
書籍:なぜ、あの人はいつも応援されるのか : 会社にいても、「自分らしさ」を発揮できるパーソナル・ブランディング
著者:鬼木美和
出版社:時事通信社

書評『なぜ、あの人はいつも応援されるのか』AI時代に「自分らしさ」を武器にする方法
SNS、副業、パラレルキャリアの普及により、個人が複数の組織やコミュニティに所属することが一般的になりました。その一方で、「自分の強みをどのように伝えるべきか」「所属企業と自分の価値観が合わない」と悩むビジネスパーソンも増えています。
専門性や実績があっても、それが周囲に正しく理解されなければ、仕事や協業の機会にはつながりません。 起業家や学生との対話からも見えてくるのは、優秀な人ほど必ずしも自分の価値を適切に伝えられるわけではないという現実です。
能力が不足しているのではなく、自分が何を大切にし、どのような場面で価値を提供できるのかが整理されていないため、周囲がその人に何を期待すればよいのか判断できないのです。
広告会社・大広取締役の鬼木美和氏の著書『なぜ、あの人はいつも応援されるのか──会社にいても、「自分らしさ」を発揮できるパーソナル・ブランディング』(時事通信社)は、こうした課題に対して、パーソナル・ブランディングという視点から具体的な方法を提示します。
鬼木氏は企業ブランディングの実務に携わり、企業の意志の可視化から事業開発までを一貫して支援してきた専門家です。 本書の特徴は、ブランランディングを自己アピールや目立つための演出として扱っていない点にあります。
ブランドとは、一方的につくって発信するイメージではなく、他者との関係の中で形成される「期待値」です。つまり、周囲から「この人なら何を任せられるか」「どのような価値を提供してくれるか」と認識されることが、個人のブランドを形づくります。
能力があるのに適切に評価されない人や、面接で「あなたらしさは何か」と問われて答えに詰まる人に不足しているのは、必ずしもスキルや経験ではありません。
自分の価値観、強み、行動特性を言語化し、相手が抱く期待との接点を明確にする力です。自分の魅力を過剰に演出するのではなく、「自分は誰に、どのような価値を提供できるのか」を整理することが出発点になります。
生成AIが定型業務を代替し、知識や文章の表面的な品質が均質化するほど、このテーマの重要性は高まります。「何を言うか」だけでは差がつきにくくなり、その発言がどのような経験、価値観、実績に裏づけられているのかが問われるからです。
AI時代の競争優位性は、単に知識を多く持つことではありません。自らの価値観と専門性を一貫した「ブランド人格」として示し、他者からの期待に応えながら信頼を積み重ねることにあります。
本記事では、本書が提示するパーソナル・ブランディングの考え方を整理し、個人の専門性を仕事や共創の機会につなげるための実践方法を明らかにします。
この記事でわかること
・パーソナル・ブランディングの本来の意味と「期待値」のつくり方
・「自分らしさ」を言語化し、行動で裏付けるための3つのステップ
・会社に依存せず、個人と企業が対等な「共創」関係を築く自己経営術
・AI時代において「応援される人」になるための具体的なアクションプラン
・キャリアの転換期やセカンドキャリアを見据えたWell-Agingの視点
30秒でわかる本書のポイント
【結論】
・パーソナル・ブランディングの本質は、目立つことではなく周囲に「よい期待値」を持ってもらうことである。 ・「あなたというブランド」は一人で完結するものではなく、ステークホルダーとの関係性の中で共創される。
・個人と企業は主従関係ではなく、互いの〈ブランド人格〉を重ね合わせる対等な関係へとシフトしている。 【原因】
・「自己PR=見栄を張ること」「個性=派手さ」という誤解が、本来の自分らしさを覆い隠し、自信を失わせている。
・「何をめざしているのか」「誰にどう期待されたいのか」という目的(Purpose)が言語化されていないため、周囲もどう支援していいかわからない。
・オンラインの自分、職場の自分、友人の前の自分など、場面ごとに人格が分断されており、一貫した「軸」がない。
【対策】
・自分と対話し、性格・価値観・提供価値を言語化して「私は何者か」という〈ブランド人格〉を規定する。
・言語化した約束を日々の小さな行動や態度で示し、周囲からの信頼と期待(ブランド力)を蓄積する。
・「自己経営」の視点を持ち、知力・体力・時間・支援者力などの資源を戦略的に組み合わせて自己実現を図る。
