティブ・テクノロジー(再生的技術)」という思想です。

人類の歴史では、農耕の普及や科学革命、産業革命など、技術や知識の発展によって社会のあり方が大きく変化してきました。 これらの変化は、新しい道具が登場したというだけでは説明できません。農耕は定住生活や社会的な分業を促し、近代科学は自然を理解する方法や産業活動を変えました。

技術が社会を変えると同時に、社会の価値観や制度も技術の発展方向を左右してきたのです。 現在のAI革命も、その延長線上に位置づけられます。

未来学者レイ・カーツワイルは、情報技術の指数関数的な発展をもとに、AIが人間の能力を大きく拡張し、文明を変革する未来を描いてきました。 こうした変化を考える際に語られるのが「シンギュラリティ(技術的特異点)」です。

しかし、技術が進歩すれば、すべての社会が一つの理想的な未来へ向かうという考え方には注意が必要です。 シリコンバレーの巨大テクノロジー企業が提示する未来像は、世界中の企業や投資家に大きな影響を与えています。しかし、そのビジネスモデルや価値観が、すべての国や地域に適しているとは限りません。

インターネットは情報へのアクセスを改善した一方で、巨大プラットフォームへの依存や個人情報の集中、誤情報の拡散といった問題も生み出しました。 AIも同様です。専門知識を広く利用できるようにする可能性がある一方で、開発や運用が一部の企業に集中すれば、技術の恩恵が偏るおそれがあります。

ここで参考になるのが、哲学者ユク・ホイが提唱する「技術多様性(テクノダイバーシティ)」です。 ユク・ホイは、技術を文化や社会から独立した普遍的な存在として捉えることに疑問を投げかけています。

技術の背景には、それぞれの地域が培ってきた自然観や倫理観、社会制度があります。自然を管理すべき資源として捉える社会と、人間も自然の一部だと考える社会では、技術開発の目的や利用方法が変わる可能性があります。

日本でも、地域の自然環境や伝統的な知識を現代技術と組み合わせることで、独自の価値を生み出せるかもしれません。 これは企業の競争戦略にも当てはまります。 例えば、地域密着型の小売企業が巨大EC企業と同じ競争をすれば、規模や資本力で不利になる可能性があります。

しかし、地域の生産者との関係や顧客への深い理解にデジタル技術を組み合わせれば、独自の競争優位性を構築できるでしょう。 AIについても、他社と同じシステムを導入するだけでは差別化につながりにくいと考えられます。 自社の歴史や専門知識、顧客理解、現場の経験をAIと組み合わせることが重要です。

この考え方をさらに深めるのが、認知哲学者アンディ・クラークらによる「拡張された心」という理論です。 私たちは通常、思考や記憶は脳の内部で行われるものだと考えています。しかし、実際の知的活動は、身体や道具、外部環境と密接に関係しています。

スケジュールをスマートフォンで管理したり、複雑な計算をソフトウェアに任せたりすることは、認知機能の一部を外部に委ねていると理解できます。 生成AIは、この関係をさらに発展させる可能性があります。 AIは情報を探すだけでなく、仮説を提示し、異なる視点を比較し、人間の思考を支援できます。ただし、回答の正確性や妥当性を判断するのは利用者自身です。

ここで関連するのが、心理学者ジェームズ・ギブソンの「アフォーダンス」です。これは、環境が生物に提供する行為の可能性を意味します。 同じ技術でも、利用者の能力や置かれた環境によって、実現できることは変わります。

企業が顧客のニーズを理解する際にも、顧客の心理だけでなく、利用する道具や生活環境、周囲の人々との関係を捉える必要があります。

優れたプロダクトとは、機能が豊富なものではなく、利用者がそれまでできなかった行動を可能にするものです。 AI時代の競争力は、技術の性能だけで決まりません。人間と技術が相互に作用する環境をどのように設計し、新しい価値につなげるかが重要になるのです。

