日本を喰う中国 – 「蝕む国」から身を守るための抗中論
藤井聡
ワニブックス
本書の要約
日本の土地や企業が次々と中国の資産と化しています。北海道や京都の不動産投資や尖閣諸島の動きを見れば、日々我が国が中国から蝕まれていることがわかります。日本を植民地化させないためには、中国への戦略変更と経済成長を行うことが欠かせません。そのためにはデフレの脱却が喫緊の課題になります。
中国の脅威に対抗する西側諸国の動きとは?
中国は今、周辺諸国の自由を蝕み、周辺海域の航行の自由を蝕み続けているのであり、これに対抗するため、関係諸国と連携しつつ中国を封じ込めようとするのが「自由で開かれたインド太平洋」路線なのだ。 一方、「経済安全保障」は諸外国からの経済的「収奪」「侵略」に対抗しようとするものだが、そのメインのターゲットもまた中国だ。(藤井聡)
日本が中国の植民地になるという悪夢が進行しています。日本の土地や企業が次々と中国の資産と化しています。産業ばかりでなく、精神も中国に蝕まれていると著書は指摘します。
岸田内閣は中国の脅威が高まる中、中国を封じ込める方向に政策変更をシフトしています。「経済安全保障」方針は、中国から日本経済を「守る」ために、各種の制度の整備、規制の強化を推進するものです。
日本だけでなく欧米も政策を変更し、中国への対策を練り始めています。2021年6月のG7サミットはイギリス・コーンウォールにて開催されましたが、その首脳宣言で、「中国」に対して徹底的に対峙し、対抗していくのだという姿勢が明らかにされました。
中国の野心的で強硬な振る舞いは、ルールに基づく国際秩序や同盟国の安全保障に構造的な挑戦をもたらす。(バイデン大統領)
最近ではアメリカが台湾に言及する機会も増え、中国に対する姿勢を強化しています。香港の自由が奪われる中、これ以上中国の暴走を許せば、台湾や我が国の領土の尖閣諸島も中国に飲み込まれてしまいます。
中国の経済膨張がアメリカの危機感を増大させています。オバマ政権まで中国の成長を楽観視していましたが、トランプ以降中国の成長を阻止することがアメリカの重要な政策目標になっています。
オバマ政権からトランプ政権へと移行した2010年代後半頃には、米中関係における「米中新冷戦」的側面が鮮明となり、アメリカの敵対国として中国が認識されるようになったのです。
トランプ前政権は2020年中国への技術流出を警戒し、ファーウェイを安全保障上の脅威とし、同社をアメリカから排除しました。日本などの西側諸国にも5Gから排除するよう求めました。半導体などの輸出規制も打ち出し、バイデン政権もこの戦略を引き継いでいます。
発展途上国と日本で今起きていること
20世紀には軍事力で他国を支配下に置いていくことを通して経済的利益を「搾取」していくという「帝国主義」が世界を席巻したが、21世紀の今、中国はこの一帯一路構想を中心としたインフラの力と、強力なマネーの力の双方を上手く活用しながら、一定の「合法性」の下、外国から経済的利益を「搾取」していくことを企図しているのである。 つまりそれは、「新帝国主義」と呼ぶべき代物なのである。
中国は発展途上国にインフラをつくるためのカネを大量に貸し付け続けます。一定程度貸し付けた後に、中国は態度を一変させ、「貸した金、返せ!」というプレッシャーをかけながら、貸し付けた国の「財政破綻」を引き起こしています。中国は借金に漬け込み、発展途上国を植民地化しています。
実際、中国からの借金が返済不能となったスリランカは、中国から借りたカネで整備したハンバントタ港の使用権を中国に99年間貸与するという不平等な契約を結びました。中国はスリランカを植民地同然に扱うことで、自国の権益を拡張しています。
中国は以下のプロセスを行うことで、野望を実現しています。
①発展途上国のインフラ事業を、自国中国の建設企業が受注するように調整することを通して、中国企業の発展を目指す。
②できあがったインフラを、中国が構想した「一帯一路」を構成するインフラとして活用し、ユーラシアにおける中国経済圏の支配力の拡大を企図する。
③それぞれの国に、大量の資金を貸し付けることを通して、当該の国に対する外交的影響力を拡大する。
④相手国を半ば意図的に財政的に破綻させることを通して、当該のインフラを「接収」し、事実上の植民地化を達成する。
中国は莫大なチャイナマネーを使って一帯一路の諸国をどんどん中国経済圏の中に取り込み、あわよくば半植民地として搾取する体制を築き上げようとしています。この動きにG7がようやく重い腰を上げ始めました。G7は各発展途上国に、G7諸国からの貸し付けによってインフラ整備を行う取り組みが、ようやく検討されはじめています。
日本の不動産が中国人によって買い占められていますが、ここにも大きな問題が潜んでいます。
北海道の土地が、中国人ら外国人に買い叩かれ、彼等によって開発され、そしてその物件が中国人らに売り飛ばされ続けているのである。つまり今、北海道の十地を活用しながら、中国人らが中国人らを対象としたビジネスを展開しているのである。
このような事例は枚挙にいとまがありません。コロナが収束することを見据えて、中国人は日本の不動産の積極投資を続けています。今の円安がそれに拍車をかけています。日本の不動産は海外に比べ割安で、中国人にとって投資妙味のある商品になっています。全国各地の旅館も彼らによる投資が増え、京都の一部がチャイナタウンになろうとしています。
そればかりか安全保障上重要な不動産にも中国人の投資が行われています。自衛隊や米軍の基地の隣接エリアの不動産が購入されていると言うのです。
本書のケーススタディを読めば、中国が日本を金の力で植民地化しようとしていることがよくわかります。日本の不動産、かつての大企業、尖閣諸島などの領土が失われる可能性が高まっています。それを阻止するためには、対中国への戦略を見直すことと経済成長が重要になります。そういう意味でもデフレ脱却が喫緊の課題になります。
デフレ脱却のヒントはこちらの記事をご覧ください。
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