本書の要約
本書は、企業ブランディングの専門家である著者が、そのノウハウを「個人」に応用し、これからの時代の働き方・生き方の指針を示した実践書です。多くの人が誤解している「目立つための自己プロデュース」を否定し、ブランドを「この人はこういう価値を発揮してくれそうだという周囲の期待の積み重ね」と定義します。
その中核となるのが、自らの個性や価値観をひとりの人格としてとらえる〈ブランド人格〉という概念です。自分を知り、言葉にし、行動で示すという3ステップを通じて、周囲との関係性を「知っている」から「つながっている(支援し合う)」状態へと引き上げる方法を論理的に解説しています。
また、終身雇用が崩壊し、複線型キャリアが一般化する中、会社を「自己実現のために借りる場所」と位置づけ、企業と個人が互いの目的をすり合わせる「共創」の重要性を説きます。キャリア形成から起業、そして人生の後半戦(Well-Aging)まで、あらゆるステージで自分らしく社会と関わり続けるための羅針盤となる一冊です。
こんな人におすすめ
・真面目に仕事に取り組んでいるのに、正当な評価や面白い機会に恵まれないと感じている方
・就職活動や転職活動の面接で「あなたの自分らしさは?」と聞かれて言葉に詰まってしまう方
・副業や独立を視野に入れ、会社名という看板に頼らない「自分の名前」で勝負したい方
・多様な価値観を持つメンバーをまとめるマネージャーや、組織風土の改革を担うリーダー層
本書から得られるメリット
・自分の内面にある「強み」や「価値観」を客観視し、説得力のある言葉で言語化できるようになる
・上司や顧客など、ステークホルダーとの関係性を意図的に設計し、人間関係のストレスを軽減できる
・「この人に任せたい」という指名が増え、本当にやりたい仕事や新しいチャンスを引き寄せられる
・キャリアの迷いやライフステージの変化に直面した際、ブレない判断軸(北極星)を持てるようになる

ブランド人格の3つのステップ
「ブランド」とは、相手との関係性をきずための<期待値>。(鬼木美和)
SNSを通じて、誰もが自由に情報を発信できる時代になりました。しかし、「自分の強みがわからない」「自分らしさをどう伝えればよいのか」と悩む人は少なくありません。
その原因は、発信力や実績の不足だけではありません。ブランディングを「自分を目立たせること」や「魅力的に見せること」と捉えている点にも問題があります。
就職活動で仕事内容より企業への所属を重視する。謙虚であろうとするあまり、自分の価値を過小評価する。個性とは派手さや奇抜さだと思い込む。このように、周囲が求める「正解」に自分を合わせ続けると、本来の価値観や強みが見えにくくなります。
SNSでは積極的に発信できても、対面では自分をうまく表現できない人もいます。オンラインとリアルで見せる自分が大きく異なり、そこに一貫した軸がなければ、本人だけでなく周囲も「この人は何者なのか」「何を頼める人なのか」を理解できません。
人は、服装や言葉遣い、振る舞いによって、意識するかどうかにかかわらず自分を表現しています。重要なのは、その印象を成り行きに任せるのではなく、自分が築きたい関係や果たしたい役割に合わせて整えることです。
ブランディングの目的は、目立つことでも、フォロワーを増やすことでもありません。本書ではブランドを、「あなたらしさと周囲の期待の接点にある」と捉えています。
高い能力を持ちながら重要な仕事を任されない人がいる一方で、継続的に相談や依頼が集まる人もいます。この違いは、能力だけでは説明できません。
周囲の記憶の中に、「何を相談できる人なのか」「どのような場面で頼れるのか」という明確な認識が形成されているかどうかも、大きく影響します。
どれほど優れた専門性を持っていても、その価値が周囲に理解されていなければ、仕事や協業の機会にはつながりにくいのです。 この期待を生み出す基盤が〈ブランド人格〉です。
構築するためには、次の3つのステップが必要です。
①自分を知る これまでの経験、強み、価値観を客観的に把握します。
②約束を言葉にする 誰に、どのような価値を提供するのかを明確にします。
③行動で証明する 言葉と実践を一致させ、継続的に信頼を積み重ねます。
ブランディングを自己分析だけで終わらせてはいけません。言葉だけでは期待は定着せず、行動だけでは自分の価値が正確に伝わらないからです。言語化した約束と実際の行動が一致したとき、〈ブランド人格〉は周囲の中に形成されます。
言葉を発信し、関係性を構築!