FUTURES LITERACY(フューチャーズ・リテラシー):未来という難問を解くの書影

未来を考えるための七つの対――リジェネラティブ・テクノロジーへの転換

ぼくたちが技術に深くかかわり、その本質に正しく身を開いたならば、そのテクノロジーが自律的、内発的に進化するその力を解き放つことができるのだと。

本書の後半では、従来の技術観を問い直し、新しい未来を構想するための枠組みとして、以下の7つの対比を著者は提示します。

「稀少さ/潤沢さ」「経験的/計算的」「物理的/実質的」「単一的/多元的」「制御的/創造的」「均質性/複雑性」「生成的/再生成的」です。

これらは、一方の考え方を否定し、もう一方へ置き換えるためのものではありません。技術や社会を捉える際に、私たちが無意識に置いている前提を見直し、これまで見落としていた可能性を発見するための視点です。

最初の対比は、「稀少さ/潤沢さ」(Scarcity/ Abundance)です。従来の経済学では、限られた資源をいかに効率的に配分するかが重要な課題でした。しかし、デジタル技術の発展によって、情報やソフトウェアなど、一部の財やサービスでは追加的な提供コストが大きく低下しました。

経済学者ジェレミー・リフキンが論じた「限界費用ゼロ社会」は、こうした変化を考えるうえで参考になります。生成AIの普及によって、文章作成や翻訳、情報整理などの知的作業も、以前より少ない時間と費用で実行できるようになりました。専門知識へのアクセスが容易になれば、個人や小規模企業にも新しい事業機会が生まれます。

ただし、AIの開発や運用には、半導体やデータセンター、電力などの資源が必要です。技術の恩恵が一部の企業や人々に集中する可能性もあります。

潤沢さとは、資源が無制限に存在することではありません。技術や知識を組み合わせることで、新しい価値を生み出し、その恩恵を広げていくことです。

企業にとっても、自社の利益を確保するだけでなく、顧客や取引先、地域社会との協働によって市場全体の価値を高める視点が重要になります。

2つ目は、「経験的/計算的」(Experimental/ Computational)です。人間は長い間、身体や感覚、経験を通じて世界を理解してきました。農業では天候や土壌の状態を経験から判断し、製造業では熟練技術者が設備の音や振動から異常を見つけてきました。

一方、AIやシミュレーション技術の発展によって、人間が直接経験できない複雑な現象を計算によって分析できるようになっています。医療分野では画像診断の支援や創薬研究への応用が進み、材料科学でも新しい物質の探索などにAIが活用されています。

しかし、計算能力が向上しても、すべての問題を正確に理解できるわけではありません。データには偏りや欠落があり、分析モデルにも前提条件があります。

重要なのは、経験と計算を対立させないことです。例えば、製造業で設備の故障を予測する際、センサーデータと熟練技術者の判断を組み合わせれば、どちらか一方だけでは見つけにくい問題を発見できる可能性があります。

企業が目指すべきなのは、人間の経験をAIで置き換えることではなく、暗黙知と計算能力を組み合わせ、組織全体の判断力を高めることです。

3つ目は、「物理的/実質的」(Physical/ Virtual)です。従来の経済活動は、工場や店舗、オフィスといった物理的な設備や場所を中心に成立していました。しかし、デジタル技術の発展によって、価値を生み出す活動が必ずしも特定の場所に限定されなくなっています。

オンライン会議やクラウドサービスを利用すれば、離れた場所にいる人々が協働できます。教育や専門的な相談も、物理的な移動を伴わずに提供できるようになりました。

さらに、AIやロボティクス、バイオテクノロジーの進歩によって、物理世界とデジタル世界の融合が進んでいます。工場では設備の稼働状況をリアルタイムで把握し、農業では土壌や気象データを活用して生産活動を改善する試みが行われています。

菌糸体や培養神経細胞など、生物の特性を計算技術に応用する研究も進められています。こうした変化は、物理的な存在と情報処理を切り離して考えることが難しくなっていることを示しています。

ただし、デジタル化によって物理世界の制約が消えるわけではありません。重要なのは、両者の特徴を理解し、新しい価値を生み出せる関係を設計することです。

4つ目は、「単一的/多元的」(Singulality/Plurality)です。技術の進歩には、人々の行動や判断を均一化する側面があります。多くの人が同じプラットフォームを利用し、同じアルゴリズムによって情報を受け取れば、考え方や選択肢が似通う可能性があります。

