クラウディア・ハモンドのMIND OVER MONEY 193の心理研究でわかったお金に支配されない13の真実の書評

わたしはお金が一概に悪いものとは思っていない。正反対と言っていいくらいだ。お金が存在するのはそれが有益だからで、それにうまくコントロールできれば、つまりお金を操ることができればお金は人が良いことをする助けになり、もっと広い意味で言うと、良い人生を送る助けになる。(クラウディア・ハモンド)

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寄付することで人は幸せになれる?

お金は不思議な魔力を持っていて、人に良い影響を与えることもあれば、良からぬことをさせてしまうこともあります。そんな魔物のお金と私たちはどうやって付き合っていけばよいのでしょうか?お金に人生をダメにさせないように、お金の正体を早いうちに見抜けるようにしておくべきです。

英国の人気心理学者のクラウディア・ハモンドは193の心理研究をもとに、私たちのお金の悩みを解決してくれました。 彼のMIND OVER MONEY 193の心理研究でわかったお金に支配されない13の真実を読むことで、お金との信頼関係を築けるようになります。 例えば、お金を慈善活動に使えば、ポジティブな力を持ちます。世の中のために貢献することで、私たちは幸せな気持ちになれます。今日はこの寄付について、深く掘り下げてみたいとい思います。

カナダのバンクーバーで行われた心理学者のエリザベス・ダンの実験で、寄付の力が明らかになりました。 実験に参加した人には封筒が1通渡されました。中には5ドル札か20ドル札のどちらかが入っています。お金の他にこれからすべきことが、指示されていました。参加者の半数は、そのお金を自分のために使って下さいと言われ、もう半数は誰か他人のためにプレゼントを買うか、慈善活動に寄付するかを選ぶことを求められました。どちらのグループにもその日の夕方までにお金を使うという制限時間が設けられました。

夕方確認作業を行うと、グループ1は自分のために買ったさまざまな物を報告しました。グループ2は、親戚の子供におもちゃを買ったり、友人にご馳走したり、路上のホームレスに寄付をしました。次に研究者は参加者それぞれに今の気分を自分で評価してもらったのです。

その結果、封筒にいくら入っていたかは、幸福度の水準にまったく影響がありませんでした。具体的に何を買ったかもさほど重要ではなかったのです。重要だったのは、そのお金を誰のために使ったかだったのです。誰か自分以外の人のためにお金を使ったグループは、自分に使ったグループに比べて幸福度がずっと高かったのです。

エリザベス・ダンは、米国の居住者の代表サンプルを使った意識調査も行っています。収入調整後で、幸福度が最も高かったのは、収入のうち他人のために使う部分の比率が最も高いグループでした。ダンが指導する学生に、自分に20ドル使うのと、他人に20ドル使うのと、得られる喜びが大きいのはどちらだと思うか尋ねると、学生たちは自分優先の人がほとんどだろうと予想していました。

当然ながら、世の中の人すべてが与えることで喜びを得るわけではありません。神経科学の分野のある調査で、脳の報酬系の一部で腹側線条体と呼ばれる領域を調べた結果、お金を自分のものにする時にこの領域が活性化する人と、他人に与える時に活性化する人と、二通りいることが分かったのです。

脳スキャンを使って両者の違いを調べると、その違いが脳の活動にはっきりと分かれていたのです。一方は「利他主義者・アルトルイスト」(根本的なところで寛容に向かいやすい人)と呼ばれ、他方は「利己主義者・エゴイスト」(利己的に傾きやすい人)と呼ばれています。

利他的な人(アルトルイスト)も自分の幸せのために、寄付を行なっています。自分の気前の良さが世の中に知れ渡る時に喜びを感じ、より大きな金額を寄付します。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者がインターネット寄付サイトのプロジェクト2500件を分析した結果、平均を上回る額の寄付が1口あると、その後に続く人は平均して10ポンド余計に出すことがわかりました。しかも寄付を呼びかける主催者が魅力的な女性で、平均を上回る額を寄付したのが男性なら、それに続く男性は平均で38ポンド余計に出してしまうのです。

 

寄付や税金をより多く集めたければ、心理学からアプローチすべき!

脳は人が見ている前で寄付する時と、誰も見ていないところでお金を自分のものにする時と、ちょうど同じくらいの満足を感じていた。どちらにしても気分がいい。ただ他人に見られていることで、行動は大きく変わった。

日本で行われた調査によると参加者は少額のお金(約370円)を繰り返し与えられ、それを自分のものにするか、慈善団体に寄付するかをその都度決めることを求められました。慈善団体には日本ユニセフなど78の候補があるので、誰でもいくつかは関心ある団体を見つけることができます。慈善団体の名称が脳スキャン装置の内側にある画面に表示されるように仕掛けがされ、あるグループは目の前の画面で自分が観察されていることを確認できますが、別のグループは観察されていませんでした。

実は、実験運営の都合上、先のグループは手の込んだ芝居に騙されていました。こちらのグループは実験前に椅子が2脚とビデオ装置のある部屋に案内されていましたが、その部屋は実は空で、スキャナー内部の画面に映っている観察者は事前に撮影した役者だったのです。しかし、画面で見る限り、2人の人間が自分の判断を注視しているように見えたのです。表情は読み取れないませんが、体の動きから何らかの感想を抱いていることがわかったのです。

