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ビジョナリーカンパニー【特別編】
著者:ジェームズ・C・コリンズ
出版社:日経BP
本書の要約
「ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則」でジェームズ・C・コリンズが分析した「偉大な存在となった企業の条件」は、営利企業だけではなく、さまざまな社会組織(Social Sectors)に適用可能です。同じバスに乗る人を見極め、その後に「何をすべきか」を決めるようにしましょう。
偉大な社会起業家になるために必要なこととは?
社会セクターに「企業の言葉」を押しつける単純な方法を拒否し、企業セクターも社会セクターも偉大な組織の言葉を取り入れるべきなのだ。(ジェームズ・C・コリンズ)
ビジョナリー・カンパニーを作るためには、価値観が合う人を最初に見つける必要があります。優秀な経営者は何をするかを決める前に、誰とやるかを決めていたのです。まず、同じバスに乗る人を決めるというビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則のルールは偉大な企業を作る時だけでなく、偉大な社会組織にも使えます。
1976年、25歳のロジャー・ブリッグスは、学校をもっと良くすることができると考えました。ただの現場の教師だったブリッグスは、同僚の教師と協力して学校を良くしていくことを決めます。理科の主任になった後、全体的な状況が悪いなかで、自分の担当する小さな部門を偉大な部門にしようと決意したのです。
教師は所詮雇われなのだから、良好であればそれでいいという見方を拒否した。教育制度全体を変える力はわたしにはないが、14人の理科部門を変えることならできる。 (ロジャー・ブリッグス)
ブリッグスはまず、良好な組織を偉大な組織に飛躍させた指導者の全員に共通する方法をとりました。最初に、適切な人をバスに乗せたのです。教師が勤務をはじめてからの最初の3年間を、長期にわたる面接の期間だと考えるようにし、「めったにいないほど優れた教師であることを示さないかぎり、終身の地位は得られない」を原則にしたのです。ブリックスが担当した理科部門では、規律の文化が強まり、凡庸な教師は自らやめていったのです。理科部門というミニバスは、新人を採用するごとに、本採用の決定を下すごとに変わっていき、規律の文化を確立していったのです。
ロジャー・ブリッグスの物語は3つの点を明らかにしました。
1、たいした権限をもっていなくても、全体的な状況が悪いなかで、小さな部門を偉大な部門に変えていくことができます。公立学校制度という制約のなかですら、理科部門というミニバスで良好な組織から偉大な組織への飛躍を達成できたのですから、ほとんどどこでも同様の飛躍が可能なはずです。
2、まず焦点をあてるのは「最初に人を選ぶ」原則です。使える手段を最大限に使って適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、適切な人を適切な席につけるようにしましょう。偉大な組織への飛躍は何よりもまず、適切な人を主要な席につけることからはじまり、偉大な組織になれば適切な人が集まってくるのではありません。
3、ブリッグスはこれらの点を達成するために、初期評価の仕組みを使い、この仕組みを厳格に適用しました。 社会セクターでは、不適切な人をバスから降ろすのが企業セクターよりむずかしい場合があるため、採用の仕組みよりも初期評価の仕組みの方が重要です。ある人物について確実なことが分かるのは、その人とともに働くことです。
重要なのは報酬をどう支払うか(あるいは、いくら支払うか)ではなく、だれに支払うのか(だれがバスに乗っているのか)なのである。調査で比較対象にした企業、つまり偉大な組織に飛躍できなかった企業では、熱意や規律のない人を「動機づける」ための奨励給を重視していた。これに対して偉大な企業では、適切な人、つまり、生産的にはたらく性格をもともともっている人、熱意や動機がもともとある人、一日一日に最善をつくさなければ満足できず、それが生まれついての性格の一部である人を採用し、維持することを重視していた。
社会セクターでは巨額の奨励給を支払うことはできません。彼らがやるべきことは、ビジョナリーカンパニー2のルールであった「バスに乗る人を選ぶ」ことなのです。人材や資金のリソースが不足しているからこそ、人を選ぶことに注力すべきです。
偉大な組織への飛躍の法則の4つのステップ
良好な組織から偉大な組織への飛躍の法則には、以下の4つのステップを踏むことです。
【第1段階】 規律ある人材
◯第5水準のリーダーシップ
第5水準の指導者は野心を何よりも組織と活動に向けており、自分自身には向けていません。そして、この野心を達成するために必要なことは何でも行うという強烈な意思をもっています。彼らは個人としての謙虚さと職業人としての意思の強さという矛盾した性格をあわせ持っています。
◯最初に人を選び、その後に目標を選ぶ
偉大な組織を築いた指導者は適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、適切な人を主要な席につけ、その後に、バスの行き先を決めています。「だれを選ぶか」をまず決めて、その後に「何をすべきか」を決めるようにしましょう。
【第2段階】 規律ある考え
◯厳しい現実を直視する
どれほどの困難にぶつかっても、最後にはかならず勝つという確信を失わないことです。それと同時に、それがどんなものであれ、自分がおかれている現実のなかでもっとも厳しい事実を直視する規律をもつようにすべきです。
◯針鼠の概念
針鼠の概念は3つの円の重なる部分に関する理解を反映した実践的なモデルです。3つの円は、世界一になれる部分、情熱をもって取り組めるもの、最高の経済的原動力、または最高の資源の原動力になるものです。
【第3段階】 規律ある行動
◯規律の文化規律
ある考えができ、規律ある行動をとる規律ある人材が各人の責任の範囲内で自由に行動することが、偉大な組織を築く規律ある文化のカギとなります。規律ある文化では、人びとは仕事を与えられるのではなく、責任を与えられます。
◯弾み車
偉大な組織への飛躍は、巨大で重い弾み車をひとつの方向に押しつづけ、回転数を増やし勢いをつけていき、やがて突破の段階に入ってもさらに押しつづけるようなものです。参考 弾み車の法則の記事
【第4段階】 偉大さが永続する組織をつくる
◯時を告げるのではなく、時計をつくる
ほんとうに偉大な組織は、何世代にもわたる指導者のもとで繁栄を続けていくのであり、ひとりの偉大な指導者、ひとつの偉大なアイデアやプログラムを中心に作られる組織とはまったく違っています。偉大な組織の指導者は進歩を促す仕組みを作っていて、カリスマ的な個性に頼って物事を進めようとはしません。逆に、カリスマとは正反対の性格である場合が多いと著者は指摘します。
◯基本理念を維持し、進歩を促す
永続する偉大な組織は、基本的な部分で二面性をもっています。一方では、時代を超える基本的価値観と基本的な存在理由をもち、この基本理念は長期にわたって変わりません。他方では、変化と進歩をつねに求め、創造性を発揮したいという強い欲求がときにBHAG(Big Hairy Audacious Goals・組織の命運を賭けた大胆な目標)の形であらわれていきます。偉大な組織は、基本的価値観(組織にとって不変の主義)と戦略や慣行(世界の変化に適応して絶えず変えていくもの)をはっきりと区別しているのです。
この4つのステップを実践し、諦めずに行動を続けることで、企業や社会組織は急に飛躍すると言います。同じバスに乗ったメンバーとともに、弾み車を回し続けることで、ビジョナリーな組織を創れるようになるのです。
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