これに対して本書が重視するのは、多様な価値観や意見が共存できる社会の設計です。その一例が「クアドラティック投票」です。この仕組みでは、自分が強く支持する議題に多くの票を配分できます。ただし、票を増やすほど必要なクレジットが二乗で増えるため、特定の議題に投票を集中させるには大きな負担が生じます。

例えば、1票には1クレジット、5票には25クレジットが必要です。単純な多数決では把握しにくい意見の強さを、意思決定に反映しようとする仕組みです。もちろん、クレジットの配分方法や参加者間の公平性など、制度設計上の課題もあります。

企業経営でも、多様な意見を意思決定に取り込むことが重要です。経営者だけがすべての情報を把握することは難しく、現場の従業員や顧客、取引先の知識を活用する必要があります。

多元性とは、意見を無制限に増やすことではありません。異なる立場を理解し、より良い判断につなげることです。

5つ目は、「制御的/創造的」(Cybernetic/Poietic)です。近代社会では、物事を予測し、管理し、最適化することが技術の重要な役割でした。サイバネティクスは、通信や制御、フィードバックの仕組みを研究する理論として発展し、現代の経営にも影響を与えています。

売上目標を設定し、KPIを測定し、計画との差異を分析して改善する活動も、その一例です。しかし、すべてを決められた目標に向けて最適化しようとすると、予想外の発見や新しい挑戦が生まれにくくなる場合があります。

短期的な成果だけを重視する組織では、研究開発や人材育成、新規事業への挑戦が後回しになる可能性があります。

ここで重要になるのが「ポイエーシス」という考え方です。ポイエーシスは、何かが生み出されることを意味するギリシャ語に由来します。哲学者マルティン・ハイデガーは、技術を単なる目的達成の手段として捉えることの限界を論じました。

この思想を現代に応用すれば、人間がすべてを計画し、管理するのではなく、人間と技術、環境の相互作用から新しい可能性が生まれる余地を残すことが重要になります。

生成AIも、答えを出させるためだけに利用するのではなく、自分の仮説を批判させたり、異なる視点を提示させたりすることで、創造的な思考を支援できます。

6つ目は、「均質性/複雑性」(Entropy/Extropy)です。産業社会は、標準化と大量生産によって生産性を高めてきました。しかし、過度な標準化は地域固有の文化や生態系、社会的な関係を失わせる可能性があります。

農業では少数の品種への依存が病害虫や気候変動への脆弱性につながる場合があります。都市開発でも、同じような建物や商業施設が増えることで、地域の独自性が弱まることがあります。

AIについても同様です。多くの企業が同じAIモデルに依存し、似たような情報をもとに戦略を立案すれば、商品開発や意思決定の方向性が近づく可能性があります。

また、言語や文化の多様性が失われることは、その地域に蓄積されてきた知識や世界の捉え方が失われることでもあります。

多様性は単なる非効率ではありません。環境変化に対応し、新しい価値を生み出すための重要な要素です。企業でも、異なる部署の交流や、短期的な収益に直結しない研究活動が、将来の新事業につながる場合があります。効率性を追求する一方で、多様な知識や経験が結びつく機会を維持することが重要です。

最後の対比は、「生成的/再生成的」(Generative/Regenerative)です。生成AIによって、文章や画像、音声、プログラムなどを短時間で作成できるようになりました。しかし、コンテンツを大量に生成できることと、社会にとって価値のあるものを生み出すことは同じではありません。

AIが作成した企画書をそのまま利用する場合と、AIが示した複数の選択肢を比較し、顧客調査を行い、企画を改善する場合では、人間が得られる学習効果が異なります。重要なのは、AIによって人間の能力を代替するだけでなく、人間自身の成長や組織の学習を促進することです。

