生命科学的思考で会社を経営しよう!

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ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考
著者:高橋祥子
出版社:NewsPicksパブリッシング

本書の要約

短期的な利益だけを追いかけていれば、新しい価値を生み出す可能性を潰すことになり、結果として環境が変化した際、企業全体が崩壊する可能性も高まります。生命の多様性と失敗許容主義を経営に取り入れることで、企業は環境変化に適応できるようになり、寿命を伸ばせるようになるのです。

組織の多様性を考える際に意識すべきこと

企業経営における多様性も、生命における多様性も、環境変化に適応してしなやかに強く生き抜くレジリエンスを作る点で共通しています。(高橋祥子)

高橋祥子氏のビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考書評を続けます。生命科学の研究者であり、遺伝子ビジネスの会社であるジーンクエストの経営者としても活躍する著者は、企業経営と生命の多様性にはレジリエンスを作るという共通点があると述べています。

メンバーの多様性が高い企業は、そうでない企業と比べて、業種平均よりも優れた業績を達成する確率が高い傾向にあるとマッキンゼー・アンド・カンパニーが明らかにしています。多様性がある組織は確かに強いのですが、その前提には注意を払う必要があります。

多様性について考えるときには、「何が違うか」という差異だけが注目されがちですが、差異に注目すると同時に「何が同じか」という点にも注目しないと、多様性の本質を見失うことになります。多様性を考える上で「同質性」を経営者は意識すべきです。

 企業における多様性も、多様性を作ることそのものを目的にするのではなく、ある目的を達成したいと考える「同質性」を持つものをまず集め、多少の環境変化にも対応できるための手段として多様性を確保する、というのが本来の意味での多様性のあり方です。

「ビジョナリーカンパニー2」で指摘されているように、同じバスに乗るメンバーを集め、そこに多様性を求めるようにするのです。企業理念や企業文化に賛同した人たちとともに社会的価値を生み出していくことが採用にとって重要なことで、その目的に賛同しているという「同質性」を前提として、年齢・性別・国籍・人種などに関係なく、異なる才能や背景を持つ人たちを集めるようにしましょう。私の顧問先でもこの考えに基づき採用を行っている企業が成長を続けています。

多様性を確保することだけを目的にして差異にだけ注目してしまうと、ビジョンの実現が遠ざかります。 イリノイ大学のメタアナリシスの論文によると、このデモグラフィックにのみ焦点を当てた多様性は、組織を弱くすることがわかっています。「デモグラフィックの多様性」そのものが原因なのではなく、多様な知見・能力・価値観などの「タレントの多様性」が生まれることによって、結果的に組織パフォーマンスが高まるのです。

世界全体で考えると、近年ではGAFA中心としたデジタルプラットフォーマーの買収戦略によって少数の強大な企業による寡占化が進んでいます。たしかに、未来のライバルを買収する戦略は、短期的には良い戦略です。しかし、長期的には、新陳代謝が停止してしまわないように手を打たなければ(あくまで生物学的観点から言えば)いずれは自身を含む生態系を危うくさせるものだと考えています。

今は正しいと思えるGAFAの戦略も、生命の長期視点から考えると新陳代謝を生まないために、成長を阻害する可能性があります。

経営者に失敗許容主義が必要な理由

生命は、失敗も成功も含む累積探索量を必死に増やすことで進化してきました。 過去の歴史を紐解いても、環境の変化によって、様々な生命が生まれては消えています。未来に何が生き残るのかを現在の時点で、見通すことはとても難しいことなのです。

生命は多様性を作ることにより、未来の生存確率を上げています。失敗許容主義は、短期的に見ると非効率的な戦略に見えますが、長期的には効率の良い生存戦略となります。企業が生き残るためには、失敗を許容することが重要です。

生命が失敗許容主義であり、失敗も成功も含む累積探索量を増やすことをよしとしているこ とを鑑みると、長期研究は必ずしも成功が保証されていなくてもよい、むしろ成功しようという視点を一旦脇に置くことが重要だと私は考えています。

環境は常に変わるものであり、環境の変化が予測できない以上、長期研究のどれが役に立つかは予測できません。大切なことは、「長期研究に取り組むこと」をやめてはいけないのです。研究が花咲くかどうかは未来が決めることであり、現在や、ましてや過去の経験則は役に立ちません。

著者が経営しているジーンクエストでは、研究開発における「6対3対1」というリソース配分の社内ルールを設定しています。
■商品開発など直近の事業に関わるものに6割
■数年後に何かにつながりそうな中期研究に3割
■何に関係するかまったくわからない基礎研究などに1割。

Googleにも有名な20%ルールがあります。勤務時間の20%を、従業員本来の担当業務ではない好きな仕事に充ててもよいとする制度から、GmailやGoogle Docsが生まれています。

短期的な利益だけを追いかけていれば、新しい価値を生み出す可能性を潰すことになり、結果として環境が変化した際、企業全体が崩壊する可能性も高まります。生命の多様性と失敗許容主義を経営に取り入れることで、企業は環境変化に適応できるようになり、寿命を伸ばせるようになるのです。

ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大の5冊目のiPhoneアプリ習慣術がKindle Unlimitedで読み放題です!ぜひ、ご一読ください。

 

 

 

 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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