野本響子氏の日本人は「やめる練習」がたりてないの書評

やめることができる社会では、始めることも気軽だ。チャレンジするのはいいことだ、と思っている人が多いのだと思う。(野本響子)

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日本の教育システムの問題点とは?

以前、シンガポールのインターナショナルスクールの見学をしたことがありますが、そのプログラクの多様性に驚きました。子供に様々な体験をさせながら、子供の長所を探す教育を行っていたのです。小さなときから自分の選択を重視する教育は自由度があり、日本とはずいぶん違うなという印象を持ちました。

今回、野本響子氏の日本人は「やめる練習」がたりてない を読んでいて、シンガポールのその学校のことを思い出しました。東南アジアの教育プログラムは多様性と選択が重視されています。嫌なことは我慢せずに、やめることが当たり前で、これが新しいことにチャレンジするマインドを養っていたのです。若い世代だけでなく、ミドル以降でも転職や起業に躊躇せず、やりたいことをやる文化がマレーシア人の幸福度を高めています。

野本氏はマレーシアで子供の学校を選ぶ際に、日本人がいない場所を選びます。あえて日本人と交わらないことで、現地の学校のよさを偏見なしに体験することができ、子供の居場所を見つけることができました。現地の先生は日本人の教師とは異なり、長所を引き出す教育を実践していたのです。

学校の先生たちは、どんな子でも褒めるところはないかを一生懸命探し、褒めるポイントがあると見るやいなや、すかさず褒めるのです。また 「ハッピーじゃなければ居場所を変える」という考え方が当たり前で、先生も生徒もすぐにやめ、別の選択肢を探し、すぐに行動に移します。転校も転職も起業も当たり前に行われるマレーシアの方がはるかに自由で生きやすいことに著者の野本氏は気づきます。日本という閉じた世界にいると我慢することが常識になりますが、海外では我慢は逆に非常識なことなのです。

私も年に何回か海外に行きますが、日本に帰国するたびに寂しい気持ちになります。日本社会には笑顔が少なく、日本人のエネルギー値もどんどん下がっている気がします。閉塞社会の日本では我慢が当たり前になり、変化することが否定的にとらえられています。やめること、変化することを子供の頃から教える方が、人生の自由度が高まることは間違いありません。今の日本人に必要なことは、やめることを良しとし、やめる練習を子供の頃から始めることなのかもしれません。

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やめる練習とは決断力を高めること

自分でやるかやらないかを決めて、挑戦して、結果を引き受ける。その訓練を何度もすると、挑戦することが怖くなくなる。挑戦に慣れてくるうえに、自分の適性がわかってくる。親が決めるのではなく、子供自身が決めるのだから、子供も納得できる。自分の意見をはっきり言うことが求められるので、自分自身の個性と嫌でも向き合わざるを得ない。

マレーシアのインターナショナルスクールでは、子供の頃から絶えず選択することを義務付けられます。旅行やイベントに参加する、しない?も子供が判断しなければなりません。早いうちから自分の意見を言うことで、自分との対話が当たり前になります。ここでは「みんなと一緒でいいです」という答えはないのです。

授業も多岐にわたり、小学生から英語・中国語・マレー語を学び、歴史や地理、ITやプログラミングも選択できます。体験の数が多いというのは、それだけで価値があります。多くの体験の中から、先生が子供の長所を見出し、褒めてくれるのですから、子供も自分の適性に幼い時から気づけます。選択肢がなく、褒められることが少ない日本の学校教育では、自分の適性を見つけづらく、 子供のやる気や成長を阻害します。

マレーシアでは多くの体験を通じて、やりたいことを見つけられるようになります。また、やめてもよいという文化が方向転換のハードルを下げています。マレーシアのインターナショナルスクールでは、失敗は良いことだと評価されているので、恐怖感を感じずに、多くのことにチャレンジができます。実際、幼いころから、様々なことにチャレンジすることで、失敗を怖がらずに積極的に行動できるようになります。やってみて違うと思えば、別のルートをさがせばよいというマインドが、人生の幅を広げてくれるのです。

頭でいくら考えたところで、自分が本当に好きか嫌いかは、大人だって理性だけではわからないものだと私は自分の経験から学んできた。特に職業の持つ嫌な面や、環境に耐えられるのかどうかは、想像力で補うのが難しい。それに辞めてみないと、新しいことを始めるのは難しい。一方で自分の仕事に納得して長く続ける人々ももちろんいる。

私は50歳の時に会社をやめ、それ以来自分のやりたいことをやっていますが、失敗が自分の可能性を広げてくれることに気づけました。マレーシアでは仕事や学校が嫌ならすぐやめる人が多いですが、社会がそれを受け入れることで、新しいことにチャレンジする人が増えています。子供のころからやめること、チャレンジすることをセットで学ぶマレーシアの方が、未来を予測しづらい時代には、日本の教育システムより、はるかにフィットしている気がします。課題を発見し、課題を解決する能力を養うために、何が必要なのかを本書から学べました。

まとめ

仕事もやめずに我慢するという日本の常識や、システムが実は、日本の起業の妨げになっているのかもしれません。子供の頃から自分の意志で選択し、やめることを学ぶことで、自分の適性がわかり、可能性を広げられます。向き不向きを判断し、やめる練習を重ねるうちに、自分の決断する力を高めることがでいきるのです。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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