さらに、技術の利用によって地域社会が活性化し、自然環境の回復にも貢献できれば、その価値は個人や企業の内部にとどまりません。

このように、技術を使うほど新しい知識や能力が蓄積され、社会や自然の再生につながる状態を目指すことが、再生成的な技術の重要な方向性だと理解できます。

FUTURES LITERACY(フューチャーズ・リテラシー):未来という難問を解くの書影

奪われた未来を取り戻す――未来の生成に参加するための経営と行動

〈脱未来化/再未来化〉は、いま目の前で進んでいる未来が必ずしも望ましい未来とは言えず、その代替が必要なときに有効な手段となります。

私たちは未来を考えるとき、現在の延長線上にある変化を予測しようとします。
・AIが進化すれば仕事が自動化される。
・人口減少によって市場が縮小する。
・デジタル化が進めば、既存の産業構造が変化する。

こうした予測には一定の合理性があります。しかし、それが未来のすべてを説明しているわけではありません。例えば、AIによって業務が自動化されたとしても、そこで生まれた時間を人材育成や新事業の開発に利用するのか、単純な人員削減に使うのかによって、企業の将来は変わります。

技術の発展によって実現可能になることと、私たちが実際に選択する社会の姿は別の問題なのです。ここで重要になるのが、デザイン理論家トニー・フライが提唱した「脱未来化(Defuturing)」という概念です。

「脱未来化」とは、現在の豊かさや利益を優先するあまり、将来の世代が持つはずの選択肢や可能性を失わせてしまうことです。 一方、「再未来化(Refuturing)」とは、これまでの常識や仕組みにとらわれず、新しい発想や行動によって、未来の可能性を広げていくことを意味します。

例えば、目先の経済成長を優先して森林や自然資源を過剰に利用すれば、現在の世代は経済的な利益を得られるかもしれません。しかし、自然環境や生物多様性が失われれば、将来の世代が利用できる資源や選択肢は減ってしまいます。
企業経営でも同じことが言えます。短期的な利益を増やすために研究開発や人材育成への投資を削減すれば、一時的に業績は改善するかもしれません。
しかし、その結果、新しい商品やサービスを生み出す力が弱まり、長期的な競争力を失う可能性があります。 重要なのは、現在の利益だけでなく、将来の成長や価値創造につながる選択をすることです。既存の仕組みを見直し、新しい技術やアイデア、多様な人々の知恵を取り入れながら、未来の選択肢を増やしていくことが「再未来化」の実践につながります。

現在の効率化が、未来の可能性を狭めてしまう場合があるのです。この問題は地球環境にも表れています。1950年以降、人口や経済活動の拡大に伴い、エネルギー消費や温室効果ガスの排出など、さまざまな指標が急速に増加しました。

こうした変化は「グレート・アクセラレーション(大加速)」と呼ばれています。気候変動や生物多様性の損失は、環境保護だけでなく、農業やエネルギー、物流、金融など、さまざまな産業に影響を与える経営課題です。

企業には環境負荷を減らすだけでなく、資源循環や生態系の回復を事業活動に組み込むことが求められます。ただし、再生的な取り組みが必ず収益につながるわけではありません。投資回収期間や地域の条件、技術的な実現可能性を慎重に検討する必要があります。

重要なのは、短期的な財務成果と長期的な価値創造能力を両立させることです。この考え方は、経営者の役割にも変化を促します。本書で紹介される、庭師で植物学者のジル・クレマンによる「動いている庭」という思想は、その理解に役立ちます。

クレマンは、庭のすべてを人間が管理するのではなく、植物が自ら成長し、移動し、環境に適応していく過程を尊重する庭づくりを提唱しました。庭師の役割は、植物の動きを完全に制御することではありません。植物の特性を理解し、多様な生命が育つ環境を整えることです。

これは企業経営にも応用できます。経営者がすべての答えを持ち、従業員の行動を細かく管理するだけでは、組織の創造性を十分に引き出せません。重要なのは、組織として目指す方向を共有しながら、従業員が自律的に考え、実験し、学習できる環境を整えることです。

異なる部署の人材が協働する機会をつくり、小規模な実証実験を行い、そこで得られた知識を組織全体で共有する。こうした活動が、環境変化への適応力を高めます。

スタートアップであれば、事業計画の精度だけでなく、顧客との対話を通じて仮説を検証し、必要に応じて事業を修正する能力が重要になります。生成AIは、このプロセスを支援できます。市場調査や試作品の作成に必要な時間を短縮し、複数の仮説を検討する機会を増やせるからです。

