ブルーポンド戦略で起業を成功させる方法。三戸政和氏の営業はいらないの書評


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営業はいらない
著者:三戸政和
出版社:SBクリエイティブ

本書の要約

テクノロジーが発達することで、やがて営業マンは不要になります。営業マンは自分の未来を真剣に考えるべきです。営業マンの選択肢の一つとして、起業がよいと著者は言います。ブルーポンド戦略を採用することで、営業マンは勝ち組経営者になれる可能性があるのです。

B2Bセールスマンの未来は暗い?

近い将来、営業(という行為)がなくなる可能性が高いのであれば、営業マンは次なる道を模索し、準備しておいたほうが得策なのではないかという提案をしたいと思っている。

三戸政和氏の営業はいらない書評を続けます。日本より三年先を進んでいると言われるアメリカでは、テクノロジーが営業という仕事を減らしています。フォレスター・リサーチ社は2015年の段階ですでに「B2Bセールスマンの死」と題した報告書を出しています。その報告書では、「アメリカのBtoB営業担当者450万人のうち、100万人が5年間で仕事を失うだろう」という予測が発表されています。

BtoB営業マンの中でも特に減少が著しいのは、受注を中心とした営業職で、160万人から100万人へ33%が減少するそうです。また、商品説明を行う営業職は25%、顧客と個人的な関係を構築して必要な商品をナビゲートする営業職は15%が減少するという予測が立てられています。

この報告書のアンケートによると、購買担当者の約75%が「営業担当者から買うより、Webサイトで買うほうが便利」と回答しており、「すでに買うものが決まっているときはネットで購入したい」という回答が93%を占めました。これはBtoBの営業活動においても、その多くがインターネットを通しての購買に代替されていくであろうことを示唆しています。実際、日本の工具通販のモノタロウの業績を見れば、BtoB営業の未来が明るくないことが理解できます。

唯一レポートでは、コンサルタント的営業マンは、逆に10%程度増加すると予測されています。コンサルタント的営業マンとは、販売商品を深く理解した上で顧客のニーズに沿ってわかりやすく説明し、ときには顧客の社内承認プロセスや予算作成までをも手伝いながら購買へと導く、アドバイザーのような営業マンのことを言います。著者はテクノロジーが進化する中で、このコンサルタント的営業マンすらも消滅していくと指摘します。

「営業がなくなる」前提で次のオプションを考えながらビジネスキャリアを歩む人と、「営業はなくならない」と断じて今の立場を維持する人では、どちらが有利なビジネスキャリアを歩むことができるだろうか。私は何事も選択肢は多いほうが有利だと考えている。

では、衰退する営業マンは今度どうすればよいのでしょうか?著者は営業がなくなる前提で、未来を考えるべきだと述べています。そして、営業マンこそが経営者に向いていて、小さなビジネスでもよいので、起業すべきだと言います

営業マンこそ起業しよう!

営業ができる人はなんでもできる。でもそれがゆえに、その能力を惰性で浪費するのではなく、自分の人生のために最大限活用してほしいというのが本音である。

ピーター・ドラッカーは、トップマネジメントに必要な4つの資質をあげています。
・考える人
・行動する人
・人間的な人
・表に立つ人
この4つの資質を兼ね備えているのが、営業マンであることは間違いありません。

もし、あなたが起業するのなら、「ブルーポンド戦略」を採用すべきです。オーシャンではなく、ポンド=池を狙って起業することで、成功確率を高められます。ブルーオーシャン戦略を学びながら、競合のいない小さな池を生み出しましょう。

ブルー・オーシャンで先行者利益を取った後も、継続して模倣されづらい事業とは以下の5つです。
①既存事業(商品)との対比が大きいとき、飛び抜けた1社がすでに飛び抜けた成功を収めている場合。
たとえば理髪店のQBハウスは、シャンプー台なしでコストを抑え、カット時間を短くすることで、顧客への飛び抜けた価値提供として、低単価(かつ、すき間時間で散髪ができるという他の追随を許さぬサービス提供をしています。

