China 2049 (マイケル・ピルズベリー) の書評

people at Forbidden City in China during daytime
China 2049
マイケル・ピルズベリー

本書の要約

中国は過去100年に及ぶ屈辱に復讐し、中国を再び覇権国家にしようと考えています。2049年までにアメリカを弱体化させ、自国を最強国家にしよとしています。中国の新たな地位は軍事力によって守られると中国共産党は考え、経済成長と軍拡を同時に行っています。

中国の100年マラソンとはなにか?

中国の指導者は西洋諸国の人々に、中国の台頭は平和的になされ、他国に犠牲を強いることはないと信じさせた。しかし彼らが進めている戦略は、それを真っ向から否定するものだった。(マイケル・ピルズベリー)

アメリカはこの数十年、中国の暴走を許容することで、自らの覇権を失おうとしています。アメリカの中国の専門家たちは過去40年間に渡り中国を過小評価し、それが政治家への提言にも影響を及ぼしています。中国の専門家である著書も当初は中国のこの動きに全く気づかなったと言います。

中国のタカ派と言われる勢力が北京の指導者を通じてアメリカの政策決定者を操作しています。中国は過去100年に及ぶ屈辱に復讐し、中国を再び覇権国家にしようと考えています。中国共産党革命100周年にあたる2049年をターゲットに、世界の経済・軍事・政治のリーダーの地位をアメリカから奪取しようとしています。この計画は「100年マラソン」と呼ばれています。

毛沢東は中国が存続するためには、過激な長期的戦略によって中華民族の独自性を守る必要があると考え、その考えがその後中国共産党戦略になりました。「容赦ない競争世界における生存競争」という概念が、中国共産党の戦略として採用され、100年マラソンが展開されたのです。

中国の歴史が語るのは、中国人は自国を世界最強の国にしようとするが、チャンスが訪れるまでその野望を隠すという特徴があるのです。

40年後、習近平は中国共産党書記長に就任してすぐ、それまで隠されていた中国の野望を認めました。「強中国夢」(強い中国になるという夢)という方針を打ち出し、アメリカとの覇権争いを表に出したのです。

この100年マラソンが終わった時中国が勝者となることを目指し、過去の歴史から学んだ知恵(孫子の兵法、戦国策、資治通鑑など) を活用し、アメリカとの戦いに勝利しようとしています。中国共産党は「赤壁の戦い」で諸葛孔明が逆境から勝利した歴史を再現しようとしているのです。

中国が経済的なマラソンに勝った後、さらにアメリカの倍以上に経済を発展させていけば、中国の新たな地位は軍事力によって守られると中国共産党は考え、経済成長と軍拡を同時に行っています。2049年まであと34年に迫った今、中国は今後どのように覇権を握ろうとしているのでしょうか?

100年マラソンの土台となっている中国の9つの戦略

中国は以下の9つの戦略を長い時間をかけながら実践しています。
①敵の自己満足を引き出して、警戒態勢をとらせない

強力な敵を早々と挑発してはならないと中国人は考えます。彼らは自分の真意を攻撃の好機が訪れるまで隠し通します。

②敵の助言者をうまく利用する
敵の指導者の周囲にいる助言者を味方に引き入れることで、敵の土台をぐらつかせます。中国はアメリカに対して、長くこの戦略をとってきました。

③勝利を手にするまで、数十年、あるいはそれ以上、忍耐する
勝利は、慎重かつ計算された行動を数十年にわたって重ねた末に、ようやく得られるものだということを彼らは歴史からマンでいます。この「待つ」という戦略を、中国の指導者は嬉々として遂行しています。

④戦略的目的のために敵の考えや技術を盗む
中国人は戦略上の利益のための窃盗を是認しています。テクノロジーや著作権を盗むことは彼らにとっては当たり前のことなのです。窃盗は、強大な国の力を弱めようとしている弱小国にとって、比較的簡易で費用のかからない手段なのです。

⑤長期的な競争に勝つうえで、軍事力は決定的要因ではない
武力の増強をする一方で、中国は敵の弱点に的を絞って好機を待っています。中国は強国が弱ることを仕掛けながら、戦うタイミングをはかっています。

⑥覇権国はその支配的な地位を維持するためなら、極端で無謀な行動さえとりかねない
弱体化する覇権国の動きを注視することを怠りません。彼らは油断せずに時間をかけながら、相手が弱ってくことを待っています。

⑦勢を見失わない
勢・・・敵が従わずにいられないような状況を形成して敵を動かし、これに打ち勝つための神秘的な力です。他国と連合して敵を包囲すると同時に、敵の連合を弱めて包囲されないようにします。

⑧自国とライバルの相対的な力を測る尺度を確立し、利用する
平和な時代でも戦時でも、軍事力だけでなく多くの要素をもとに自国の力を相対的に評価することを中国は重視します。

⑨常に警戒し、他国に包囲されたり、騙されたりしないようにする
中国の指導者は、他の国はすべて中国を騙そうとする国だと思いこんでいます。

2050年までに、中国経済はアメリカ経済よりはるかに大きくなると予想されています。
シナリオ1・・・世界は中国をリーダーとする単極世界になる
シナリオ2・・・中国とアメリカを超大国とする二極世界になる
シナリオ3・・・中国、インド、アメリカの三極世界になる

経済では中国が世界を支配することが3つのシナリオの共通点です。米ドルはもはや主要通貨ではなく、ドル、ユーロ、人民元からなる複数通貨制度に取って代わられます。結果、中国は軍事費も、アメリカより多く費やせるようになります。

もし中国の夢が2049年に現実になれば、中国中心の世界は独裁政治を助長するだろう。多くのウェブサイトが、欧米を中傷し中国を称賛する偽りの歴史で埋まる。発展途上国が「成長が先、環境対策は後」という中国のモデルを採用するにつれて、食の安全や環境保護はますますないがしろにされ、より多くの国で大気汚染が進む。 環境破壊が進むと、種が失われ、海面が上昇し、がんが蔓延する。国際機関の中には、周辺的な存在となり、現在のような介入ができなくなるところもある。

中国国有の独占企業や、中国が支配する経済同盟が世界市場をコントロールすることが起こり得る可能性が高まっています。その場合、世界最強の軍事同盟も、北京が統括するようになります。

アメリアが中国の野望を見過ごしてきた歴史が、未来を悲惨なものにしています。今世紀半ばまでに今のままの中国が覇権を握ると、これらの「悪夢」は現実 になると著者は指摘します。このまま、中国に好き勝手を許すと日本人も安閑としてはいられません。中国のタカ派の暴走を止めるラストチャンスが今なのかもしれません。

中国もかつてのような成長ができない中、アメリカが今後どう中国を封じ込めるかが鍵になりそうです。著者のこの予測が当たらないことを願っています。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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