しかし、AIが提示したアイデアが顧客に支持されるとは限りません。実際の顧客が抱える課題を理解し、継続的に利用される価値を提供できるかどうかを検証する必要があります。

AIの活用では、効率化の成果だけでなく、人間や組織がどのような知識を獲得したかを評価することも重要になります。そのためには、学び続ける姿勢が欠かせません。

ぼく自身は生粋の編集者らしく、DJならぬテキストジョッキーとして、まるで潜在空間のホワイトスペースを探り当てるように言葉を集め、〝未来を解く〟ための究極のブックガイドをつくるつもりで本書を編み上げました。

本書のあとがきで語られる読書や編集という営みも、AI時代の知的活動を考えるうえで示唆に富んでいます。生成AIによって情報を短時間で要約できるようになりました。しかし、要約を読むことと、著者の主張を深く理解し、自分の経験と結びつけることは同じではありません。

読書には、異なる価値観に触れ、自分の思い込みを見直し、新しい問いを発見する価値があります。編集者の仕事も、単に文章を整えることではありません。著者の問題意識を掘り下げ、異なる知識や視点を組み合わせ、読者に新しい意味を提供することです。

AIが大量の情報を生成できる時代だからこそ、何を問い、何を選び、どのような意味を生み出すのかという人間の判断が重要になります。

さらに、人との出会いや移動による経験も、新しい未来を考えるための材料になります。普段とは異なる地域を訪れ、そこで暮らす人々の話を聞けば、自分が当然だと思っていた価値観が、必ずしも普遍的ではないことに気づく場合があります。

異なる世代との対話も同様です。経験豊富な人材が持つ専門知識と、若い世代が持つ新しい技術やサービスへの理解を組み合わせることで、組織に新しい発見が生まれます。知らないことを認め、他者から学び、自分の考えを更新し続ける姿勢が、変化への適応力につながります。

FUTURES LITERACY(フューチャーズ・リテラシー):未来という難問を解くの書影

フューチャーズ・リテラシーを身につけることの意味とは?

実際には未来はそんなに思い通りつくりだせるものではなく、もっと複雑で生成的であることを、いまはもうみなさんもご存じのはずです。

本書が提唱するフューチャーズ・リテラシーとは、未来を正確に言い当てる能力ではなく、未来についての思い込みを問い直し、多様な可能性を発見するための能力だと理解できます。 もちろん、企業経営では人口動態や市場動向、技術開発などのデータに基づく予測が欠かせません。

しかし、予測できることだけを未来の可能性として扱ってしまうと、まだ存在していない価値や新しい社会のあり方を見落とすことがあります。 予測によって制約条件やリスクを理解しながら、望ましい未来を構想し、その実現に向けて行動することが重要です。

例えば、人口減少が進む地域では、市場の縮小を前提に事業を見直す必要があります。その一方で、デジタル技術や地域資源を活用することで、新しい産業や働き方を生み出せる可能性もあります。

経営者には、一つの未来だけを前提に戦略を立てるのではなく、複数のシナリオを検討し、環境変化に対応できる組織を構築することが求められます。 そして、未来を構想するだけでなく、小さな実験を繰り返し、現実の変化につなげていく必要があります。

デザイン・フューチャリングは、未来を一つに決めつけず、複数の可能性を描き、望ましい社会について議論するための手法です。

その一つが「フューチャーコーン(未来の円錐)」です。未来を「起こりそうな未来」「十分に考えられる未来」「起こる可能性のある未来」に分け、その中から「実現したい未来」を検討します。重要なのは、予測される未来と望ましい未来が必ずしも一致しないことです。
さらに「SFプロトタイピング」では、未来の技術や社会の変化を物語として描き、人々の暮らしや働き方への影響、潜在的なリスクを具体的に考えます。 企業はこれらの手法を活用することで、複数の事業シナリオを検討し、経営者や従業員、顧客との対話を深められます。立場によって異なる未来への期待を共有し、実現したい方向性を見いだすことが重要です。
デザイン・フューチャリングの本質は、未来を予測することではなく、多様な未来を構想し、対話と行動を通じて望ましい未来をつくることにあります。 

