大抵の場合、繁栄する人正確に言うと繁栄し続ける人がそうなった理由の一つはお金の管理が慎重だからで、果敢な起業家精神とか大胆な投機のためばかりではない。(クラウディア・ハモンド)
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貯蓄口座を一つに絞った方が良い理由
心理学者のクラウディア・ハモンドのMIND OVER MONEY 193の心理研究でわかったお金に支配されない13の真実に貯蓄に関する面白い考え方が紹介されていたので、今日はこのことをブログに書きます。多くの人はお金が貯まらないことで悩んでいますが、なぜ、彼らにはお金が貯まらないのでしょうか?著者のハモンドはお金に関する心理学を学ぶことで、貯蓄を増やせると述べています。
心理学の世界では、人のお金にまつわる選択は時に非合理的と見えて、長期的に見れば実に理に適っていたと分かることがある。なぜそうなるかと言うと、人は自分が合理的なアクターどころか当てにならない人間の一人で、何かの工夫に頼らないと自分で自分の足を引っ張りかねないと自覚しているからだ。
金融アドバイザーたちは貯蓄を分散すべきだと述べていますが、そこにはリスクが分散されるというメリットがあります。誰であれ自分が投資したファンドが暴落したら、無傷ではいられません。自分の財産を全部そのファンドに突っ込んでいたら、目も当てられない大惨事になります。しかし、一般の人たちはこういう投資はしないはずですから、分散投資を考える必要はあまりありません。まずは資産を増やすためのタネ銭を貯金で作るべきです。
貯蓄をいくつもの金融商品に分散したとします。年金や個人貯蓄口座、国債、ファンドなどもの資産を全て記憶するのは難しく、自分の資産が全部でいくらあるかをなかなか把握できません。そういう時、わたしたちは大体の見当に頼る傾向があります。
自分の資産が合わせていくらなのかを多めに見積もりすぎて、その(間違った)情報に基づいて、これくらいなら使っていいと判断し、貯金する機会を失う。
次の実験を行うことで、貯金口座の適正な数が明らかになりました。学生グループに、3口座か1口座のどちらかを無作為に割り振り、自分の口座を実験中に目の前の画面上で確認できるようにしました。次に学生は各種の課題を与えられたのです。数学の問題を解く、動物の名前を使ったアナグラムを解く、ブランド名とキャッチコピーを正しく組み合わせる、米国の州の形を見て州名を言い当てるなどなど・・・。
課題を全部終えたら100ドル獲得でき、稼いだお金はいくらであれ自分の口座に、自分の好きなやり方で、入れておけたのです。次に学生は各種の品目を並べたリストを渡され、何が買いたいか想像して下さいと言われました。ここでいう稼いだお金というのが仮想上のものでしたが、この実験では参加者100人につき2人が実際に品物を購入できることになっていました。実験に真剣に取り組んでもらうためこういう設計にしたのです。
購入リストには大学のロゴ入りTシャツ、写真アルバム、コンピューターのマウスなどがあり、最後に学生はこう言われました。実験終了時に架空の口座に「お金」が残っていたら、その金額で宝くじを買う予定で、もし当たったら賞金はその口座の学生のものになります。
その結果、口座が1つだけのグループは、3つのグループに比べて実験終了時の残高が6パーセント多かったのです。実験の第2部で、学生はお金を使った理由の説明を求められました。口座の数についての言及に注目すると、学生は口座が1つなら、お金の出入りを把握しやすく、お金を残しやすかっただろうと考えていました。ここには性格も関係していました。性格テストのつましさの項目でスコアが高かった学生は、複数の口座を与えられてもその影響を受けませんでした。
ただ口座の数を絞るだけで、お金が貯まるわけがありません。成果の出る投資先を選ぶことも重要になります。
総リターンを最大にする口座に預けられれば、いつだってそれが正解だ。口座の数がいくつになろうが問題ではない。どこに預けてもお金であることに変わりはないのだから。
もし、あなたが貯金が苦手なら、口座を分散するのをやめ、貯蓄口座を一つに絞って、分かりやすくすべきです。ただし、条件がよくお金を確実に増やせる口座があるのなら、そういった口座を増やすべきです。
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貯蓄と時間の不思議な関係
貯蓄傾向に影響するもう一つの要因は、時間に対する考え方だ。過去について、現在について、未来について、どれくらい考えるかは人によって全然違う。次の情報を聞いて驚く人はいないだろう。未来についてよく考える人、いわゆる未来展望型の人は、貯蓄性向が高いことが分かっている。