その結果、平均して、参加者が寄付した慈善団体は半数を下回り、自分のものにした金額は半分をやや上回りました。そして、自分は観察されていると思っているグループでは、寄付する確率が平均を大幅に上回ったのです。参加者の脳の活動をチェックすると、寄付は人に満足を与え、幸せにすることがわかりました。そして、その寄付が他人に見られると、人はより慈善的になるのです。

気をつけなければいけないのは、慈善活動を通じて甘い汁を吸っていると見なされれば、名声は一夜にして地に落ちてしまうことです。(汚れたアルトルイズム効果) イエール大学の研究者、ジョージ・ニューマンとデイリアン・ケインは、米国の資金調達活動家(ファンドレイザー)、ダニエル・パロッタの物語をケーススタディにします。パロッタの会社はエイズや乳がん研究を支援する慈善団体のために9年間で3億ドル以上を調達しました。しかし、後にパロッタが資金調達を事業として、そこから利益を得ていたことが明らかになったのです。しかも年収40万ドルという多額の給料を彼に支払っていました。パロッタの名声は一瞬で崩れ去り、会社は整理されてしまったのです。

慈善団体は基本的にボランティアで運営してほしいと世間は思っている。実際には第3セクターは近代経済のかなり大きな比率を占めているが、世間はそんなことは意に介さない。

軍関係者支援の寄付を募る退役軍人が拍手を浴び、通行人から口座引き落とし契約を取りつけて手数料を稼ぐ若い寄付集めが白い目で見られるのはこのためです。一方は無私の行為に見え、他方はがつがつしたセールスのように思われてしまうからです。しっかりとした目的とボランティアによって運営されていると思わせなければ、寄付はうまくいかないのです。

では、寄付と税金の差はどこにあるのでしょうか?あなたが支払う税金も、大切な社会基盤の運営費に当てられています。なぜ、最終的な目的が似ているのに、寄付と税金の受け止め方は異なるのでしょうか?

オレゴン大学の実験で、税金がそれほど嫌われていないことがわかりました。あるグループでは参加者がそれぞれ100ドルを与えられ、地元のフードバンク運営費に充てる税金として一定比率を徴収されました。残りは自分のものにしていいという条件が与えられたのです。別のグループはフードバンクに寄付するかどうか、寄付金額も自分で決められました。寄付が自発的だったグループでは、そうでないグループに比べてお金を払った満足度が10パーセント高かったのです。

しかし、参加者の頭の中をのぞいてみると、予想外の発見がありました。脳スキャンの画像を見ると確かに、フードバンクに自発的に寄付したグループは、施しの温かい感情を感じていましたが(腹側線条体が活性化していた)、税金を払うしか選択肢がなかったグループも同じように温かい感情を感じていたのです。

この結果から、実は私たちは税金を払うのが結構好きなことが明らかになりました。米国といえば税金ならとにかく安くしろと言うお国柄なのに、税金を払うことで満足感を得ていたのです。ただ、この実験では、参加者はお金が何に使われるか具体的に知っていました。被験者は税金がフードバンクの運営費=目的税であることを理解していたのです。人は目的が決まっている税金には、異なった反応を示します。税金を金持ちに課せられた罰則ではなく、成功の象徴として財務省が表彰すれば、税金への嫌悪感を減らせるかもしれないと著者は述べています。税金をたくさん払うほど、勝ち組と評価し、祖国に尽くしている人と見なすのです。

寄付の研究を調査すると様々な条件によって、寄付される金額が変わることがわかります。アルバータ大学では、参加者に実験のためにでっちあげたサイトを見てもらいました。そこでは土砂災害か津波の被害に遭った家族の子供を支援するプランを紹介しています。いくつかは可愛らしい子供の写真を掲載し、その他ではあまり可愛くない子供の写真を使ったのです。写真の子供は災害で両親を失くし、家も失いましたと説明がある場合、子供が可愛くてもそうでなくても寄付額に違いはありませんでした。しかし、状況がそこまで悲惨でない時、参加者は可愛い子供にはあまり感情移入できず、支援をそれほど必要としていないと判断したのです。幼い子供とはいえ、目鼻立ちが整っていれば頭が良くて人気者だろうから自分でなんとかやっていけると考えられたのです。写真写りのぱっとしない子供は逆にそれが強みとなり、多くの寄付を集めたのです。

寄付では置かれている状況や人物、ストリーによって寄付金額が変動します。しかし、そこにはいくつかのパターンがあると言います。慈善団体が寄付でより、資金を集めたければ、心理学の研究に目を向けて、アプローチの仕方を考えるべきです。お金を寄付することで人は幸せになれますが、様々な調査を読み解くことで、寄付を促す設計を作れます。寄付に関しても。人の行動は入り組んでいますが、そこにはいくつかのパターンが存在します。寄付することで幸せな人を増やせるのですから、人を動かすパターンを真剣に見つけ、それを活用した方がよさそうです。闇雲に寄付をするのをやめ、win-winの関係を目指し、寄付によって幸福度をアップさせるべきです。

まとめ

寄付することで、人は満足感を得られ、幸せになれることがわかっています。お金を自分以外の誰かのために使うと幸福度が高まります。寄付する目的や対象、他者に見られているか、見られていないかによって、人の行動は変わります。寄付がwin-winを作り出し、人を幸せにするなら、慈善団体も成功する寄付のパターンを見つけるべきです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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