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「生存格差」時代を勝ち抜く 世界最先端の健康戦略
著者:奥真也
出版社:KADOKAWA
本書の要約
長寿社会は「リビングデッド」という不幸な人を増やす可能性があります。心が満たされないまま何十年も生きる不安に耐えられないリビングデッド状態の人にとっては、歓迎せざる「死ねない時代」になってしまうかもしれません。それを避けるたけるためには、様々なコミュニティとのつながりを強化すべきです。
長寿社会では、孤立が新たな課題に!
社会的な動物である私たち人間は、「孤独」には耐えられても、「社会的つながりからの孤立」には耐えられません。(奥真也)
奥真也氏の「生存格差」時代を勝ち抜く 世界最先端の健康戦略の書評を続けます。人生100年時代を迎え、孤独な高齢者が増加しています。2015年に実施された国勢調査では、ひとり暮らしをしている65歳以上の高齢者の男性が約192万人、女性が約400万人にのぼっています。
高齢者のうち「独居老人」の割合は男性が13.3%で約8人にひとり、女性21.1%で約5人にひとりとなっています。この数字は今後も増え続けることが予想され、国立社会保障・人口問題研究所が2018年にまとめた『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』によれば、2040年には、男性は高齢者のうち5人にひとり(20.8%)、女性は4人にひとり(24.5%)に増加すると予測されています。
イギリスでは、2018年に世界初となる「孤独担当大臣」というポストが誕生しました。(孤独担当大臣の参考記事はこちらから)長生きできる人がいる一方で、孤独に悩む高齢者が先進国の課題になっています。コミュニティに所属できずに、世の中との接点がない老人が増えています。医療が進化し、寿命が伸びる中、「社会的な孤立」が新たな課題になっています。
高齢者の「社会的孤立」には、心疾患、脳血管障害、がん、認知症などの病気の発生率を増加させるリスクがあることも明らかになっています。アメリカのブリガムヤング大学のジュリアン・ホルト・ランスタッド教授らは、社会的なつながりの少なさは、喫煙や飲酒、運動不足などに匹敵するほど甚大な短命リスクだと指摘します。
社会的な孤立が健康に悪影響を及ぼします。社会的孤立とは精神的な側面ばかりではなく、身体的な健康リスクにも直結する問題として、捉える必要があるのです。加齢によって、身体機能の低下や健康障害を起こしやすくなっている状態=フレイル(脆弱)も、そのリスクのひとつに挙げられます。
フレイルには以下の3つがあります。
■身体的フレイル・・・体全体の機能が低下する。
■精神・心理的フレイル・・・意欲や認知機能が低下する。
■社会的フレイル・・・社会活動への参加や社会との交流に対する脆弱、まさに社会的孤立状態になることを指します。
社会的フレイルは、身体的フレイル、精神・心理的フレイルと大きく関連していて、社会との断絶が心身の健康にマイナス影響を及ぼすとされています。
リビングデッドにならないために、どうすればよいのか?
死なない時代は、死ねない時代でもあります。目標や生きがいを明確に持ち、人生の時間の飛躍的な増加を「素晴らしいこと、うれしいこと」と前向きに捉えられる人にとって、不死時代は歓迎すべき「死なない時代」となるでしょう。しかし、心が満たされないまま何十年も生きる不安に耐えられないリビングデッド状態の人にとっては、歓迎せざる「死ねない時代」になってしまうかもしれません。死にたいのに死ねないーこれは不死時代ならばこその甚大な苦しみになるのではないでしょうか。
長寿が当たり前になる中で、人生の目標を見失い、ネガティブな状態に陥いる人が増えています。せっかく手にした健康を宝の持ち腐れにしてしまうのでは意味がありません。健康面に問題がなく、本来ならば充実した人生を送れるはずなのに、自己実現の術を見失った状態のまま延々と生き続ける「リビングデッド」を避けなければいけません。
私たちは孤立を防ぐために、人との接点、地域社会との接点を絶やさないようにすべきです。ビジネスパーソンは退職後、社会的な居場所だった会社に行けないことで、生きる力を失いがちです。定年退職後、心にぽっかりと穴があいて「うつ」になる人も増えていると言います。
人生120年の不死時代においては定年退職は老後の始まりではなく、人生の折り返しのタイミング。そこから先にも、まだ何十年もの長い人生が待っています。社会との接点や世の中とのつながりは、そうした長い人生を送る上で、決して失ってはならない非常に重要な「ライフライン」なのです。
退職後の孤立を防ぐためには、若いうちから興味のあるものを見つけるようにすべきです。地域ボランティアや趣味のサークルなどに参加し、社会との接点を持つことも大事です。仕事とは違う新しい仲間やコミュニティとの関わりを通じて世の中との接点を生み出すようにしましょう。会社や自宅以外に自分の居場所ができることで社会への帰属意識を取り戻し、社会的孤立にならないように自ら動くことが大事です。
私はできるだけ長く働こうと思い、7年前の51歳の時に広告会社を退職し、ベンチャーの社外取締役やアドバイザーとしての活動をスタートしました。広告会社とは異なる多様なチームに参加することで、自分の価値を再発見できました。その価値を発信し、利他的に行動することで、何歳になっても働けることに気付けました。今後も様々なコミュニティに属し、健康長寿を目指します。
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