商い言うもんは、山を見つけたら誰より先に登るこっちゃ。人がでけんことをやるのが商いの大事や。(小西儀助)
日本経済新聞に連載中の伊集院静氏の「琥珀の夢」が面白い。
この小説の主人公は、サントリー創業者の鳥井信治郎で
彼が丁稚としてお世話になるのが、小西儀助商店の小西儀助なのです。
(ちなみに小西屋はボンドで有名なコニシ株式会社です。)
サントリー創業者のチャレンジ精神を引き出す一人が、この小西儀助なのですが
彼のビールへの探究心と商売に対する考え方が、その後の鳥井信治郎の人生に影響を与えます。
伊集院は小西に「人がでけんことをやれ」と言わせていますが
鳥井はその言葉通りに、丁稚明けの20歳の時(1899年)に独立し
洋酒販売の鳥井商店(寿屋)を立ち上げます。
鳥井は小西儀助商店で得た洋酒の知識をもとに、商品開発にチャレンジします。
1907年には赤玉ポートワインを発売し、サントリーを大会社にする礎を築くのです。
冒険者としてのチャレンジャー精神が、日本の洋酒文化を花開かせたのです。
日本人の口にあうワインを生み出すために、彼は様々な工夫をしました。
丁稚時代の小西儀助との夜なべ(研究)が、赤玉ポートワインを生み出したのです。
鳥井には数多くの名言がありますが、「やってみなはれ」が特に有名です。
人生とはとどのつまり賭けや。やってみなはれ。
一度しかない人生を楽しまないのは、時間の無駄です。
死ぬ時に後悔するよりも、自分の人生の可能性に賭けたほうがよいに決まっています。
それを鳥井は「やってみなはれ」という言葉に凝縮しています。
大人の流儀(5) [ 伊集院静 ] |
鳥井は赤玉ポートワインを発売する時に以下のようにいったそうです。
日本人に飲んでもらうには、美しい色や適度な甘酸っぱさ、ころあいの酒精分が必要だ。本場のポートワインとは味も香りも色も違うかもしれない。しかし、この酒は世界のどこにもない日本の葡萄酒。日本のポートワインやで。
山を見つけた鳥井はここから、成功していきます。
やってみなはれ精神でワインだけでなく
ウイスキーづくりににもチャレンジし、日本初のウイスキー「白札」を発売します。
今ではウイスキーの山崎ブランドは、世界最高峰の評価を得ていますが
鳥井の情熱がなければ、この日本を代表する商品は生まれませんでした。
また、広告上手のサントリーの創業者にもかかわらず
彼は広告の力を過信していませんでした。
いくら広告しても、肝腎の商品が上等のものでなかったら、あきまへん。広告をするにも自信をもってできんし、お得意さんのほうで、あれは宣伝ばっかしやといわれたら、それでお仕舞いや。まずとび切りええもんをつくるこっちゃ。
広告に頼るのではなく、ものにこだわれという鳥井信治郎の言葉を
我々マーケターは忘れてはいけないのです。
今日もお読みいただき、ありがとうございました。
photo credit: jeronimoooooooo Errante via photopin (license)
photo credit: Kouki Kuriyama TOKUCHA(特茶) via photopin (license)
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