②市場での独占の達成、市場を独占あるいは寡占の地位に立っている場合。
他の参入が防げるため、事業模倣されるリスクが低い。携帯電話の3社寡占など。

③規模の経済が働いているとき
事業規模が大きくなれば、資材の大量購入などによりコスト削減ができるため、競争上優位になりやすく、他社が参入しづらい。一般的には資材購入が多く、設備投資が大きい自動車産業などがこれにあたります。

④ネットワーク外部性が働いているとき
ネットワーク外部性とは、利用者が増えるほど利便性が上がる現象のことを指します。たとえばSNSの場合、登録者が少ないと使っても楽しくないが、登録者が増えれば多くの友人とつながることができ、機能は充実、その価値が上がります。利用者の増加→価値の増加→さらなる利用者の増加と拡大すれば、競合サービスは市場に入りづらくなります。

⑤高い顧客ロイヤリティが発生しているとき
顧客ロイヤリティとは、企業の商品やサービスに対する顧客の信頼度や愛着度を示します。顧客がその製品やサービスに熱狂している場合、スペックや価格といった部分でほかの商品と比較されることがなくなります。理性ではなく顧客の感情やハートをつかんでいれば、他社はそれを模倣できません。

ブルーポンド戦略とは?

ブルーポンド戦略とは、未開の大海原(オーシャン)を探し出すのではなく、狭いながらも自分だけの価値ある池(ポンド)を見つける、もしくは創り出す戦略なのだ。営業マンが経営者となり「他社の模倣」を避け、「戦わずして勝ちにいく」なら、ブルー・オーシャン戦略の先にある、このブルーポンド戦略が有効だ。

ブルーポンド戦略とは、②と⑤の状態の達成を同時に目指すものです。①の飛び抜けた事業や、③の規模の経済、④のネットワーク外部性は個人でなんとかなるレベルではありません。

個人は②の市場の独占(寡占)と、⑤高い顧客ロイヤリティの達成を同時に狙う戦略を採用すべきです。たとえば②の「市場での独占の達成」を考えたとき、日本の市場全体で1位を狙うのは困難ですが、地域を限定すればその可能性が見えてきます。

狙う市場が、大手には参入メリットがないほどポンドの小さな市場(池)であるなら、大手との無理な競争を避けることができます。そして、誰も気づかない問に独占状態(地域のナンバーワンの状態)を築くことができれば、他の競合も参入が難しくなります。②の状態になることができれば、他社から模倣される可能性を著しく下げることができるのです。

⑤の「高い顧客ロイヤリティが発生しているとき」とは、簡単に言えば、顧客に、自社の製品・サービスのコアなファンになってもらうことです。顧客ロイヤリティを高めることができたら、その顧客つまりあなたの会社の製品・サービスのファンになっている人たちは、もはや「ほかの似た何か」では満足できません。

「ブルーポンド戦略二つのミッション」は、極めてシンプルです。
・第1のミッション規模の小さい市場で独占を達成する
・第2のミッション身近な範囲で高い顧客ロイヤリティを生み出す

ブルーポンド戦略において重要なのは、この2つの目標を同時に達成することによって、強固な参入障壁を築き上げることです。1つを達成するだけでも他社との競争をかなり避けられますが、2つ揃えば強者になれるのです。

テスラのようなエクスペリエンス戦略を採っている企業は、顧客から熱烈な支持を得られます。また、起業家本人が高い熱量を持って取り組むことのできる事業領域でビジネスをすれば、熱量が周りに伝わります。まずは、最初にファンを作り、熱量が伝染できる仕組みを作れば、ソーシャルメディアやインターネット上のファン・コミュニティを通じて、あなたのビジネスは拡散していきます。

自分が得意な分野のビジネスをまずはエリアでスタートし、ファンを増やす努力を続けましょう。このブルーポンド戦略は、地元にネットワークを持つパッションのある営業マンに向いているのです。

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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