DNAスキャンとバイオテクノロジーが寿命を伸ばしてくれる?LIFE SPAN(ライフスパン)―老いなき世界の書評

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LIFE SPAN(ライフスパン)―老いなき世界
著者:デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラント
出版社:東洋経済新報社

本書の要約

自分のデータをトラッキングし、バイオテクノロジーを活用することで、私たちの体と心の老化を防げます。様々なテクノロジーが組み合わさることで、私たちの寿命を伸ばすことが可能になるのです。私たちが長く生きれば生きるほど、まだ予見できない医療の画期的な進歩の恩恵を受ける確率は高まります。

DNAのスキャンが変える治療の未来

「まず症状ありき」という欠陥あるアプローチはまもなく変わろうとしている。私たちは症状の先回りをするのだ。ずっとずっと先まで。さらには、「なんとなく調子が悪い」の先も行く。明確な症状として現われる前に、遺伝子を調べることで判明する病気はたくさんある。きわめて近い将来には、事が起きる前に個人のDNAをスキャンしておくことが、歯を磨くのと同じくらい当たり前のものになるだろう。

デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラントLIFE SPAN(ライフスパン)―老いなき世界書評を続けます。著者たちは老化は病気の一種でしかなく、やがて治療が可能になると言います。DNAをスキャンし、自分の遺伝子を明らかにすることで、病気になる前に対処することが可能になります。

私たちの体はインテリジェント・テクノロジーが搭載された車のダッシュボードのようになり、健康情報を収集しまあす。走行速度はいうに及ぼず、あとどれくらい走ったら給油が必要かも教えてくれます。しかもその数値は、道路の状況や運転の仕方に応じて刻々と修正されていくのです。

1980年代の車にはセンサーがほとんど付いていませんでしたが、2017年の時点では、新車1台につきセンサーが100個近く搭載されています。センサーを大量に搭載することで、車を安全に運転できるようになりましたが、治療もやがて車のように進化していきます。パーソナル・バイオセンサーが私たちの健康と未来を変えてしまうのです。

アップルはAppleWatchによって、バイオテクノロジー企業の道を歩み始めています。センサー付きのウォッチやヘルスアプリを使うことで、私たちは心拍数を記録したり睡眠サイクルを測定できるようになりました。食事のログや運動量を記録することで、食事やエクササイズのアドバイスをもらえるようになりました。

健康意識の高い人やアスリートのあいだでは、センサーを24時間装着する人が増えてきている。食事、ストレス、トレーニング、競技への参加などに応じて、バイタルサイン(呼吸、脈拍、体温など)や体内の主要な化学物質がどう変動するかをモニターするためだ。

最近では血糖値や血液細胞のモニタリングも非常に簡単になり、測定時の痛みもますます少なくなっています。体に負荷をかけないモニタリング装置が、より手頃な価格で手に入るようになり、その正確さも高まってきています。

センサーを皮膚に貼るだけで、血糖値を絶えず測定して、結果をスマートフォンやスマートウォッチに表示してくれます。ロンダ・パトリックは、寿命研究から転じて健康管理のエキスパートになった人物ですが、彼女は血糖値センサーを絶えず身につけて、何を食べると血糖値が急上昇するかを調べています。これまで明らかになったところによると、少なくともパトリックにとっては白米がだめで、ジャガイモはそうひどくはないとのことです。彼女にとってリスクが高い食べ物がブドウであることもわかりました。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究グループは、数千種類のバイオマーカーを読むことができるスキャナーの開発を進めています。シンシナティ大学はアメリカ軍と協力し、汗を通して様々なデータ(病気や食事の変化、怪我やストレスの有無など)を検知するセンサーをつくろうとしています。いくつかの会社では、手持ち式の呼気分析器で、がん、感染症、および炎症性疾患の診断をすることを目指しています。センサー付きの衣服でバイオマーカーを追跡する技術に取り組んでいる企業もあります。

著者はセンサーが埋め込まれたリングを指に嵌めて、心拍数や体温、体の動きをモニターしています。毎朝目覚めると、よく眠れたかどうか、どれくらい夢を見たか、日中はどれくらい冴えた頭でいられるかをこのリングが教えてくれるようになりました。

いずれは、こうしたモニタリング装置なしに暮らしたいと思う人がほとんどいなくなるんじやないだろうか。スマートフォンが手放せないように、センサーなしでは家を出たくなくなる。次世代のセンサーは無害な皮膚パッチ型になり、やがては皮膚下に埋め込むインプラント型が主流になるだろう。未来のセンサーはただたんに血糖値を測定するだけではない。基本的なバイタルサインや血中酸素量、ビタミンのバランス、さらには何千種類もの化学物質やホルモンも監視・追跡するようになる。日々の活動の様子や声の調子からも色々なデータが読み取れるようになれば、体内で起きつつある変化の兆候を察知する手段となる。