本書が描くリジェネラティブ・テクノロジーの重要な特徴は、技術や社会制度を完成されたものとして扱わないことです。 どれほど優れた技術であっても、新しい問題が生まれる可能性があります。そのときに必要なのは、問題を発見し、検証し、修正できる仕組みを持つことです。

企業であれば、AIの利用状況を評価し、誤った判断を修正できる体制や、従業員や顧客の意見を改善につなげる仕組みが必要になります。

技術だけでなく、制度や教育、組織文化を組み合わせることで、変化への対応力を高められます。 リジェネラティブという思想は、環境問題への対応にとどまりません。企業や社会が新しい問題に直面したとき、自ら学び、修正し、価値を生み出し続けられる状態を目指すことでもあります。 未来は、技術の性能だけで自動的に決まるものではありません。

技術を開発する企業、制度を設計する行政、研究を進める科学者、商品やサービスを利用する生活者など、多様な関係者の選択によって形づくられていきます。 だからこそ、未来を考えることは、一部の専門家や技術者だけの仕事ではありません。 企業経営者であれば、短期的な収益だけでなく、長期的な価値創造能力を高めるために何へ投資するのかを考える必要があります。

ビジネスパーソンであれば、AIによって得られた時間や知識を、どのような学びや挑戦につなげるのかが問われます。 そして社会全体では、技術の恩恵を多様な人々が享受できるように、制度や仕組みを整えることが求められます。 本書が伝えているのは、未来を楽観的に信じることでも、技術の進歩を拒絶することでもありません。

技術が持つ可能性と限界を理解し、異なる価値観を尊重しながら、望ましい社会の実現に向けて行動することです。 未来を予測する知識は重要ですが、その知識を使って何を選択するかという判断も欠かせません。

未来は一つではありません。私たちが何を学び、誰と出会い、どのような問いを立て、どんな行動を選択するかによって、未来の可能性は変わっていきます。 技術の進歩を受け入れるだけでなく、人間と社会、自然が持つ可能性を広げるために活用すること。その姿勢こそが、リジェネラティブ・テクノロジーの思想を実践する第一歩になるのです。

コンサルタント 徳本昌大のView

企業が持続的に成長するためには、AIによる効率化だけでなく、多様な価値観を取り入れ、変化に応じて事業や組織を進化させることが重要です。 現在、多くの企業がAIやDXを活用し、業務の効率化や生産性の向上に取り組んでいます。

こうした取り組みは競争力を高めるうえで重要ですが、既存の業務を最適化するだけでは、新しい市場や顧客価値を生み出すことはできません。 効率化を優先しすぎると、従来のビジネスモデルや成功体験に依存し、従業員の自由な発想や新しい挑戦が生まれにくくなる可能性もあります。企業には、既存事業を改善するだけでなく、これまでにない価値を創造する視点が求められています。

本書『未来という難問を解く フューチャーズ・リテラシー』が示す重要な考え方の一つが、「プルラリティ(多元性)」です。これは、特定の価値観や一つの正解に依存するのではなく、異なる立場や考え方を尊重しながら、より良い社会や仕組みをつくっていこうとする考え方です。

企業経営に置き換えれば、経営者だけで未来を決めるのではなく、従業員や顧客、取引先など、多様な関係者の意見を取り入れることが重要になります。

例えば、本書で紹介される「クアドラティック投票」は、単純な多数決とは異なり、参加者がどの選択肢をどれほど重視しているかを意思決定に反映させる仕組みです。こうした手法は、多様な利害関係者が参加するプラットフォームビジネスや、新しい組織の運営方法を考えるうえで参考になります。ただし、実際の導入には制度設計や運用上の課題もあります。

もう一つ重要なのが、「リジェネラティブ(再生)」という考え方です。将来の変化をすべて予測し、最初から完成された仕組みをつくるのではなく、状況に応じて修正し、改善し続けられる仕組みを構築することです。 これは、スタートアップが実践するアジャイル開発や、顧客の反応を踏まえて事業を改善するプロセスとも共通しています。