「言葉の森」を枯らさない。
ブランド人格とは、自分が提供できる価値を言葉にし、行動によって信頼へ変えていくものです。 表現の選択肢が少なければ、自分の経験や価値観、強みを的確に説明できません。読書や対話を通じて異なる考え方に触れ、語彙や概念を増やすことは、単なる教養の蓄積ではありません。
自分の役割を発見し、それを相手に伝わる言葉へ変換するための準備です。 周囲から理解され、期待され、応援されたいのであれば、自分を表現するための「言葉の森」は豊かなほうがよいでしょう。 ただし、〈ブランド人格〉は一度言語化すれば完成するものではありません。
言葉にした段階は、あくまで出発点です。著者は、つくった〈ブランド人格〉を「10人に話してみること」を勧めています。普段の会話では恥ずかしく感じるかもしれませんが、チームのメンバー同士で、それぞれの〈ブランド人格〉を使って自己紹介する機会を設けるのも有効です。
まずは、次の3点を短く説明できるようにします。
・自分は何者なのか
・誰の、どのような問題を解決できるのか
・どのような場面で頼ってほしいのか
その言葉を自己紹介や情報発信、日々の仕事に反映し、周囲の反応を見ながら修正していきます。発信と行動を一致させることで、他者から寄せられる期待が明確になり、仕事や協業の機会も生まれやすくなります。
副業やパラレルキャリアが広がり、企業と個人の関係も変わりつつあります。個人が会社の方針に従うだけではなく、双方が目的や価値観を確かめ、それぞれの強みを生かす関係が求められています。 その接点となるのが、企業のパーパスと個人の〈ブランド人格〉です。
企業が実現したい未来と、個人が大切にする価値観や強みが重なれば、仕事は与えられた役割の遂行にとどまりません。互いの資源を持ち寄り、新しい価値を生み出す共創へと発展します。
ただし、会社を自己実現のために利用する場所とだけ考えるのは適切ではありません。企業や顧客への貢献が置き去りになるからです。
個人は会社に何を提供できるのか。
会社からどのような経験や機会を得たいのか。
双方が目的と役割を確認し、果たすべき約束を明確にする必要があります。対等な関係とは、互いに権利を主張することではなく、期待と責任を共有することです。 ここで重要になるのが「自己経営」という考え方です。
自分自身を一つの事業体と捉え、次の経営資源を組み合わせながらキャリアを設計します。
・知力:専門知識、学習力、思考力、スキル
・体力:健康、集中力、行動力
・財力:収入、資産、投資余力
・時間:仕事、学習、家庭への配分
・コミュニケーション力:伝達、対話、交渉
・支援者力:信頼関係、協力者、コミュニティ
・追求力:執念・やり切る力
・志力:実現したい目的、社会への問題意識
使える資源は、ライフステージによって変わります。育児や介護によって時間が制約されることもあれば、年齢とともに体力が低下することもあります。 だからこそ、一つの能力や勤務先だけに依存するのは危険です。
体力の低下を知力や支援者力で補い、時間が限られる時期には仕事の量や内容を見直す。複数の資源を柔軟に組み替えながら、キャリアを更新していく必要があります。
一番大事な資源は「志力」ではないかと思います。・行動が生まれ・人が集まり・資源が組み合わさる。
なりたい自分を明確に想像し、それを追求する執念。それがあればさまざまな資源を組み合わせて、乗り切ることができます。
著者が最も重視しているのが、自分の志を持ち続ける「志力」です。実現したい未来が明確であれば、環境や立場が変わっても、必要な資源を見極め、取るべき行動を柔軟に選び直せます。この継続的な自己投資が、提供できる価値を高め、周囲から寄せられる期待の向上につながります。
AIは、検索、要約、比較、分析、文章作成など、多くの知的作業を高速化しています。その結果、知識量や情報処理能力だけでは、個人の違いを生み出しにくくなりました。 一方で、どの課題に取り組むのかを決め、その結果に責任を持ち、他者との信頼関係を築きながら実行することは、人間に残された重要な役割です。
AIはコミュニケーションを支援できますが、長期的な信頼や共感まで自動的につくれるわけではありません。 信頼を形成するのは、その人が何を約束し、どのように行動し、困難な局面でどのような判断をしたかという実績の積み重ねです。
