交渉の武器――最強弁護士が教える「交渉の鉄則」
ライアン・ゴールドスティン
ダイヤモンド社
本書の要約
交渉の目的は「合意すること」ではなく、あくまでも「自分の目的」を達成することでなければなりません。交渉する際には、良い人になってはいけないのです。合意するために不本意な譲歩・妥協をして、本来の「自分の目的」を放棄してはなりません。交渉決裂カードを最初に作り、相手の譲歩を上手に引き出しましょう。
交渉に勝つ者が生き残る!
私たちが交渉をするのは、何らかの実現したい目的があるからだ。(ライアン・ゴールドスティン)
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン外国法事務弁護士事務所東京オフィス代表のライアン・ゴールドスティンは、交渉に勝つ者が生き残れると述べています。本書には「世界で最も恐れられる法律事務所」の交渉ノウハウが紹介されています。
著者のライアンは日本企業の代理人として、世界中の企業とタフなネゴシエーションを繰り広げてきました。そこで得た実践的な交渉術を20の鉄則をまとめています。
交渉の目的は「合意すること」ではなく、あくまでも「自分の目的」を達成することでなければなりません。交渉する際には、良い人になってはいけないのです。合意するために不本意な譲歩・妥協をして、本来の「自分の目的」を放棄してはなりません。
交渉のゴールは、相手を打ち負かすことでもありません。自分の目的を達成することさえできれば、交渉においては勝利で、これさえできれば、ビジネスで結果を出せるようになるのです。
「自分の目的」を達成できる場合には合意し、そうでなければ交渉決裂を突きつけるべきだと著者は言います。この交渉のあるべき姿を忘れなければ、交渉決裂も怖くなくなります。
アメリカのトランプ前大統領はあえて交渉を決裂させることで、自分の目的を達成しています。北朝鮮や中国などの交渉スタイルも目的を達成するために、途中段階で交渉を決裂させています。目的達成のためには、決裂を厭わないようにしましょう。その際、相手を打ち負かすのではなく、自分の目的達成をゴールに置くのです。
自分の感情をコントロールする!
感情にとらわれたときに、交渉における「自分の目的」を見失ってしまう。そして、必然的に不利な交渉に陥ってしまうのだ。
交渉している際に相手の言動や態度に感情が動かされることがあります。私も今までに交渉時に相手に挑発され、正しい選択ができずに、何度も失敗を繰り返しました。感情を爆発させることで、自分が本当に大切にすべき目的が達成できなくなります。
これを防ぐためには、自分を客観視する必要があります。「自分は怒っているのだな」「自分は脅えているのだな」と客観的に自分を見つめることで、冷静さを取り戻せます。
ここで、使えるのが瞑想のテクニックです。感情をコントロールするために、深呼吸を何度か行うことが有効です。実際の心理学の実験でも、怒りは発生直後にピークを迎え、その後、時間の経過とともに急速に沈静化していくことがわかっています。
また、信頼できる第三者のアドバイスをもらうことも効果があります。「待つ」「相談する」というステップによって、冷静にモノを考えられるようになり、本来の目的に近づけます。
目的を達成するためには、相手と利害調整を行う必要があります。利害が明らかに対立する時には、譲歩が求められます。
通常の交渉においては、お互いに「譲歩力ード」を交換しなければ、両者が納得できる「落としどころ(合意点)」を見出すことはできない。 そのためには、漠然と「あれも大事、これも大事」と考えるのではなく、自分が求めることの優先順位を明確にしておかなければならない。重要なのは、「絶対に譲れないもの」と「譲歩してもよいもの」を切り分けることだ。そして、「絶対に 譲れないもの」を守るために、「譲歩してよいものを」を「譲歩力ード」かに活用するかを考える。これが、交渉戦略の基本なのだ。
まず、最初に「交渉決裂ライン」を決めるましょう。これを作ることで、需要事項と優先順位が整理されます。「交渉決裂ライン」を引くことができれば、交渉を有利に進められます。本来の目的とは異なるゴールに近づいた時に、タイミングよく「交渉決裂カード」を切ることで、相手からの譲歩を引き出せます。
「交渉決裂してもいい」という覚悟をもつことで、頭が整理できます。あとは冷静に交渉を進め、お互いが譲歩できるポイントを確認し、Win-Winを目指します。相手が交渉で勝ったと思う一方、しっかりとこちらの目的を達成できれば、その交渉は成功なのです。
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