重要なのは、当初の計画を守り抜くことではなく、環境の変化から学び、必要に応じて戦略を見直す柔軟性です。 また、本書が紹介する「フューチャーズ・コーン」や「SFプロトタイピング」は、企業が中長期のビジョンを考える際にも役立ちます。

未来を一つに決めつけるのではなく、複数の可能性を想定し、それぞれの未来で顧客の行動や市場環境がどのように変わるのかを検討します。そのうえで、自社が実現したい未来を描き、そこから逆算して現在の事業戦略や投資判断を考えるのです。

例えば、生成AIが社会のさまざまな領域に普及した未来を想定する場合でも、AIによる自動化が進む社会、人間の創造性がより重視される社会、人間とAIの協働が中心となる社会では、企業に求められる商品やサービスは異なります。 こうした複数のシナリオを検討することで、企業は特定の技術や市場予測に依存するリスクを減らし、新しい事業機会を発見しやすくなります。

本書の魅力は、未来学や哲学、テクノロジーに関する幅広い知見を整理し、私たちが未来について考えるための多様な視点を提供していることです。

未来は、誰かが予測した通りに到来するものではありません。私たちの選択や行動によって、その可能性は変わっていきます。 だからこそ、経営者に求められるのは、一つの未来を正確に予測する能力だけではなく、複数の未来を構想し、変化に対応できる組織をつくることです。

企業が持続的な競争力を高めるためには、AIによる業務の効率化と、人間の創造性を生かした新しい価値の創出を両立させることが重要です。また、従業員や顧客、取引先など、多様な関係者の意見を取り入れながら、環境の変化に応じて事業や組織を柔軟に進化させる必要があります。

未来を正確に予測することは困難ですが、複数の可能性を想定し、自社が実現したい未来を具体的に描くことはできます。その実現に向けて戦略を立て、行動と改善を積み重ねることが、不確実性の高い時代における企業の持続的な成長につながります。

FAQ

Q1: 「サイバネティクス」と「ポイエティック」の違いは何ですか?

A1: 「サイバネティクス」は、データに基づきフィードバックループを回してシステムを制御・最適化するアプローチです。一方、「ポイエティック」はギリシャ語の「ポイエーシス(つくること)」に由来し、事前の設計や制御に縛られず、素材や環境との関わりの中から思いがけず新たな意味や形が自発的に立ち現れる創造的なプロセスを指します。

Q2: 「クアドラティック投票(Quadratic Voting)」とはビジネスにどう応用できますか?

A2: 1人1票の多数決とは異なり、持ち点(クレジット)を消費して「選好の強度(どれだけ強く賛成・反対しているか)」を反映できる投票システムです。複数票を投じる場合はコストが二乗(Quadratic)で増えるため、極端な声の大きさを抑えつつ、マイノリティの切実な声も反映できます。企業の意思決定や、プラットフォームにおける多様なユーザーの意見集約、DAO(自律分散型組織)のガバナンス設計などで応用が期待されています。

Q3: 「リジェネラティブ・テクノロジー」の最終的な目的は何ですか?

A3: テクノロジーによって「完璧なユートピア」を完成させることではありません。将来、新たな社会問題や環境問題が起きた際に、人間がそれに適応し、修復し、システムを再設計できる「ツール群」を用意しておくことです。つまり、自分たちや将来世代が継続的に「未来の生成」に参加できる状態を担保し続けることが最大の目的となります。

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【書評】デザイン・フューチャリング 未来を探り、変化に導く思考ツール(ベネディクト・グロース, アイリーン・マンディア)デザイン・フューチャリングの本質は、未来を正確に予測することではなく、自らが望む未来を構想し、その実現に向けた行動を生み出すことにあります。理想の社会や暮らしを具体的に描くことで、現在の課題や必要な変革が明確になります。同時に、望ましくない未来を想定し、そのリスクを回避するための対策を検討することも重要です。複数の未来の可能性を探りながら、より良い未来を主体的に選択し、実現していくための実践的な思考法です。
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FUTURES LITERACY(フューチャーズ・リテラシー):未来という難問を解くの書影

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

Ewilジャパン取締役COO
Quants株式会社社外取締役
Mamasan&Company 株式会社社外取締役
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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