科学的に自分を思い通りに動かす セルフコントロール大全
堀田秀吾、木島豪
ディスカヴァー・トゥエンティワン
本書の要約
私たちは行動を起こす場合、脳が先に指令を出し、それに合わせて体が動くと考えていますが、実態は逆です。最近では、「体の動きが先で、脳の司令が後」というのが、科学の定説になっています。このルールを日常生活に取り入れることで、私たちのパフォーマンスもアップするのです。
テレワークで生産性を高めるセルフコントロール術
「体が先、脳が後」を利用して、セルフコントロールを成功させる!(堀田秀吾、木島豪)
テレワークが当たり前になる中で、自分をコントロールすることが難しくなっています。オンラインとオフラインを使い分けながら働いている私もモチベーションが下がり、やる気を失う時があります。そんな時、どうすればよいのでしょうか?
著者の2人は、人はラクをして生きようとする生き物なのだと述べています。目標に向かって「やる気」や「意志」などで動けるのは本当に少数派で、多くの人は私のような怠け者なのです。著者の一人の堀田秀吾氏は明治大学教授で、言語学、法学、社会心理学、脳科学などのさまざまな分野を融合した研究を展開しています。もう一人の木島豪氏はドクターで、予防医療のプロフェッショナルです。
この2人が最新のセルコントールのテクニックを教えてくれるのが、本書の魅力です。ビジネスで結果を出したければ、「やる気」に頼らずに、自分で自分を思い通りに動かすための方法を知るべきです。本書で紹介されているセルフコントロール法は医学、脳科学、心理学などの研究で学術的・科学的に実証されたものなので、安心して取り入れることが可能です。
私たちは行動を起こす場合、脳が先に指令を出し、それに合わせて体が動くと考えていますが、実態は逆です。最近では、「体の動きが先で、脳の司令が後」というのが、科学の定説になっています。このルールを日常生活に取り入れることで、私たちのパフォーマンスもアップするのです。
コロナ禍の中で始まったテレワークで、多くのビジネスパーソンがストレスを感じています。2020年9月にリクルートキャリアが行った「新型コロナウイルス禍における働く個人の意識調査」によると、テレワーク経験者の約6割が、オフィス勤務ではなかったストレスを感じているそうです。
●テレワークのストレスの原因は以下の通りです。
①オンオフの切り替えがない
②家族がいることで思うようにはかどらない
③コミュニケーションがうまくいかない
こんなストレスを抱えた中で、集中力を高めることは大変です。カンタベリー大学のヘルトンとラッセルは以下の研究を行いました。
モニター上に現れる楕円の位置を認識し続けてもらうテストをする際に、被験者を次の3つのグループにわけました。
①約2分の休憩を取る
②数字や文字といった別の課題をはさむ
③作業し続ける
結果、①の休憩を取ったグループの成績が1番よく、③の作業をし続けたグループが一番悪かったという結果になりました。休むことがストレスを軽減していますが、Zoom会議の前後についついネットサーフィンをして、時間をつぶします。しかし、このネットサーフィンには注意が必要です。インターネットのやりすぎで、集中力が削がれたり、疲れをためてしまいます。
華中師範大学のスンらは、マインドフルネスを取り入れると、インターネットへの欲求を抑えられることを明らかにしました。マインドフルネスには不眠、ストレス解消、集中力・記憶力の向上などさまざまな効果があります。休憩中に瞑想を行い、しっかりと脳を休めるようにしましょう。
広島大学の入戸野准教授らの研究で、可愛い写真を見ることで集中力が高まることが明らかになりました。大学生132名を被験者に、手先の器用さを必要とする課題Aと、指定された数字を数列から探す課題Bを実施しました。さらに、この作業をする大学生を以下の3つのグループにわけ、それぞれ違うものが写った写真7枚を好きな順番に並べ替えてもらう作業をしてもらいました。
グループ① 幼い動物(犬や猫)の写真を並べ替える
グループ② 大人の動物(犬や猫)の写真を並べ替える
グループ③ おいしそうな食べ物の写真を並べ替える
そのあと、写真を見る前後の作業効率・正答率を比較したところ、写真を見たあとのグループ①は課題Aの成績が44%、課題Bの成績が16%も向上しましたが、グループ②と③では目立った効果はみられませんでした。
犬や猫などのかわいい写真を見るだけで、仕事に対する集中力がアップします。入戸野らは「かわいい」という感情の機能を調べる実験も行いました。その結果、「かわいい」と思うと、そのかわいさをより味わうために、物事の細部にまで注目する機能が高まることが判明しました。 細部への注意力が高まることで、大学生の成績はアップしたのです。
WEB会議の欠点を補正する方法
WEB会議をしたことがある全国の男女527名に株式会社ビズヒッツが実施した「WEB会議の悩みに関する意識調査」によると、52%の人が「WEB会議より対面会議のほうがいい」と回答しています。
一方で、85%の人がWEB会議で困っていることがあると回答しています。対面会議のほうがいいと回答した276名が挙げた理由のなかで最も多かった(174名)ものは、「意思疎通しやすい」でした。
WEB会議での意思疎通の難しさの理由が、非言語情報の減少にあります。身振り手振りや表情、発音やイントネーション、そして服装などまで含んだ、言葉以外のコミュニケーション不足が、WEB会議の評価を下げていました。
有名なメラビアンの法則によると人に与える印象は、視覚情報が中心になっています。
■視覚情報55%
■聴覚情報38%
■言語情報7%
Web会議では9割以上は非言語情報であるため、相手とのコミュニケーションがリアルのミーティングより、ハードルが高くなるのです。
相手の状況を確認しづらいWEB会議だと、人はネガティブな想像をしがちです。これを避けるために、言語情報を積極的に活用します。著者らは言語情報の内容は、天気や食事の話などの雑談で構わないと言います。
WEB会議の言語情報を増やすうえで重要になるのが、「先陣を切る」ことです。カリフォルニア大学バークレー校のアンダーソンとキルダフの研究によると「最初に発言するほうが得」だということがわかっています。
基本的に「何か発言をして失敗したくない」と思うのは、全員に共通する気持ちです。そのうえで失敗を恐れず最初にロ火を切れる人は、その行動だけで勇気や積極性を備えていることがわかるわけです。
会議などで最初に発言した人はリーダーとみなされやすく、最初に提案されたアイデアが最終的なアイデアとして採用される傾向があると言います。発言のレベルが低くとも、先陣を切るほうが好印象を与える傾向があるのですから遠慮は禁物です。WEB会議の場を盛り上げるために、積極的に発言することが得策です。会議が盛り上がれば、「身振り手振り」といった非言語情報を増やせるようになり、WEB会議の欠点も補正できます。
本書に紹介されている95のセルフコントロール術を活用して、まずは、体を動かすようにしましょう。一つ一つのアクションが脳に刺激を与え、行動を変えてくれるようになります。小さな一歩がやがて習慣を変え、怠け癖を除去してくれるのです。
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