事業開発やスタートアップ投資でも、市場規模や収益性だけで意思決定が行われるわけではありません。経営者がどのような問題意識を持ち、逆境でどう判断し、周囲とどのような関係を築いてきたのかも重要な評価材料になります。 ただし、人柄への共感だけで事業の可能性を判断するのは危険です。
ブランド人格は、事業性や実行力を補うものではあっても、その代わりにはなりません。市場性、収益性、技術力、チームの能力といった客観的な条件に加え、その人物が長期的に信頼できるかを示す要素として捉えるべきです。
AI時代に求められるのは、変化に応じて仮説や行動を修正する柔軟性と、自分が大切にする価値を守る一貫性です。この二つを両立し、約束した価値を行動で示し続ける人に、信頼と機会が集まります。 その第一歩は、肩書を増やすことではありません。
「私は、誰の、どのような課題に、何を提供できるのか」 この問いへの答えを一文で表し、自己紹介や情報発信、仕事上の判断に反映させることです。言葉と行動の一致を積み重ねることで〈ブランド人格〉は磨かれ、AI時代にも選ばれる個人ブランドが形成されていきます。
装いと自己開示もブランド人格を伝える
結局、応擾されるカがない人は、プランドになり得ないんです。何もなくてもその人のブランドというものはあるれど、そこを磨いていく方法の一つとして、「応援されていく」はとても大きなカなんです。自己肯定感にもつながりますし。(政近準子)
パーソナルスタイリストの政近準子氏との対談では、装いも〈ブランド人格〉を伝える重要な要素として論じられています。服装は、単に外見を整えるためのものではありません。自分の姿勢や価値観を表現し、相手との関係を築くためのメッセージでもあります。
ただし、目立つ服装を選べばブランドが確立するわけではありません。画一的なリクルートスーツにも、表面的なイメージづくりにも、本人の内面と外見を乖離させる危険があります。重要なのは、自分の役割や価値観を踏まえ、相手や場との関係にふさわしい表現を選ぶことです。
政近氏は、装いを通じて人と人が響き合い、関係性を育てていく考え方を「響装」と表現しています。これは、自分をよく見せるための一方向的な演出ではありません。装いを媒介として自分の考えや価値観を伝え、相手の反応を受け取りながら、新しい関係をつくる行為です。
この「響装」は、鬼木氏が重視する「共創」と共通しています。鬼木氏は、現代の事業開発では、企業がすべての技術や人材を自前で抱え、新しい価値を生み出すことには限界があると指摘します。
自分たちが実現したい未来を明確に発信し、その目的に共感する仲間や支持者を集め、ともに形にしていくことが必要です。 その考えを組織名にも反映し、「事業開発」から「未来共創本部」へ変更したというエピソードは象徴的です。
「開発」という言葉が自社を主体とした活動を想起させるのに対し、「共創」は、社内外の多様な人々が目的を共有し、それぞれの資源や能力を持ち寄る関係を表しています。
成功の可能性を高めるのは、優れたアイデアだけではなく、その実現に参加する仲間や支持者の広がりだという考え方です。
ブランドは、自分一人で完結するものではない。(鬼木美和)
「共創」と「響装」は、対象は異なりますが、他者との関係から新しい価値を生み出す点で共通しています。 共創とは、自分たちが実現したい目的や構想を社会に示し、共感する仲間とともに事業や未来をつくることです。一方、響装とは、装いを通じて自分の価値観や姿勢を伝え、相手と響き合いながら関係を育てることです。
どちらも、自分の考えや価値観を相手に押しつけるものではありません。完成された自分を見せるのではなく、相手が関わり、参加できる余地を残すことが大切です。
共感と信頼を積み重ねることで、一人では生み出せない価値が生まれます。 その出発点となるのが、適切な自己開示です。自分の強みだけでなく、価値観や目標、必要に応じて弱さや限界も伝えることで、周囲は共感し、協力しやすくなります。
自分では弱点だと思っている特徴も、他の能力や置かれた文脈との組み合わせによって価値に変わります。 たとえば、「真面目すぎる」「目立つことが苦手」という性格は、それだけを見れば消極性と受け取られるかもしれません。