未来について考える人は貯蓄性向が高いのですが、それにも限度があります。別の調査によると、この関係が成り立つのは、本人にある程度金融知識があって貯め方を知っている場合に限られるとのことです。金融知識を学ぶこともお金を増やすためには、重要なことです。
また、老後のために貯蓄が必要だと思っていても、貯金を始めなければ話しになりません。多くの人はスタートのタイミングを間違え、先延ばしをしてしまいます。私も40代半ばまでこの考え方を捨てきれずにいました。
うちも貯金をしなきゃ、と自分に言い聞かせる。でも今でなくていい。時間はまだたっぷりある。それに数年後は家計に多少余裕ができているだろう。
人には将来、自分にどのくらい時間が残っているかを過大評価する傾向があります。同様に、人は今の今までろくに貯金できなかったのに、これからはできると思う傾向があるのです。将来はきっと収入が増えるし、節約するから、もっと貯まるはずと考えてしまう「予算の誤謬」によって、私たちは貯蓄のタイミングを間違えてしまうのです。
私達は先週いくらを使ったかを少なく捉え、来週いくら使うのかも少なく見積もってしまうのです。
また、貯金を先延ばしする人はよく、「先では収入が増えるから、貯めるのも楽になる」という言い訳をしますが、これではいつまで経っても、貯金はスタートできません。
収入が増えれば出費も増えるというルールによって、人は稼いだ分だけお金を使ってしまうのです。私たちは収入が増えさえすれば、貯金ができる人になるわけではなく、「そうなりそうな気がする」だけなのです。
リチャード・セイラーは今ではなく将来的に、収入の一部を貯金に回すという貯蓄プランを生み出しました。プラン開始から4回目の昇給まで、昇給があるごとに給料から貯蓄プランへの拠出を3パーセントずつ上乗せします。先延ばしされるのは貯金する決心ではなく、貯金の痛みなのです。給料からすぐに引かれると損をした気になりますが、引かれるのが将来なら、その頃には今より余裕があると考え、貯金をするのがずっと楽になるからです。
実際、この”明日もっと貯めよう(セーブ・モア・トゥモロー)”プログラムに勧誘された人の加入率は78パーセントに達し、成績も上々でした。給料が4回上がる間に、参加者の貯金額は平均で当初の4倍になっていたのです。このプランは人間の楽観的観測をうまく活用しています。
人間はよくこう考えるからだ。あれもこれも今は無理だけれど将来はきっとできるようになっている。未来のわたしは運動をして、健康的な食事をして、そして賢くお金を使っているだろう。
ただ、将来を抽象的に捉えると、いくら楽観的になっても貯蓄は失敗します。では、どうすればよいのでしょうか?
著者は自分の来年の行動は今年と同じパターンをたどる可能性が高いことを理解すべきだと言います。ある程度現実的になることで、貯蓄への態度を変えられます。貯蓄行動についてのある調査で、参加者に現実的な思考を勧めたところ、目覚ましい成果が現れました。まず参加者は、貯蓄に関して自分の過去の成功と失敗をよく考えるように言われ、次に、向こう2週間に自分がいくら貯金できるか予想することを求められたのです。
驚いたことに、この手順を踏んだグループは、ただ将来のことだけ考えたコントロール・グループに比べて貯金予想額が70パーセント多かったのです。実際の結果はそれ以上でした。2週間後、循環型思考のグループの実際の貯金額はその予想さえ上回り、別グループより80パーセント多かったのです。
いくら貯金できるかを決めるのは、当人の収入と生活費が基本になります。しかし、この調査結果から、現実的に循環型で考えたグループは、現在の収入と過去の貯金の双方を調整した後の比較で、コントロール・グループに比べてずっと多額の貯金に成功したのです。
お金を貯めることは、とても難しいことです。貯金はしようと思ってもなかなかできないものだから、自分からするように仕向ける戦略を取り入れるようにしましょう。一旦預け入れたらおろせない貯蓄口座を活用したり、目的を明確にし、頑丈な豚の貯金箱を使うという方法も効果があります。
以前、私は家族との旅行のために、毎日500円玉貯金をしていましたが、1年後には予定通り貯金が貯まっていました。最近、私は目の前のお金をなかったことにし、貯蓄口座にせっせと入金するようにしています。この日々の習慣によって、以前より私はお金が貯められるようになったのです。
まとめ
お金を貯めることはとても難しいことです。収入が増えれば出費も増えるというルールによって、人は稼いだ分だけお金を使ってしまいます。私たちは収入が増えさえすれば、貯金ができる人になるわけではなく、「そうなりそうな気がする」だけなのです。それを避けるために、自動的かつ強制的にお金を貯める仕組みを取り入れましょう。
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