センサーから情報が取れるようになると、本人や主治医が症状に気づく何年も前に診断が可能になるはずです。バイオテクノロジーがーつ前進するたびに、病になるリスクを下げられます。私たちは史上初めて、健康に関する日々の決断をデータに基づいて下せるようになるのです。

データのトラッキングとバイオテクノロジーが変える未来

バイオモニターが生活習慣についての決断を助けてくれますが、食事の情報が最も重要だと著者は言います。朝食時の血糖値が高いことがわかれば、朝のコーヒーには砂糖を入れないという選択ができます。昼食時に鉄分の値が低ければ、ホウレンソウサラダを頼んで補うことができます。旅先でビタミンやミネラルが足りなくなったら、どこで何を手に入れたらいいかもパーソナルAIアシスタントが知らせてくれます。やがて、必要な食事のできる一番近くのレストランをガイドしてくれるようになるはずです。

私は全ての食事と運動量をアプリに記録していますが、不足している栄養源、摂取カロリー、消費カロリーがわかるようになったので、食事の質と量をコントロールできるようになりました。肉を食べる量を減らしたり、足りないビタミンや鉄をサプリで補給することが新たな習慣になったのです。

バイオモニターと分析を利用して、運動の量と質もコントロールできます。ストレスレベルを把握できたり、飲んだ液体や吸った空気が、体内の化学反応や機能をどう変えるかまで理解できるようになります。血液のバイオマーカーをモニターして、数値が適正な範囲を下回っていた場合、問題を緩和するためにこの種の装置からアドバイスをもらうことも増えていきます。たとえば、歩け、瞑想せよ、緑茶を飲め、エアコンのフィルターを交換せよ、と指示されるようになります。この種のテクノロジーの力を借りれば、自分の体や生活習慣についてより良い決断を下せるようになります。

現在、いくつかの企業では、数十万件の血液検査データを解析し、そのデータと顧客のゲノムを比較することで、何を食べるべきか、自分の体を本当の意味で最適な状態にするにはどうすればいいのかをフィードバックしています。

体が求める食物や、耐性のある食物、もしくは耐性のない食物が何かには、当然ながら遺伝子の特徴が大きく影響しています。しかし、その遺伝子の特徴は1人1人違っています。自分をトラッキングすることで、間違った食事の選択を減らせます。

バイオトラッキングは、急性の重大な病による死を防いでくれます。2018年、インサイドトラッカー社の研究チームと著者は、バイオトラッキングとコンピュータによる食事のアドバイスを組み合わせることで、主流の糖尿病薬と同じくらい血糖値を下げられることを発見しました。しかも血糖値だけでなく、それ以外のバイオマーカーを最適な状態にする効果もあります。

以前なら、自分の心臓がうまく働いていない気がした場合(そうでない場合でも構わないのだが)、医師のもとを訪ねて心電図をとってもらうしかありませんでした。今や、どこにいようと30秒あれば、センサー付きの時計を身につけていれば、自分で正確な心電図を記録することができます。

バイオトラッキングからわかるのは、たんに心拍数が上がったとか、ビタミン濃度が下がったとか、コルチゾール値が急上昇したといったことだけではない。私たちの体が攻撃を受けているときもそれを教えてくれる。それこそが、地球上のあらゆる住民の命を救ってくれるかもしれないのだ。

今や、私たちの輸送ネットワークは到達範囲とスピードを拡大し続けています。世界を旅する人の数も、その行き先も移動速度も、すでに先祖たちには想像もつかなかったレベルに達しました。今回の新型コロナウイルスも短期間で世界に広まりましたが、これはウイルスが、かつてないほどの速さで移動しているからです。

今後、大量の「バイオクラウド」データと、超高速のDNA解析を組み合わせれば、病原体が主要輸送ルートを通って都市から都市へと広がっていくのを検知できるようになります。それがわかったら、ウイルスの先回りをして緊急移動制限措置を発動したり、医療資源を配備したりすれば、ウイルスの蔓延が防げる可能性が高まります。

病原体との闘いでは1分1秒が物をいう。何の手も講じないままに1分が過ぎれば、そのツケは人の命となって跳ね返ってくる。 データを共有することで、多くの命が助かる可能性があるのです。

データの共有が当たり前になれば、多くの人の命を救えるようになります。あと何年かすれば、ウイルスの蔓延を防げるようになるかもしれません。ウイルスに感染しやすい人が事前にわかれば、対策も打ちやすくなります。

自分のデータをトラッキングし、バイオテクノロジーを活用することで、私たちの体と心の老化を防げます。様々なテクノロジーが組み合わさることで、私たちの寿命を伸ばすことが可能になるのです。私たちが長く生きれば生きるほど、まだ予見できない医療の画期的な進歩の恩恵を受ける確率は高まります。新たな発見がーつなされるたびに、より長く生きられるようになるのです。

ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大の5冊目のiPhoneアプリ習慣術がKindle Unlimitedで読み放題です!ぜひ、ご一読ください。

 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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