しかし、専門性、責任感、傾聴力と結びつけば、「安心して仕事を任せられる実務家」という評価につながります。個性の価値は、特徴の強さではなく、複数の要素の組み合わせと、それが他者にどのような価値をもたらすかによって決まります。
〈ブランド人格〉とは、欠点を隠し、完成された人物を演じることではありません。自分の強みと限界を客観的に把握し、提供できる価値を示したうえで、足りない部分を周囲と補完し合える関係を築くことです。
これからのリーダーに求められるのも、強さを誇示して人を従わせる力だけではありません。目的と価値観を明確に示し、自分の限界も適切に開示しながら、「この未来を一緒につくりたい」と周囲が思える余地を設けることが重要です。応援される力とは、好感度の高さではなく、他者が参加する理由と役割を提示できる力だといえます。
本書が示す個人ブランドは、自己演出の技術ではなく、他者や社会に対する約束です。自分を知り、提供する価値を言葉にし、行動によって証明する。
そして、装いや発信を通じて他者と響き合い、共感する仲間と新しい価値をつくる。この「響装から共創へ」という流れが、〈ブランド人格〉を個人の印象にとどめず、仕事や事業を動かす力へと変えていきます。
コンサルタント 徳本昌大のView
私は今から10年以上前、50代前半で長年勤めたサラリーマン生活にピリオドを打ち、社外取締役やコンサルタントとして独立しました。現在はエンジェル投資家としてベンチャー企業を支援しつつ、特任教授として教育の現場にも立っています。こうした多拠点・多面的なキャリアを構築できた背景には、まさに本書が語る「パーソナル・ブランディング」の実践がありました。
実は、本書の第5章に私自身がコラムを寄稿しています。私が断酒を決意し、トム・ピーターズの名著『ブランド人になれ!』に出会い、「自分で自分を時代後れにしなければ、誰かにそうされるだけだ」という言葉に衝撃を受けたエピソードを紹介しました。
私は月の半分を出張先で働くなど、日常とは異なる環境に身を置いていますが、これは単なる気分転換ではありません。各地を歩き、地域の文化に触れ、普段とは異なる人々と交流することで、固定化した思考や視点を見直す機会が得られます。
健康的な食事や運動の習慣を維持することも、移動の多い生活の中で、安定したパフォーマンスを保つための基盤になります。
社会学者マーク・グラノヴェッターが提唱した「弱い紐帯の強み」が示すように、新しい情報や機会は、親しい人だけでなく、普段あまり接点のない人とのつながりからもたらされることがあります。出張先で生まれる偶発的な出会いは、新たな事業のアイデアや協業、投資機会につながる可能性を持っています。
個人のブランドを育てるうえでは、継続的な情報発信も重要です。ブログで書評やビジネスに役立つ知識を発信し続けることで、その人の価値観、専門性、判断基準が読者に伝わります。読書で得た知識をそのまま紹介するのではなく、実務で活用できるように整理し直して届ける。この地道な積み重ねが、読者からの信頼を形成し、共通の関心や価値観を持つ人との出会いを生み出します。
アダム・グラントが論じる「ギバー」の視点に立てば、情報発信は短期的な見返りを求める営業活動ではありません。自分の知識や経験を、他者に役立つ形で提供し続ける長期的な価値創造です。
継続的な発信によって蓄積された記事や評価、人とのつながりは、個人に帰属する無形資産になります。専門知識だけでなく、発信を続けてきた時間や読者との信頼関係が含まれるため、他者が短期間で模倣することは困難です。
生成AIによって情報収集や文章作成が効率化されるほど、一般的な知識や表面的なコンテンツだけでは差別化しにくくなります。そこで重要になるのが、誰が、どのような経験と価値観に基づいて発信しているのかというブランド人格です。
AIは情報の整理や表現を支援できます。しかし、現場で得た一次情報、長年の実践から生まれる判断軸、他者との間に築かれた信頼関係まで自動的に生み出すことはできません。これらの蓄積が、発信者固有の価値を形づくります。
私は誰なのか。誰のために役立ちたいのか。どんな未来を創りたいのか。その問いを持ち続けるかぎり、 人も企業も成長し続けられると信じています。
ブランド人格は、一度定めれば完成するものではありません。社会や働き方が変化するなかで、自分の経験や価値観を見つめ直し、言葉と行動を更新し続ける必要があります。 年齢や立場にかかわらず、新しいテクノロジーに触れ、異なる世代や分野から学ぶ。その学びを自分の専門性と結びつけ、提供できる価値を高めていく姿勢が、周囲から寄せられる期待と信頼につながります。
その中心にあるのが「志力」です。実現したい未来が明確であれば、環境が変化しても、必要な知識や人との関係、取るべき行動を選び直せます。自分を継続的に更新する原動力として志を位置づける著者の考えに、私は強く共感しました。
本書は、自分の名前で社会と関わり、経験や専門性を信頼へと変えていきたい人に、ブランド人格を構築するための考え方と実践方法を提示しています。
自分の価値を言葉にし、行動で証明し、他者に役立つ情報を発信し続ける。そして、共感する仲間と未来を共創する。その積み重ねが個人の可能性を広げ、企業や社会に新しい価値をもたらすのです。
FAQ
Q1: 私は裏方気質で目立つのが苦手です。それでもパーソナル・ブランディングは必要ですか?
A3: 必須です。本書で語られるブランディングは「目立つこと」ではなく「周囲からの期待値(この人に任せれば安心だという信頼)をつくること」です。裏方としての「丁寧さ」や「調整力の高さ」を意図的に言語化し、行動で示すことで、あなたの強みが正当に評価され、働きやすい環境(関係性)を構築することができます。
Q2: 会社員として組織の目標に従う中で、「自分らしさ」を発揮するとわがままになりませんか?
A2: 自己主張だけを押し通せばわがままになりますが、本書が推奨するのは「企業と個人の目的の重なり(接点)」を見つけることです。会社のパーパスと自らの〈ブランド人格〉がどうリンクするかを考え、組織の課題解決に対して「自分ならではのアプローチ」で貢献することが、真のパーソナル・ブランディングです。
Q3: 自分の「強み」や「価値観」がどうしても見つからない場合はどうすればいいですか?
A3: 最初から完璧な答えを出す必要はありません。まずは親しい同僚や友人に「私の特徴って何だと思う?」と客観的な視点をもらう(ジョハリの窓の活用)ことから始めてください。また、日々の仕事の中で「どんな時に他人に感謝されたか」「苦にならずに続けられる作業は何か」を振り返ることで、少しずつあなたの〈ブランド人格〉の輪郭が見えてきます。
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なぜ「与える人(ギバー)」が最終的に最も成功を収めるのか。パーソナル・ブランディングにおいて不可欠な「信頼の蓄積」のメカニズムを、膨大なデータとともに解き明かした世界的ベストセラー。本記事と併せて読むことで、利他的な発信がもたらす長期的なリターンを深く理解できます。
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【書評】『ブランド人になれ!』トム・ピーターズ
私が50代で独立を決意する最大のきっかけとなった伝説のバイブル。「組織に依存せず、自分の名前を株式会社と見なせ」というメッセージは、出版から20年以上経った今、AI時代においてさらにその輝きを増しています。自分自身を絶えずアップデートし続けるための劇薬とも言える一冊です。
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【書評】ファンを集められる会社だけが知っている 「ブランド人格」 (鬼木美和)
企業がファンを獲得するには、商品機能だけでなく、存在意義、価値観、強み、目指す未来を一貫した「ブランド人格」として示す必要があります。ブランドとは社会や顧客からの期待値であり、ブランド力はその質と量です。明確な人格は顧客の共感と信頼を生み、社員を帰属から参画へ変え、採用や協業、新規提案も促進します。期待に応える行動を全社で積み重ねることが、長期的な競争力と持続的成長につながります。実践が重要です。
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